見た目はそのままに、「走るよろこび」「安全性」「クルマの質感」の3つを高めた

プレミアムカーの資質にさらに磨きをかけた、マツダ・新「CX-3」

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2016年10月、マツダのコンパクトクロスオーバーである「CX-3」がデビュー以来2回目となるマイナーチェンジを行った。興味深いのは、今回の改良ではエクステリアの変更はいっさいなかったこと。では、どのようにCX-3は変わったのか? 開発リーダーへのインタビューと試乗を通してわかった改良ポイントを、モータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏がレポートする。

プレミアムコンパクトとしての地位を築きつつあるマツダのクロスオーバーCX-3が2度目のマイナーチェンジを実施。その実力を見てみよう

「走るよろこび」のために、操縦安定性と乗り心地、音を改善した

マツダCX-3の商品改良について、試乗の前に開発リーダーである冨山道雄氏からの説明を聞くことができた。インタビュー形式で紹介しよう。

マツダ株式会社 商品本部 主査冨山道雄氏

マツダ株式会社 商品本部 主査冨山道雄氏

鈴木:今回の商品改良はどのような内容なのでしょうか?

冨山:今回は3つあります。まずお客様に本質的な価値として提供したい「走るよろこび」という意味でのダイナミック領域です。次に普遍的な価値としての「安全性」。そして、「クルマの質」。この3つを軸に考えました。

鈴木:マツダ車らしく、まず走りですね。

冨山:そうです。今回、マツダブランド全体として、車両運動制御技術の「Gベクタリングコントロール」を採用しました。

鈴木:ドライバーがステアリングを切ると、それにあわせて、わずかにエンジン出力を落として前輪に荷重をかけるという技術ですね。ステアリング操舵に対してクルマの動きが正確になると。

冨山:それをCX-3にも採用しました。あとは、メディアやジャーナリストのみなさんから指摘をいただいたところを愚直に直していくという取り組みです。デビュー直後は乗り心地に指摘が多かったので、そこは昨年2015年12月に改良しました。そのときに全体をチューニングしたつもりでしたが、ちょっとステアリングの手応えに改善の余地があるんじゃないかと言われまして。そこで今回のGベクタリングコントロールとあわせて、改良しました。フロントロアアームのブッシュをやりかえ、ダンパーとパワーステアリングのチューニングをあわせて、操縦安定性と乗り心地の改善を図りました。それとダイナミックの要素としての音ですね。

ハンドル操作にあわせて、エンジンの出力をコントロールするGベクタリングコントロールを搭載。操縦安定性の向上が図られた

鈴木:音もダイナミックなんですか?

冨山:CX-3はディーゼル専用車です。ディーゼルのトルク特性というよさを生かしながら、ネガの部分を消していこうと。音を静かにしようということです。CX-3は、最初にナチュラルサウンドスムーザーを入れましたが、今回は「ナチュラルサウンド周波数コントロール」を採用しました。燃料噴射のタイミングを微妙に調整することで周波数をコントロールして、一層、ディーゼルのノック音を軽減しています。

鈴木:周波数を打ち消す音叉(おんさ)のようなアイテムがナチュラルサウンドスムーザーでしたが、新たに周波数を変える仕組みもプラスしたわけですね。

冨山:そうです。そうやってエンジンを静かにさせたのにあわせて、風騒音とロードノイズの低減を図りました。去年の改良では、フロントのドアガラスの板厚を上げて前席を静かにしたんですけれど、そうなると後席の音が気になってしまいました。ひとつの音を消したら、ほかに出てくるっていうイタチごっこなんですけどね(笑)。そこでドアとピラーに吸音遮音材を入れて、リヤのバックドアのガラスの板厚を2.8mmから3.1mmに増しています。操縦安定性と乗り心地、そして音。これがダイナミック領域です。

鈴木:ここまでが「走る喜び」のひとつめですね。

室内の居住性も高められた。特に、吸音遮音材の追加や、ドアガラスを厚くするなど、後席周辺の改良が目立つ

室内の居住性も高められた。特に、吸音遮音材の追加や、ドアガラスを厚くするなど、後席周辺の改良が目立つ

衝突軽減自動ブレーキの性能向上と、デザインと質感のブラッシュアップ

冨山:次は安全性です。今回は運転支援技術「アイ アクティブセンス」の進化をすべて取り入れました。フォワードセンシングのカメラを採用したことで、より外界認識能力を向上させました。「アドバンスト スマート シティ ブレーキ サポート」で、歩行者を検知できるようになったのがポイントですね。作動速度域を、最大30km/hから80km/hに引き上げています。ほぼ、一般の市街地走行の速度域をカバーできるシティブレーキができたというのが今回の大きな特徴になります。

運転支援技術のアドバンス スマート シティ ブレーキ サポートが歩行者を検知できるようになった。また、作動速度域が、最大30km/hから80km/hまで引き上げられた

鈴木:衝突被害軽減自動ブレーキ(AEB)の充実はうれしいものですね。

冨山:カメラの精度が高いので、道路標識を認識できるようになりました。特に速度規制を読み取って、それをヘッドアップディスプレイに表示するのがCX-3のユニークな点です。「デミオ」よりもさらに高機能になった部分です。

カメラが読み取った道路標識を、ヘッドアップディスプレイに表示する機能も追加された

カメラが読み取った道路標識を、ヘッドアップディスプレイに表示する機能も追加された

鈴木:そして3番目が質感ですね?

冨山:デザイン領域に、より磨きをかけようと取り組みました。ただ、スタイリングはプロポーションのよさというのがあって、変えなくてもいいだろうと。

鈴木:ああ、それが外観を変えなかった理由ですね? 

冨山:そうです。ですから、デザインはインテリアに対して、本質を突き詰めていこうとなりました。今回はデザイナーに、「上質感をあげるために、デザインでできることは全部やってくれ」と。何の規制もせずに見直せと言いました。その中でいろいろと取捨選択がありました。

新色が追加されたがカタチの変更点はない。好評だった従来からのプロポーションを変える必要はない、という判断だ

まず、カラーコーディネーションにブラウンという新しいカラーを入れました。今までは黒と白が中心でした。そして、ブラウンを引き立たせるために、レザーもマツダの中で一番いいナッパレザーを使うことにしました。それと室内の加飾です。今までは、いろいろな色を使っていましたが、統一させてメタリック感を出しました。硬質な感じと革のやわらかさの対比で、新しいと思っていただけるようなものにしました。それがデザインです。

質感向上のひとつとして、パワーシートの採用があります。これは発売当初からお客様からご要望があったものです。シートに関しては、発売当初から2つのご要望がありました。ひとつは黒い革が欲しい。そして、パワーシートが欲しいと。黒い革は2015年12月の改良に間に合いましたが、パワーシートは1年かかってしまいました。パワーシートにもいろいろあるんですけれど、CX-3は300万円のクルマだから、マツダが持っている中で一番いい、10ウェイのメモリー付きパワーシートを使うことにしました。

プレミアムカーらしく10ウェイのメモリー付きパワーシートを採用。インテリアカラーにも、ブラウンが追加され高級感が増した

「これがいい」という、ほぼ指名買いで買われていくCX-3

鈴木:今、値段のことが出ましたよね。300万円のクルマだと。お客さんから黒革が欲しいとか、パワーシートが欲しいという声が出てくるということは、プレミアムカーとしての市場に受け入れられたのでしょうか?

冨山:そうです。最初、グレードを布革シート、合皮シート、本革としたときに、布革が半分くらいかなと販売計画を立てましたが、実際は2割以下でした。合皮が5割で本革が3割。今回、ナッパレザーを入れたので、本革がさらに増えています。

鈴木:高いのが意外と売れていますね。実は、CX-3は高いなあというイメージだったんです。ライバルは高い値段のハイブリッドだけでなく、安いガソリンエンジン車を用意しています。でも、CX-3はディーゼルしかないので、安い価格帯が厳しいのかなと思っていました。

冨山:ディーゼルですが、布シートのグレードも用意しています。

鈴木:そうでしたね。230万円くらいでしたね。

冨山:そこに今回の改良で、LEDヘッドライトや18インチアルミホイールも入れて、そこを盛り上げようと思ったんですが、ところが、そこが売れないんですよ。

鈴木:安いところが売れないと(笑)。

標準グレードの「XD」にもLEDヘッドランプを搭載。CX-3全体のブランドイメージを高めている

標準グレードの「XD」にもLEDヘッドランプを搭載。CX-3全体のブランドイメージを高めている

冨山:CX-3は、質感が高いものを求められる、目の肥えたお客様がいるということなんですね。それは2通りあって、ひとつは、輸入車や上級車から降りてこられる方。サイズの小さいのが欲しいというお客様にとって、CX-3はちょうどピタッとはまる。そういうお客様は、価格よりも、センスにあったものをお求めになります。もうひとつは、特に女性に多いのですが、「あまりゴテゴテしたものではなく、もうちょっとスタイリッシュなクルマが欲しいよね」という方です。彼女たちも、自分のセンスを表現するクルマとして選ばれます。また、そういう方は安全性に関しても敏感なので、真ん中よりも上のグレードをお買い求めになるんですよ。

鈴木:そういうユーザー層なんですね。

冨山:しかも、買われたお客さまは、ものすごく満足度が高いんです。販売台数的には、いろいろ各社さん的なボリュームはあると思いますが、満足度だけを見たら、うちは相当高いですね。

鈴木:ほかの会社に負けてないよと(笑)。

冨山:もう、指名買いの状態なんで。「これがいいんだ」というお客様が、今、CX-3をお買い求めになっています。

鈴木:だからこそ、エクステリアデザインを変える必要がないというわけですね。納得です。CX-3は最初の企画が間違っていなかったわけですね。ダメで売れないから、方向転換することもありますよね。そういう意味で、CX-3は、キープコンセプトで磨いていくというのが現状ですね。

冨山:今の流れはそうです。もともと、2015年にCX-3をデビューさせるという企画を2011年とか2012年くらいからやっていたときは、クロスオーバーの市場が増えるとは考えていましたが、どこまで増えるのかという予想は誰も自信が持てませんでした。マツダがブランニューを出して、どれだけのボリュームがとれるのかということに、確証が持てなかったんですね。そこで小さく産んで、徐々に育てていこうと思っていました。まずは、特徴をしっかりとさせて、よそにはない価値を備えようと。大きい、小さいではなく、ちょうどよいサイズ感。それとスタイリッシュなデザイン。なおかつプレミアムなグレードも持っているという、CX-3のポジションをハッキリさせる。それが、まず一幕としてやっていたことです。

鈴木:あれ? 走りが抜けてませんか?

冨山:クリーンディゼルと人馬一体の走りは、マツダの共通のものとして、当然、底辺にありますよ。

CX-3は、今回のマイナーチェンジによって、よりプレミアムを感じる、静かさと質感を手に入れた

CX-3は、今回のマイナーチェンジによって、よりプレミアムを感じる、静かさと質感を手に入れた

太くマイルドな新しいディーゼルサウンドに驚く!

続いて試乗した印象を紹介したい。試乗は4WDモデルの特別仕様車となる「XDノーブル・ブラウン」だ。上級グレードである「XD Lパッケージ」に高級ナッパレザーを使ったパワーシートやブラウン&メタリックを基調とした専用インテリアが与えられたもの。CX-3ラインアップで最高の306万6400円のプライスをつける。

ブラウンのレザー素材とメタリックの加飾、ブラックでまとめられた室内は落ち着き感があり、BセグメントのコンパクトSUVというジャンルを超えた高品位な世界を見せてくれる。輸入車からのダウンサイザーにも人気があるというのも納得だ。逆に言うと、これに目が慣れてしまうと、素のグレードが寂しくなってしまうほどだ。

色使いが抑えられ、シックで高級感の漂うインテリア。車格が上がったような印象を受ける

色使いが抑えられ、シックで高級感の漂うインテリア。車格が上がったような印象を受ける

試乗したのは最高グレードの特別仕様車となるXDノーブル・ブラウン。やわらかいナッパレザーの感触は快適

試乗したのは最高グレードの特別仕様車となるXDノーブル・ブラウン。やわらかいナッパレザーの感触は快適

走り出しての最初の印象は「静かだな」というもの。アイドリング+アルファの速度では、やはりディーゼルエンジンぽい音がする。ところが、少し速度を高めると、タイヤなどのロードノイズにかき消され、ほとんど気にならなくなる。そして、逆にディーゼルならではの太いトルクを使った走りの快適さに目が奪われる。アクセルをほんの少し踏むだけで、タコメーターの針は軽く1600rpmを超える。すると、ガソリンエンジンでいえば2.5Lクラスを超える270Nmものトルクバンドに入って、グイグイとクルマは加速してゆくのだ。エンジン回転数は、わずかなものだから振動もミニマム。しゃかりきにアクセルを踏まずとも、軽く流れをリードする。最高出力は105PSなのだから、それほど速いわけでもない。しかし、ほんの少し、スキップするような気分の早歩きのようなペースで軽々と走る。これがトルクの太いディーゼルならではの魅力だ。

ディーゼルならではの太い低速トルクはそのまま。振動や騒音を抑えつつグイグイ加速させる

ディーゼルならではの太い低速トルクはそのまま。振動や騒音を抑えつつグイグイ加速させる

そして驚くのがエンジンサウンドだ。深くアクセルを踏み込むと、エンジン音が高まるが、そのサウンドがこれまで耳にしたことがないものであったのだ。ディーゼルならではのキンキンとした高周波がなく、太くマイルドなサウンドだ。これが、新しく採用したナチュラルサウンド周波数コントロールの効果だろう。耳障りな硬さがとれていた。

乗り心地のよさは、相当なハイレベルだ。クルマの小ささのため、道路のうねりにややクルマがあおられるシーンもあったが、段差を超えるときのショックや音は上手に抑えられていた。クラストップレベルではないだろうか。

ハンドリングは、全体としては落ち着き方向だ。新しく採用されたGベクタリングコントロールは、正直、作動していることはわからない。しかし、修正舵の少ない気持ちのよいコーナリングや直進性が味わえるのは、きっとGベクタリングコントロールが働いているからだろう。しなやかで意のままの走りは、マツダのほかのモデルに共通する特徴だ。

試乗を終わって感じたのは、CX-3の確実な進化だ。デビューのときも悪くはなかったが、それが改良を加えるたびに、さらによくなっていく。年次改良を実施する欧州車は「最終型は最高のでき」と言われるように、この分ではCX-3もモデル末期のクルマが最高のクオリティになるのではないだろうか。待てばもっとよくなるけれど、それではいつまでたっても買うことができない。そんな買うタイミングの難しいクルマと言えるだろう。

欧州車のようにモデル末期に近づくほどに完成度が高められていく「CX-3」。いつ買うのがベストか、贅沢だが悩ましい問題だ

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

製品 価格.com最安価格 備考
CX-3 0 2度目のマイナーチェンジが実施されたマツダのコンパクトクロスオー
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2017.1.18 更新
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