バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂

クルーザータイプでも色あせないスポーツ性能! ドゥカティ「XDiavel S」の加速に酔いしれる

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北米などではハーレーダビッドソンに代表されるように、どこまでも伸びた真っすぐな道をバイクで巡行する、そんなクルーザータイプのバイクの人気が高い。日本ではなかなかイメージしづらいかもしれないが、長く続く直線的な道をゆったりと走ることへの憧れはある。そこで今回は、ドゥカティが提案するクルーザータイプのバイク「XDiavel S」をピックアップしてみた。ドゥカティといえば、前傾姿勢で曲がりくねった峠道やサーキットなどを攻めるスポーツタイプで名を馳せてきたメーカー。「XDiavel S」は「ロースピード・エキサイトメント」をコンセプトに開発されており、長距離ツーリングにも適するという。得意ジャンルの対極にあるような「XDiavel S」の仕上がり具合を、たっぷり味わってチェックする。

ロー&ロングなクルーザー的車体構成

数多くのレースで輝かしい実績を残し、スポーツタイプのバイクにおいては確固たる地位を築いているドゥカティだが、近年はクルーザー的な車種にも力を入れている。2011年には、アップライトなポジションでツーリング向きの「Diavel」シリーズをリリース。ドゥカティにしては長めのホイールベースとなっており、コーナーでの運動性能よりも直線での安定性を重視した設計とされた。そして2016年に投入されたのがフロントフォークを寝かし、もっとクルーザー的なキャラクターを強めた「XDiavel」だ。車体はさらにさらに長く伸ばされ、ホイールベースは同社歴代モデルでも最長となる1,615mm。着座位置も低く、ステップは前方に配置されるなど、明らかに直線的な道を走ることを重視した車体設計となっていた。そんな「XDiavel」の中でも、今回紹介する「XDiavel S」は専用のアルミ鍛造ホイールやブレンボキャリパー、それに各部の光沢ペイントなど質感を高めたモデルとなる。

車体サイズは2,310(全長)×1,010(全幅)mmで、重さは220kg(燃料やオイルなどを含まない乾燥重量)。シート高は755mmとなっている

真横から見るとホイールベースの長さがよくわかる

真横から見るとホイールベースの長さがよくわかる

ハンドルはかなりライダー側に引き寄せられた形状となっており、従来のドゥカティのイメージとは大きく異なる

かなり前方に配置されたステップは、前に足を投げ出したようなクルーザー的ポジションを作り出す

かなり前方に配置されたステップは、前に足を投げ出したようなクルーザー的ポジションを作り出す

リアタイヤをベルトドライブで駆動させるドゥカティ初の機構を採用。クルーザータイプに求められる静粛性やスロットルに対するなめらかなレスポンス、そして低いメンテナンス頻度を実現した

短い2本出しのマフラーの消音性は上々だが、アクセルを開けると歯切れよい排気音が耳に届く

短い2本出しのマフラーの消音性は上々だが、アクセルを開けると歯切れよい排気音が耳に届く

シートは小ぶりだがホールド性は高く、加速時にもライダーをしっかりと支えてくれる。ただ、タンデムシートは非常に小さいので緊急用と考えたほうがいいだろう

低い速度域でもエキサイティングな走りを実現することを目指した「XDiavel S」を語るうえで、もっとも重要なエンジンについて触れておきたい。「XDiavel S」にはドゥカティが得意とするL字型の2気筒エンジンが搭載されており、排気量は1,262ccで最高出力1,56PS、最大トルク126Nmを5,000回転という低い回転数で発揮する。とはいえ、単に低速での扱いやすさを重視したエンジンではない。バルブ駆動はレーシングマシンにも採用されるデスモドロミック形式とされ、高回転でもスムーズなバルブの開閉ができる。ドゥカティならではの高回転でのパンチ力もあわせ持ったエンジンなのだ。

低速から高速まで変わらぬパワフルさを備えたエンジンにはエンジンカバーを採用。冷却用のウォーターポンプも見えない位置に配置され、スッキリとした見た目を実現した

エンジンのパワーを受け止めるリアタイヤは240/45 ZR17という極太サイズ。片持ち式のスイングアームで、迫力あるホイールが目立つデザインとなっている

大パワーに対応するため、ブレーキには同じイタリアブランドであるブレンボ製のラジアルマウントキャリパーを採用。制動力が高いだけでなく、レバータッチやコントロール性にもすぐれる

リアブレーキもブレンボ製。マスターシリンダーはステップ部分に配置されている

リアブレーキもブレンボ製。マスターシリンダーはステップ部分に配置されている

ハーレーとは異なるスポーツ性の高さを試乗で実感

“スポーツ性能も高いクルーザータイプ”と聞くと、以前試乗したハーレー「XL1200CX ロードスター」(以下、ロードスター)と比較したくなってしまう。元々クルーザーを得意とするハーレーが、スポーツ方向に振ったモデルとしてリリースした「ロードスター」と、スポーツタイプを得意とするメーカーが手がけたクルーザー「XDiavel S」は真逆方向からのアプローチではあるが、目指しているところは近いと思えるからだ。同程度の排気量で2気筒という部分も共通する両車には、どのような違いと共通点があるのかも試乗で確かめてみたい。

「XDiavel S」との乗り心地を比較する「XL1200CX ロードスター」

「XDiavel S」との乗り心地を比較する「XL1200CX ロードスター」

エンジンをかけ、走り出してすぐに「ロードスター」とはキャラクターがまったく異なることを実感した。エンジンが「ドコドコ」という感じのトルク感で車体を前に押し出す「ロードスター」に対し、「XDiavel S」のほうは「ドドドド」といった印象で、トルク感は大きいものの車体が進む感覚はなめらか。アクセルに対する反応も「XDiavel S」は俊敏で、そのあたりは同社のスポーツタイプのモデルと大差ないだろう。くわえて、スポーツタイプの場合、低速で雑にアクセルを開けるとギクシャクすることもあるが、「XDiavel S」はスムーズでコントロールしやすい。「ロードスター」と同様に比較的車重はあるものの(ロードスター:259kg、XDiavel S:220kg)、「XDiavel S」はハンドリングが軽く、動き出すと重さが気にならなくなるため、いかにも“鉄の塊”といった「ロードスター」とは走行性でも対照的であると言えそうだ。

ロングホイールベースの車体は高速道路に入っても安定しており、ゆったりとした気分で走れる

ロングホイールベースの車体は高速道路に入っても安定しており、ゆったりとした気分で走れる

基本的な走行だけでも上々だが、走行モード機能を活用するともっとライディングが楽しくなるだろう。「XDiavel S」には、「アーバン」「ツーリング」「スポーツ」といった3つの走行モードが搭載されており、エンジン特性、最高出力、コーナリングABSといった設定を瞬時に切り替えられる。たとえば、街中ではもっともおだやかな特性を持つ「アーバン」モードを選択し、高速道路に入ってすぐに「ツーリング」モードにチェンジ。すると、アクセルへのレスポンスが鋭くなり、排気音の歯切れも向上する。さらに攻めたい時には、フルパワーを発揮し、レスポンスがより過激になる「スポーツ」モードに替えてほしい。実際に「スポーツ」モードを高速道路で試してみたが、少しアクセルを開けるだけで弾かれたように車体が前に進み、大きくアクセルをひねると、前方に投げ出した足が風圧でステップから引きはがされるほどの加速を味わうことができた。ただし、「スポーツ」モードは面食らうほどの加速感となるため、「XDiavel S」に慣れてから体感するほうがいいだろう。

走行モードの切り替えは左手側のスイッチで行う。スイッチひとつでここまで特性を変更できるのは面白い

走行モードの切り替えは左手側のスイッチで行う。スイッチひとつでここまで特性を変更できるのは面白い

エンジンの性格だけでなく、トラクションコントロール(DTC)やABSの効き方も各モードで変更される。なお、走行モードは自分の好みに合わせてセッティングすることも可能

走行モードと連動してメーターの表示も変わる。「スポーツ」モードではタコメーターが大きく表示され、気分もスポーティーに!

ここまで、直線の加速の気持ちよさを中心にお伝えしてきたが、コーナーリングのスムーズさもすばらしい。「XDiavel S」はクルーザータイプにしては非常に深い40°というバンク角を持っているため、ホイールベースは長いものの、コーナーリングでは車体を深く寝かせることができ、車体の長さからは想像できないほどよく曲がる。同社のスポーツモデルほどの切れ味のよさはないが、そのことが逆に乗りやすさにつながっている感じだ。高速道路での車線変更なども軽快で、少し車体を傾けるだけで素早く隣の車線に移れる。

太いタイヤもバンク角の深さにひと役買っている

太いタイヤもバンク角の深さにひと役買っている

試乗を終えて

「XDiavel S」の車体の長さを見た当初は、「ドゥカティがクルーザータイプだなんて、似合わないことはしないほうがいいのでは?」と否定的であった。なぜなら、ドゥカティの個性である、レスポンスがよく高回転まで回るエンジンやキレのあるハンドリングなどが、クルーザータイプになると薄れてしまうと思ったからだ。しかし、実際に乗ってみると予想は外れ、とくに「スポーツ」モードでのどうもうさすら感じる加速はニヤニヤしてしまうほど楽しい。長いホイールベースで車体が安定しているので、高速の状態でアクセルをさらに開ける際も安心できる。コーナーリングにしてもスポーツタイプのように「ブレーキングでフロントに荷重を移して……」などと考える必要はなく、車体を傾ければいい。つまり、ドゥカティならではの魅力をズボラな操作で味わえるのが「XDiavel S」の最大の魅力だ。ドゥカティに憧れる初心者や、過去にスポーツタイプのバイクに乗っていたことがあり、もう少し楽に乗りたいが遅いマシンは嫌だという人にも「XDiavel S」はうってつけだろう。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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2017.10.18 更新
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