2021年、飲料業界のトレンドのひとつが、「ペットボトル抹茶ラテ」です。
ことの始まりは、コカ・コーラシステムが2021年3月22日に発売した「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」。20〜30代を中心に人気を集め、想定以上に売れたことで、発売から6日後の3月28日には出荷を一時停止し、飲料業界をザワつかせました。
その後、2021年7月26日に発売を再開しましたが、その人気は留まることを知らず、17日間で出荷本数2,500万本突破という記録を打ち立てました。
コカ・コーラシステム「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」
この大ヒットに待ったをかけるかのように登場したのが、サントリー食品の「クラフトボス 抹茶ラテ」です。発売されたのは、2021年8月17日。こちらも後発ながら大好評で、発売開始から14日間で、出荷本数が2,600万本を突破したと発表されました。
サントリー食品「クラフトボス 抹茶ラテ」
総務省のデータによると、2021年の日本国内の人口は、約1億2,622万人。ざっくり計算すると、両商品ともに2週間前後の間に国民5人に1人が飲んだことになり、その注目度の高さがうかがえます。
そこで今回は、この2本を徹底比較。飲み比べて「甘さ」、「抹茶感」、「ミルク感」、「コク」を点数で評価し、味の特徴や違いを浮き彫りにしていきます。
まずは、両商品のスペックから比較。
ペットボトルのデザインを見てみると、「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」のほうが背が高いのですが、実際の容量は「クラフトボス 抹茶ラテ」のほうが60ml多め。前者の440mlに対し、後者は500mlです。
「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」には、280ml入りの広口ボトルタイプもラインアップされていますが、今回は定番の440mlボトルを用意。「クラフトボス 抹茶ラテ」は、この500mlのみで展開されています
栄養成分表示の数値を比べると、こちらはほぼ同じ。「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」が100ml当たり42kcalで、炭水化物7.9gなのに対し、「クラフトボス 抹茶ラテ」は100ml当たり43kcalで、炭水化物7.8g。糖類の量などに、大きな差はなさそうです。
次に、各商品の味作りについて紹介します。
「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」は、国産抹茶を100%使用。また、京都・宇治の老舗茶舗「上林春松本店」と、スペシャルティコーヒー専門店「猿田彦珈琲」が監修しています。
「猿田彦珈琲」は、コカ・コーラのコーヒー「ジョージア」も監修しているので、そのつながりからでしょう。コーヒーと抹茶は別ジャンルの飲み物ですが、香り高さやミルク感などに一流焙煎士とバリスタの知見が活用されているのだと思われます。
波打ったようなボトル形状は、急須で飲むお茶をイメージした「綾鷹」ブランドに通ずる、「湯呑み型ボトル」のデザインを踏襲しています
いっぽうの「クラフトボス 抹茶ラテ」は、監修の外注などは行っていません。とはいえ、開発には、同社の一大ブランド「伊右衛門」で培った抹茶のブレンド技術が最大限に活用されており、石臼挽き抹茶などの国産抹茶を使用しています。「伊右衛門」は、京都の名門茶舗「福寿園」と共同開発していますから、間接的な関わりはあると考えてよいでしょう。
また「クラフトボス 抹茶ラテ」は、その国産抹茶に複数の素材をブレンドし、さらに乳脂肪分がリッチで好相性なクリーム原料を使用することで、濃厚で上品な乳の甘みを実現。満足感がありながらも、スッキリと飲み続けられる味わいに仕上げています。
パッケージデザインの色調は、全体的に「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」よりも明るめ。ライムグリーンの市松模様も、上品なカジュアル感を演出しています。また、ペットボトルが薄くてペコペコするエコ仕様であることも見逃せません
次は、それぞれをグラスに注いで、抹茶ラテの色味をチェック。すると、スペック同様にほぼ違いは見られませんでした。
ともに暗過ぎず、鮮やか過ぎずの色合い。若干「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」のほうが濃く感じましたが、僅差と言ってよいでしょう。はたして、どんな味の違いがあるのかが気になります
スペックも見た目の色味もほぼ同じ「綾鷹カフェ」と「クラフトボス」。各製法のこだわりが味にどのような違いを生み出しているのでしょうか。いよいよ飲んで確かめてみます。
まずは、「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」から。
甘さは、缶コーヒーで言う「微糖」程度。抹茶の渋味とミルクのクリーミーさをバランスよく調和させた甘さだと感じました。適度なまろやかさがありながらも飲み口はスムースで、くどさはなく、上品な仕上がりだと思いました。
甘過ぎず、濃過ぎず、薄過ぎず。それでいて、飲み応えは十分の、好バランスなおいしさです
次は、「クラフトボス 抹茶ラテ」。
スペックと色味は、「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」と似ています。とはいえ、違いは多少あり、特に印象的なのは甘みと香りです。「クラフトボス 抹茶ラテ」は、糖の甘さというより、甘い香りが若干強く、ミルク感も豊かな気がします。また、余韻で広がる抹茶の香りが華やかで、この上品な風味が飲み終わりのスッキリとした後味につながっているのかなと思いました。
抹茶感もミルキーな甘みもしっかりしており、それでいてゴクゴクいける飲みやすさも両立。さすが、世の「ちびだら飲み」ニーズを掘り起こし、ペットボトルコーヒーを大ヒットさせた「クラフトボス」ブランドです
交互に飲んでみてわかったことは、「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」は、若干抹茶感が強くて比較的まろやかであること。「クラフトボス 抹茶ラテ」は、こちらも十分に抹茶感はありながら、ミルクや甘みも豊かないっぽう、余韻はスッキリと仕上げられていることです。
味の違いはあっても誤差。もし名前を伏せて飲み比べたら、その違いに気付かない人は少なくないと思います
冒頭で触れたように、2021年の大ヒット商品となったペットボトル抹茶ラテ。他社も追随して抹茶ラテの新商品を発売したら、さらに市場が盛り上がることでしょう。引き続き、コーヒーや濃厚ミルクティーに次ぐ新たなトレンドとして、注目していきたいと思います。
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。