今、おうち向けのピザがアツい! 先日も、人気TV番組「マツコの知らない世界」で特集され、「冷凍・チルドピザは、職人殺しの域まで来ている!」と話題になりました。とはいえ、番組で紹介されていた専門店系の商品は多くがお取り寄せで、かつクール便の送料がかかるためなかなかお高め。より手軽に安く、おいしいピザを味わうのであれば、スーパーで売っている冷蔵の“チルドピザ”に注目してください。
近所のスーパーを回り、入手できたメジャーなチルドピザはこの5つ。厳密に比較するべく、大定番のマルゲリータに絞りました。ピザクラスト(生地)やチーズの質などを採点評価しながらレビューします
では、なぜ冷凍ではなくチルドなのか。冷凍ピザの中にもおいしくて値ごろなものはありますが、スーパーの冷凍ピザはチルドに比べて種類が少なく、比較的サイズが小さいのです。確かに冷凍技術も進化していますし、賞味期限的にも冷凍はメリットがあります。とはいえおいしさに関しては、やはりチルドに軍配が上がるでしょう。
調理方法は商品によりますがいくつかあり、今回はすべてオーブンレンジのオーブン機能に統一。250℃に設定し、各ピザの推奨時間で焼き上げました
なおPIZZAの読みに関して、「ピザ」はアメリカ読みで、今回比較するマルゲリータは本場イタリア・ナポリ発祥なので本来は「ピッツァ」が正しいのですが、本稿では「ピザ」で統一します。
チルドピザの勢力図は、実はハムメーカーの戦いでもあります。しかも二強。日本ハムと伊藤ハムのほぼ一騎打ち状態で、ただしそこに「デルソーレ」という日本のピザのパイオニアが君臨しています。
ハムメーカーに話を戻すと、売り上げで頭ひとつ抜きんでているのが日本ハムの「石窯工房」。筆者の近所のスーパーでは、最も取り扱いが多いブランドでした。ということでまずはこちらからチェック。
日本ハムの「石窯工房 マルゲリータ」。スペックは、1枚189gあたり486kcal、脂質17.6g、炭水化物61.0g(バジルオイル分は含まれません)。筆者が購入した際は1枚300円(税込)でした
パッケージ左上には「発売20周年」「チルドピザNo.1ブランド」と書かれています
石窯工房はピザ職⼈の技を再現し、焼きたてアツアツを家庭で⼿軽に楽しめるシリーズ。このマルゲリータは「サクッと軽いローマ風クラスト」ということで石臼挽きの薄い生地になっているほか、エクストラバージンオリーブオイルを使った、パルミジャーノ・レッジャーノチーズ入りの自家製バジルオイルが付いているのもポイントです。
焼き上がりはこのような感じ。シュレッドチーズとバジルソースなので、本場のマルゲリータ職人からは怒られそうですが、その味はいかに
あえてクラストを薄くしているからか、生地の弾力や香ばしさはおとなしめ。チーズもびよ〜んとまではいきませんが、価格に対するコスパはなかなか。薄いクラストも、サクッとつまみにするならいいかもしれません。特徴なのはソースの甘みで、子供に好かれそうな味だと思いました。いい意味でオールマイティー。ロングセラーにもうなずけます。
ソースの甘みが印象的。チーズの伸びはもう一歩欲しいところです
次は日本ハムのライバル、伊藤ハムのエコノミーシリーズ「ピザガーデン」。うまみを引き出した低温長時間熟成クラストを使用し、子供から大人まで楽しめるサクッとした薄生地タイプのピザです。
伊藤ハムの「ピザガーデン マルゲリータ」。1枚あたりの重さの表記はなく、398kcal、脂質13.4g、炭水化物49.8g。筆者が購入した際は1枚267円(税込)でした
マルゲリータは、じっくりうまみを引き出したクラストのほか、アンチョビを隠し味に使用した自家製トマトソースと、モッツァレラとゴーダによる2種のナチュラルチーズ、粉末バジルが特徴。
チープ感は否めませんが、その分比較的ヘルシーです
バジルが粉末なので、香りも彩りも弱め
クラストもソースもチーズも重くなく、全体的にライトでおやつ感覚の仕上がりです。ただ、チーズの伸びはなかなかで好印象。カロリーを控えたい人、おつまみやスナック感覚で食べたい人にぴったりだと思います。
少しだけ食べたいとき、ライトな味わいが好きな人に
3番手は、日本のピザのパイオニアと前述した「デルソーレ」。1964年の創業以来、素材を生かしたおいしいピザを作り続ける実力派です。スーパーで同社のピザが置いていなくても、クラストやタコス用のフラワー(小麦粉)トルティーヤなどが売っていることは珍しくありません。
デルソーレの「マルゲリータピッツァ」。1枚245gあたり635kcal、脂質23.3g、炭水化物82.6g。筆者が購入した際は1枚429円(税込)でした
特徴は、トマトソースのほかにトマトのピューレ漬けが入っていることや、一部にイタリア産のモッツァレラチーズを7%使っていることです。また、他社に比べて原材料に余計なものがなく、シンプルにおいしさを突き詰めている印象。“小麦ごはん”を得意とするメーカーなだけに、クラストのおいしさにも期待できそうです。
パッケージが他社に比べて小さく見えるのはトレイがないからで、ピザの大きさ自体はほぼ一緒。エコ面でもすぐれているのです
バジルの主張はおとなしめですが、チーズとトマトの感じは非常においしそう
ひと口でわかる、本格的なクラストのおいしさ。ふっくら、しっとりもちもちとしていて硬さは皆無。それでいて表面はサクッとしていて、「ナポリピッツァはこれだよね」感がすばらしいです。とろりとしたチーズとの一体感も絶品。バジル感は弱いですが、これに別途フレッシュバジルを使えば、専門店顔負けの味になると思います。
クラスト、ソース、チーズの一体感が秀逸。バジルのリアル感があればより美味です
日本ハムの威信をかけたブランドが、次に紹介する「奏」。17時間以上熟成させた生地を中種に使用し、サックリモチモチの食感に仕上げたナポリ風クラストが最大のウリです。
日本ハムの「奏 マルゲリータ スペシャリテ」。1枚210gあたり469kcal、脂質12.6g、炭水化物68.0g(バジルオイル分は含まれません)。筆者が購入した際は1枚538円(税込)でした
「石窯工房」同様、バジルオイル付き。また、具材としてはトマトソース、エダムチーズ、モッツァレラチーズをトッピングし、さらにドライトマトをトッピングすることで、プレミアムなピザに仕上げています。
黒いパッケージで高級感は十分。四角いチーズはモッツァレラでしょうか、期待が高まります
ドライトマトの存在感も抜群!
うわ、これもブオーノ(イタリア語でウマい)! 生地のモチモチ感はデルソーレよりはやや劣る印象ですが、香ばしさやリアルな粉感はこちらに軍配が上がるかも。チーズの伸びやコク、そしてトマトのジューシー感はピカイチで実にリッチなおいしさです。個人的にはデルソーレのほうが好みですが、「奏 マルゲリータ スペシャリテ」のほうが好きという人も多いと思います。
チーズもびよ〜んとよく伸びます。ジューシーなトマトとの一体感もお見事
ラストは伊藤ハムの「ラ・ピッツァ」。イタリア産のエクストラバージンオリーブオイルを生地に配合(ピザクラストの原料植物油脂中18%使用)した、ふんわりもっちりとした食感をウリとするブランドです。
伊藤ハムの「ラ・ピッツァ マルゲリータ」。1枚あたり514kcal、脂質12.4g、炭水化物78.8g(バジルオイル分は含まれません)。筆者が購入した際は1枚278円(税込)でした
オリジナルのトマトソースに、モッツァレラ、ゴーダ、チェダーの3種類のナチュラルチーズとダイストマトをトッピングした同商品。本格的な味を目指すなら、モッツァレラチーズだけでいいような気もしますが、味はどうでしょうか。
同社「ピザガーデン マルゲリータ」とは違い、バジルオイルが付いています
もっちりさせたクラストだからか、「ピザガーデン マルゲリータ」より少しだけサイズが大きくなっています
クラストは惜しい印象で、もっとモイスチャーなタッチが欲しいところ。ところどころ硬い部分があり、ふっくらもちもちを伝えたいことはわかるのですが、あと一歩二歩。トマトのジューシー感はすばらしく、チーズの伸びやコクもなかなか。バジルとの相性もよく、日本ハム「石窯工房 マルゲリータ」といい勝負をする商品だと思います。
クラストの弾力が改良されればもっとおいしくなると思いました
実は、伊藤ハムには「至福のピッツァ」というプレミアムなブランドがあるので試したかったのですが、近所では売っておらず断念。ただ今回の5商品を食べ比べたことで特徴などがよくわかりました。各おすすめのNo.1をあげたので、参考にしてみてください。
・個人的なおすすめNo.1:デルソーレ「マルゲリータピッツァ」
・お子様におすすめNo.1:日本ハム「石窯工房 マルゲリータ」
・ダイエット中におすすめNo.1:伊藤ハム「ピザガーデン マルゲリータ」
・クラストの香ばしさNo.1:日本ハム「奏 マルゲリータ スペシャリテ」
・今後の期待度No.1:伊藤ハム「ラ・ピッツァ マルゲリータ」
個人的な好みは、この「デルソーレ」。「奏 マルゲリータ スペシャリテ」も捨てがたいです
今回は身近に入手できて高コスパというくくりでチルドピザをプッシュしましたが、「マツコの知らない世界」で紹介されたようなお取り寄せのプレミアムタイプもいつか試したいと思います。
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。