今回ご紹介するのは新作のガンプラではなく、逆に思いっきり時代をさかのぼった商品です。かつてガンプラ少年だった方なら、思わず「あーあったあった」と叫んでしまうはず。
ご覧ください。懐かしさがこみ上げてきませんか!?
また懐かしいものを引っ張り出してきて! と思われる皆様、いえいえ、こちら新品でございます。1980年代に発売されていた、ガンプラの初代シリーズともいうべき商品です。今回は「旧キット」と呼称させていただきますね。この初代シリーズの旧キットを含め、ガンプラは定期的に再生産、再販売されていて、今回の商品も2016年に再販された新品。もちろん中身は当時そのままに、そしてお値段もそのままに、この2019年に40年近く前のガンプラを組み立てることができるのです。というわけで今回は小学生時代に作っていたガンプラの思い出とともに、また最新ガンプラとの比較も交えながら、ガンプラ旧キットの魅力を紹介いたします。
1980年に発売されたガンプラ。アニメ「機動戦士ガンダム」のヒットを受けて、ガンプラも飛ぶように売れていました。当時小学生だった自分もガンプラが欲しくて友達と模型店を回ったのですが、売っておらず悔しい思いもしました。お店によっては抽選販売だったり、人気のガンダムは1個しかなくって後は欲しくないのばっかりだったり……と、当時の思い出はつきません。
実はあれから40年近くたった今も、旧キットは東京お台場の「ガンダムベース東京」などの店舗をはじめ、大型の家電量販店や価格.comで紹介している通販サイトで購入できるのです。種類によっては売り切れているものもありますが、定期的に再生産をしているので、マメにチェックをしていると入手できることがありますよ。
今回は、お店にあっても一瞬買うのをちゅうちょしてしまうような6機体を購入してみました。皆様は当時作った記憶がありますでしょうか? 説明書、組み立て方は当時そのものなので、記憶をさかのぼりながら見ていってください。
接着剤に溶剤系アクリル樹脂塗料「Mr.カラー」、筆にうすめ液にマスキングテープと、当時を振り返って組み立てていきます
かつて旧キットを組み立てるには接着剤が必須でした。パーツも今みたいにきっちり合わずに、なかなかくっつかないこともありましたよね。また塗装は「溶剤系アクリル樹脂塗料」を使って筆で塗装するのがメインでした。今回はそんな懐かしの組み立て方法にもチャレンジしていきます。
スケールは1/550。大型モビルアーマーのブラウ・ブロです
また最初からマニアックな機体を出してしまいました。知る人ぞ知るとまでは言わないですが、テレビ版の「機動戦士ガンダム」に登場するモビルアーマーです(劇場版には未登場)。しかもパイロットはおっさんのシャリア・ブルという、ガンダムシリーズにはめったにいない若年層ではないニュータイプ。機体は大型で、有線制御式のメガ粒子砲を装備し、ジオングのようにオールレンジ攻撃ができる機体でした。そしてなんといってもガンプラで発売されたブラウ・ブロはこの旧キットしかないのです。
ランナーは3枚。2色が使われており、有線制御式を再現するためリード線も付属しています
リード線を使って有線制御式のメガ粒子砲を再現します。引っ張ると伸びる感じですね
内部構造もなく、パーツをただ貼り合わせるだけの組み立て方なので、なかなかうまく接着しません。当時はセロハンテープを使って固定しながら接着していたのを思い出し試してみました
ブラウ・ブロ完成! 無塗装で作ってみました。本体真ん中のパープル部分はオレンジで彩色するようです。左右のメガ粒子砲はリード線を引っ張り出して有線制御式を再現できます
右端にちっちゃく見えるのは1/550のガンダム。ブラウ・ブロはかなりの大型
旧キットは接着剤による組み立てなのと、パーツ数も少ないので簡単に組み上がるかと思いきや、このブラウ・ブロはだいぶ苦戦しました。内部構造がないので、立体的なパーツもすべて貼り合わせるだけで、今のガンプラのようにきっちりとはめ込む凹凸もなく、なかなか大変でした。当時のキッズたちは上手に組み立てられたのかな……。モビルアーマーのほとんどは旧キットだけだったり、ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.などでも商品化されていなかったりするので、ぜひ最新のガンプラでも発売してもらいたいですね。
ジオン軍水泳部でも特殊な機体のゾック
ジオン軍水陸両用モビルスーツのゾックです。うわ懐かし! とお思いの方が多いはず。テレビ版の「機動戦士ガンダム」第29話に登場し、その機体の特異性にシャアに酷評を受けますが、だいぶ活躍するんですよね。最後はガンダムにやられちゃいますが、二足歩行できなかったり、水陸両用モビルスーツの中でも大型だったりとかなり特殊な機体でした。旧キットは本当に両面を貼り合わせるだけみたいな簡易な作りですが、意外とディテールはこっていてなかなかおもしろいキットです。HGUC版も発売されていますが、現在は再販されておらず定価での入手が難しく、むしろ旧キットのほうが入手しやすいです。
ランナーは3枚で1色カラー。表面と裏面が同じというモビルスーツです
ツッコミどころはまずパッケージに。誰やねんこのおっさんみたいな
説明書にもツッコミどころが。両面テープは買ってください。というところがいいですよね
手足を作って本体にはめ込むだけの簡単組み立てです。接着剤が固まるまで輪ゴムで固定していませんでした?
腕の固定はこのちっちゃいピン1個だけ。今では考えられないくらいシンプルでもろい感じです
手足をはさんで本体をくっつければ完成。本体がちゃんと接着するまで輪ゴム固定です
完成です。でもちょっとこれだと味気ないので、少しだけ塗装してみることにしました
手の爪は溶剤系アクリル樹脂塗料「Mr.カラー」のイエローを筆塗りで。モノアイ部分の黒いところはガンプラマーカーの黒で簡単に塗ってみました
同スケールの機体と比べるとかなり大型のモビルスーツだということがわかりますね
劇場版「機動戦士ガンダムII 哀・戦士編」でも一瞬だけ登場するゾックですが、これまたあまり立体物の商品には恵まれないモビルスーツです。一年戦争時代のモビルスーツが多数販売されたROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.でも販売されず、HGUC版は今は再販していないということで、今買うならこの旧キットということになりますね。短い脚といいクチバシみたいなボディといい、なかなか不思議な機体です。
一年戦争後期のジオン軍量産型モビルスーツ、ゲルググ。1/144です
ガンプラ旧キットは1/144スケール、1/100スケール、1/60スケールがメインで、ブラウ・ブロのような大型モビルアーマーのみ縮尺が異なっていました。価格が安く人気だったのが1/144シリーズですが、多くは単色のランナーのみになっており、現在のような塗り分けがされているキットはありませんでした。この量産型ゲルググもグレー1色のキットです。ただ塗装部分は胸部、胴体部だけなので、グリーンを使って塗装してみました。
グレー1色のランナー2枚のみのシンプルなキットです
塗装するのは胴体と胸部だけなので、まずはこれらを切り分けて
昔ながらに溶剤系アクリル樹脂塗料「Mr.カラー」のグリーンを筆塗りで塗装しました。地色がグレーなので色も乗りやすく、一度塗り、乾かして二度塗りをしてみました
完成です。思いのほかグリーンが濃いめに塗装できました
腕と脚を作って胸部、胴体にはさんで接着という簡単な構造です。肩部分が固定されてしまうので、腕が上がらず、可動はほぼゼロ。今のガンプラで言う、内部構造やポリキャップのない時代のガンプラですが、当時の大人たちはこれを可動できるように改造している人もいたんですよね。自分もこのキットは初製作でしたが、旧キットならではのシンプルさの解釈と、不格好さをあまり気にしていない潔さが気に入りましたよ。
ガンプラブームにあやかって、当時は偽物というか、ガンプラっぽいロボットのプラモデルも多く発売されていましたよね。お父さんとかに買ってきてって頼むと、これ買ってきちゃったみたいな。そんな中、ちゃんとしたガンプラなのに、これ本当にガンダム? と思わせるようなキットも発売されていました。今回はそんなキットもご用意しました。それがこちらジュアッグです。
通称アッグシリーズの1つ、ジュアッグ。え? こんなのいたっけという違和感がありますよね
ガンプラ人気が続く中、一年戦争時のモビルスーツはほぼ発売し終わり、新作テレビシリーズなどがないため、新製品が枯渇していた時期がありました。そんな中発売されたのが、このアッグシリーズです。アッグ、アッグガイ、ジュアッグの3機体は、テレビ版の「機動戦士ガンダム」には登場しない、設定上だけに存在した特殊モビルスーツ。後にMSV(モビルスーツバリエーション)シリーズとして認知されますが、発売当時はこれが店頭に並んでいても「え、こんなのガンダムに出てないよ」と言われてしまう感じでした。ちょっと不遇なガンプラでしたね。
今回はジュアッグをチョイス。ブラウン1色のランナー3枚です
手足は中が空洞のいわゆるモナカ形式。可動は最小範囲ですがよく考えられています
完成してもなんかパチモンっぽい雰囲気になってしまうのが残念かつおもしろいところ。特徴的な指部分のロケットランチャーは1本ずつは可動せず。腕の可動でポージングができます
ゾックと並ぶとなんていうかジオン軍のデザイナーってちょっとおかしい……って思っちゃいますよね
そんなジュアッグですが、発売から30年以上たって日の目を見ます。「機動戦士ガンダムUC」に動くジュアッグが登場し活躍するのです。いやーよかった。さらにユニコーン版のHGUCジュアッグも発売され、そちらは最新技術で可動しまくりのジュアッグを楽しめます。
さてここからは地球連邦軍のモビルスーツのターンです。ご存じガンタンクの登場。いやー、子供はなかなか手を出さないモビルスーツですよね。ガンダムが売ってない→ガンキャノンが売ってない→仕方なくガンタンク買うか。みたいな葛藤があった人もいるのでは? テレビ版ではタンクなのに宇宙まで出撃させられ、最終決戦のア・バオア・クーまで酷使されましたが、劇場版「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編」では登場せず、ですよね。宇宙でタンクが飛んできたら、ジオン軍も二度見しますよね。とはいえやはりホワイトベースの主力モビルスーツ。ガンプラでは旧キットをはじめ、HGUC版、MG版と発売されております。この旧キットのガンタンクもキャタピラは専用のラバーパーツ付きでなかなかの完成度が楽しめます。
地上戦では活躍するガンタンクです。アムロも1回乗りましたしね
ランナーは2枚ですが、ブルー1色。キャタピラはラバーパーツです
ここからは、最新のガンダムマーカーエアブラシシステムを使って部分塗装します
砲台や腕部分はガンダムメカグレーで、胴体部分はメタリックレッド、頭部はガンダムホワイトで塗装しました
ガンタンク完成です。キャタピラの存在感が目立ちますね
胴体はメタリックレッドでも違和感なしです
砲台は可動。腕も上下、左右に可動します
旧キットあるあるではないですが、やはり古いキットだと上手にパーツがハマらないことが多いですよね。現在のガンプラのようにしっかりとしたジョイントがないので、パーツを接着剤で貼り合わせるのがメインになります。特に1/144シリーズはその組み立て方が多いので、腕部分がすぐ抜けちゃったり、胴体部分がうまく接着できなかったりすることも多かったです。一部を瞬間接着剤などで固定するなど、当時もこんな組み方していたなーと思い出しながら組み立てました。ガンタンクは、胴体部分はそのまま接着するだけなのですが、かなり小さい部分での接着なのでなかなか上手にいかなくて大変でした。
最後は1/100スケールからガンキャノンです。当時もそうですが、1/100スケールでも価格は700 円でした。1/144スケールが300円〜の時代でしたから、倍以上はするのですが、現代で考えると安いほうですよね。またパッケージサイズも1/144スケールとほぼ同じでパーツ数もそんなに多くないのに、1/144スケールに比べて可動やギミックが盛り込まれたキットになっています。ガンキャノンも腕に可動用のパーツが使われていたり、コア・ブロックからコアファイターへの変形ギミックがあったりなど、当時としては頑張っていたキットでしたよね。
ガンダムより目立つ赤い機体のガンキャノン。1/100シリーズです
ランナー数が増えて4枚に。カラーも3色の色分けがされています
胴体、脚部分はモナカ形式。腕は後から差し込む形になっていました
未塗装のガンキャノンです。頭が真っ白なので、一部塗装が必要になりますね。腕や脚は1/144シリーズと比べるとかなり可動するようになっています
胴体部に入ったコア・ブロックは、コアファイターへと変形可能
キャノン砲は、スプレーミサイルランチャーと交換可能です
ガンタンクとともに。旧キットの不格好さもまた魅力のひとつ
さてそんなガンキャノンから十数年後、1999年に1/144スケールのHGUCとしてガンキャノンがガンプラ化されましたが、さらにその後2015年に、リバイブ版として新しく発売されました。最新技術を使い、新たな解釈とともにガンキャノンがガンプラで新生したのです。そのリバイブ版は筆者も未購入だったので購入し、旧キットと比べてみました。さすがに時代を感じざるを得ないのですが、個人的にはリバイブ版はスタイリッシュすぎるかなと思いましたよ。
新生されたHGUCのガンキャノンです
三十数年たつとパッケージもこんなに違いますね
ランナーの色分けは細かいです。ポリキャップを使っての可動キットになっています
もちろん接着剤を使わずに簡単に組み上がります。新生ガンキャノンです
可動も優秀。広範囲の可動でさまざまなポージングがとれます
旧キットと並べて。スケールは違いますが、密度もかなり違いますよね
でも顔は個人的には旧キットのほうが好きです
新生ガンキャノンはイケメンすぎてつらいというか、格好よすぎです
いかがでしたか? ガンプラブームを作った旧キットですが、今見ても、そして作っても、画期的なプラモデルだと感じました。小学生時代に接着剤をベタベタ塗りすぎてあとでヤスリで削ったり、飾っておいて倒れたらバラバラになっていたり……みたいな思い出がよみがえってきました。特に接着剤と溶剤系アクリル樹脂塗料、筆を洗ううすめ液の匂い。これはなんというか昔の記憶を呼び起こす強烈な匂いでした。
今でこそガンプラは家電量販店や通販サイトなどで気軽に購入できますが、ガンプラブーム時代だった1980年、1981年では模型店以外購入できる場所もなく、小学生にはなかなか購入できない代物でした。だからこそ買えたときの喜びと、完成したときのうれしさはひとしおでしたよね。当時、同じ思いでガンプラを作っていた同世代の皆様にはもちろん、旧キットに触ったことのない世代にも勧めたいです。ガンプラの歴史を感じながら楽しんでほしいですね。
当時の説明書の不親切さも懐かしく
今回のキットで個人的に楽しかったのはゾックでした。この薄いグリーンの成形色がなんともいえません。未塗装のまま飾っておきたいです
今回組み立てた6機体以外にも、購入できる旧キットはまだまだあります。ここでご紹介できなかったけれど、今も買えるモビルスーツの商品リンク一覧を置いて締めたいと思います。あのころ買えなかったものがあったらぜひ手にとってみてください。
お詫びと訂正:記事中で使用している塗料「溶剤系アクリル樹脂塗料」を「水性ホビーカラー」と誤記していたため、訂正いたしました。お詫び申し上げます。(2019年4月25日)