特集
独特のラインアップにマニアがうなる

超絶リアルな”改造車ミニカー”が大人気! 「イグニッションモデル」の世界

カーマニアによる、カーマニアのための、きわめて精巧なミニチュアカー。
それが、ティーケー.カンパニー(TK.COMPANY)から発売される「ignition model(イグニッションモデル)」です。

カスタムの文化を積極的に再現

製品を見れば、誰もがクオリティの高さに感心させられますが、これまではあまりミニチュアカーで表現されることがなかった、クルマのジャンルや車種、年代ごとに異なる“カスタムの文化”をも忠実に再現しているところが「ignition model」の大きな特徴で、多くのカーマニアたちから強く支持される大きな理由のひとつになっています。

昭和の「ハイソカーブーム」を再現した「日産セドリック」。細かいスポークのホイールや、ケンウッド製オーディオスピーカーなど、当時を知る人にはたまらないポイントだらけ

ひと言でクルマ好きといっても、実はその嗜好性は多種多様に分かれるもの。たとえば70年代のアメリカ車が好きな人と、90年代の日本車が好きな人とではクルマの趣味や嗜好が大きく異なり、カスタムの手法については、もはや完全に異文化であるといっても過言ではありません。車高の落とし加減やエアロパーツ類の傾向、流行りのタイヤやホイールのブランドなど、年代やジャンルによってまったく変わるものなのですが、「ignition model」は、その道のマニアの琴線に触れる微妙なポイントまで徹底追及。そんなところに、多くのクルマ好きは感動するのです。

たとえば「ワタナベ」ブランドのホイールなど、往年の鉄板人気パーツは単体でもマニアが所望するといいます

たとえば「ワタナベ」ブランドのホイールなど、往年の鉄板人気パーツは単体でもマニアが所望するといいます

浜松に社長を訪ねて

クルマが好きな人なら、製品をひと目見れば「ただならぬ作り手の情熱と愛の深さ」を感じることでしょう。静岡県の浜松市に拠点を置く株式会社ティーケー.カンパニーへ足を運び、社長の高林徹さんに話を聞くと、すべてに合点がいきました。

株式会社ティーケー.カンパニー社長、高林徹さん(左)は生粋のエンスージアスト。クルマへの愛と情熱が「ignition model」という精密で文化的なミニチュアカーを生み出しました

まず、オフィスの中のガレージに飾られた4台の希少な70〜80年代の欧州車(いずれも超極上個体)を見て、社長の高林徹さんが生粋のカーマニアであることを瞬時に理解。クルマへのただならぬ愛と情熱が嵩じて、文化的な側面まで忠実に再現した精巧なミニチュアカー作りの道を進んでおられたのです。

「ポルシェ 930ターボ」や「ロータス エラン」、「アルピーヌ110」、「アルファロメオ ジュリア」が並ぶガレージ。いずれも新車のようなコンディションで、高林社長のエンスージアストっぷりが伝わってきます。しかもこれらは「販売中」とのことで、興味のある方は同社にお問い合わせを!

タミヤとコナミに勤務した後に独立

聞けば、高林さんは幼少期からトミカのミニカーが大好きで、クルマのプラモデル作りにも熱中。
「将来は絶対にタミヤで働きたいと思って過ごしていました」と、プラモデルやラジコンカーの大手メーカーであるタミヤ模型に憧れ、大学卒業後は念願がかなってタミヤ模型に入社。同社の営業部でラジコンカー関連製品の営業と企画業務に従事されます。

その後はコナミ株式会社にて「デジQ」(赤外線操作が可能なチョロQ)関連製品のマーケティング業務を行うなど、愛するクルマとクルマの人気玩具作りに深く携わりますが、やりがいを感じるいっぽう、子供向けの玩具は“消耗品”であることに寂しさを覚えたといいます。

「どれだけ気に入った玩具でも、玩具ゆえに年齢が上がるとやがては捨てられてしまうことが多いものですよね。そこで、大人向けの成熟した趣味であるハイエンド志向のミニチュアカー作りを目指すようになったのです」と高林さんは語りました。

確かに、高精度で精密なミニチュアカーは、多少値段が高くても納得のいく出来ならマニアは食指を伸ばします。「大人向けのミニチュアカーは、値段よりもクオリティが最重視される世界ということで、作り手としてのやりがいも次元の高いものが得られるようになった」と言います。

ご自身の好きなジャンルは70〜80年代の欧州スポーツカー。しかし、自分の趣味を追求すると、あまりいい商品にならないこともあるとか。「客観的な商品企画が求められる」とのこと

しかし、ミニチュアカー作りを始めた頃は、いかに出来がよくても、すでに似たような商品が存在するものはあまり売れないという問題が立ちはだかりました。最初は、幅広い世代から人気のある日本の旧車趣味の王道モデル、3代目の「日産スカイライン」(いわゆるハコスカ)を発売。ハコスカの上級マニアから出来のよさを高く評価されるも、売れ行きはイマイチ。ミニチュアカーのマニアはコレクターである場合が多いので、ハコスカのような王道モデルはすでに持っている場合が多く、よほど強いインパクトがない限り、なかなか購入には至らなかったのでした。

カスタムカーをすべて受注生産でミニカー化

そこで高林さんは「カスタムを施す」ことを思いつきます。車高を下げたりする作業をみずから行い、ハコスカで主流のカスタムカーを再現してみると、一変してマニアが食いつくようになり、たちまち大人気に。本物志向のハイエンドなミニチュアカー作りでは、自動車メーカーからライセンス許可を取るので、おのずとノーマルの状態で生み出されることになり、改造車の類いが再現されることはなかったのです。

そのため「実車と同じカスタムをリアルに再現したミニチュアカー」というのは、ありそうでなかったのでした。欧米の自動車メーカーは、今でも社外パーツを取り付けたカスタムカーのミニチュアカーはNGとするところが多いようですが、日本の車メーカーは比較的カスタムカーへの理解があるようです。「ignition model」はカスタムカーのミニチュアという潜在的な需要に火をつけたのですね。

そこからさまざまなクルマのカスタムカーを手がけ、一躍「ignition model」の名がミニチュアカーマニアの間に知れ渡るようになります。最初のハコスカの発売以来、5年で通算1000種類以上の製品が生み出されました。

「製品はすべて受注生産で、熟練した職人が1台ずつ手作業で製作。商品企画から製品ができるまで、およそ半年ほどの期間を費やして開発しています。お客様にお待たせすることもありますが、大量生産では実現できない細部へのこだわりを何よりも重視していますので、今後もこの方針を変えることはないでしょう」

塗装前の状態は、さながら自動車メーカーで実車の開発段階に作られるクレイモデル(粘土で作られた外装試作)のよう。国産旧車のカスタムカーのミニチュアカーのパイオニア的存在に

フェンダーの張り具合や車高の落ち具合、フェンダーとタイヤのクリアランスなど、そのクルマならではのカスタム手法や流行りを研究し、再現されています

土屋圭市さんと愛車の「AE86」など、最近は人気ドライバーやチューナーのフィギュアセットを続々とリリース。フィギュアのデータもご本人から直接3Dスキャナーで測定したものから作られています(注:土屋さんのフィギュアは完売)

実車をただ縮小すればいいわけではない!

ミニチュアカー作りで難しいのは、まずモデリング。3Dスキャナーで実車を採寸して、細部まで精密に再現するのですが、ただ小さくコピーをすればいいというわけではありません。

たとえば1/12スケールのモデルの場合、精密に再現するべく実車の寸法をそのまま1/12にすると、本物のように格好よく見えないという、すべてのミニチュアカーに共通する難点があります。実車と異なりミニチュアカーは“上からの目線”で見られることが多いため、実際のサイズをそのまま小さくすると、人はクルマ全体を平べったく感じてしまうのです。実車も、マンションやビルの窓からなど、高い目線から見ると、普段は見惚れるような格好いいデザインがあまり格好よく見えないものですが、それと同じ感覚とのこと。

したがって、ミニチュアとして見て格好よく映るよう、各部を微妙にデフォルメする必要があります。もちろん、やりすぎると実車のフォルムから離れたものになってしまうし、マニアは実車を見るときのような低い目線からもジックリ細部を鑑賞するので、どこから細部を徹底的にチェックされても違和感のないようにする必要もあるなど、ひと筋縄ではいかない難しさがあるのです。

コツとしては「人が乗るサイズ感」を再現するということ。実車よりも少しだけピラー部分(柱)を寝かすなどして、とことん時間をかけて調整。そこにセンスが求められるのだとか。

「細部を入念に鑑賞されるカーマニアと、正確さを求める自動車メーカーの両方から認められるのは大変なことですが、その分やりがいがあります」とのこと。

いわゆる「ゼロクラウン」と呼ばれる12代目の「トヨタ・クラウン」。BBSホイールにダウンサスという、実際にも街でよく見かけたリアルさが絶妙なあんばいです

土屋圭市さんや松田次生選手など、フィギュアを製作する際の3Dスキャナーデータ取りを筆者も体験。5分ほど静止しながら、あらゆる方向から全身のデータをスキャニング。顔の表情のリアルさは塗装の技術が重要とのこと(注:筆者のフィギュアが発売される予定はありません)

オーナーさんにも積極的に取材する

「ignition model」では、カスタムカーも実際にカスタムが施されたクルマから3Dデータを取って再現。車高の落ち加減から、タイヤのキャンバー角、フェンダーとタイヤのツライチ(面一)具合など、それぞれの実車のマニアが見ても納得できるよう細部にこだわって仕上げます。
カスタムカーが集まるオフ会の現場へ行ったり、希少車のカスタムカーを所有されるオーナーさんに会いに行ったりもするそうですが、オーナーさんとの対話から、その道のジャンルのカスタム文化について詳しく教えてもらうなど「取材」も大変重要とのこと。

「各ジャンルのマニアの趣味やセンスを学ぶことが大事で、ヤンキー的な文化もクルマのカスタムに通じる。リーゼントでバッチリ決める人たちの感覚も学ぶ必要があります」とは至言です。

筆者も自動車ライター業で似たような経験がありますが、同じクルマでも、個人的に関心の薄いカテゴリーの改造文化の本質を理解するのは意外に難しく、経験を重ねて勉強するしかありません。

90年代ツーリングカーの鉄板人気モデル「カルソニックGT-R」はさまざまなサイズをリリース。大きめのサイズでは室内もレースマシンらしさを徹底追求

とりわけマニアが細部にこだわるレースカーでも、タイヤのキャンバー角(ハの字)の角度が絶妙。競技車らしい室内のスパルタンな雰囲気もリアルに再現

国産旧車の王道、「フェアレディZ」は、タカラトミーとのコラボによるドラマ「西部警察」の劇中車の仕様も人気

スケールが大きめのミニチュアカーでは、ミッションを操作するシフトノブに「水中花」を仕込むという、かつて流行った独自の内装カスタムなど、外装のみならず内装のカスタムの再現にもこだわる姿勢にも感動しました。

自動車文化の側面を担う期待も

前述したように、クルマのカスタムの世界は非常に幅が広く、奥が深いものなので、すべてを正しく詳細に理解するのは大変なことです。しかし、こうしてあらゆるジャンルのクルマのカスタム文化がミニチュアカーとして再現されることは、自動車文化の継承や保存の面でも大変有意義です。

雑誌やWeb記事ではなく、立体的な形としてクルマのカスタム文化が再現され、保存される点においても「ignition model」はすばらしいミニチュアカーだと言えます。

基本的には大人向けの製品ながら、若い人が「ignition model」で自動車のカスタム文化の歴史や伝統を学んだり、かつての流行を取り入れて新たなカスタムを創造したりする源泉にもなることも期待できるはず。「ignition model」のようなミニチュアカーはきわめて文化的なホビーと言えるので、クルマ好きのひとりとして応援していきたいと思いました。

基本的には実車からデータを取りますが、新旧さまざまなクルマ雑誌やカタログなども重要な参考資料となっています

マリオ高野

マリオ高野

1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。2台の愛車はいずれもスバル・インプレッサのMT車。

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