禁煙への第1歩として、紙巻きタバコから加熱式タバコに切り替えると、タバコ葉を燃焼しない分、タール摂取量は減少する。しかし忘れてはならないのが、ニコチンはしっかり摂取しているということだ。そこで、禁煙方向にもう1歩踏み込むためのツールとして2019年3月に登場したのが、タバコ葉の代わりに紅茶の葉を使ってニコチンゼロを実現した「NICOLESS(ニコレス)」である。
株式会社VUENによる、「アイコス」互換のノンニコスティック「NICOLESS(ニコレス)」。フレーバーは写真左からメンソール、ミント、9月4日に追加となったレモンメンソール。20本入り418円(税込)
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メーカーによると、「ニコレス」の売上げはすでに400万個を突破(2020年8月31日時点)したという。発売から1年半経ってもまだ人気ということは、それだけロングヒット商品だということだろう。最近ではコンビニエンスストアや、ドラッグストアなどでも取り扱い店舗が多くなり、見かけることも多くなった。
「アイコス」などの加熱式タバコに使用されるスティックは、蒸気発生のためのグリセリン類を染み込ませたタバコ葉を加熱、ニコチンを含んだ蒸気を発生させるという仕組みだ。そのタバコ葉の部分を、ニコチンを含まない紅茶葉に変更することで、ニコチンレスの蒸気を作り出すのが「ニコレス」だ。タールは加熱することで多少は出るので、「アイコス」などと同様に、紙巻きタバコに比べて9割方減と考えるのが適切だろう。
「ニコレス」が加熱するのは紅茶葉とはいえ葉であり、蒸気発生成分はほぼ共通しているので、専用スティックに近い味が出しやすいという発想から生まれた製品だ。リキッドの風味だけでタバコ感を出すしかないノンニコチンのベイプ(VAPE)では不可能なレベルの味わいを再現することができ、目下ノンニコチンスティックは静かなるブームを呼んでいる。
「ニコレス」は、加熱式タバコブレード(もしくは芯)を挿入するタイプの機種、「アイコス」およびその互換機で使用可能だ。「パルズ」でも利用できる
タバコ葉を使用していないのでニコチンゼロ。これを吸っている間は事実上「禁煙」しているということになる
ちなみに、「ニコレス」に使用されている紅茶葉は中国・福建省産の「正山小種(ラプサン・スーチョン)」という品種だ。福建省は紅茶の産地として有名であり、なかでも「正山小種」はフル―ティーな香りと甘さが感じられ、「一度飲むと癖になる味」としてその香りに魅せられる紅茶愛飲家も多いのだとか。
「ニコレス」の価格は、418円(税込)。紅茶葉を使用しているため、たばこ税がかからず、「マールボロ」(2020年10月値上げ後550円)や「ヒーツ」(同500円)より安価に設定できている。増税の影響での値上げも考えにくい。
ただ、通常たばこ税は定価の半分以上を占めるはずである。したがって半額とは言わないまでも、もう少し安くなってもいいのでは、と思わないでもない。
ちなみに、「マールボロ・ヒートスティック」から「ニコレス」に完全に切り替えた場合の1か月のコストを比較してみると、以下の通り。価格はすべて税込(以下同)。
「マールボロ・ヒートスティック」550円×30日=16,200円/月
「ニコレス」418円×30日=12,540円/月
その差は3,660円となり、節約度は24%である。
「ニコレス」は418円(税込)なので、値上げ後の「マールボロ・ヒートスティック」より132円安く、「ヒーツ」(税込500円)より82円安い
吸う前に、カッターでスティックを切り裂いて内部構造をあらためてみたのが、以下の写真だ。
スティックのサイズはまったく同じ
左側が「ニコレス」、右側が「マールボロ・ヒートスティック」
「ニコレス」:(上から)フィルター、蒸気冷却用シリコン、紅茶葉
「マールボロ・ヒートスティック」:(上から)フィルター、蒸気冷却用フィルム、フィルター、たばこ葉
「マールボロ・ヒートスティック」がフィルターを2層に分けているところを1層にしている点と、冷却素材が違う以外は同様の構造だ。紅茶葉はヒートスティックのような薄い板状にしっかり成形されていた。なかなかの再現度合いだと思う。
箱からスティックを取り出した段階では、ほぼメンソールの香りしかしない。加熱し始めると次第に店頭でほうじ茶焙煎を行なっている日本茶専門店の香りがし始めた。葉としては紅茶に用いられる葉ということだが、ほうじ茶感が強めだ。
正直、おっかなびっくりで吸ってみた。すると爽快なミントの香りにほうじ茶/紅茶のような香ばしさが加わり、しっかりのどへのキックもある。第1印象は「思ったよりおいしい」である。しかも吐いた時の蒸気が、茶葉由来のいがらっぽさのせいか、ヒートスティックよりも紙巻きタバコに近く感じる瞬間もあった。喫煙感としてはかなりのクオリティだ。
ただ、喫煙可能時間6分の中盤を過ぎたあたりからメンソールが抜け始め、代わりに紅茶葉の香りに酸味と苦味が混じってくる。これに少し違和感がある。残り1分あたりではいくぶん甘酸っぱさも感じるようになり、タバコのニオイとは違い違和感のあるニオイに。当たり前だが、ヒートスティックでニコチン補給した時のじんわり感はない。
近年のノンニコスティックブームの火付け役
スティックは少しやわらかめ。勢いよく押し込むとぐにゃりとなることもあるので、ていねいに差し込もう
見た目的には「アイコス」を吸っているのと変わらない
加熱式タバコ専用スティックは、「メンソール」のほうが清涼感強めで、「ミント」と名付けられたほうはマイルドなのが基本だが、「ニコレス」ではいくぶん逆転気味だ。メンソール登場の半年後に登場した「ニコレス ミント」のスペアミント感のある清涼感は、むしろ「ニコレス メンソール」よりも強めに感じる。
さながら「ニコレス メンソール」改良版という印象で、スティックも強度が高まって挿しやすくなっている。そして何より、紅茶葉の香りが強めのミントでカバーされ、味わいが「アイコス」専用スティックに近づいた。
後半の酸味アップはあるのだが、ほうじ茶や紅茶のような苦味や違和感はしっかり抑えられている。当たり前だが、ユーザーは「アイコス」互換の味を求めており、紅茶葉を味わいたいわけではないということに気が付いたかのかもしれない。これはおいしい。
「ニコレス」初心者におすすめなのはこっち
そして、2020年9月4日に追加されたのが、「ニコレス レモンメンソール」である。箱を開けて、なるほどと思う。紅茶葉にレモン風味とミントが加わっており、ほぼ爽やかなレモンティーの香りになっていたからである。実際に吸ってみると、メンソールが雑味を消して、レモンが紅茶葉とともにレモンティー風味を描き出す。後味は清涼感がスッと残る。
これはおいしい。ベイプや低温加熱式タバコのレモンティーリキッドとは一線を画すのは、本物の紅茶葉を使っているからだろう。後半の酸味アップもレモン感と合わさるので不自然感が劇的に軽減されている。これが「ニコレス」のひとつの完成形と言ってもよいのではないか。
やはり紅茶派とレモンは相性がよい
「ニコレス」は、ニコチンの入った「アイコス」専用スティックを吸った時のような、のどへのキック感があるのがすごいと思う。通常はメンソールでいくぶん再現できるが、ニコチンに匹敵するキック感を生じさせるのは難しいからだ。これは紅茶葉の活用と企業努力の賜物だと思う。
吸った時だけでなく、吐く時も紙巻きタバコの煙を吐いているような「いがらっぽさ」がしっかりとある。ただ、ニコチン補給はできないので、その点での満足感がないのには注意が必要だ。
それでも「ニコレス」は減煙とその先にある禁煙に向けて、大いに役立ってくれると思う。紙巻きタバコと違い、ニコチン感を感じるのが遅めな加熱式タバコなので、そのタイムラグを活用して、1本ニコチン入りスティックを吸い、その勢いで2本くらい吸えばいいからだ。
うまく混ぜ込むことで、ニコチン入りスティックの消費量を減らすことは可能だと思う。紅茶葉とはいえ葉を使っているおかげで、喫煙フィールはかなり肉迫しているし、「ミント」「レモンメンソール」に関しては味の面でも格段に進化しているからだ。2本に1本程度の半減なら、そんなに無理はないと思う。
ヒートスティックの合間に挟むなら、けっこうごまかしが効く
ということで、定番人気の「マールボロ・ヒートスティック」の半分を「ニコレス」に切り替えた場合の1か月のコスト試算をしておこう。
「マールボロ・ヒートスティック」550円×30日=16,200円/月
↓
「マールボロ・ヒートスティック」550円×15日=8,250円
+「ニコレス」418円×15日=6,270円
→8,250円+6,270円=14,520円/月
その差は1,680円で、節約度は10%程度になってしまうが、ニコチン摂取率は半減するので、健康のためだと考えると、十分なメリットはあると言えそうだ。
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※本記事は喫煙を推奨するものではありません。ご利用にあたっては、健康リスクなどをご考慮のうえ、注意・マナーを守ってご使用ください。
元「月刊歌謡曲(ゲッカヨ)」編集長。今はめおと編集ユニット「ゲッカヨ編集室」として活動。家電や雑貨など使って楽しい商品のレビューに命がけ!