レビュー
便利機能がこっそり追加されてるうえに超軽量!

完全再現…! Fenderの名機“デラリバ”と新型「Tone Master Deluxe Reverb」を徹底比較

2019年にFenderから新登場したデジタルギターアンプ「Fender Tone Master Deluxe Reverb」は、デジタルプロセッシングで既存の定番ギターアンプらしいトーンを再現するという、技術的には普通に現代っぽいアンプです。

しかし実は、一般的な「デジタル技術で既存の定番ギターアンプらしいサウンドを再現するアンプ」の多くとはコンセプトが全く異なります。一般的なその手のアンプって、「デジタル技術によってさまざまな定番アンプの音をこれ1台で再現」という多彩さ・多芸さが売りですよね?

対してこのFender Tone Master Deluxe Reverbは名前の通り、1963年からある同社の名機「Deluxe Reverb」(デラックス・リバーブ=通称デラリバ)という1種類のアンプ音の再現だけに特化した一点突破型。デラリバの音しか出せませんし、見た目もデラリバそのまんまです。

でも……だからこそ使いやすいし便利! なのです。しかもお値段も復刻型Deluxe Reverbよりお安い! そこで今回は、この新しいTone Master Deluxe Reverbと、元祖Deluxe Reverb(復刻型)をがっつり比べて、どれだけデラリバ感を再現できているのかチェックしてみました。

デラリバ「だけ」に特化した完全再現デジタルギターアンプ

ギターアンプの世界ではもう四半世紀ほど前くらいから、「定番真空管ギターアンプの音を、真空管を使わずにデジタル技術で再現しよう」という試みが行われ続けてきました。それが求められてきた理由は「真空管アンプはデカくて重いし、ビンテージアンプは希少で高価だし」みたいなところが大きいかと思います。

それにデジタル技術での再現なら、ひとつのデジタルアンプでさまざまな定番ギターアンプの音を出すことも難しくありません。デカくて重いギターアンプを何台も用意しなくても、いくつものアンプの音を曲ごとやパートごとに使い分けることができるのです!

デジタルシミュレーションやデジタルモデリングと呼ばれる技術によるギターアンプは、それらのニーズに応えて進化を続けてきたわけですが、2011年登場の「Fractal Audio Axe-Fx II」と「Kemper Profiler」がその歴史に大きなひと区切りを打ちました。それっぽい言葉を使って言うならば「元ネタアンプの音の再現度合いがシンギュラーポイントを超えた」のです。いまや、ステージどころかレコーディングもそれらのアンプでこなすプロギタリストもめずらしくありません。

……というのがデジタルギターアンプの世界の現状なのですが、そこに登場した新発想がこのFender Tone Master Deluxe Reverb!

最新超多機能デジタルギターアンプとは全く異なるたたずまい……というかデラリバそのものなルックス

最新超多機能デジタルギターアンプとは全く異なるたたずまい……というかデラリバそのものなルックス

こちら、デジタルアンプの流れを受けつつも、その流れから飛び出るようなコンセプトで作られているのがポイントです。これまでの流れを受けているのは「デジタル技術で真空管アンプ名機の音を再現」していること。そして流れから飛び出るのは「デラリバというたった1種類のアンプの再現に特化」というところです。

というわけでこのTone Master Deluxe Reverbを、以下3つのポイントから紹介していきます!

【1】標準機であるデラリバを操作感まで完全再現!
【2】デラリバなのに小さめ音量でも使える!
【3】デラリバを圧倒する超軽量!

というか製品名が長いので以降は、「元祖Deluxe Reverb&その復刻リイシューモデル→デラリバ」「Tone Master Deluxe Reverb→新型デジデラ」と呼ぶことにしましょう。

【1】標準機であるデラリバを操作感まで完全再現!

せっかくのデジタルなのに、1種類のアンプの音しか出せないの? 不便だよね? と思った方もいらっしゃることでしょう。たしかにその点では不便なのかもしれません。しかしこの新型デジデラは、その点での不便さと秤にかけても魅力となるであろう、デラリバ再現に一点特化したからこその大きな強みを備えているのです。

それは「音だけじゃなく使い心地も見た目もデラリバのまんま!」ということ!

左が元祖デラリバ、右が新型デジデラですが……右下の「Tone Master」ロゴくらいでしか見分けられません

左が元祖デラリバ、右が新型デジデラですが……右下の「Tone Master」ロゴくらいでしか見分けられません

デラリバ、超定番アンプですよね? ビンテージは手の届きにくい憧れの存在ですが、現行リイシューモデルはスタジオやライブハウスの常設機材として身近なもの。同社「Twin Reverb」と並んでギターアンプ界のデファクトスタンダード、標準機のひとつです。

この新型デジデラは、そのデラリバをほぼ完全に再現しています。音だけではありません。操作ノブの配置なども含めたルックスまでの完全再現です。それぞれのノブをどう動かしたら音がどう変わるというような機能も全く同じです。

元祖デラリバと新型デジデラの操作パネルを比較。パイロットランプ下のパテント表示の有無くらいしか違いがありません

つまりこれまでデラリバに慣れ親しんできた方であれば新型デジデラも迷わず使えますし、逆にこれから新型デジデラを使い始め使いこなせるようになれば、スタジオやライブハウスのデラリバも使いこなせるようになります。ほら! 超便利!

これがたとえば「ダンブルの音を完全再現(その音しか出ません)」だと、もちろんそれはそれでうれしいのですが、デラリバ完全再現のような利便性、汎用性は得られません。ダンブル置いてあるスタジオやライブハウスなんてねーよ! です。標準機としての地位を確立しているデラリバだからこそ、それを完全再現する新型デジデラにこのような強みが生まれるのです。

ちなみに、もういっぽうの標準機であるTwin Reverbにも同じく「Tone Master Twin Reverb」が用意されています! コンセプトや特徴はデジデラと同様なので、ツインの音のほうが好みの方はそちらをチェック!

こちらが「Tone Master Twin Reverb」です。デジツイン! 同じく見た目は元祖Twin Reverbそのもの

こちらが「Tone Master Twin Reverb」です。デジツイン! 同じく見た目は元祖Twin Reverbそのもの

【2】デラリバなのに小さめ音量でも使える!

でもデラリバは音量が大きいしマスターボリュームもないし、それと同じなら新型デジデラも自宅導入は無理だよなあ……。

と思いきやこの新型デジデラ、正面から見たらデラリバそのものなのですが、バックパネルにはいくつかのスイッチや端子等が追加されています。そしてそのひとつが「OUTPUT POWER」切り替えスイッチなのです! アンプの出力=音量をデラリバ本来のマックスである22Wから最小0.2Wまで段階的に下げていくことができます。

デラリバとして最大の22Wを含めて6段階での切り替えが可能

デラリバとして最大の22Wを含めて6段階での切り替えが可能

大きめでクリック感のあるスイッチなので、慣れれば背面に手を伸ばしての手探り操作も難しくなさそう

大きめでクリック感のあるスイッチなので、慣れれば背面に手を伸ばしての手探り操作も難しくなさそう

これを使えば「デラリバをボリューム全開でドライブさせてギター側のボリューム操作でひずみ具合を調整」なんて、日本の一般家屋では音デカすぎで無理でしょ! な使い方もできてしまいます。というかこのパワーセレクター、6段階で滑らかに音量変化するので、切り替えスイッチというよりもマスターボリューム感覚で使えます。

動画でもお伝えしておきましょう。「ボリュームノブ3でOUTPUT POWERを最大から最小へ、そこからボリュームノブ10=全開でOUTPUT POWERを最小から最大へ」という様子を撮影したものです(※音量の幅が大きい動画なので、再生時にはお気を付けください)。

0.2Wならマンションでボリューム10もいけそうな感触! このテストのように出力スイッチだけを下げた状態だと音色も少し寂しくなるので、実際に使う場合には、出力を下げて迫力が減った分はベースやトレブルを少し上げて補強するのがよいでしょう。

なお切り替え時には念のため、同じく背面のミュートスイッチで音を切っておくとスイッチノイズ等に対しても安心です。

バックパネルにはほかに、ライン出力端子も追加されています。「実際にスピーカーを鳴らした音をマイクで拾った状態」をシミュレートしたサウンドのライン出力です。IR方式の本格的なキャビシミュとのことで、こちらはレコーディング等で活躍してくれるはず。

それらの追加機能のスイッチや端子がバックパネルにまとめられていることも大切なポイントですね。表側のルックスとコントロールパネルのノブ配置を「デラリバ完全再現」とすることへのこだわりからでしょう。追加機能はあくまでも追加機能。このアンプで最優先とされているメインテーマはやはり「デラリバであること」なのです。

【3】デラリバを圧倒する超軽量!

さて、たしかにデラリバはあちこちのスタジオやライブハウスに常設されていますが、全てのスタジオやライブハウスに必ず置いてあるわけではありません。デラリバファンの中には「そのときはマイデラリバを持ち込むぜ!」という方もいらっしゃることでしょう。

でもデラリバ重いですよね。真空管アンプの中で特別に重いわけではありませんが、それでも現行の「'65 DELUXE REVERB」で19.05kgというのがカタログ値。猫換算で約4〜6匹分です。腰がァ……。

そこで新型デジデラの出番です! 本機のカタログ重量は10.4kg! デラリバの約半分! 猫換算で約2〜3匹分です。実際に持ち比べてみるとその差は歴然。圧倒的! 新型デジデラの方が圧倒的に軽いです。

筆者がデラリバを持ち上げるには両手でも「ふんぬッ!」的な気合いが必要ですが……、新型デジデラは片手で「すっ」っと無言でいけます

デラリバは重いし真空管搭載ですし、置くときもゆっくり慎重に降ろさないと不安なのですが、その「重いものをゆっくり降ろす」のがまたさらに腰にきます……。

対して新型デジデラの軽さ! 自宅利用&たまに持ち出しというアマチュアギタリストはもちろん、マイアンプの持ち運びが当たり前というプロギタリストの方こそ、これはさらにうれしいのでは? スタジオやライブハウスにおいても、アンプの移動やセッティングでのスタッフさんへの負担をぐっと軽減できそうです。

この超軽量はいくつかの要素によって実現されています。

ひとつめはスピーカーユニットです。現行リイシューデラリバはJensen社の「C12K」という型番のセラミックマグネットスピーカーを採用。対して新型デジデラは同社の「N-12K」というネオジムマグネットスピーカーを採用。ネオジムは磁力が強力なので、セラミックと同等の磁力をより小さく軽い磁石で確保できるのです。

ふたつめはキャビネットの木材。現行リイシューデラリバはバーチ合板を採用。対して新型デジデラは軽量なパイン材の単板です。なのでもちろんキャビネットも軽くなっています。ちなみにビンテージデラリバのキャビネットもパイン材です。ハイエンドリイシュー「'64 CUSTOM DELUXE REVERB」もパイン材を採用しています。なのでこの点は、むしろ新型デジデラのほうが現行のスタンダードモデルよりもそれっぽかったり。

元祖デラリバ。キャビネットの奥行きいっぱいまで埋める大きさのスピーカー

元祖デラリバ。キャビネットの奥行きいっぱいまで埋める大きさのスピーカー

新型デジデラはコンパクトでいて強力なスピーカーを搭載。パイン材の明るい色合いや木目も印象的

新型デジデラはコンパクトでいて強力なスピーカーを搭載。パイン材の明るい色合いや木目も印象的

最後に根本的なところですが、真空管からデジタルへのアンプ回路の変更です。真空管アンプに使われる部品は、電源に使われる大型のトランスを筆頭に、デカくて重いものが多いのです。対してデジタルアンプは比較的軽量に設計できます。

で、サウンドは? もちろんデラリバそのまんま!

というわけでTone Master Deluxe Reverbでした!

……いやサウンドについてのレポートがまだでした。でもこれ「マジでまんまデラリバです」のひとことで済んじゃうものだから、ライターとしては書くことがあまりないんですよね……。というわけで、一応動画に撮ってみました。前半が元祖デラリバで、後半が新型デジデラです(※といってもカメラ内蔵マイクで収録しているので、参考程度の音になりますが、それでも「まんまデラリバ感」はわかると思います)

ストラトからビブラートチャンネルにインプットして、まずデジデラとデラリバのノブを全く同じセッティングにして少し弾いてみたところ、新型デジデラのほうが低音の押しが控えめに感じられました。そこで撮影時には、デジデラ側の「BASS」ノブを1メモリだけ上げてあります。それだけです。もう少し上げてもよかったかも。

ノブを少し動かす程度の音の違いは、ギターアンプの個体差要素として普通ですよね。この場合も新型デジデラ側の再現性の問題ではなく、むしろ個体差が生まれがちな真空管アンプであるデラリバのほうに、新型デジデラ側を調整して合わせたという感覚です。

この動画だと筆者のセッティング技術不足や演奏の不安定さもあって「全く同じ音」になっているわけではありませんが、でもどちらも「デラリバの音」であることは伝わるかと思います。

またフェンダーアンプは、搭載されているスプリングリバーブとトレモロのサウンドも絶品。特にこの新型デジデラはリバーブの再現にも自信あり! とのことですので試してみました。以下の動画後半でリバーブをオンにしています。

たしかによい! デラリバに搭載のそれはもちろん実際のバネを仕込んだリアルスプリングリバーブですが、新型デジデラではそこもデジタル技術で再現してあります。コンボリューション演算、畳み込み演算というものを導入した最新の手法だそうです。言葉の意味はわからんがとにかくすごい再現度だ!

リバーブとトレモロをオンオフするフットスイッチ。新型デジデラには左側、オンオフをランプで視認できる現代的な使い勝手のものが付属

総じて「ブラインドテストされたら、僕レベルでは元祖デラリバと新型デジデラ聴き分けられない感ある……」です。無理矢理に強いて言えば、Fuzz Face系のペダルをファズ全開でぶち込んだときの高域の暴れ方には少しだけ違和感がありました。しかし逆に言えば、アンプとの相性が極端に出やすいFuzz Face系ペダルでさえも、少しの違和感しか出ないのです。

ペダルと組み合わせれば多彩なサウンドも!

そしてこれは本機の機能というわけではないのですが、使い方のアイデアをひとつ。

繰り返し述べてきたように、この新型デジデラは「さまざまなアンプのサウンドを再現できる系デジタルアンプ」ではありません。そこはくつがえりません。ですが、アンプサウンドの組み合わせで使いたいやつって「フェンダーのクリーン&クランチ/マーシャルのドライブ」みたく、フェンダーのクリーン&クランチとスタック系アンプのドライブサウンドという組み合わせなことが多くないですか?

そして今っていわゆるアンプ・イン・ボックスと呼ばれる、特定のギターアンプのサウンド再現に特化したエフェクトペダルも豊富ですよね? 典型的なものとしてはプレキシマーシャル再現ペダルとか。

そうです。デジデラのクリーン&クランチサウンドにプレキシペダル等を組み合わせれば、その手のコンビネーションは十分にカバーできます。フェンダーのクリーントーンはおおよそのペダル類との相性にもすぐれているので、そういった使い方も十分に実用的なのです。

プレキシ系ペダルXotic SL Driveのマニュアルに掲載の「ブラックモア」セッティングサンプルで十分それっぽい音に!

というわけでこのFender Tone Master Deluxe Reverb、最後のおまけも加えておさらいをすると、

【1】標準機であるデラリバを操作感まで完全再現!
 →スタジオやライブハウスのデラリバと同じ感覚で使える!

【2】デラリバなのに小さめ音量でも使える!
 →自宅でもデラリバのドライブサウンドまで楽しめる!

【3】デラリバを圧倒する超軽量!
 →自宅から外に持ち出すときも楽々!

【4】流行りのアンプ再現ペダルとの相性もよい!
 →ほかのアンプの音色が欲しいときもある程度対応できる!

絶品デラリバトーンに加えていろいろ便利!「デジタルアンプなんて興味ない! 俺はデラリバじゃなきゃ嫌なんだ!」というフェンダーファンにこそおすすめしたくなる、そんなアンプの登場です。

高橋敦

高橋敦

オーディオ界隈ライター。現在はポータブルやデスクトップなどのパーソナルオーディオ分野を中心に、下からグイッとパンしていくためにてさぐりで活動中。

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