2021年8月、JTは、加熱式タバコデバイス「Ploom S(プルームS)」の進化版として、高温加熱式の「Ploom X(プルームX)」を発売。同デバイスの専用タバコスティックは、初期ラインアップの「メビウス」シリーズと「キャメル」シリーズの計12種類に加え、2021年11月からフレーバーメンソールタイプ「メビウス・オプション・パープル」と「メビウス・オプション・イエロー」の2種が仲間入りしました。
「メビウス・オプション・パープル」(左)と「メビウス・オプション・イエロー」(右)。ともに20本入りで570円(税込)
「メビウス・オプション・パープル」と「メビウス・オプション・イエロー」は、JTの加熱式タバコ用スティックとしては初のカプセル入りメンソールタイプ。この“大型新人”のデビューを記念し、2021年12月から、両スティックとクラフトジンのマリアージュ体験企画が、一部の「Ploom Shop(プルームショップ)」で始まりました。
初のカプセル入り。このフィルター内のカプセルを潰すと、より香り高いフレーバーが楽しめます
今回試したクラフトジンは、本企画用に作られたオリジナルで、「プルームショップ」だけで楽しめる限定品。手がけたのは、北海道初のクラフトジン蒸溜所として知られる、札幌の「紅櫻(べにざくら)蒸溜所」です。そのメディア向け体験会に参加するべく、札幌へと向かいました。
「紅櫻蒸溜所」は、JR札幌駅から車で30分弱のところにある「紅櫻公園」内に、2018年に設立されました
まずは、オリジナルのクラフトジンについて、蒸溜所の特徴とともに紹介します。
ジンはそもそも、蒸溜酒(スピリッツ)の1種で、ウォッカやラム、テキーラとともに世界4大蒸溜酒のひとつに数えられるメジャーなお酒。最大の特徴は、ボタニカル(香草・薬草類)を使っていることです。なかでも、「セイヨウネズ」という低木の果実を乾燥させたスパイス「ジュニパーベリー」は、ジンに欠かせないボタニカルです。
ジンの製造工程で使用するボタニカルの1例。黒い粒が、ジュニパーベリーです
クラフトジンの「クラフト」に関しては、クラフトビール同様、厳密な定義はありません。ただ、「大量生産ではない」、「香りや味の個性が強い」、「土地の恵みを生かす」といった特徴を持っており、特に、「土地の恵みを生かす」については、「紅櫻蒸溜所」も例に漏れません。同蒸留所では、ボタニカルはできる限り北海道産を使用しており、ラベンダーや日高昆布といった名産品も採用しているのがユニークです。
「紅櫻蒸溜所」の製造の要となる蒸溜器。イタリア・バリソン社製を用い、札幌市南区の伏流水で仕込んでいます
「紅櫻蒸溜所」の代表ブランドは、「9148」。こちらは、ジンが随所に登場する小説の名作「1984」(ジョージ・オーウェル作)をオマージュしたもので、定番商品は「#0101」。強めに効かせた「ジュニパーベリー」のドライな風味と、その奥に感じられる日高昆布、干し椎茸、切干大根由来のうまみが特徴です。
こちらは、「9148」の冬季限定品「#0106」。銀粉で雪を表現しており、北海道のミルクやトウモロコシに、イチゴ、カカオニブ、コーヒー、トリュフを加えたやさしい味わいが特徴です
そして今回、「メビウス・オプション・パープル」と「メビウス・オプション・イエロー」用に作られたのが、それぞれのフレーバーに合わせた2種類のクラフトジン。前者用が「#0513 Purple Moon」、後者用が「#0216 Yellow Breeze」です。
各タバコスティックの右隣にあるボトルが、各スティックとマリアージュするために生まれた専用のクラフトジン
どちらのレシピも、定番商品「#0101」がベースになっており、「#0513 Purple Moon」は、“真実のシナモン”と名高い天然のセイロンニッケイ種のシナモンを使用。華やかで上品な香りが清涼感を強め、ベリーフレーバーの甘さに潤いを与えることで、口触りがよく、まろやかなテイストを実現しています。
シナモンによってベリーフレーバーの甘さが潤う「#0513 Purple Moon」
まずは、ストレートでひと口飲んでみました。
「ジュニパーベリー」のドライ感のすぐ後に、ベリーの甘みがのってきます。商品自体に使われている果実はブルーベリーですが、シナモンの甘い香りに、熟したカシスのような黒いベリーの要素も。また、レモンピールの微かな酸味や、ラベンダーの華やかなニュアンスも絶妙です。
加水するといっそう香りが開き、ふくよかなうまみもしっかり。このふくらみは、日高昆布や椎茸によるものでしょうか、不思議なボディが独特の余韻を醸し出しています
「メビウス・オプション・パープル」とのペアリングも体験。メンソールとベリーの甘やかな爽快感が、「#0513 Purple Moon」のフレーバーとドンピシャにマッチします。
互いに相関する華やかな香りの要素が持ち味を引き出し、贅沢な喫味を楽しめます
次は「#0216 Yellow Breeze」。こちらは、甘みと香りのバランスが理想的な、アールグレイ茶葉を選定して採用。やわらかな香りで清涼感が引き立ち、シトラスの酸味に深みを与えることで、紅茶とシトラスを調和させています。
やわらかなアールグレイが、シトラスの酸味と溶け合う「#0216 Yellow Breeze」
こちらは、「#0513 Purple Moon」よりシャープで爽やかな味わい。ベースのボタニカルが同じなので、基本的な味の構成は似ていますが、ベリー感は青々としていて、レモンの爽快感も強め。余韻には、昆布などに由来するうまみもありつつ、渋味のニュアンスも。これは、アールグレイによるものでしょうか。また、アールグレイと同居する、ベルガモットという柑橘の上品な面影も感じます。
「#0216 Yellow Breeze」は、フレッシュさが前面に出る味。炭酸水割りにすると、より柑橘系の爽快感が際立ちます。そしてもちろん、「メビウス・オプション・イエロー」にマッチすることは言うまでもありません
意外な飲み方としては、お湯割りがおすすめということで試してみました。すると、まず香りのボリュームが一気に拡大。飲み口はまろやかで、「#0513 Purple Moon」のほうは甘みとうまみのグラデーションが明快に。「#0216 Yellow Breeze」のほうは、アールグレイの大人なニュアンスがより感じられました。
お湯割りは、上品な香りが特に印象的。日本酒でたとえると、フルーティーな香りが特徴の純米大吟醸を燗で飲んだ時のような、優美な広がりを感じられます
加熱式タバコとクラフトジンのマリアージュという、驚きに満ちたメディア向け体験会から数日後。実際に店舗ではこれがどのように体験できるのかを知るべく、「プルームショップ銀座店」へ。すると、注文カウンターにしっかりとマリアージュセットがディスプレイされていました。
「プルームショップ銀座店」は、銀座駅から徒歩2〜3分の場所にあり、2階がカフェとなっています
同店ではもともと、「プルーム」シリーズのデバイスと「CLUB JT」か、「Ploom X CLUB」の会員証を提示すると、無料でさまざまなドリンクとのペアリングが試せます。そのメニューに、「#0513 Purple Moon」と「#0216 Yellow Breeze」が加わったわけです。
カウンターにはクラフトジンの実物も!
注文したのは、「メビウス・オプション・パープル」と「#0513 Purple Moon」のセット。「メビウス・オプション・パープル」は、サンプルを1本試供してもらえるうえ、「プルームX」のレンタルも可能です。
「#0513 Purple Moon」は、飲み方の希望を聞かれるので、ここでは炭酸割りをオーダー。体験会の時は自分で調合しましたが、「プルームショップ」でスタッフに作ってもらったほうが何倍もおいしそうです。
専用グラスで提供してもらえるのも、うれしいポイント。ワイングラスのようにフチがすぼまっているので、香りを存分に体感できます
改めて感じるのは、「ジュニパーベリー」のドライなタッチと、ベリーの上品な甘やかさとの見事な調和。氷が溶けて加水されるたびに味わいが開き、次第に奥底のうまみを感じられるのも魅力です。これが無料とは、ただただびっくり! 「プルームX」だけではなく、全加熱式タバコユーザーに、ぜひ行っていただきたいです。
対象となる「プルームショップ」は、仙台、銀座、東京駅、渋谷、名古屋、なんば、天神の各店。札幌店では、2022年2月1日より提供開始予定とのことです。「#0513 Purple Moon」と「#0216 Yellow Breeze」は非売品で、ほかのバーでも提供されないとのことなので、クラフトジンファンもぜひ訪れてみてください。
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。