現在、主要な加熱式タバコは10機種。ユーザーにとっては、選択肢が多くてうれしい半面、機種選びの難しさは極まっている状況だ。そこでここでは、「アイコス」「グロー」「プルーム」「ウィズ」「リル ハイブリッド」それぞれの特徴と現状をまとめた。
今、各社公式サイトで取り扱われている製品を一挙紹介
加熱式タバコとは、紙巻きタバコのようにタバコ葉に直接火をつけるのではなく、タバコ葉に熱を加えてニコチンを発生させる喫煙具。煙が出ない代わりに、タバコ葉に含ませたグリセリン類によって、蒸気を発生させるのが基本だ。これにより、モノを燃やす時に発生するタールの量が9割以上減少し、人体への悪影響が紙巻きタバコに比べて低減すると言われている。
また、2020年4月に「改正健康増進法」が完全施行となった関係で、「紙巻きタバコは吸えないが、加熱式タバコなら吸える」というシチュエーションが増えたことも追い風となり、注目度がますます高まっている。
とはいえ、加熱式タバコは、タバコ税がかかっている立派な「タバコ」であり、日本で流通しているノンニコチン&ノンタールの「電子タバコ(VAPE)」とは、まったく別モノだということは覚えておきたい。
加熱式タバコから発生する蒸気は、紙巻きタバコの煙とは異なり、刺激臭が比較的少ないうえ、服や髪にニオイがつきにくい(写真は「アイコス イルマ プライム」)
加熱式タバコは、タバコ葉を加熱する温度によって、大きく2種類に分けられる。
ひとつは、約300〜350度の「アイコス」シリーズを始めとする、200度を超える高温加熱式。もうひとつは、約40/60度の「ウィズ2」が採用する低温加熱式だ。基本的には、高温加熱式のほうが喫味は強く、ニオイも強めのモデルが多い。低温加熱式は、喫味が弱くなる半面、ニオイが限りなく少なくなるというメリットがある。
現行主要モデルの特徴と加熱温度
フィリップ・モリス・ジャパンが販売する「アイコス」は、「アイコス臭」と呼ばれる、独特の酸味のあるニオイは感じるものの、紙巻きタバコからの移行でいちばん違和感が少ないと言われることが多い加熱式タバコ。2024年6月末時点で、全世界のユーザー数は3,080万人にのぼる。
そんな「アイコス」は、後述する「アイコス イルマ」シリーズを経て、2024年3月に最新シリーズ「アイコス イルマ アイ」を発売。
「アイコス イルマ アイ」シリーズの全ラインアップ。従来の「アイコス イルマ」シリーズと形状や重量はほぼ同じだが、機能面が飛躍的にアップデートされている
「アイコス イルマ」シリーズは、クリーニング不要の「スマートコア・インダクション・システム」を搭載し、ユーザーの煩わしさを解消した画期的なモデルだった。そして、こうした利便性をさらに高めて進化させたのが「アイコス イルマ アイ」シリーズである。
そのうちの上位機種となる「アイコス イルマ アイ プライム」と「アイコス イルマ アイ」は、「タッチスクリーン」や「ポーズモード」の搭載など、利便性とパフの効率化が実現され、よりユーザービリティーが向上した。
左が「アイコス イルマ アイ」で、右が「アイコス イルマ アイ プライム」
具体的な進化ポイントは4点。
ひとつめの「タッチスクリーン」は、必要なデバイス情報をひと目でチェックできるほか、スワイプによって直感的な操作が可能になった。LED表示によって「加熱ステータス(加熱中と加熱完了)」「残りの使用可能時間」「残りの使用可能本数」が確認できる。
「アイコス イルマ アイ プライム」と「アイコス イルマ アイ」は、ホルダーに「タッチスクリーン」を搭載
2つめは「ポーズモード」。いくつかの条件があるものの、使用中に加熱を最長8分間一時停止でき、その後再開できる機能である。これにより、「吸い始めたけど、急にちょっとの間、両手を使わなくてはいけなくなった」みたいなシーンなどで起きる残念なロスを回避できるようになった。
「ポーズモード」は、「タッチスクリーン」でスワイプ操作。4つのLEDライトが点灯し、一時停止すると同時にホルダーが振動して知らせてくれる
3つめは「フレックスバッテリー」。好みのスタイルに合わせて、ホルダーのバッテリーを2つのモードから選べる機能で、「アイコスアプリ」(公式サイトから接続)と本体をBluetoothかUSBケーブルで連携させることで、アプリ上で「パフォーマンスモード」か「エコモード」かを選んで設定できる。
「アイコスアプリ」の設定画面。設定変更は、全国に7店舗ある「アイコスストア」でスタッフにやってもらうことも可能だ
「バッテリーモード」では、初期設定の「パフォーマンスモード」なら最大3スティック(「ポーズモード」を使用しなかった場合のみ)までホルダーの連続使用が可能に。いっぽう、「エコモード」は1スティックだけ使用可能になる分、ホルダーのバッテリー寿命が最長1年間延びる(使用頻度にもよるものの、初回から「エコモード」のみを使用した場合)。なお、「エコモード」では「ポーズモード」を使用できない。
4つめは「フレックスパフ」。1回のパフで吸う量や1本のスティックで吸うペースを内蔵システムが分析し、最大4回までパフの回数が増加する機能だ。
「タッチスクリーン」搭載のデバイスは、追加されたかどうかをLED表示で確認可能
なお、追加された最大4パフは、初期設定の14パフと同じく、使用開始から6分間以内に使用しなくてはならない。また、システムが自動的に使用状況を分析するため、ユーザー側はこれを設定できず、また「ポーズモード」を使用した場合は作動しない。
「アイコス イルマ アイ」シリーズの低価格ラインが、「アイコス イルマ アイ ワン」だ。「アイコス イルマ アイ プライム」と「アイコス イルマ アイ」の「タッチスクリーン」「ポーズモード」「フレックスバッテリー」は非搭載で、LED表示による状態確認こそできないが、「フレックスパフ」は搭載。ユーザーの使用状況に応じて、最大4回までパフの回数が増える。
「アイコス イルマ アイ ワン」。こちらも従来の「アイコス イルマ ワン」と形状や重量は同じだが、いくつかの新機能が搭載され、採用パーツの質感やカラーバリエーションなども進化している
また、従来の「アイコス イルマ ワン」にはなかった「オートスタート/オートストップ」を新採用。タバコスティックを入れたら自動で加熱開始、逆に抜いたら加熱を停止してくれるようになった。
なお、「アイコス イルマ」シリーズから「アイコス イルマ アイ」シリーズへと、実質のアップデートがなされたわけだが、バッテリーの充電サイクル(20本ごとに充電)とポケットチャージャーの充電時間(「プライム」と「イルマ」は約135分で、「ワン」は約90分)の変更はない。とはいえ、タバコスティック1本1本を最大限楽しめるようになっており、ユーザーにとってはうれしい進化と言えるだろう。
「アイコス イルマ」シリーズの専用タバコスティック「テリア」。写真はローンチラインアップの11種類で、2025年5月15日時点では、全24種類を揃える
2022年4月4日には、「アイコス イルマ」シリーズで使用可能な20本入り530円(税込)の廉価版スティック「センティア」が登場。「テリア」よりも50円安く、2025年5月22日時点で全17種類を揃える
BAT(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)が販売する加熱式タバコブランド「グロー」シリーズは、デバイスとスティックともにお手ごろ価格なうえに、喫味が強めのシリーズとして人気だ。
本体の穴に専用スティックを挿し込み、周囲からタバコ葉を加熱する周辺加熱式を採用したバッテリー一体型デバイスで、ニオイは強めだが、強烈なメンソールの刺激や、味変可能な元祖カプセルメンソールで独自の存在感を放つ。スティックでは、加熱式専用スティック銘柄「ネオ」のほか、紙巻きタバコファンにもなじみ深い銘柄の「ケント」「ラッキー・ストライク」も擁しているところが魅力である。
また、「グロー」シリーズは温度切り替えにより、急いでいるときとゆっくりしたいときで、喫味の強さを変えられるという特徴も人気で、現行機種にも綿々と受け継がれている。
2016年の初登場時から存在する細身のスリムスティックを使用する「グロー(・プロ)」シリーズと、2020年に登場した太いスティックを使用する「グロー・ハイパー」の2路線併売で4年にわたって展開してきたが、2024年6月に細いスティックとその対応機種は終売となり、太いスティックに一本化された。
現在のメインは「グロー・ハイパー・プロ」(写真左)と「グロー・ハイパー」(写真右)
2023年末に発表された「グロー・ハイパー・プロ」では、本体の穴に専用スティックを挿し込み、周囲からタバコ葉を加熱する周辺加熱式という特徴はそのままに、加熱方式を見直し。最大加熱温度300度に高めた「ヒートブースト・テクノロジー」を採用している。同時に、マスターブレンダーによるタバコ葉ブレンドも見直された。
続く2024年8月には新「グロー・ハイパー」が発売。「グロー・ハイパー・プロ」がカラーディスプレイ付きで、「グロー・ハイパー」はLED付きという違いで、同じ喫味をより安価に楽しめるようになった。
現在では当たり前になったが、先行した「アイコス イルマ」シリーズと同様に、スティック先端を「スティックシール」テクノロジーで封印。タバコ葉が落ちない構造に変わり、メンテナンスフリーも実現した。
どちらも「テイスト・セレクト・ダイアル」で加熱温度を選べる
「グロー」シリーズの最大の強みは、何と言ってもランニングコストだ。「ラッキー・ストライク」は1箱430円という圧倒的コスパ。その上位銘柄の「ケント」にしても450円。フラッグシップシリーズの「ネオ」でさえ500円だ。
ところが、この流れに異変を起こしたのが、2025年6月に宮城県限定で先行発売された新モデル「glo Hilo(グロー・ヒーロ)」だ。2025年9月1日には、新登場の上位モデル「グロー・ヒーロ・プラス」とともに全国発売。デバイス価格も高めだが、専用スティック「virto(ヴァルト)」が1箱20本入り580円(税込)と、加熱式タバコ用スティックでは最高の価格に設定されている。このプレミアム路線が、今後どのように受け入れられていくのが見守っていきたい。
2023年12月に登場したフラッグシップモデル「グロー・ハイパー・プロ」は、BATにしては珍しく、3,980円(税込)という強気の価格設定だ。
細いスティック時代に主に採用されていた丸みのあるデザイン
ポイントは、鮮やかな有機ELディスプレイ「EASYVIEWスクリーン」を搭載しており、バッテリー残量や加熱モードを視認できるところ。モードはダイヤル選択式になった。
そうした派手な変更の影で大きく進化していたのが、最大加熱温度300度を実現する新たな加熱技術「ヒートブースト・テクノロジー」。従来モデルにおいては、「スタンダードモード」で加熱温度250度とうたわれていたとしても、実は常に250度で加熱し続けるわけではなかった。
というのも、各社の加熱式タバコデバイスは、喫味をコントロールするため、最適な曲線を描く温度調整を独自に行っている。そんななか、「グロー」はスタートダッシュで一気に温度をMAXまで高める方式を採っていたのだが、「ヒートブースト・テクノロジー」で少し変化したようだ。
ひと口目はマイルドに旨味を中心に味わいを高め、中盤以降で喫味を強くしていく新たな加熱曲線になっている印象。最高温度に一気に到達させないことで、独特の酸味のあるいぶったニオイがかなり低減された。
加熱モードをディスプレイで確認できるが、ダイヤルの状態を見てもわかるのでそれほど意味はない
あとどのくらいの時間吸えるかをディスプレイで直感的に把握できるのは便利!
「ヒートブースト・テクノロジー」搭載のフラッグシップモデル「グロー・ハイパー・プロ」の味わいを、お手ごろ価格1,480円で味わえるようにカラー有機ディスプレイ部分をLEDライトに差し替えたコスパモデルが、2024年8月に発売された新「グロー・ハイパー」だ。
実際の使い勝手としては、「テイスト・セレクト・ダイアル」で加熱温度を切り替えるところまで「グロー・ハイパー・プロ」と同じなので、4分割で喫煙の残り時間を示すシンプルなLEDライト表示以外は機能に差はない。もちろん、起動したときの「Hi」という挨拶や、喫煙後に「スティックを抜け」と示すアニメーションは表示されない。
純粋に「ヒートブースト・テクノロジー」による味わいの進化を体験したいだけなら、本モデルで十分だ。
ミニマルな魅力を感じるシンプルデザイン
むしろ写真右の新「グロー・ハイパー」のほうがシンプルで好みという人も多そう
「グロー・ハイパー」シリーズ専用スティックのラインアップは3銘柄で、種類は以下のとおり。なお、すべて「スティックシール」テクノロジーが採用されている。
●「ラッキーストライク」
・レギュラー3種
・メンソール2種
・フレーバーメンソール1種
・カプセル入りメンソール5種
計11種
●「ネオ」
・レギュラー3種
・カプセル入りメンソール2種
・メンソール1種
・カプセル入りフレーバーメンソール3種
計9種
●「ケント」
・レギュラー2種
・メンソール2種
・カプセル入りフレーバーメンソール1種
計5種
2025年6月時点で25種類が用意されており、価格は各20本入りで430〜500円(税込)。かつては「グロー=メンソール」というイメージだったが、近年はレギュラーラインアップも拡充されている。
業界最安値を突っ走る1箱430円の「ラッキー・ストライク」
2025年6月9日に宮城県限定で先行発売され、同年9月1日に全国発売された新機種「glo Hilo(グロー・ヒーロ)」は、従来スティックとの互換性のないまったく新しいプレミアムラインだ。
加熱機構は、周辺加熱式から、スティックをピン型クオーツに挿し込み、直接タバコ葉を加熱する「初代アイコス」を思わせる中心加熱式を採用。「グロー」において“互換性のない進化”は、かつての細いスティックから太いスティックへの変更に続いて、2回目だ。
そのため、本モデルは専用スティック「virto(ヴァルト)」を使用する必要がある。「スティックシール」で先端部分を閉じているものの、ピン型クオーツがそこを突き破って内部のタバコ葉に直接刺さるのが面白い。なお、加熱温度は従来どおり、高温(ブーストモード)と低温(スタンダードモード)を切り替えて使用する。
BATジャパンの新・加熱式タバコデバイス「グロー・ヒーロ」は3,980円(税込)。2025年9月1日より全国発売された
サイズは30.3(幅)×16(奥行)×123.4(高さ)mmで、重量は75g。少し長めに感じるが意外と持ちやすい
内部に見えるピン型クオーツで、スティック内部のタバコ葉を直接加熱
実際に使用してみると、まず驚くのはわずか5秒で吸える加熱速度だ。ズボンのポケットから紙巻きタバコとライターを取り出して、スパスパふかして吸い始めるのとほぼ同じような感覚で喫煙が開始できる。
その理由は、ピン型の加熱クオーツを使って、グロー史上最高の約370度の超高温加熱を行う「Turbostart(ターボスタート)テクノロジー」を採用したこと。周辺加熱の歴史をかなぐり捨てての新たな挑戦だ。しかも、「以前のアイコス」のようにタバコ葉がむき出しになっておらず、先端フィルター部分を突き刺すという構造が画期的。抜くときにタバコ葉のカスや汁をフィルターが拭い取ってくれるので、事実上、メンテナンスフリーの直接加熱式としては初となる(とはいえ10本程度吸った後に、内部を細いベビー綿棒で拭うと多少の汚れは付着した)。
味わいはというと、タバコ葉の直接加熱から来る、紙巻きタバコに近いガツンとした喫味。ひと吸い目のキンとした“紙タバコっぽさ”は、近年の加熱式タバコデバイスでは味わえなかったものだ。
1回のセッションは、スタンダードモードで5分10秒、ブーストモードで4分10秒。従来の「グロー」の感覚からすると、喫煙時間は数値よりも長く感じた。
バッテリーはUSB Type-Cケーブル経由の高速充電により、40分で80%までの充電が可能。90分でフル充電となり、20本分が吸える。
専用タバコスティック「virto(ヴァルト)」は、1箱20本入り580円(税込)。580円は、現在発売中のスティックの最高価格である「アイコス イルマ」用「テリア」と同額という挑戦的な値付けだ。喫煙可能時間が長くなったとしても「アイコス イルマ」用の6分には到達していないところが違いとしてある。
また本モデルは、近年の加熱式タバコのトレンドに乗り、Bluetooth経由によりスマホアプリでカスタマイズできる仕様。ただ、iOSの場合は新たに「Nuviu」ブラウザを新規に導入。Android版もGoogle Playで「myglo」アプリ を導入し、さまざまなセキュリティー設定を行う必要があるのでハードルは少々高い。
ちなみに、アプリでできることは以下のとおり。
・使用時間の調整によるフル充電での使用回数調整
・デバイスの使用状況の管理(どれだけ吸ったか)
・ディスプレイのパーソナライズ(起動時のメッセージの変更)
・デバイスを紛失した際の位置情報の確認(スマホのBluetooth範囲内)
・ロック機能
使用前(左)に比べて、吸い殻(右)にしっかりと穴が開いている
専用スティックはレギュラー2種+カプセル入りメンソール3種+カプセル入りフレーバーメンソール3種の全8種類。レギュラー以外はすべてカプセル搭載
セッション時間(つまりパフ回数)は変えられるが、温度や加熱曲線の変更など、喫味自体を変更する機能はないので、正直どれだけの人が利用するかは未知数だ
「グロー・ヒーロ」の全国発売とともに、上位モデルとなる新機種が登場。それが「グロー・ヒーロ・プラス(glo Hilo Plus)」だ。加熱機構や使用時間・本数など、基本機能は同じ。変更点は、「EasySwitchペン」+「充電ケース」の分割式を採用している点で、「アイコス イルマ アイ プライム」のような立ち位置のプレミアムモデルだ。なお、「グロー・ヒーロ」とは構造が同じなので、味わいも同じだ。
BATの新シリーズのプレミアムモデル「グロー・ヒーロ・プラス 」は6,980円(税込)
充電ケースに入れたままでも、そこから取り外してペン型としても楽しめる2Way仕様
ただ「グロー・ヒーロ・プラス」の場合は、スライドして取り出す「EasySwitch ペン」のみでも吸えるだけでなく、「充電ケース」にセットしたままでも吸えるという2つの使い方ができる。
ほかにも、使い勝手が少々異なる。「EasySwitch ペン」には「EasyView タッチスクリーン」が搭載されており、画面をスワイプ操作してモードが切り替えられるのだ。
「充電ケース」から取り出した「EasySwitchペン」の中央には、スマートなタッチスクリーン付き
気になるのは、「吸えるまで約5秒」という「グロー・ヒーロ」の魅力が「10秒以内」と時間がわずかだが伸びていること。それでも、加熱式タバコの中ではトップクラスに入るスピードだ。吸える時間は、「グロー」としては5分10秒と長いほうに入るが、「アイコス イルマ アイ」シリーズの約6分よりは短い。
「グロー・ヒーロ」にはないこのモデルの魅力は、重厚で高級感のあるルックスと、「ペン」をカチンと装着できるガジェット感と言えそうだ。
高級感とガジェット感がある「グロー・ヒーロ・プラス」(写真左)と、バッテリー一体型で持ち運びやすい「グロー・ヒーロ」(写真右)
「グロー・ヒーロ」は3,980円(税込)で、サイズは30.3(幅)×16(奥行)×123.4(高さ)mm、重量は75g。いっぽう「グロー・ヒーロ・プラス」は、吸える本数は同じで、6,980円 (税込)、サイズは42(幅)×19.5(奥行)×118.1(高さ)mm、重量は124gだ。
加熱式タバコを手掛けるメーカーの中で唯一、低温加熱式タバコを販売しているJT。同社の加熱式タバコは2013年発売の低温加熱式「プルーム(Ploom)」にはじまり、現在の最新モデルは「ウィズ2」だ。
高温加熱式においては、2019年デビューの「プルームS」が始まりで、「プルームS 2.0」「プルーム モデルS」「プルームX」と進化。そして2023年発売の「プルームX アドバンスド」を経て、2025年5月に第4世代として発売されたフルモデルチェンジ版が「プルーム・オーラ」だ。
高温加熱式「プルーム」のシリーズ第1〜3世代の進化の過程。ちなみに、「プルーム」は、ニオイの少なさにおいては競合を圧倒する高評価を得ている
2025年5月27日に発売された「プルーム・オーラ」(税込2,980円)。左から「ジェットブラック」、「ルナシルバー」(一部店舗限定)、「ネイビーブルー」(一部店舗限定)、「ローズゴールド」
「プルーム・オーラ」最大の特徴は、「スマート ヒートフロー(SMART HEATFROW)」。加熱温度の緻密な制御により、雑味や焦げ臭さを抑えつつ、タバコ葉の香味を引き出す最適な温度を長くキープすることで、味わいの一貫性を向上させる独自技術だ。
また、「精密深絞り加工」という、ミクロン単位の精巧な楕円状のカップ構造により、タバコスティックとの接触面積が増加。加熱効率がよくなり、味わいを余すことなく引き出せるようになった
さらに、「ヒート セレクト システム(HEAT SELECT SYSTEM)」も魅力的で、タバコの味わいや吸い応えを加熱モードにより変更できる機能。またこれにより、タバコ1本あたりの使用可能時間が最長約6分、本数は最高約27本吸えるようになった。
最高加熱温度は約320度と「プルームX アドバンスド」と同じだが、タバコ1本あたりの最長使用可能時間は1分延び、使用最高本数は7本増えた
加熱モードの変更は、デバイスをスマホとBluetooth接続し、アプリから行う。詳細は「CLUB JT 」にあるが、簡単に解説しよう。スマホがiOS (iPhone)の場合は「コネクトブラウザ」、Androidの場合は「My Ploom」をダウンロードして、それぞれBluetooth接続する。
iOSは写真左側の手順。Androidは右側の流れで各アプリをダウンロードし、デバイスを登録して設定を行う
アプリでは加熱モード変更のほかにも、バッテリー残量と使用可能本数の確認、接続中のプルームデバイスを素早く見つけ出す「デバイスレーダー」、誤作動を防ぐためのデバイスロックなども操作可能。「プルーム・オーラ」を使うなら、ぜひ試してほしい。
iOSにおける画面。左下の「加熱モード」をタップすると、右側の「加熱モードを選んでください」の画面に遷移してモード変更できる
なお、「ヒート セレクト システム」における4つのモードを喫味の側面から解説すると、最も強いのが「ストロングモード」。「スタンダードモード」と「エコモード」の喫味は同じで、「ロングモード」はやさしい味わいとなる。
「ヒート セレクト システム」の一覧表
「プルーム・オーラ」で吸えるタバコスティックは、3ブランド22種類。「プルーム・オーラ」と同時にデビューしたプレミアムライン「エボ」からは、「レギュラータイプ」「メンソールタイプ」「フレーバーメンソールタイプ」が各1種類ずつラインアップされている。
「エボ」は銘柄数こそまだ少ないが、今後ラインアップは広がるはず
そして、従来から親しまれている「メビウス」は、「レギュラータイプ」3種類と、「メンソールタイプ」4種類、「フレーバーメンソールタイプ」5種類の全12銘柄。「キャメル」からは「レギュラータイプ」2種類、「メンソールタイプ」2種類、そして「フレーバーメンソールタイプ」3種類の、全7銘柄が展開されている。
「プルーム・オーラ」で吸えるラインアップ。「エボ」は550円(税込)で、「メビウス」と「キャメル」は各500円(税込)
2023年6月、JTが従来の低温加熱式タバコデバイス「プルーム・テック」「プルーム・テック・プラス・1.5」「プルーム・テック・プラス・ウィズ」と入れ替える形で発売したのが「ウィズ2」だ。
同製品は、カートリッジ内のグリセリン類を加熱して蒸気を発生させたあと、微細に刻まれたタバコ葉入りの「タバコカプセル」に通過させることによってニコチン入りの蒸気を出すという方式を採用。タバコカプセル以外は、電子タバコ「VAPE」と同じ仕組みだ。加熱温度は、「ノーマルモード」の約40度と、「ハイモード」の約60度を備える。
加熱の待ち時間がゼロで、オン/オフ自由自在であること。いつでも好きなときに吸い始め、自分のタイミングで止められることも「ウィズ2」の強みだ
低温である分、「ウィズ2」は驚くほどニオイが少ない。隣で吸っていても気づかれないこともあるほどなので、ニオイに配慮が必要な環境で使用することが多い喫煙者にとって、救世主のような存在だ。
高温加熱式に比べると喫味は軽いが、5〜7mg程度のタール値のタバコを吸っていた人なら満足できるはずだ。低温加熱式とは思えない、しっかりとした深い喫味を実現している。
霧化したリキッドがタバコ顆粒の入ったカプセルを通ることで、味や香りの蒸気を発生させる、独自の「インフューズドテクノロジー」を採用
「ウィズ2」の専用タバコカプセル「メビウス」シリーズは、現在6種類で展開。「アイコス」や「グロー」には数では及ばないものの、あらゆる種類の味わいをニオイなしで、しっかりとした喫味とともに味わえるのはすばらしい。ただ、モノによっては喫味にクセがあり、レギュラー系でノドがイガイガするという人もたまにいる。実感としては、メンソールやフレーバー系のほうがこうした問題は起きにくいようだ。
専用タバコカプセル「メビウス」シリーズは、1箱にリキッドの入ったカートリッジ1本とタバコカプセル5個がセットで同梱。レギュラータイプ2種と、メンソールやフレーバータイプ4種の計6種類で展開されている
この専用タバコカプセルのもうひとつの特徴としては、JTが自社開発した国産タバコ葉「ゴールドリーフ」を使用した「ゴールド」シリーズや、天然メンソールを使用してナチュラルな清涼感を実現しているメンソールタイプなど、素材へのこだわりが多いこともあげられる。
「アイコス」のフィリップ・モリス・ジャパンが販売している、韓国の大手タバコメーカー、KT&G製の加熱式タバコが「リル ハイブリッド(lil HYBRID)」だ。本製品はまず2020年10月に、宮城県と福岡県内で限定販売。その後2021年2月から全国展開し、2025年4月に次世代モデル「リル ハイブリッド 3.0」が発売された。
「リル ハイブリッド」の特徴は、平均約160度という中高温でタバコスティックを周辺から加熱し、そこに気化させたリキッドを通すという「ハイブリッド テクノロジー」を搭載している点だ。現在、日本で流通しているほかの加熱式タバコにはない構造で、新境地のおいしさを味わえる。また、加熱温度を約160度に抑えることで、ニオイも軽減されている。
使用時間は、14パフもしくは5分。本体側面のディスプレイで使用状況や、リキッドカートリッジの残量、エラーの内容などがイラストを含めた表示でわかりやすくアナウンスされる
「リル ハイブリッド」は、加熱ブレードを搭載せず、巻いた紙の周囲から温める周辺加熱方式。専用スティックは、使用後の葉カスがこぼれにくい構造で、デバイスが汚れにくく、クリーニングがほぼ不要だ。
「リル ハイブリッド 3.0」は、弱中強から喫味を選べる3つのモードと、一時停止機能が新機能として追加されている
「リル ハイブリッド」専用タバコスティック「ミックス(MIIX)」は、「ベルベット」、「アイス」、「アイス プラス」、「ミックス」の4種類をラインアップ。価格は20本入りで510円(税込)だが、別売りリキッドカートリッジ(60円)も必要となる。
「ミックス」にはかつて「レギュラー」もあったが、2023年9月に終売。現在は、メンソールやフレーバーメンソールのみのラインアップとなっている
加熱式タバコ市場は、混迷の時代を迎えている。この現状において、「アイコス」「プルーム」「グロー」「ウィズ」「リル ハイブリッド」は、それぞれどんな人に向いているのだろうか。
まず、喫味の強さと1本の喫煙時間の長さを求めるのなら、「アイコス」である。この特徴は、加熱式タバコブーム当初から、最新モデル「アイコス イルマ アイ」シリーズに至るまで、ずっと変わらない。そして、このシリーズにおいては、これまで「アイコス」最大の課題だったメンテナンスの面倒さを、ブレードを廃止することで解消。タバコ葉をフィルターで密閉し、ニオイも低減した。
ただしJTも「プルーム・オーラ」の登場によって、喫味の強さと1本の喫煙時間の長さは、肉薄してきたと言える。別売りのパーツアクセサリーの種類も「アイコス」は豊富だが、この点でも「プルーム オーラ」が追随している。
元々チェーンスモーカーで、喫煙時間の長さは不要、あるいは「ケント」や「ラッキー・ストライク」という老舗ブランドに愛着がある人は、「グロー・ハイパー」シリーズを選びたい。カプセルメンソールを含むフレーバーの豊富さがいちばんのウリという印象だった「グロー」だが、2023年末に投入された「グロー・ハイパー・プロ」以降は「ヒートブースト・テクノロジー」を採用し、格段に喫味が強く深くなっている。喫煙時間も30秒延長された。
1箱430〜500円というランニングコストの低さも魅力。弱点だった吸い殻のニオイの強さも、「グロー・ハイパー」シリーズと、スティック先端からタバコ葉のこぼれない「スティックシール・テクノロジー」に対応した「ラッキー・ストライク」や「ネオ」の組み合わせなら、だいぶ改善されている。
さらに、2025年9月1日には、従来モデルと互換性のない「グロー・ヒーロ」と「グロー・ヒーロ・プラス」が投入された。これは1箱580円の専用スティック「virto(ヴァルト)」を使用し、タバコ葉にピン型クオーツを挿して直接加熱する、初期「アイコス」のような強烈な味わいが持ち味だ。近年の加熱式タバコの中では最強の喫味なので、今使っているデバイスでは物足りなさを感じている人は、一度試してみることをおすすめする。
ニオイが気になるのなら、「プルーム」シリーズだろう。高温加熱式の新モデル「プルーム・オーラ」は、加熱温度が「アイコス」に迫る320度と高いうえ、独自の技術でニオイは少なめのまま、味わいの満足度を向上。また、「加熱モード」を4タイプから選べるようになり、タバコ1本あたりの使用可能時間などを好みに合わせて設定できる点も魅力だ。
また、ニオイレスとともに、高コスパで携帯性にもすぐれているのが「ウィズ2」だ。高温加熱式とは段違いのほぼ無臭で、クルマの車内などの密閉空間でも気にならないレベルを実現している。味わいに関しては、雑味のない喫味を物足りなく感じる人もいるが、スティックを入れ替えることなく、1カプセルを断続的に吸える特性は唯一無二だ。
「リル ハイブリッド」は、「中高温(約160度)×リキッド」という異色モデル。メンテナンスフリーではあるが、別売のリキッドカートリッジとスティックの両方を用意しなければならない面倒さがあることは否めない。デバイスの重量も重めなうえ、喫味に少々クセがあるので人を選ぶ。
ランニングコストは、スティック1箱当たりの価格で判断するのもよいが、満足度を考えると、喫煙可能時間も考慮したい。たとえば、高/中温加熱式なら1本につき「アイコス」と「プルーム・オーラ」は約6分、「リル ハイブリッド 3.0」は約5分、「グロー・ヒーロ」シリーズは5分10秒、「グロー・ハイパー」シリーズは約4分30秒と、楽しめる時間に結構差があるからだ。