2019年末に発売されたゼブラ「ブレン」は、ノック式ボールペンでは不可避とされていた“ペン先の微細なブレ”を解消する「ブレンシステム」を搭載し、大変な話題となりました。ブレやガタつきがなく、さながら高級車でクルージングしているような落ち着いた筆記感が味わえることから、「もう『ブレン』以外を使う気になれない」というファンもいるほどです。
ただ、さすがに発売から3年以上も経つと、当初の「ブレない!」という感動も薄れて、当たり前のような感覚に。そこで今回は、「ブレン」のよさを改めて体感しやすいように作られた限定モデルを紹介しつつ、あのブレなさを味わい直したいと思います。
その限定モデルというのが、2023年2月20日から数量限定で発売されたゼブラ「ブレン ファインドメカニズム」です。一見すると単なる透明バージョンでしょ? と思ってしまいそうですが、実は透明だからこそ、「ブレン」の価値がわかりやすくなっているんです。
ボディ全体がほぼ透明仕様の限定モデル「ブレン ファインドメカニズム」(ゼブラ)
「ブレン」独自の「ブレンシステム」は、ざっくり言うと、「インナーパーツ」、「金属ウェイト」、「リターンスプリング」の3つから構成されています。これらがそれぞれ働くことで、筆記時のブレを防ぎ、安定した滑らかな筆記を実現しています。
「ブレン」の通常モデル(下)との比較。軸だけでなくゴムグリップも透明なので、ブレない仕組みがよく見えます
そもそもノック式ボールペンは、ペン先が出入りする口金先端の穴に、ある程度のクリアランス(隙間の余裕)が必要です。そのため、紙にペン先が触れると微妙に「カチャカチャ」としたブレが生まれてしまうんです。
その「カチャカチャ」を防ぐのが口金に内蔵されている「インナーパーツ」。これがペン先をがっちりホールドして、ブレを強制的に押さえ付けます。
さらに、グリップ部分に「金属ウェイト」を内蔵しており、ペンの重心を低くして筆記時の安定性を高めているのも重要なポイント。これは直接的なブレ対策というわけではありませんが、ブレない書き味を得るためには、この安定性があったほうがいいんです。「金属ウェイト」は重さわずか1.9gほどですが、これがあるのとないのでは大違い!
口金内部の白い「インナーパーツ」でリフィルを押さえ付けてブレを抑制し、グリップの下にある「金属ウェイト」で筆記安定性をアップ
そしてノック式ボールペンのブレは、ペン先だけに非ず。実は押し込んだノックパーツも、ペンを揺らすたびに「カチャカチャ」と振動します。
そこで「ブレン」では、軸の後端に「リターンスプリング」と呼ばれるバネを追加しました。このバネが突っ張ることで、ノックノブの「カチャカチャ」を押さえ込む仕組みです。
「ファインドメカニズム」唯一の不透明パーツであるノック部(上から白、黒、グレー)。この内部には、ノックを押し込んだ際にカチャつかない「リターンスプリング」を内蔵しています
実は今回はゼブラから特別に
・インナーパーツなし
・金属ウェイトなし
・リターンスプリングなし
・全部なし
という4つのサンプルを提供してもらいました。つまり、「ブレン」に対して4つの「ブレル」です。
あえて作成された4つの「ブレル」。透明だから、足りないものがよく見えます
冷静に考えたら、「ブレンシステム」は「ブレン」にしか搭載されていないので、「ブレル=一般的なボールペン」とも考えられるのですが……、いざ「ブレル」を使ってみてまず感じたのは、とにかく不安でしょうがない! ということ。
「ブレン」のブレない書き心地に慣れてしまった状態で、改めて「ブレル」を使うと、何やらヘルメットなしでバイクに乗るような、不安な気持ちに陥りました。
「ブレン」のあとに「ブレル」を試すと、書き心地が「カチャカチャ」と不安定で本当に落ち着きません
芯先がブレない「ブレン」なら、常にどっしりとラグジュアリーな筆記感が味わえます
改めて「ブレンシステム」の仕組みをおさらいし、4つの「ブレル」を使ってみた結果、「あー、やっぱり『ブレンシステム』は必要だな」という気持ちに着地した次第でした。長年の「ブレン」ファンはもちろん、まだ使ったことがない人も、ぜひ今回紹介した「ブレンシステム」を意識しながら、「ブレン」ならではの筆記感を味わってみていただきたいです。
最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。