昨今のボールペントレンドを語るうえで外せないのが、「静音ノック機能」でしょう。これは、ノック式ボールペンとは切り離せない「カチッカチッ」という耳障りなノック音を抑制することで、音ハラスメント(周囲に対して音で不快感を与える行為)対策に役立つ、というものです。
2021年末発売の静音ボールペン「calme」(ぺんてる)が話題になったことから各メーカーで開発が進み、今後の新製品にも搭載される機会は増えてくると予測されています。そこで今回は、2023年4月下旬に発売されたばかりの最新静音ボールペンを紹介しましょう。
サンスター文具から発売された「mute-on(ミュートン)」は、ゲルインクを搭載した静音ノックボールペンです。
ルックスに関しては、おにぎりのような三角軸と、長楕円のノックノブが特徴。インク色は黒のみですが、軸色は「夜更かしの猫」「セピアの午後」など、詩的な名前を冠した全8色を展開しています。
静寂を連想させる色名が付けられた静音ボールペン「mute-on」(サンスター文具)
落ち着いたシンプルなデザインは、年齢性別を問わず誰でも使いやすそう
最大の注目ポイントは、やはり独自のノック機構で実現した静音ノックでしょう。同社によれば、ノック時の操作音を同社従来品と比べて「約33%カットした」とのこと。
試しに生活ノイズ下で実測検証してみましたが、それでもノック音は50db前後と、かなり小さめ。一般的なボールペンのノック音が70db以上と出たので、筆者が計測した数値的には約30%カットという感じでした。
体感的には、数値で見えるもの以上に静か。たとえばオフィスなどでノックしても、意識して耳を澄ませない限りはまず聞こえないであろうレベルです。
他社の静音ボールペンと比較しても、ここまで静かなものは珍しく、この静音性能にはかなり驚かされました。
耳障りな高音域がカットされているため、ノック音はほとんど気になりません
また、ノックに連動して、上下に動く「ノック解除忘れ防止クリップ」もなかなか面白い機能です。
ノック状態だとクリップが軸に沈み込むように下がるため、シャツの胸ポケットなどに挿すことが物理的にできなくなります。これによって、ペン先を出しっぱなしでポケットに挿し、シャツにインク染みを付けるようなトラブルが回避できるというわけ。
ノックと連動してクリップがオン/オフされる機能は、ペンを胸ポケットに挿して運用する場合に安心です
ノックを解除すると、もちろんクリップが浮き上がって使えるようになります。ただ、実際に使ってみた感覚としては、「ノック解除忘れに劇的に効く!」というほどのものではなかったです。そもそも、そんなにノック解除忘れしないし。
それよりも、単に、クリップが浮いたり沈んだりする様子を見て「かわいくて楽しい!」とウキウキする要素のほうが大きいかも。
実のところ「mute-on」を試用してみて最も気に入ったのは、静音ノックでも動くクリップでもなく、その書き味です。「mute-on」専用リフィルは、たっぷりダクダクと出る強インクフローが特徴的で、サラサラと軽快に気持ちよく書けました。
ただし、「フローがよい=0.5mm径の割には線が太る」ということなので、そこが気になる人は、事前に試筆してみたほうがよいでしょう。
インクがリッチでとてもサラサラ。この書き味はかなり万人受けするのでは
発色はフラットな黒がクッキリと出ており、筆跡の視認性もかなり優秀。サンスター文具は筆記具専門メーカーではありませんが、最近のゲルインクボールペンのトレンド(書き味や発色)をきっちりと分析して作り込んでるな、という印象です。
ぶっちゃけ、ここ数年、サンスター文具のゲルインクボールペンは全体的によくできており、ハズれた記憶がありません。
かなり先端のほうまでエラストマーで包まれたロンググリップ。自分の好みの位置で握りやすくなっています
さらに、「握りが安定する三角軸+軸中から先端までどこでも握れるロンググリップ」の組み合わせも、サラサラした書き味との相性が抜群!
これだけ気持ちよく書けるボールペンに、現時点でトップクラスと言われる静音ノックが付いて264円(税込)というお値段は、「ちょっとお得すぎない?」と感じます。
最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。