本連載は、文房具ライターのきだてたくが、「価格.comマガジン」の編集担当者に、便利な文房具をリモートで必死にプレゼンする様子を実況。もし紹介された製品の中で「欲しい」と思うものがあったら、それを編集担当者が実際に購入!……という自腹買い企画です。
第24回は、「1本は持っておきたい便利ハサミ」をテーマに、3製品をプレゼン!
「価格.comマガジン」の編集担当・マキノ(左)に対し、文房具ライターのきだてたく(右)が、プレゼン!
さすがに自分でも「そら多いな」という自覚はあるんですが、先日ちょっと数えてみたら、我が家にはちゃんと使っているハサミが14本ありまして
そら多いな(笑)
僕は文房具ライターという仕事柄というのもあって多いんだけど、逆に「家の中に1本もハサミがない」という人も少なくないみたいで……
へー、そんなことあります? ひとり暮らしだとありえるのかな
封書を手でバリバリ破って開けるような人もいるからなぁ……。あまり必要ないと考えられているのかもしれないけど、持っていてじゃまになるモノでもないし。ハサミは少なくとも1本ぐらいあったほうが便利でしょ
それはそうですね
なので今回は、1本持っておくならこれ、という便利なハサミを紹介しようかなと思います
ちなみに、うちのハサミはこれです
おっ、スコッチの「チタンコートシザーズ」だ。マキノさん、いいハサミ持ってんじゃん
今のところ、これで不満はないですね
プレゼンしづらくなったけど、まぁいいや(笑)。今回は“ハサミ持っていない層”の読者に向けて、「1本は持っておきたい便利ハサミ」を紹介していきましょう
でも、ハサミ持っていない人って、今までずっと「なくてもやってこれてる」わけじゃないですか。そういう人に改めてハサミの必要性を説くのって難しくないですか
それな。なのでひとまず導入として、ハサミ以外の機能からアピールしていきますよ。こちらはクツワの「二刀派ハサミ」と言いまして、岐阜県関市の職人仕上げをうたっているハイグレードなやつです。切れ味はさすがに優秀ですよ
「切る」と「開梱」をスムーズにこなす「二刀派ハサミ」(クツワ)。本体カラーは写真の「シルバー」のほか、「ブラック」も展開しています
出た! 刃物と言えばやっぱり関市ですよね。それはいいとして、なんか見た目はすごく普通のハサミというか。何か特別な機能を持ってるような気配はしませんね
ハサミの刃先に注目してください。ちょっと違うところありません?
……なんか刃の長さがちょっと違う?
刃を合わせると、微妙に長さが違うのがわかります
そうそう。長いほうの刃先が4mmほど飛び出してるんですよ。この長い刃を使って、ダンボールの開梱ができます
おおー、ダンボールオープナーになるんだ。普通のハサミでもダンボール開けようとする人はいますけど、あれって危ないですよね
刃を開いた状態でハサミを持つから、怪我する可能性が高いんですよ。対してこちらは、刃を閉じた状態で、梱包テープにザクッと突き刺してそのまま切り開ける。だから、危なげなく簡単に開梱できるというわけ
そのまま突き刺しちゃうんですね
長いほうの刃をザクッと梱包テープに突き刺して切れば、スムーズにダンボールが開けられます
他社からもオープナーになるハサミは発売されてるんだけど、開梱モードにするにはスイッチを押しながらグリップを握り込んで……みたいな操作が必要なんですよ。安全性はより高いんだけど、微妙に手間なんですよね
その操作を覚えてないと使えないですしね
特にオープナーに慣れてない人だと「そんな面倒くさいことするぐらいなら、手でバリバリ開けるわ」とか思っちゃうでしょ。何も考えずに突き刺すだけのほうが、圧倒的にわかりやすい
ところで、さっきから気になってるんですけど、なんか刃に変な模様が付いてません?
これは、小さなくぼみがいっぱい並んでいるんですよ。ディンプル(くぼみ)構造刃と言いまして、これによってガムテープなんかを切ったときに、ベタベタした粘着材が刃に付着しづらくなる効果があります
刃の側面に並んだディンプルのおかげでテープのベタベタが残りにくく、結果として切れ味が長持ちするという仕組み
あー、古いハサミだと、刃の側面にベタベタがくっついて、刃が開きづらくなっていることとかありますよね
ディンプルによって刃同士の接触面積が減らせるので、そういうトラブルが起きづらいという仕組みなんだ。メンテナンスに気を遣わなくてもいいのはラクでしょ
なるほど、ハサミを扱い慣れてない人には、そういうのもポイントになりそう
次に紹介するのは、コクヨ「2Way携帯ハサミ ハコアケ」です
コクヨの「ハコアケ」シリーズって、確か開梱機能付きとして最初に発売されたハサミですよね。前に見た記憶があるぞ
そう。そのシリーズが最近リニューアルされて、新たにこの「2Way携帯ハサミ」がラインアップに加わったんですよ
普段は刃が中に収納されていて携帯しやすい「2Way携帯ハサミ ハコアケ」(コクヨ)。ラインアップは、写真の「スタンダード」(サンドベージュ)のほか、スタンダード刃にチタンコートを施した「チタン」(カーキ)も展開しています
じゃあ、これもダンボールを開ける機能が付いてるんだ
普段はこのハンドル内部に刃が収納されてるので、使うときはスライダーを動かして刃を押し出します。で、MAXまで押し出すと「ハサミモード」、途中のカチッとクリック感のあるところで止めると「開梱カッターモード」になる、という仕組みです
スライダーの位置で、「ハサミモード」と「開梱カッターモード」を使い分けられます
「開梱カッターモード」は、刃が開ききらずに半分ほど飛び出している状態ですね
刃先を見ると、四角いほうの刃の角が少しだけ突き出してるでしょ。ここを梱包テープに突き刺して切ると、箱が開けられます
なるほど、サクッと刺さりますね
刃の角を突き刺してスライドさせると、軽い力で梱包テープを切り開けられます
これで箱の上面に貼られたテープを切り開いたら、次は側面のテープを切るんですけど……ハンドルの下側に、スリットが開いてるのが見えます? このスリットを箱の角に沿わせると、スパッと側面のテープが切れるんです
へー! よくできてる!
慣れないと切りづらいダンボール側面のカットも、角用ガイドスリットを使えば簡単にできて失敗なし!
箱の側面のテープって、刃をうまく入れるのが意外と難しいので、切り損なうこともあるんですよね。でも、この角用ガイドスリットを使えば、まず失敗しません
オープナーとしてめちゃくちゃ優秀ですね。ハサミとしてはどうなんです?
携帯ハサミは構造的に力が込めづらいから、普通のハサミよりはちょっと切りにくいのは間違いないかな。それでも、梱包用のPPバンドぐらいなら十分に切れますよ
あの硬いバンドが切れるなら、普段使いでも問題ないかな
あと、携帯ハサミだからこそ、ハサミのない家庭に便利というポイントがあるんだ
そう、そこがちょっと気になっていたんです。携帯ハサミって、文字どおり持ち歩いて外出先で切る用でしょ? 家の中で使うことって、あんまりなくないですか
実はそうとも限らなくて。ハサミがない家庭は、当然ながらハサミを常に置いておく定位置が定まっていないから、紛失しやすい。この「ハコアケ」はストラップホールが開いてるから、ヒモを付けて、目立つ場所に吊しておけるんですよ
なるほど、そういうメリットもあるんだ
刃はハンドルに収納されてるから、吊しておいても危なくないしね
ここまで2本連続で開梱用として使えるハサミが出ましたけど、もう1本もそんな感じですか?
いや、最後はシンプルかつ正統派なハサミを出しますよ! プラス「フィットカットカーブ 大型タイプ チタン3D刃」です
正当派でシンプルによく切れる「フィットカットカーブ 大型タイプ」(プラス)。写真の「チタン3D刃」のほか、「3D刃」、「ノーマル」の3種類をラインアップしています
「フィットカットカーブ」は有名ですよね
日本のハサミの中では売り上げナンバーワンだそうで、間違いなく国産ハサミのトップブランドですよ。で、その新ラインアップとして出てきたのが、この大型タイプです
見た目からして全体的にゴツい印象だなー
実のところ、ハサミを1本だけ持つとしたら、これぐらい大きいほうが便利なことも多いんだ
大きいほうが便利? と言いますと?
たとえば、資源ゴミにダンボールを出すとき、まとめやすいように切って分解することがあるでしょ。そういう場合も刃渡り85mmあると、バサッと一気に切りやすい。大型ハンドルも指が3本入るサイズなので、力を入れてグイグイ切れるし
刃全体に力が伝わってよく切れる「ベルヌーイカーブ刃」を採用。ダンボールでも、刃先まで使って大きくバサッと切れます
そう聞くと確かに、普段使いするのに小さなハサミが便利、みたいなシーンってあんまりなさそう
なので、ほかの機能のないシンプルなハサミを買うのであれば、最初の1本はこれぐらい大きいのがおすすめ。大体は大きいハサミのほうが頑丈で壊れにくいしね
大型ハンドルと、ガタ付きの出にくいカシメ(刃を束ねる接合部)の組み合わせは、グッと力を込めて切っても安定しやすい
ところで「チタン3D刃」っていうのは何なんですか?
「フィットカットカーブ 大型タイプ」には、「チタン3D刃」、「3D刃」、「ノーマル」の3種類が同時リリースされています。今回は切れ味や使い勝手を考慮して、最上位モデルの「チタン3D刃」を取り上げてみました
チタンというのは、表面にチタンコーティングされているってことですよね
チタンコートは切れ味が長持ちして、サビも出づらいメリットがあります。で、「3D刃」というのは刃の側面が湾曲した形状で、刃の接触面積が最小になる構造です
微妙に反った「3D刃」なら、切ったあとに粘着材を引きずりにくく、ベタベタしづらい!
最初の「二刀派ハサミ」のときも、似たような話が出ましたっけ
刃に粘着材が残ると、切れ味がガクンと落ちるから、グルーレスは重要なんだよ。刃のベタつきをキレイに取ろうとしたら、ハサミ専用の洗浄シートとか溶剤が必要になるし
そこまで手間かけることを考えたら、最初からベタつきにくい刃を選ぶのが正解ですよね
僕はハサミのメンテナンスするのも好きなんで、むしろベタベタがたっぷり付着してくれたほうが楽しいんですけども
それは変態だなぁ……
どうですか? 今回のハサミで気になるの、ありました?
今のところ、「フィットカットカーブ 大型タイプ チタン3D刃」一択ですよ
でも、マキノさんが普段使ってる「チタンコートシザーズ」と用途的には割と被るよ?
そうなんですけど、「ダンボールをガンガン切りやすいハサミ」っていうところが気になるんですよねー
開梱機能付きはどうです?
以前紹介したプラスの「ローラーケシポン 箱用オープナー」がかなり気に入っているんで、そこは新たに追加する必要を感じてなくて
あー、だいぶ前に紹介したオープナーですね。お気に入りがあるなら仕方ないか
ただ、最初にきだてさんが言っていた「ハサミを持ってない人」がまず買うべきハサミという点では、オープナー付きの「二刀派ハサミ」と「2Way携帯ハサミ ハコアケ」はめちゃくちゃアリだと思うんですよ
そこは間違いないですよ。なのでマキノさん以外の人はそっちも検討してください
「フィットカットカーブ 大型タイプ チタン3D刃」を自腹買いし、さっそくダンボールをカット。私物の「スコッチ チタンコートシザーズ」と比べると、どちらも切れ味は抜群だが、やはりサイズの大きい「フィットカットカーブ 大型タイプ チタン3D刃」のほうが力をあまり入れなくても切り進められると感じました。あと、ダンボールのように硬いものを切るために力を入れたとき、「フィットカットカーブ 大型タイプ チタン3D刃」のほうがハンドルが大きいので持ち手が痛くなりにくいのもメリットです。子どもの使用は厳しいかもしれませんが、「自宅の1本」としては間違いない性能です!
最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。