来年2020年6月まで続くキャッシュレス・ポイント還元事業(以下、ポイント還元事業)の活用方法を伝える短期集中企画の4回目。今回は本事業で「交通系ICカード」を使う方法を解説します。
▼キャッシュレス・ポイント還元事業 短期集中企画
1. これならわかる!「キャッシュレス・ポイント還元事業」の直前"集中解説"
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2. ポイント還元事業を体験した記者が正直レビュー ネックは「対象店探し」
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3. 国際ブランドや還元方法の違いなど ポイント還元事業に役立つクレカの基礎知識
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ポイント還元事業ではクレジットカードやQRコード決済に加えて電子マネーでの支払いもポイント還元の対象です。電子マネーにはセブン-イレブンの「nanaco」、NTTドコモの「iD」、JCBの「QUICPay」、楽天の「楽天Edy」などに加え、「Suica」や「PASMO」など交通機関が発行する「交通系ICカード」と呼ばれるジャンルがあります。電車・バス運賃の支払いに使えるほか、街中のリアル店舗で使える場所が増えており、みなさんにとってもなじみのある存在ではないでしょうか?
交通系ICカードは全国の鉄道・バス会社などが発行しています。なかでも下記の10種類が代表的な存在です。
▼北海道「kitaca(キタカ)」
▼関東「Suica(スイカ)」「PASMO(パスモ)」
▼中部「TOICA(トイカ)」「manaca(マナカ)」
▼近畿「ICOCA(イコカ)」「PiTaPa(ピタパ)」
▼九州「SUGOCA(スゴカ)」
▼福岡県内「はやかけん」「nimoca(ニモカ)」
これら10種は2013年より「全国相互利用サービス」を始めており、どれか1枚を持っていればほかのカードの営業エリアでも利用することができます(※)。
※ただし、東京(Suica)〜沼津(TOICA)など、エリアをまたいでの利用はできません。
(注)ショッピングも全国で可能。ただし例外あり
「全国相互利用サービス」を実施している交通系ICカードなら、ほかのICカードエリアでの鉄道・バスの利用に加え、加盟店での買い物にも利用できます。ただし「PiTaPa」のみほかのエリアでの買い物での利用はできません。
金と赤の「IC」のロゴマークが「全国相互利用サービス」の目印
ポイント還元事業では電子マネーでの決済もポイント還元の対象ですが、その電子マネーを提供している企業がポイント還元事業に参加していることが必要です。メジャーな交通系ICカード10種のポイント還元事業への参加状況はどうなっているのか? 下記の表にまとめました。
各カードの発行枚数は「月刊 消費者信用 2019年9月号」より。※「manaca」は2つの会社から発行されており、発行会社によって対応が異なります。詳しくは本文にて解説します
ポイント還元事業に参加している交通系ICカード発行会社は、全11社(manacaは2社から発行されているため合計11社)中7社です。参加している会社の交通系ICカードを使ってポイント還元事業の対象店で支払うと5%ないしは2%のポイント還元を受けることができます(各対象店の還元率に準拠。また対象店が各交通系ICの支払いに対応していることも還元を受ける条件)。ただしポイント還元事業に参加している7社も、ポイント還元を受ける方法、還元されるポイント、ポイントの利用期限などが一律ではなくユーザーには個別の対応が必要です。参加している各社を北から順に説明していきます。
〈index〉
■関東
Suica(スイカ)
PASMO(パスモ)
■中部
manaca(マナカ)
■近畿
ICOCA(イコカ)
PiTaPa(ピタパ)
■九州
SUGOCA(スゴカ)
nimoca(ニモカ)
画像はSuica公式サイトより
JR東日本の営業エリアを中心に広く普及しているSuicaは最も有名な交通系ICカードと言っても過言ではないでしょう。2001年の誕生以来発行枚数は右肩上がりに増え続け、現在約7,600万枚にまで達しています。2019年10月1日から始まっている「乗車するとポイントが貯まる」サービスも注目されています。
参考:乗ると貯まる鉄道版マイル! JR東日本「乗車ポイント」のお得な乗り方研究
https://kakakumag.com/money/?id=14441
JREポイントサイト(https://www.jrepoint.jp/)に、持っているSuicaの番号を登録する必要があります。
JR東日本の共通ポイントである「JREポイント」で還元されます。JREポイントは商品への交換や加盟店での買い物に使えるほかSuicaへチャージすることもできます。
Suicaを利用した月の翌月上旬に利用した1か月分のポイントがまとめて還元されます。
ポイントを貯めたり使ったりした日を起算日として2年後の月末まで自動的に延長されます。
Suica
公式サイト:https://www.jreast.co.jp/suica/
Suicaのポイント還元事業特設サイト:https://www.jrepoint.jp/information/suica_cashless_pointback/
画像はパスモ公式サイトより
2007年に誕生し、現在発行枚数は約3,800万枚。交通系ICカードの中でSuicaに次ぐ枚数を誇ります。関東の鉄道11事業者とバス19事業者が株主で、首都圏の私鉄沿線を中心に普及しています。東京メトロ、東急など、PASMOを使って乗車するとポイントが貯まる交通機関もあります。
参考:PASMOなど、交通系ICカードで乗れば貯まる! 「乗車ポイント」のお得な貯め方を解説
https://kakakumag.com/money/?id=13802
Suicaと同じく公式サイト(https://cst.pasmo-service.jp/cstweb/PS1010001)からPASMOを登録する必要があります。
特に名称はなく「ポイント」と表現されています。
下記の通り3か月ごとにポイントが還元される仕組みです。各集計期間が終了したタイミングで登録したメールアドレスに通知が届きます。
第一期:2019年10月1日〜2019年12月31日の買い物分 ⇒ 2020年1月上旬に還元
第二期:2020年1月1日〜2020年3月31日の買い物分 ⇒ 2020年4月上旬に還元
第三期:2020年4月1日〜2020年6月30日の買い物分 ⇒ 2020年7月上旬に還元
この段階ではあくまでウェブのアカウント上にポイントが還元された状態のため、実際に使うにはポイントをPASMOにチャージする作業が必要です。ウェブ上ではできず「登録しているPASMO」と「上記の通知メールに記載されているQRコード」を駅や定期券販売窓口に持参し、その場で担当者にチャージしてもらう必要があります(交換場所は通知メールに記載予定です)。
現時点で期限は明らかにされていませんが、上記の通知メールに有効期限の記載がありそれを過ぎるとポイントは失効するとアナウンスされています。
PASMO
公式サイト:https://www.pasmo.co.jp/
PASMOのポイント還元事業特設サイト:https://www.pasmo-point.jp/
画像はmanaca公式サイトより
manacaは名古屋エリアを中心に普及しています。発行枚数は約680万枚。株式会社名古屋交通開発機構と、株式会社エムアイシーの2社から発行されており、正式には前者が発行するカードの表記は「マナカ」、後者は「manaca」となります。いずれも電車やバスの乗車で利用する分には違いはありませんが、ポイント制度やポイント還元事業への参加状況については対応が分かれています。
ポイント還元事業に使えるのは株式会社エムアイシーが発行している「manaca」のみ。株式会社名古屋交通開発機構の発行する「マナカ」は対象外です。「manaca」には「ミュースターポイント」というポイントプログラムが採用されています。加盟店においてmanacaで支払うと税込200円につき1ポイントが貯まる仕組みです。「マナカ」にはこのポイントプログラムは付いていません。下記の通りどの交通機関で発行するかによって発行会社が変わります。
株式会社エムアイシーのmanacaが作れる交通機関
・名鉄電車
・名鉄バス
・豊鉄渥美線
・豊鉄市内線
・リニモ
株式会社名古屋交通開発機構のマナカが作れる交通機関
・名古屋地下鉄
・市バス
・あおなみ線
・ゆとりーとライン
以降、本稿では株式会社エムアイシー発行のmanacaに絞って記事を進めていきます。
manacaを事前にミュースター会員(https://my-mustar.meitetsu.co.jp/user_menu/MemberJoinEntry.aspx?_ga=2.253792840.1773709368.1572320587-1057945735.1572320587)に登録することが必要です。
「ミュースターポイント」で還元されます。mancaへのチャージ(500ポイント〜)や、名鉄百貨店などでの買い物、提携先ポイントとの交換に利用できます。
利用月翌月中に1か月分のミュースターポイントがまとめて還元されます。
最終ポイント付与日または最終ポイント利用日の翌年同月末日まで。
manaca
公式サイト:https://manaca.jp/
manacaのポイント還元事業特設サイト:https://mustar.meitetsu.co.jp/cashless-manaca-mustar/
画像はICOCA公式サイトより
発行枚数は約2,100万枚を突破。Suica、PASMOに次ぐ数となっています。JR西日本の営業エリアを中心に普及していますが、富山、和歌山など自社路線のない地域へも積極的に利用エリアを広げています。また、Suica、PASMOと同じく乗ると貯まる「乗車ポイント」を採用しています。
参考:PASMOなど、交通系ICカードで乗れば貯まる! 「乗車ポイント」のお得な貯め方を解説
https://kakakumag.com/money/?id=13802
ICOCAポイントサービス(https://www.jr-odekake.net/icoca/guide/point/service.html)の利用登録を事前に済ませる必要があります。登録は自動券売機もしくはインターネット上で行います。
「ICOCAポイント」で還元されます。ICOCAにチャージすることで交通運賃の支払いや買い物に使用することができます。
3か月に1回の頻度でポイントが還元されます。還元されたICOCAポイントはJR西日本の駅に設置してある自動券売機などでICOCAにチャージすることができます。
有効期限は設定されていません。ただし25か月以上チャージまたはポイントチャージがない場合は利用登録が解除されます。その後に再度登録することでポイントを使うことが可能です。
ICOCA
公式サイト:https://manaca.jp/
ICOCAのポイント還元事業特設サイト:https://www.jr-odekake.net/icoca/
画像はPiTaPa公式サイトより
近畿を中心に普及し発行枚数は約330万枚。交通系ICカードとしては唯一「ポストペイ(後払い)方式」を採用しているのが特徴で、使用した分だけ後から口座引き落としで支払います。他の「プリペイド式」の交通系ICカードのように事前にチャージする必要はありません。ただし、PiTaPaエリアおよびICOCAエリアの外のエリアで使用する際は、ポストペイが使えないため事前チャージが必要です。
特に申請や登録などは必要ありません。
「ショップdeポイント」で還元されます。PiTaPaを使ったショッピングで貯まるポイントで、一定額(後述)が貯まった段階で交通費のポストペイ分から自動で値引きされます。なお1Pの価値は0.1円です。その他、提携先ポイントへの交換も可能です。
還元されたショップdeポイントは500ポイント(50円相当)貯まるごとに自動的にPiTaPaポストペイエリアでの交通料金が50円引きになります。余ったポイントは翌月以降に繰り越されます。
ショップdeポイントが還元された年の2年後の3月末日まで。
※2019年11月に還元 → 2021年3月末日まで
PiTaPa
公式サイト:https://www.pitapa.com/
PiTaPaのポイント還元事業特設サイト:https://www.pitapa.com/cashless/member.html
画像はSUGOCA公式サイトより
2009年にJR九州がスタートさせた交通系ICカード。発行枚数は約290万枚です。営業エリアは九州全域に広がっていますが、サービスエリアは「福岡・佐賀・大分・熊本エリア」「長崎エリア」「鹿児島エリア」「宮崎エリア」の4つに分かれています。各エリアをまたいでの利用ができないので注意が必要です。
特に申請や登録などは必要ありません。
「JRキューポ」で還元されます。JRキューポはJR九州グループの共通ポイントです。SUGOCAへのチャージや加盟店の買い物券への交換、提携先ポイントへの交換なども可能です。
利用月翌月の下旬に1か月分のポイントがまとめて還元されます。
ポイントが還元された月の2年後の月末まで。
SUGOCA
公式サイト:https://www.jrkyushu.co.jp/sugoca/
SUGOCAのポイント還元事業特設サイト:https://www.jrkyushu.co.jp/sugoca/pressrelease/__icsFiles/afieldfile/2019/09/18/annai.pdf
画像はnimoca公式サイトより
九州を代表する私鉄である西日本鉄道(西鉄)の子会社、株式会社ニモカが発行。福岡県内を中心に普及し発行枚数は約400万枚です。乗ると貯まる「乗車ポイント」を採用しており1か月の間に乗った回数によって還元率が上がるのが特徴です(路線によって還元率が異なり西鉄の場合は20回までは1%、40回までは2%、それ以上だと3%を還元)。
特に申請や登録などは必要ありません。
「nimocaセンターポイント」で還元されます。このままでは使えず、nimocaセンターポイントからnimoca電子マネーへの交換が必要です。交換はバス・鉄道の窓口や、ターミナル・百貨店などに設置されているポイント交換機で行うことができます。
利用月の翌月20日ごろに1か月分のnimocaセンターポイントがまとめて還元されます。
還元された日の翌年の12月末日まで。
nimoca
公式サイト:https://www.nimoca.jp/
nimocaのポイント還元事業特設サイト:https://www.nimoca.jp/information/archives/374
全国相互利用サービスを導入している10種の交通系ICカードの、1日あたりの平均決済件数は2019年8月に900万件を突破しました。この数字は、ここ数年1年ごとに100万件ずつ伸び続けており、2019年4月に1日あたり800万件を超えたと報じられたばかり。ここに来て利用件数の増加に拍車がかかっているようです。「交通系」という名称がついているものの、暮らしの中での活用シーンが広がり、交通系ICカードがユーザーにとって身近な存在になっているのは間違いでしょう。実際、クレジットカードやQRコード決済よりも使いやすさを感じている人も多いのではないでしょうか? 今回紹介した交通系ICカードがあれば全国のあらゆる場所で国のポイント還元を受けることができます(PiTaPaを除く)。本稿を、お持ちの交通系ICカードの還元方法のチェックや、新たに交通系ICカードを作る際の参考にしていただければ幸いです。
なお交通系ICカードに対応している対象店はポイント還元事業の公式サイトで調べられます(https://map.cashless.go.jp/search)。対象店の検索結果画面左の「決済方法」で、「電子マネー / プリペイド」→「交通系IC」にチェックし「検索結果をみる」をクリックすると交通系ICカードに対応した対象店が表示されます。
大阪駅近くで交通系ICカードに対応した対象店を検索した結果の画面。PiTaPaを除く6種の交通系ICカードに対応しているのがわかります
※各カードの項ではふれませんでしたが、大手コンビニの「2%即時割引店」の場合、交通系ICカードで支払っても、各社のポイント還元ではなく「2%即時割引」が適用となります。