ソニーモバイルの「Xperia Touch」は、タッチ操作可能なプロジェクターを備える、斬新なAndroidスマートデバイス。そんな「Xperia Touch」を、2017年6月9日より開始される予約販売開始に先駆けて、使用する機会を得た。家庭における操作性や設置性、子どもや家族など、複数人が使うという視点からの使用感をお伝えしよう。
プロジェクターで投影した画像に対し、タッチ操作が行えるという新型デバイス「Xperia Touch」。この注目デバイスを実際に家庭で使ってみた
まず、「Xperia Touch」の概要から解説しよう。ボディは、約69(幅)×134(高さ)×143(厚さ) mmで、重量は約932gという中に、1366×768の表示に対応するタッチ操作対応プロジェクターを内蔵する。プロジェクター自体は0.37型のSXRDイメージセンサーを使った3原色液晶シャッター投写方式で、23〜80インチの投影に対応。スピーカー、1,200mAhのバッテリー、Wi-Fi通信機能などを備える。表示デバイスとして、液晶ディスプレイの代わりにプロジェクターを備えている点が異色だが、基本的にはAndroidタブレットの一種と言ってよい。
大きめな弁当箱のようなボディ、前面にプロジェクターが配置されている
金属のメッシュで覆われボディ背面。うっすらとゴールドの塗装が施されている
手元の計りで計測した重量は928g。プロジェクターとしても軽量だ
最大の特徴であるプロジェクターのタッチ操作であるが、10点までのマルチタッチに対応。タッチ操作は、本体に内蔵される赤外線センサーと専用カメラを組み合わせて、60fpsという高速スキャンで指の動きを検知する。そのため、タイムラグはほとんどなく、操作に違和感はない。なお、タッチ操作に対応するのは、最小投影サイズ23インチ表示のみで、それ以上の画面サイズになると、感度が低下して操作性が急激に落ちる。そのため、大画面で操作する場合は、別途Bluetoothキーボードなどを用意する必要がある。
投影されるスクリーンは10点までのマルチタッチに対応する
壁に投影するときは、レンズ部分を上向きに設置。画面サイズは壁との距離で調節する
本機に搭載されるAndroidのバージョンは 7.0で、Google Playにも対応する。タブレットに対応するアプリなら本機でも基本的に動作するのでコンテンツ不足の心配はあまりない。基本性能を見ると、Qualcommのミドルハイ向けヘキサコアCPU「Snapdragon 650 MSM8965(1.8GHz×2+1.4GHz×4)」に、3GBのRAM、32GBのストレージ、256GBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを組み合わせている。
ボディ上面には、電源とボリュームの各ボタン、カメラ、NFCポートなどが配置されている
充電用のUSB Type-Cポートと、映像入力用のmicroHDMIポートを搭載している
増設用のmicroSDXCメモリーカードスロットは背面に引き出し式のトレーとして備わる
では、本機最大の特徴であるタッチ操作対応プロジェクターの使い勝手を検証しよう。イメージセンサーや光学系は、ソニーの「Life Space UX(SLPX-P1)」と共通しており、輝度は100lmだ。周囲が暗いほうが確かに見やすいが、直射日光の当たらない室内ならば、さほど場所を選ばない。タッチ感度については思った以上に自然だが、スクリーン上にあるゆがみやうねり、異物などが感度にズレをもたらすことがある。新しい場所で使う場合、本機に備わるタッチ位置のキャリブレーション機能を使ってまめに調整した方がよい。なお、大画面を投影する場合は輝度の低下が目立つので、カーテンを使い、照明も暗めにするなどの配慮が欲しい。
画質や操作性を追及するのであれば、白くてフラットな床やテーブルなどに投影するのがベストだ。簡易的なスクリーンとしてコピー用紙や包装紙の裏紙を使ったが、薄くて波打ちやすいため、使い勝手がよくなかった。紙をスクリーンにするのであれば、23インチの画面をカバーできるA3以上のカレンダーやポスターなど厚くて硬い紙の裏紙が適当だろう。
本機のプロジェクター部分は、「Life Space UX」と共通。すぐ手前のテーブルや壁などに映像を映し出せる
最大80インチの投影が可能。輝度が100lmしかなく、画面を広くすると輝度が不足するので、部屋を暗くする必要がある。背景が白ならば、画質はかなり良好
画質と操作性を追及するなら、白くて、フラットかつ硬い机や床などがベストだろう
家で使った際に気になったのは、画質やタッチ感度よりもむしろ駆動音の大きさである。本機にはプロジェクターの冷却用ファンが備わっているが、これが電源オンおよび待機の間は回転し続ける。このファンの音がかなり気になった。また、今回使用したのは開発中の試作機ではあったが、ACアダプターから生じるノイズ、いわゆる「コイル鳴き」がかなり目立った。このほか、ACアダプターのケーブルが1mほどと短いので、設置場所も意外と苦労した。これらの点は改良を望みたい。なお、本機は電源をUSB Type-Cから取るが、USB Power Delivery仕様の45W(15V/3A)なので、スマートフォンなどで使われる15W (5V/3A)のUSB Type-CのACアダプターは使いまわすことができない。
同梱されていたUSB Type-CのACアダプター。ケーブルがやや短く、延長コードを使う機会が多かった
続いて、5歳の子どもに実際に「Xperia Touch」を使わせてみた。子どもにタブレットやスマートフォンを使わせる際に気になるのは落下による破損であろう。その点、本体をもつことのない本機なら、本体を落下させることは考えにくいし、投影された画面をラフにタッチしても問題はない。加えて、子どもが今タブレットで何をしているのかを離れた場所からでも把握しやすいのは、本機ならではのメリットだ。“子どもも使うタブレット”という点で見ると本機はかなり魅力のある存在だ。
また、ピアノやドラムのアプリを使ってみたが、画面サイズに余裕があるので自然に操作できた。本体に備わるスピーカーの音質も一般的なタブレットよりも格段に良好で、Google Playでも配信されている映画を視聴させたが、せりふも聞き取りやすく、こうした動画コンテンツの再生用途としても満足感が高かった。
ピアノアプリを使用。濃い目の木製のテーブルの上で使用したので、色かぶりしてしまっているが、23インチという画面サイズのおかげでキーの操作は自然に行えた
今何をしているかが、離れた場所からでも把握しやすい。親の目配せのきいている状態で、子どもに自由に遊ばせられる
次にゲームアプリで遊んでみた、本機で投影できる23インチの大画面にあわせて操作すると必然的に体が動くうえに、テーブルゲームやエアホッケーなど対戦ゲームの場合、楽しさが倍増する。遊びなれたゲームでも、ユーザーインターフェイスが違うため新しい楽しさが発見できたのは収穫だった。また、複数人で楽しむコンテンツのひとつとして、ビデオチャットも有望な用途だろう。本機にはカメラやマイクも搭載されているので、プラスの出費は不要で、大画面を使った多人数のビデオチャットが利用できる。加えて本機は、microHDMIの入力ポートも備えており、ブルーレイレコーダーやパソコンと接続すれば普通のプロジェクターとしても使うことができる。こうしてみると本機の活用シーンは思った以上に幅広い。
23インチという大画面と、その画面をタッチできるユーザーインターフェイスの違いにより、遊びなれたゲームアプリでも違った楽しさが感じられた
Androidに限らず、タブレットやスマートフォンなどのスマートデバイスは、個人で使うことが前提になっている。だが、Xperia Touchは、複数人で使うことに適しており、子どもや友達などと使うのに向いている。また、ボディにガラスが多く使われるスマホやタブレットは子どもに使わせるには少々繊細な機器だが、本機なら落下の心配が少なく、スクリーンをいくら叩いたところで、本体が壊れることはない。こういう視点からも、子どもも使うスマートデバイスとして、高い適性を備えている。
購買を考えているユーザーの中には、本機の価格を気にしている人もいるだろう。発売前の製品ではあるが、2017年5月26日現在の価格.com最安価格は16万円を超えており、数万円もあれば買えるAndroidタブレットと比較すると、非現実的と思えるほど高価だ。だが、本機はHDMI端子を備えた持ち運び可能なモバイルプロジェクターという側面もある。本機とプロジェクター部分が共通な「Life Space UX」の市場価格が8万円台であることを考えれば、この価格も妥当と思える。