2017年6月15日に発売された、NTTドコモのスマートフォン「Galaxy Feel SC-04J」(サムスン製。以下Galaxy Feel)は、新しい割引メニューである「docomo with」の対象機のひとつとして、そのコストパフォーマンスの高さに注目が集まっている。しかし、それだけではない。本機には「実使用時間」が約170時間という、驚きのバッテリー性能を備えているという一面もあるのだ。そのバッテリー持ちを含めさまざまな面から、Galaxy Feelを12日間使って検証を行った。
料金に話題の集まるGalaxy Feelだが、カタログスペックを見る限り、バッテリー性能は歴代のドコモのスマートフォンの中でも抜きん出て高い
「Galaxy Feel」は、720×1280のHD表示に対応する約4.7インチの有機ELディスプレイを備える、NTTドコモ専売のスマートフォンだ。ボディサイズは、約67(幅)×138(高さ)×8.3(厚さ)mm、重量は約149gで、NTTドコモの今夏モデルではもっともコンパクトな製品となっている。そのボディは、側面を金属製のフレームで囲い、裏面をガラスで覆うというもので、サイズは違うがサムスン「Galaxy S8」シリーズや、ソニーモバイル「Xperia XZ Premium」、HTC「HTC U11」などの高性能モデルのボディ構造とよく似ている。なお、IPX5/8等級の防水仕様と、IP6Xの防塵仕様をクリアしている点も、それらの高性能モデルと似ている点だ。
背面は、上位機種の「Galaxy S8」シリーズと同じくガラス製。とてもなめらかな感触だ
指紋認証センサーを兼ねる物理式のホームボタン。左がタスク、右がバックという、Androidスマートフォンの一般的インターフェイスとはボタンの並びが左右反対だ
左側面にボリュームボタンが配置される
右側面に電源ボタンが配置される。なお、Galaxy S8シリーズに備わるサムスン独自のAI機能「Bixby」用のボタンは装備されない
日本独自モデルとして、国内では今でもニーズの高いストラップホールが備わっている
本機が採用する有機ELディスプレイは、有機ELの欠点である輝度の不足および、輝度の変化による色のかぶりがかなり改善されており、液晶ディスプレイと比較しても違和感のない完成度だ。ただ、「Galaxy S8」など最新の高性能モデルと比べると、画面解像度が低いため表示はやや粗く、特に細かな文字の表示ではつぶれやすくなる面もあった。また、サブピクセルの配列が原因で起こる文字のにじみもわずかだが目に付いた。
有機ELディスプレイの欠点である、輝度の変化についてはほとんど気にならないレベル
約4.7インチという画面サイズと、720×1280という画面解像度は十分に実用的ではあるものの、細かな文字はつぶれやすくなる。電子書籍などでは画数の多い漢字やルビなどが小さくなりすぎないような文字サイズに調整したい
活字の境界を見ると、下側がわずかに緑に上側が赤くにじんでいる。これは有機ELで採用されることが多い特殊なサブピクセルの配列が原因で起こる現象だ
基本性能だが、CPUはサムスン製のオクタコア「Exynos 7 7870(1.6GHz×8)」で、3GBのRAMと32GBのストレージを組み合わせている。microSDXCメモリーカードスロットは256GBまで対応する。プリインストールされるOSは、Android 7.0。定番のベンチマークアプリ「Antutuベンチマーク」を使って実際の速度を計測してみたところ、総合スコアは45,448(3D:5,594、UX:17,071、CPU:16,882、RAM:5,901)となった。このスコアは、大体3年くらい前の高性能機のレベルだ。ただ、RAMとストレージの用量が十分に確保されており、低価格スマホにありがちなストレージ不足に悩まされにくい点は評価できる。なお、本機と同じく、「docomo with」に対応する富士通「arrows Be」(CPU:Snapdragon 410 MSM8916、RAM:2GB、ストレージ:16GB)で、同様のベンチマークテストを行ったところ、総合スコアは26,887(3D:1,681、UX:12,300、CPU:10,359、RAM:2,547)となり、処理性能という点で見ると本機の圧勝だった。
256GBまで対応のmicroSDXCメモリーカードスロットは、SIMカードスロットと一体だ
ゲームアプリでの体感速度チェックでは、「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(3D標準モード)や、Android版「艦隊これくしょん-艦これ-」、「ポケモンGO」など、負荷のかかるゲームでは動作がもたつくが場合があった。もし、そうしたゲームを存分に楽しみたいのであれば、もう少し処理性能の高いものを選んだほうがよさそうだ。
Galaxy Feel(左画面)と、arrows Be(右画面)のベンチマークスコアを比較。CPUの世代が新しく、RAMやストレージの容量にも余裕がある本機のほうが全般的に高速だった
そのほかの機能では、各種のGPSセンサー、FeliCaポート、NFCポート、ワンセグチューナー、ハイレゾ音源再生機能を搭載している。通信機能を見ても、Wi-FiではIEEE802.11a/b/g/n/acに対応しており、LTEも2波のキャリアアグリゲーション対応で、下り最大262.5Mbpsの通信が行える。センサー類ではジャイロセンサーと、指紋センサーを搭載している。このように、本機はNTTドコモのラインアップとしてはエントリーに位置するモデルではあるが、機能的にはかなり充実している。最近流行のSIMフリースマートフォンと比較しても、本機の36,288円(税別、一括払いの料金)と同クラスで、これだけの実力と機能を兼ね備えているものは、ほとんど無い。
スペック表に掲示される対応の衛星測位システムは、「GPS」と「GLONASS」だけだが、アプリで確認したところ、中国の「北斗(BeiDou)」と国産の「みちびき(QZSS)」の衛星も感知できていた
搭載されるメインカメラは、約1,600万画素のイメージセンサーにF値1.9のレンズを組み合わせたもの。サブカメラは、約500万画素のイメージセンサーにF1.9のレンズという組み合わせだ。本機の上位モデルであるGalaxy S8シリーズは高感度撮影に強いのが大きな特徴だが、本機で行った夜景撮影では、手ブレの発生が目立った。その大きな理由は、光学式および電子式手ブレ補正機能が省略されている点だ。本機で夜景などの高感度撮影を行う場合は、しっかりホールドする必要がありそうだ。
メインカメラは、約1600万画素のイメージセンサーにF値1.9のレンズという組み合わせ。動画撮影はフルHDまで対応する
十分な明るさのあるショーウインドウを撮影。多くのユーザーが自然できれいだと感じられるだろう(露出時間:1/50秒、ISO感度:64)
メインカメラを使い、オートモードで銀座の夜景を撮影(露出時間:1/11秒、ISO感度:160)。手ブレに対してシビアで、15枚ほど撮影した中で、いちばん手ブレの目立たないものを選んだ
本機のスペックで、ひとつライバルを寄せ付けない項目がある。それはバッテリーの持続性だ。特に、ユーザーの利用パターンを平均化した条件で計測したバッテリーの持続性を示す指標である「電池持ち時間(インテージ社が調査した、平均的な1日あたりのスマートフォンの利用時間187分利用から、充電しながら利用している48分を除いた1日139分使った場合の数値)」は、約170時間となっており、「Galaxy S8+」の約135時間、「Xperia XZs」の約95時間(いずれもNTTドコモ版の数値)と比較しても圧倒的に長い。スペック上は、フル充電で1週間以上バッテリーが持続する計算だ。
その理由であるが、本機のバッテリーは容量3,000mAhと、画面サイズ5インチ未満のスマートフォンとしてはかなり大容量であることがあげられる。また、CPUの「Exynos 7 7870」は、ARMが設計した省電力タイプの 「Cortex-A53」コアを8基備え、微細化された14nmプロセスで製造されるなど、徹底した省電力設計であることも大きな点だ。このほか、電力消費の多いディスプレイについては、そもそもバックライトのない有機ELパネルを採用しているということもあるだろう。
今回検証を行ったのは12日間だが、利用ペースは1日4〜6時間程度。SNSやGmailアプリなどが合計2〜3時間程度。上記の「ポケモンGO」や「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」などの、ゲームを1日に1タイトルを30分程度、このほか、検証のために、ファイルのダウンロードやインストールを1日で多いときは5〜30タイトル程度を行った。検証期間中に消費したデータ通信容量は、Wi-FiとLTE合わせて約3GBだった。この条件は、上記の「電池持ち時間」と比べると2〜3倍ほど利用時間が長いが、スマートフォンを使うユーザーの利用パターンにより近いものと言えるのではないだろうか。
その12日間に、フルに充電を行ったのは5回だけ。平均すると2日半に1回充電を行っていたことになる(57.6時間に1回)。なお、同じような利用パターンだと「Galaxy S8+」では7日間で3回(平均で56時間に1回)、「Xperia XZ Premium」では7日間で5回(33.6時間に1回)充電を行っている。「Galaxy S8+」もかなりバッテリーが持続するが、本機の検証ではバッテリーを使い切らないうちに継ぎ足して充電を行うことが何回かあったので、もっとギリギリまで粘ることができればさらに1割は駆動時間が延ばせる余裕があった。
さすがに、カタログ値通りに1週間充電なしで使うのは少し難しそうだが、筆者の利用ペースであれば、フル充電で3日間のバッテリー駆動はいけそうに思えた。
検証を行った12日間の電力消費を示したグラフ。横軸の1目盛りは12時間、縦軸は1目盛りで10%。1回充電すると2日以上バッテリーが持続している(外出の都合が続き、バッテリー残量が10%のタイミングで充電を開始している場合が多かった)
バッテリー持ちのよさとともに、発熱の少なさも印象的だった。下のグラフは、検証中のバッテリーの温度推移を示しているが、最高でも35.6℃とかなり低く抑えられていた。負荷の軽いWeb閲覧などの使い方であれば32℃前後で推移していたので、検証期間中、不快な熱とはほとんど無縁だった。
検証期間中、もっともCPU温度が上がったのは、処理の重い「艦これ」を30分ほど使い続けたときの35.8℃
本機のもうひとつの大きな特徴が、NTTドコモの新しい割引メニューである「docomo with」の対象になっていること。docomo withは、端末料金を対象にした「月々サポート」や「端末購入サポート」の代わりに適用される割引で、月々の支払いに対して月額1,500円の割引が永続して適用されるという点が従来と大きく違う。そのため、1台の端末を2年以上使い続けるなら割安なプランだ。
docomo withの実際の料金イメージだが、ドコモとの契約が4年未満の単身者で、なるべく安く済ませたい場合、「カケホーダイライトプラン」の1,700円に、「データSパック(小容量)(2GB)」が3,500円、ISP料金として「SPモード」の300円の合計5500円から1500円が割引され、月額4,000円で持つことができる。
ドコモとの契約が4年未満の家族2名の場合だと、基本料金として「シンプルプラン」の980円×2名分に、「シェアパック5(小容量)(5GB)」の6,500円、シェアオプション500円の合計8,960円が3,000円割引きされた月額5,960円となる。(いずれの料金シミュレーションも、端末を分割で購入した場合にこれに端末料金が上乗せされる)
なお、docomo withは、光回線とセットの「ドコモ光」や、学割、シニア向け割引、長期契約者向けの割引などが用意されているので、実際にはもっと安くなる場合も多い。
NTTドコモでは、昨年冬に登場した「MONO」のように、SIMフリースマートフォンを意識した低価格機のラインアップが近ごろ増えてきている。その中でも本機は、3GBのRAMや32GBのストレージを備え、十分な基本性能を備えつつ、1日に4〜6時間程度使っても3日は持つバッテリー持続性や、防水・防塵仕様対応、FeliCaポートおよびNFCポートやワンセグチューナーなどを備えており、従来のキャリア製スマートフォンの高性能モデルを使っていたユーザーが乗り換えても、ほとんど違和感なく使い続けられる性能を備えている。また、docomo with対応で毎月の支払いが安く抑えられる点も大きな魅力だ。
ライバルとなるのは、本機と同じくdocomo with対象の富士通「arrows Be」や、同価格帯のSIMフリースマホになるだろう。ただし、SIMフリースマートフォンは選択肢が多いものの、基本スペックや付加機能などで本機に相当するようなものはほとんどない。
いっぽう、arrows Beと比較すると、本機のほうが一括払いで購入すると8,000円ほど高いが、その分基本性能が高く、総合的な満足度は高いだろう。長期保有に有利なdocomo withとの相性は、本機のほうが高いように感じられた。