みなさんはウルトラモバイルPC(UMPC)を覚えていますか? ネットブックより小型のモバイルPCで、ソニーの「VAIO type U」や富士通の「FMV-BIBLO LOOX U」、東芝の「Libretto」、シャープの「WILLCOM D4」シリーズなどを手にしていた人もいるかと思います。
「VAIO type U」(左上)、「FMV-BIBLO LOOX U」(右上)、「Libretto」(左下)、「WILLCOM D4」(右下)
2007年くらいから徐々に人気を得てガジェット好きユーザーの注目を集めましたが、スマートフォンやタブレットの登場により、現在ではUMPCを使っているユーザーを見かけることはほとんどなく、UMPCという単語さえ聞かなくなりました。
しかし、2017年2月に「GPD Pocket」というUMPCがクラウドファンディングのIndiegogoに出品され、目標額を大きく上回る約3億5千万円を調達し、UMPCのブーム再来を予感させました。この「GPD Pocket」が日本のクラウドファンディングのMakuakeでも先行販売されており、ひと足早くゲットできたので使い勝手を確かめてみました。なお、Makuakeでの販売価格は60,480円(税込)から。
7型液晶搭載「GPD Pocket」の実用性はいかに?
「GPD Pocket」は、CNC加工で削り出したマグネシウム合金を本体に採用しており、アップルの「Macbook」のような高級感のあるスタイリッシュな外観。携帯ゲーム機と同じくらいのサイズでありながらも、Windows 10を搭載しているのが大きな特徴です。
マグネシウム合金削り出しの本体は、サラッとした手触り。Macbook風のデザインで、普段使いだけでなくビジネスシーンでの使用にも適しています
「Macbook Air」と並べてみると、「GPD Pocket」の方が若干厚いのがわかります
本体サイズは180(横)×106(奥行き)×18.5(厚さ)mmで、重量は約480g。同じくらいの大きさのものがないか探していたところ、ちょうどよかったのが「Nintendo Switch」。左右のJoy-Conを取り外したときの大きさは、「GPD Pocket」と同じくらいでした
片手で楽々持てますし、ズボンのポケットにもスッポリと入ります
「GPD Pocket」の液晶は7型のフルHD(1920×1200、300ppi)で、アップルの「Retinaディスプレイ」と同等以上の精細さを誇ります。傷や衝撃に強い「Corning Gorilla Glass 3」を採用し、5点マルチタッチに対応。電源供給はUSB Type-Cで行いますが、USB 3.0ポートも搭載しており、変換アダプターなしでもUSBメモリーなどの周辺機器を使用可能です。
フルHDの液晶は非常に高精細で写真や動画の閲覧に適しています
外部インターフェイスはUSB Type-C、マMicro HDMI出力、イヤホンジャック、USB 3.0ポート
同梱されているUSB Type-Cケーブルとアダプターを使って給電。外出先でバッテリーが切れても、モバイルバッテリーなどで給電することもできます。
キーボードは、アイソレーションタイプで打ちやすさを重視。個人的にホームポジションでのタイピングは窮屈に感じましたが、慣れてくると手を少しずらして自分なりに打ちやすいポジションがわかってきて、文書作成くらいならストレスなくこなせました。
タッチパッドの代わりにトラックポイントを採用しているのですが、感度を最高に設定しても使いやすいとは言えないレベル。ただし、液晶がタッチ操作に対応しているので、必要に応じてトラックポイントとタッチ操作を使い分ければそれほど問題はありません。
アイソレーションタイプのキーボード。数字とファンクションキーが2段になっているのが少し特殊
トラックポイントの上にあるのがスペースキーで、下にあるのが左クリックと右クリックに対応するキー。キーなので、クリックしたときに「カチカチ」という音は鳴りません。トラックポイントと周囲のキーが非常に近く、親指でトラックポイントを操作するのはかなり無理があると感じました
ホームポジションでのタイピングは窮屈に感じますが、慣れてくれば適したポジションを見つけられるはず
ポケットサイズなのでひざの上での作業も行えます。ただし、目とディスプレイの距離が遠く、ディスプレイをのぞき込むような体勢になるため、長時間作業していると首に負担がかかります
Webブラウジングくらいなら、「Blackberry」のような持ち方でタイピングしても大丈夫です
キーボードで使いづらかったのは、Caps LockとA(写真左)、AltとCtrl(写真中央)。キー間にスペースがほとんどないので誤入力しやすいです。また、Enterの上にDeleteがあるため(写真右)、BackSpaceと間違えて押してしまうことが多々ありました
画面が10インチ以下であるため、無料の「Office Mobile」を使えるのはうれしいポイント。Microsoftのアカウントでサインインすれば基本的な編集機能を利用できます。ただし、「Office Mobile」は商用利用NGなので、業務で使うときは素直に「Office 365」を契約しましょう
最後に触れるのは「GPD Pocket」のスペックについて。基本構成は、CPUが「Atom x7-Z8750」、グラフィックがインテル HD Graphics 405、メモリーが8GB(LPDDR3)、ストレージ容量が128GB(eMMC)となっています。CPUはインテルのモバイル向けSoCで、Webブラウジングや動画鑑賞、文書作成といった作業をこなすのに十分な性能を備えています。ソフトウェアを複数開いているときには反応が鈍いこともありましたが、「GPD Pocket」をサブ機として使う限り大きな問題にならなさそうです。
冷却性能に関しては、銅製のヒートパイプと大口径の排気管により冷却ファンで効率的な処理を行っているとのこと。ベンチマークを回しているときに底面が熱くなりましたが、持っていられないレベルではありませんでした。
バッテリー容量は7000mAhで、連続駆動時間は約12時間。画面輝度を最高にしてNetflixで2時間の映画を鑑賞したところ、バッテリーは100%から79%まで減少しました。作業の内容によりますが、これなら外出先で長時間使用するのにも十分です。
パソコンの総合性能を測れるベンチマークソフト「PCMark 8」のスコアは1263(Home accelerated)。決して高くないスコアですが、文書作成やWebブラウジングをこなすには問題ない範囲です
このサイズ感でゲームをプレイすることはないと思われますが、「ドラゴンクエストX」のベンチマークソフトを試してみました。グラフィック設定を低画質にしてテストしたところ、スコアは1841で、 “重い”という評価に
ストレージのスピードを測定するベンチマークソフト「CrystalDiskMark 5.2.1」(ひよひよ氏作)の結果は上記の通り。読み込みおよび書き込みも速いとは言えない結果でした
ベンチマークテストのスコアは思っていたよりも低かったですが、それでもひと昔前に比べると格段に性能アップしているのは間違いありません。以前のUMPCは、アイデアこそすばらしかったものの、技術が追いついていない印象でした。
動作がもっさりしていたり、1時間くらいでバッテリーがなくなってしまったりということはなく、進化した現在の技術でUMPCを作ったらこうなる! というのを「GPD Pocket」は体現しているかのようです。また、価格も以前のUMPCよりも低く抑えられています。
マイクロソフトが、モバイル向けSoCの「Snapdragon 835」で動作するWindows 10搭載PCを2017年内にリリースするという話もあり、もしかするとUMPCのような小型ノートPCが復活する日も近いのかもしれません。「GPD Pocket」は、その可能性を十分に感じさせてくれるデバイスです。
CPU:Atom x7-Z8750(1.6GHz)
GPU:インテル HD Graphics405
メモリー:8GB(LPDDR3)
ストレージ:eMMC 128GB
Wi-Fi:IEEE 802.11ac/a/b/g/n
バッテリー容量:7000mAh
入出力構成:USB Type-C 3.0×1、USB 3.0×1
映像出力:Micro HDMI
音声出力:3.5mmオーディオジャック
追記:2017年9月6日
「Makuake」で「GPD Pocket」の出資を募っていたエム・シー・エム・ジャパン株式会社が、「GPD Pocket」の支援者に全額を返金するキャンセル受付を発表しました。キャンセルの受付期間は9月5日〜9月11日までとなっています。
クラウドファンディングの出資は一般販売より前に製品を入手できますが、すでにアマゾンなどECサイトで平行輸入品などが販売中であることなどから、ユーザーからの指摘があり、今回のキャンセル対応をすることになったとのこと。
キャンセル受付の詳細に関しては、以下のURLからご確認ください。
最新ガジェットとゲームに目がない雑食系ライター。最近メタボ気味になってきたので健康管理グッズにも興味あり。休日はゲームをしたり映画を見たりしています。