高速、大容量、低遅延で、スマホ、IoT、自動運転を支える

2020年ごろの国内実用化を目指す、ソフトバンク「5G」体験会レポート

このエントリーをはてなブックマークに追加

ソフトバンクは、2017年9月8日、次世代モバイルネットワーク「5G」の体験会を実施した。5Gはすでに、NTTドコモやauでも取り組みが発表されているが、ソフトバンクとしては今回が初めて。ソフトバンクの5Gに対する技術的な狙いや、取り組みをレポートしよう。

2020年ごろの実用化を目指してソフトバンクも研究を進めている第5世代移動通信システム「5G」。その取り組みをレポートする

スマホのみならず、IoTや自動車などあらゆる通信を支える基盤の「5G」

現在スマートフォンなどで使われている主流のモバイルネットワークはLTEだ。LTEは、携帯電話の通信規格としては第4世代にあたり、第4世代移動通信システム(4G、4th Generation)とも呼ばれている。

その4Gの次を担うのが、今回取り上げる第5世代移動通信システムの「5G」だ。国内や海外の大手ベンダーの間で、2020年ごろの実用化を目指して、その仕様を策定している最中である。そんな5Gは、国内ではNTTドコモやauが取り組みを発表しているが、今回ソフトバンクでもデモが初めて公開された。

ソフトバンクでは、5Gをスマートフォンなどモバイル機器における通信環境の整備にとどまらないものととらえている。IoTや、コネクテッドカー、自動運転技術では無線通信が必須となるが、今のLTEはもっぱら通信速度の向上が進められており、これらの新しいニーズに対して機能的に不十分な面がある。そうした新しいニーズにこたえる技術として、5Gに注目しているとのことだ。

5Gではネットワークの性能をニーズに合わせて最適化させることが可能となる。具体的には、IoTでは通信速度はそれほど速くなくていいが、電力消費は徹底的に抑える必要がある。また、電波の届きにくいところで使うために受信感度を高くしたいということも考えられるだろう。さらに、仮想現実や遠隔手術、自動運転などでは遅延を徹底的に抑えなければいけない。5Gは、こうした近未来の通信ニーズに合わせて性能を最適化することが求められている。

5GではIoTやコネクテッドカーなど、さまざまな用途に合わせてネットワークの特性を最適化できるようになる

5GではIoTやコネクテッドカーなど、さまざまな用途に合わせてネットワークの特性を最適化できるようになる

そんな5Gを実現する技術のコアとして、ソフトバンクでは、“アンテナ技術”と“広帯域の電波を使うこと”の2点をあげた。アンテナ技術では、すでにLTEやWi-Fiでも実用化されている、複数のアンテナを使って通信を高速化する「MIMO(マイモ)」をさらに発展させた「Massive MIMO(マッシブ マイモ)」と呼ばれる技術が採用される見込みだ。LTEでは2〜8個のアンテナを使っているが、5Gでは最大128個ものアンテナを使うことが想定されているという。なお、ソフトバンクではMassive MIMOを昨年9月より商用利用しており、技術的な優位性があるとしている。

ソフトバンクではLTEネットワークのアンテナ技術にMassive MIMOを先取りして実用化している

ソフトバンクではLTEネットワークのアンテナ技術にMassive MIMOを先取りして実用化している

もうひとつの広帯域の電波の使用だが、最大で40MHzの電波の帯域幅を利用しているLTEに対して、5Gでは、100〜1000MHzというけた違いに広い帯域幅を利用することが想定されている。この帯域幅を確保するため、4〜6GHz帯や28GHz帯といった今までほとんど使われていなかった高周波数帯を活用することが必要になるが、こうした高周波数帯では、電波が届きにくくなるというデメリットがあるため、基地局の設置ノウハウも重要な技術になってくる。

広帯域を確保するため、今まで使われていなかった高い周波数帯の電波を利用する必要がある。高周波数帯でもきちんと電波を届けられるように基地局を設置することも5Gでは重要になる

ソフトバンクの5Gを実際に体験

今回の5Gの体験会では、4.7GHz帯の電波を帯域幅100MHzで使用し、約2.7Gbpsという高速通信を実現。この電波を使って、ロボットアームにエアホッケーを行わせるデモが行われた。これは、テーブル上部に取り付けられたカメラがパックの動きを感知して軌道計算サーバーで動きを理解し、そのデータを5G区間を経由してロボットアーム制御サーバーに届けてロボットアームを動かし、打ち返すというもの。このデモでは、ロボットアームはパックの動きに遅れることなく追従したが、同じ処理をLTEネットワークで行うとロボットは追従できないという。

また、5Gではクラウドテクノロジーの応用として、サーバーとスマートフォンなど、端末のネットワーク構成上の距離を近づけて、負荷のかかる処理を肩代わりさせるエッジサーバーと呼ばれる技術にも注目が集まっている。今回公開されたエッジサーバーのデモでは、Windowsタブレットを使い、GPUの描画処理をエッジサーバーに肩代わりさせた。その描画速度の差は圧倒的で、今までタブレットでは不可能だった高精細な描画が遅延なく行えていた。

シールドされた実験室の中で5Gの通信環境を用意し、そこを経由してさまざまなデモを行った。無線区間の通信速度は2.7GHzという高速なものだった

5G区間を含めて800Mbpsというビットレートの映像をリアルタイムで映し出すデモ。自動車や人などの動きにほとんどタイムラグがなく、5Gの低遅延ぶりを実感できた

軌道計算サーバーとロボットアーム制御サーバーの間を5Gネットワークで経由させるデモ

軌道計算サーバーとロボットアーム制御サーバーの間を5Gネットワークで経由させるデモ

エッジサーバーを使い負荷のかかる処理を肩代わりさせるデモ。エッジサーバー自体は4Gでも搭載できるが、低遅延の5Gならメリットを生かしやすい技術といえる

4台の180°カメラが合成したリアルタイムのパノラマ映像を、スマートフォンの動きと連動させる「イマージブビデオ」のデモ。スマートフォンの動きに追随して画面が動く

イマージブビデオはスポーツ中継でも応用が期待される。たとえば、スマートフォンを傾けて、見たい選手の動きだけをずっとトレースし続けることも可能だ

さまざまな角度から複数のカメラが撮影した女性の映像を、ホロレンズディスプレイ上に合成する実験。目の前の現実とCGをリアルタイムで合成する「Mixed Reality(MR:複合現実)」でも5Gの高速低遅延という特徴は重要になる

ソフトバンクのLTEは、2012年のサービス当初は下りの最大速度は100Mbpsだったが、わずか5年で今では612Mbpsまでスピードアップしており、スマホやタブレットの通信で使う分には、今でも十分すぎるほど速い。いっぽう、5Gはまだ、技術の標準化を検討している最中で、まだ利用する電波の周波数帯の割り当ても決まっていない状態だが、ソフトバンクでは3年先の2020年ごろに実用化を目指している。5Gの登場でスマホの通信速度が速くなるのは確かだが、それにとどまらない応用範囲の広い新技術として、同社では研究が行われている。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

紹介した製品の最新価格・クチコミをチェックする
このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事
特別企画最新記事
特別企画記事一覧
2017.11.17 更新
ページトップへ戻る