ファーウェイは、2017年11月28日に最新スマートフォン「Mate 10 Pro」を発表した。ファーウェイと言えば、低価格なのに性能がすぐれている、いわゆるコスパの高いスマートフォンとして人気だが、本機は最新機能を惜しげもなく搭載したバリバリのハイエンド機だ。発売は12月1日の予定で、市場想定価格は89,800円(税別)。そんな「Mate 10 Pro」を発売前に試すことができたので、注目の最新機能を中心に使い勝手をレポートする。
人口知能(AI)プロセッサー、ライカ監修のデュアルカメラ、挟額縁デザイン、DSDV(デュアルSIMデュアルVoLTE)など最新機能がてんこ盛りの「Mate 10 Pro」
「Mate 10 Pro」のディスプレイは、約6.0型の有機EL(2160×1080)パネル。昨今主流になりつつある狭額縁デザインを採用したことにより、81.61%という高い画面占有率を誇る。本体前面のほとんどがディスプレイのため、高いレベルの視聴体験をもたらしてくれる。
有機EL採用の画面はコントラストが高く、写真や動画を見るのに申し分ない
縦長の本体は手で持ちやすく、片手での操作性も悪くない。背面は、光沢のあるガラス製でハイエンド機らしい高級感を持ち合わせている。ガラス製なので落下には気をつけたいところ。使用する際はカバーの着用が必須となりそうだ。
本体サイズは74.5(幅)×154.2(奥行き)×7.9(高さ)mm。重量は178g。女性の手だと厳しいかもしれないが、大人の男性なら片手でも十分持ちやすいサイズだ
2基のカメラが縦に並んだ背面。カメラ部分がストライプ模様になっているのが、スタイリッシュだ。カメラ直下にあるのは指紋認証センサー。側面は曲面を描くようなデザインになっていて、手のひらへのフィット感に貢献している
本体左側面には2枚のnanoSIMカードを格納できるスロットがある。LTEの対応バンドはB1/2/3/4/5/7/8/9/12/17/19/20/26/28/32/34/38/39/40/41。microSDカードに対応していない点には注意してほしい
「Mate 10 Pro」は、4Gのデータ通信およびVoLTEの音声通話をサポートするnanoSIMカードを2枚同時に待受け可能なDSDVに対応。プライベートと仕事で4G対応nanoSIMカードを2枚運用している場合などに役立ちそうだ。ただし、VoLTEに関しては、発表時点でソフトバンクのみのサポートとなる
外観デザインで気になったのはイヤホンジャックが搭載されていない点。イヤホンを使うにはワイヤレスイヤホンを用意するか、同梱の変換アダプタ経由でUSB-Type Cポートに接続必要がある。「Mate 10 Pro」はIP67の耐水・防塵機能に対応しており、耐水機能を実現するのにイヤホンジャックを削らざるを得なかったようだ。ハイエンド機であるからには、イヤホンジャックを搭載してほしかったところだが、これも時代の要請なのだろうか。
イヤホンジャック非搭載なのは気になる点
「Mate 10 Pro」の基本スペックは、SoCが「Kirin 970」(オクタコアCPU 2.36GHz×4+1.8GHz×4)、メモリーが6GB、ストレージ容量が128GB(microSD非対応)。この「Kirin 970」というSoCは、CPUとGPUに加えて、NPUというAIプロセッサーを搭載しているのが特徴だ。
NPUは、画像認識などのタスクでパフォーマンスがCPUの25倍、電力効率が50倍にもなる能力を備えている。ユーザーの使い方に応じてリソースを配分し、アプリの起動やレスポンスの高速化、バッテリー持続時間が長い、画像認識といったタスクの高速化、長期間使用におけるレスポンス速度の一定化など、さまざまなメリットをユーザーにもたらすという。
試しに「AnTuTu Benchmark」「Geekbench 4」「3DMark」でベンチマークテストを行ったところ、どのテストでもハイエンド機として申し分ないスコアを記録。「AnTuTu Benchmark」では、価格.comマガジンで以前計測した「Galaxy Note8」のスコア“175992”や「Xperia XZ Premium」のスコア“166307”を上回る“176047”をたたき出した。ダントツというスコアではないが、日本で入手可能なAndroidスマートフォンの中では頭ひとつ抜けていると言える。
「AnTuTu Benchmark」のスコアは“176047”、「Geekbench 4」のスコアはシングルコアが“1898”、マルチコアが“6767”という結果
3D性能を測る「3DMark」の「Sling Shot Extreme」のスコアは“2928”。これなら3Dをバリバリ使用するゲームも難なくプレイできるだろう
数日間試用した範囲では、画面スクロールやアプリの起動などは非常にスムーズで、ストレスはまったく感じなかった。ハイエンド機として備えていてほしい基準は十分満たしている。NPUの能力を感じられるのは、このパフォーマンスがずっと続くという点だ。購入から1年経過しても同じ処理速度をキープしているのであれば、本当にすごいと言える。なお、バッテリー容量は4000mAhあり、よほどヘビーな使い方をしない限り1日は十分持つだろう。
数日間試用して、AIの恩恵を最も感じられたのがカメラだ。同社の主力ラインである「P10」シリーズと同じく、ライカと共同で開発したデュアルレンズ仕様で、1200万画素RGBセンサーと、グレースケール階調専門の2000万画素モノクロセンサーを採用。それに加えて、1億枚以上の画像を学習したAIにより、カメラを向けるだけで、被写体やシーンに最適な設定を自動で選んでくれる機能(リアルタイム被写体認識)を搭載している。カメラの設定がよくわからないユーザーでも、簡単にプロ並みの写真を撮れるというわけだ。
このリアルタイム被写体認識は、文字、食べ物、日の入り/日の出、夜景など13の被写体およびシーンを検知。犬と猫の違いも認識してくれる。実際に試したところ、被写体にカメラを向けて1秒ほどで認識し、自動でモードを選んでくれた。AIとライカ監修レンズの組み合わせは、適当にパシャパシャ撮っていても、クオリティの高い写真が撮れるので、撮影が非常に楽しかった。
カメラが被写体を認識すると、左下にそれぞれの撮影モードを示すアイコンが表示される(左から夜景、花、犬、フード、日の入り)。被写体や撮影シーンに合わせて撮影モードを手動で切り替える必要はない
スマートフォンではなかなか難しい夜景の撮影もAI任せで簡単に撮影可能
AIが選んだ「日の出モード」で撮影した1枚
AIの「フードモード」で撮影。カメラを向けるだけで最適な撮影モードを選択してくれるのは非常に楽チン
AIが自動で設定する以外にも、「ポートレート」や「夜空」、「フィルム」といった手動で設定できる撮影モードも用意されている。AIが設定した撮影モードに満足できなければ、手動でモードを選択するのもアリだ。ライカと共同開発した独自モノクロセンサー搭載カメラということで、モノクロ写真を撮るのも楽しい。
手動で設定するモードで気に入ったのが「フィルムモード」。ライカが監修した3つのプリセットモード「標準」「鮮明な色」「ソフトな色」が用意されていて、それぞれ異なる色味を表現する(写真は左から「標準」「鮮明な色」「ソフトな色」)
ディテールをしっかりととらえられる「モノクロ」
背景をぼかす「ワイドアパーチャ」
人物撮影に最適な「ポートレート」。モノクロ撮影時や、前面のサブカメラでの撮影時でも「ポートレート」を使えるのはうれしい
「夜空」で撮影した夜景。露出時間が13秒もあったが、スマートフォンをしっかり固定することできれいな夜景が撮影できた
「Mate 10 Pro」には、Android向け翻訳アプリ「Microsoft 翻訳」がプリインストールされているのだが、これはNPUを搭載するファーウェイのスマートフォン向けにカスタマイズされたもの。通常、翻訳ソフトは入力された情報をクラウドに送信し、クラウドから適切な翻訳を受信するという処理を行うのだが、「Mate 10 Pro」はNPUを利用してローカルで処理するため、翻訳スピードが劇的に速いという。
英語のテキストを撮影して画面上に翻訳を表示させる機能を試したところ、確かに「Google翻訳」よりも速かった。どれくらい速いのかは以下の動画を見てほしい。
「Mate 10 Pro」は、イヤホンジャック非搭載、microSDカード非対応といったやや気になる点はあるものの、それをカバーするくらいの魅力的な最新機能を備えている。本記事では触れていないが、ハイレゾ再生対応や、外部ディスプレイに接続すると大画面で表示してくれる「PCモード」(Type-C - DisplayPort変換ケーブルが別途必要)など、注目の機能も搭載。SIMフリースマートフォンで高性能な端末を探している人は、一度チェックしてみても損はないはずだ。
最新ガジェットとゲームに目がない雑食系ライター。最近メタボ気味になってきたので健康管理グッズにも興味あり。休日はゲームをしたり映画を見たりしています。