2014年9月に登場した「iPhone 6 Plus」あたりからスマートフォンの大型化が顕著になり、最近はポケットに入るくらいコンパクトなサイズのスマートフォンを見かけることも少なくなった。そんな今では数少なくなった小型スマートフォンの最新モデル、シャープ「AQUOS R compact」を紹介。ソフトバンクとauで発売されているフラッグシップモデルで、三辺狭額縁デザイン「EDGEST fit」の採用により、上部と側面いっぱいまで広がった液晶が大きな特徴だが、そのほかにも気になる機能が盛りだくさん。本記事では、実際に試用してみて、その使い勝手をレビューする。
数少ないコンパクトスマートフォンの「AQUOS R compact」をレビュー。画面サイズは4.9型で「フルHD+」の解像度を実装している
シャープは、2013年から2015年ごろまで「EDGEST」という三辺狭額縁デザインをスマートフォンに採用していたが、上部ベゼルが狭いためフロントカメラを上部でなく下部に設置していた。下部に設置すると、自撮りの際に下からあおるような構図になってしまい、自撮りブームの到来もあってか2016年からはこの「EDGEST」の採用は見送られるようになった。
しかし、シャープは、自由な形と大きさに設計可能な液晶技術「IGZOフリーフォームディスプレイ」を初めてスマートフォンに採用した「EDGEST fit」を開発。これにより、フロントカメラ分の隙間を空けたディスプレイをスマートフォンに組み込むことが可能になり、三辺狭額縁デザインの「AQUOS R compact」が誕生した。
半円状の隙間を開けることで、フロントカメラをディスプレイの内側に搭載。これにより、上辺、左右の超狭額縁デザインが可能になった
前面下部には、指紋認証センサー分のスペースが設けられている。なお、指紋認証センサーは、ナビゲーションキーとしても使用可能。「タップ」でホーム画面へ、「左から右へスワイプ」で「戻る」、「右から左へスワイプ」で「起動中のアプリを表示」といった具合だ
「AQUOS R compact」のように、ディスプレイ部が切り抜かれた形状をしている場合、その部分がアプリのUIに干渉しないかどうかが気になるところだ。さまざまなアプリを試したところ、ほとんどのアプリでフロントカメラ部分はステータスバーに収まるデザインに調整されていた。もちろん、UIに干渉してしまうアプリもあったが、視認性や操作性に大きな影響はなかったので安心してよさそうだ。
「Gmail(左上)」「Googleマップ(右上)」「Googleカレンダー(左下)」「インスタグラム(右下)」といったアプリでは、フロントカメラがステータスバーに収まる格好になる
「Chrome」だと、フロントカメラがアドレスバーに少しだけかぶってしまう。さまざまなアプリを試してみたが、フロントカメラは多くのアプリでUIに干渉しないように調整されているいっぽうで、調整されていないアプリも少なからずあった。ただし、干渉していても視認性や操作性に大きな影響を与えるものではないので、安心してよさそうだ
動画視聴アプリやゲームでも確認したところ、「Netflix(左上)」「Amazonプライム・ビデオ(右上)」「YouTube(右下)」といった動画関連のアプリは干渉せず。ゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」でも干渉しなかった
本体サイズは66(幅)×132(高さ)×9.6(厚さ)mmで、重量は約140g。4.9型の液晶はフルHD+(1080×2032)で、これはフルHD(1080×1920)にフロントカメラ部分(1080×112)を加えた解像度になる。久しぶりに4インチ台のスマートフォンを使ったためか、手で持ったときに「こんなに小さかったのかっ!?」と驚いたほどだ。
見た目も小さいが、手で持ったときのほうが小ささを実感する
5.5型液晶搭載のASUS「ZenFone 4」と並べると、「AQUOS R compact」がいかに小さいかわかるはず
平均的な5.5インチスマートフォンだと、ポケットに入れたときにパンパンに膨らんで窮屈なことがあるが、そんな心配は「AQUOS R compact」では不用。ズボンのポケットに入れても大きな違和感はないし、胸ポケットだと全体が隠れるほどスッポリと入る。
胸ポケットなら端末全体が隠れるほど小さい。スーツの内ポケットにも十分入る
コンパクトなサイズに加えて、側面がほんの少し外側に向かって角張っているので、握りやすいのもいいところ。また、昨今のスマートフォンと比べると若干厚みはあるがが、このサイズにはピッタリの厚さだ。薄型のスマートフォンはスタイリッシュな反面、机などの上に置いてから持ち上げるときに、つかみにくいことがよくある。「AQUOS R compact」のちょうどいい厚さと、角張った側面のデザインは、使いやすさを重視しているのだなと感じた。
かといって、外観がスタイリッシュじゃないというわけではない。アルミフレームの側面は、全体にキリッしたシャープな印象を与えるアクセントになっているし、光沢のある背面パネルは高級感を演出。気になったのは、指紋が少々目立ちやすいといった点だろうか。
外向きにうっすらと角張っていて、持ちやすいアルミフレームの側面
光沢が高級感を演出する背面。写真ではわかりにくいが、少し指紋が目立ちやすい
天面にはイヤホンジャック、底面にはUSB Type-Cポートを備える
ここまでデザインについて触れてきたが、液晶画面に話を戻そう。「AQUOS R compact」は、これまでの「AQUOS」シリーズと同じように「ハイスピードIGZO」液晶を搭載している。動画再生時やブラウジング時に120Hz駆動で滑らかに動作するのが特徴だ。残像感が少ないと言うとわかりやすいだろうか。スクロールのスムーズさをASUS「ZenFone 4」と比べた動画を撮影したので、確認してみてほしい。
ただし、「ハイスピードIGZO」のよさは、実際に使ってみないとなかなか実感できないだろう。スクロール時でも文字の残像感が少ないのは、非常に見やすいし目への負担が軽いように感じる。ほかのスマートフォンを使ってみると、スクロール時の文字のチラつきが明らかに目立ち、「ハイスピードIGZO」のすごさを改めて実感した。筆者のように寝落ち寸前までブラウジングしているようなスマホ中毒者には、ぜひとも体験してもらいたい。
「インスタ映え」がユーキャンの2017年新語・流行語大賞を受賞したように、スマートフォンのカメラに求められる性能はどんどん高くなっている。手軽にきれいな写真を撮影できるというのが、多くのユーザーのニーズだろう。
「AQUOS R compact」は、メインカメラとフロントカメラの両方に広角レンズを採用しているのが特徴だ。メインカメラは、約1640万画素で25mm相当(35mm換算)の広角レンズを搭載。新しい画質エンジンは、露出やホワイトバランスが向上し、被写体の色を忠実に再現するという。
撮影は基本的に初期設定の「おすすめオート」を使用。これがなかなか賢く、使い勝手は良好。位相差オートフォーカスとコントラストオートフォーカスを融合させた「ハイスピードオートフォーカス」は、カメラを向けたのとほとんど同じタイミングでピントを合わせてくれる。被写体にピントが合わず、画面をタップして再度ピントを合わすようなことは起こらなかった。色の再現度も高く、目で見ているのと近い色で撮影可能。「おすすめオート」ではHDRが必要に応じて自動でホワイトバランスや色味を調整してくれるため、逆光時の撮影では特に重宝した。
生地の焦げやトマトソース、モッツァレラチーズの色を忠実に再現したマルゲリータピザの写真。実物並みに食欲をそそる
左がオートHDRオン、右がオートHDRオフで撮影した写真。HDRのおかげで夕暮れ時でも明るめに映った
イルミネーションで彩られた街路樹を下側からパシャリ。黒い夜空部分にはノイズが少し発生した
光学式ではなく電子式手ぶれ補正を採用しているため、夜間での撮影は手ぶれが発生しやすかったが、しっかりと固定すればきれいに撮れる
「おすすめオート」で数枚撮影しても思い通りに撮れないときには、「おすすめプラス」を使うといいだろう。「くっきり」「ふんわり」「逆光」「残像」「接写」「フルマニュアル」という5つのメニューを備えており、選ぶだけで各メニューに最適な設定に調節してくれるほか、自分でホワイトバランスやシャッタースピード、露出などを調節可能だ。欲を言えば、もう少しカメラビギナーにもわかりやすいモード、たとえば「食べ物」「風景」「夜景」などがあればよかったかもしれない。
「くっきり」は、コントラストが強くメリハリのきいた写真を撮れる
「接写」は、ものすごく近くまで寄ってもピントがしっかりと合う。小さくいびつな形の花びらもしっかりとディテールをとらえている
メインカメラで残念だったのは、手ぶれ補正が光学式ではなく電子式という点。暗い室内や夜間での撮影時は高い確率でぶれてしまうので、手ぶれしないようにしっかりと構える必要がある。もちろん、しっかりと構えればきれいな写真が撮れるのだが、“手軽に撮れる”という点から見ると、もったいないと言わざるを得ない。
「AQUOS R compact」のフロントカメラにも触れておこう。約800万画素のフロントカメラは23mm相当の広角レンズを採用しており、背景を含めたいときや大人数での撮影にも対応可能だ。「美肌調整」と「小顔補正」機能により、自動で“盛れる”のもポイントが高い。さらに、セルフタイマー使用時は、フロントカメラ周辺にエフェクトが表示され、視線ズレを防いでくれるのも特徴になっている。
左がセルフタイマー撮影時の画面。画面上部のカメラ周囲に青い半円のエフェクトが表示され、視線ズレを防いでくれる。右の撮影した写真では、輪郭がすっきりして、荒れ放題だったお肌もきれいになった。目の下の特大ニキビの痕は消しきれなかったが、十分盛れている
最後は「AQUOS R compact」のスペックに触れておこう。基本スペックはCPUが「Snapdragon 660(2.2GHz×4+1.8GHz×4 オクタコア)」、メモリーが3GB、ストレージ容量が32GB(microSD最大400GB)。搭載OSは最新の「Android 8.0」で、最大2回のOSバージョンアップと2年間のセキュリティ更新が保証されている。
「AnTuTu Benchmark」を使ったベンチマークテストのスコアは“106478”という結果だった。「Snapdragon」を搭載するスマートフォンのスコアとしては平均的で、ミドルハイ機の中でも上位レベルのスペックを有している。CPUのパフォーマンスを測定する「Geekbench 4」のスコアはシングルコアが“1631”、マルチコアが“4368”。「Galaxy S7」など2016年に発売されたハイエンド端末と同等のスコアを記録した。アプリの起動や切り替えなどで動作が重たくなることはなく、ストレスを感じさせない良好な使い心地だ。
「AnTuTu Benchmark」と「Geekbench 4」のベンチマーク結果
グラフィック性能については、実際に「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」をプレイして検証。最も負荷のかかる「3Dリッチ」モードで、まれに画面が処理落ちして遅延することがあったが、問題なくプレイできた。これなら3Dグラフィックをバリバリ使うようなゲームでも快適にプレイできるはずだ。
バッテリーは2500mAhで、連続通話時間はVoLTE使用時で約1440分。ワンセグ、IPX5/8の防水、IP6Xの防塵、おサイフケータイ、ハイレゾ再生に対応。フルセグには対応していないが、ディスプレイが小型なので、ワンセグでも十分見られるレベルだ。
スペックとは関係ないが、持ち上げるだけで画面がオンになる「自動画面点灯」、手袋をしたままでタッチ操作可能な「グローブモード」、持っている間は画面オフにならない「Bright Keep」といった機能もなかなか便利。一見地味だが、“かゆいところに手が届く”という機能が多くあり、ストレスフリーな使い心地に一役買っている。
コンパクトサイズのスマートフォンは、どうしても小さい液晶画面が見づらいという印象だったが、「AQUOS R compact」の4.9型液晶は、フルHD+対応のハイスピードIGZOのおかげで見にくいと感じることは一切なかった。また、見た目のインパクトに負けない性能と機能を持ち合わせているのもポイントが高い。1点だけ気になるのは、カメラ自体の性能はすぐれているのに、光学式手ぶれ補正を搭載していないこと。スマートフォンのカメラは、ポケットからサッと取り出してすぐに撮影できる手軽さが重要であり、夕暮れや室内など少々暗いようなシーンで、しっかりと手ぶれしないように気を使って撮影するのは面倒だ。しかし、全体的な完成度は高い。ここ数年は5.5型クラスのスマートフォンをメインで使っているが、コンパクトサイズに戻るのもアリだと思わせてくれた。新規契約や機種変更を考えている人は、一度手にとってみてはいかがだろうか。
最新ガジェットとゲームに目がない雑食系ライター。最近メタボ気味になってきたので健康管理グッズにも興味あり。休日はゲームをしたり映画を見たりしています。