ASUSは、「ZenFone」シリーズの最新モデル「ZenFone 5」を2018年5月18日に日本市場へ投入する。市場想定価格は52,800円(税別。以下同)。トレンドのノッチ(切り欠け)デザインに加えてAIを搭載したことにより、全体デザインやカメラの性能がガラリと変わっている。そんな「ZenFone 5」を発売前に試すことができたので、前モデルの「ZenFone 4」と比較しつつ、使い勝手をレポートする。
ノッチに加えAIを採用した「ZenFone 5」
「Essential Phone」に始まり、「iPhone X」でスマートフォンのデザインにおけるトレンドになりつつある画面上部のノッチ。2018年2月に開催された「MWC 2018」では、ノッチを取り入れたスマートフォンが多数登場し、いろんな意味で話題をさらった。「ZenFone 5」も、MWC 2018で発表されたノッチ採用のスマートフォンのひとつであり最新トレンドを追随したというわけだ。
流行に乗っかった感は否めないが、ノッチは「ZenFone 5」には多くのメリットをもたらしたと言える。本体サイズは前モデルの「ZenFone 4」とほとんど変わらないにも関わらず、画面サイズは5.5型から6.2型へと進化した。画面占有率は90%に達する。
「ZenFone 5」(左)の本体サイズは75.6((幅)×153奥行き)×7.7(厚さ)mmで、「ZenFone 4」(右)から若干小さくなった。にも関わらず、画面サイズは5.5型から6.2型へと大きくなっている
画面が大きくなったことで、一度に表示できる情報量が増えた
ノッチにはフロントカメラとスピーカーのほか、近接/照度センサーが搭載されており、顔認証に対応。端末を持ち上げて解除する機能が新しく加わり、顔認証をオンにしておけば、持ち上げて画面を見つめるだけでアンロックしてくれる。
MWC 2018では「iPhone X」よりも26%狭いと紹介されたノッチ
「ZenFone 5」はフロントカメラを使った顔認証に対応。端末を持ち上げてスリープを解除する機能と一緒に使うと、わざわざ電源ボタンを押さずに済むので便利だ
ノッチを搭載したことで、その分だけ通知領域は小さくなった。ノッチと言うと、表示するコンテンツへの干渉具合が気になるところだが、アプリを起動したときは、基本的にノッチは通知領域のままとなり、コンテンツにかぶらない形となる。動画や写真は、アプリケーションによって拡大して全画面表示が可能だ。このあたりの所作は、ほかのノッチ採用スマートフォンと変わらないだろう。
通知領域はノッチの分だけ「ZenFone 4」と比べて狭くなった
前面にあった指紋認証は背面へ移動し、画面が本体下部いっぱいまで広がる。ベゼル部にあった「戻る」キーと「メニュー」キーは、オンスクリーンの仮想キーへと変更された。
ディスプレイはFHD+(2246×1080、19:9)のSuper IPS+液晶を搭載。IPS液晶の「ZenFone 4」と比べると色彩が鮮やかになっており、最初に見たときは有機ELかと思うほどきれいに感じた。
Super IPS+液晶になったことで色彩表現が豊かになった「ZenFone 5」
一眼レフカメラで撮影した写真を「ZenFone 5」と「ZenFone 4」で表示したところ、「ZenFone 5」のほうがより高い彩度で表示されている。肉眼で見ると、その差は歴然だ
こちらの写真のほうが彩度の高さがわかりやすいだろう。「ZenFone 5」のほうが、空の青色が濃くてビビッドだ
「ZenFone 5」のメインカメラは、1200万画素(標準カメラ、F1.8)と800万画素(広角カメラ、120度)のデュアルカメラで、「ZenFone 4」と大きな変化はない。しかし、標準カメラのイメージセンサーはソニーの「IMX363デュアルピクセルイメージセンサー」へとひとつ上のモデルへとバージョンアップしており、そのおかげかは不明だが、写真の仕上がりが明るくなり、発色もコントラストが効いたものへと変貌を遂げた。
標準と広角レンズというデュアルカメラ構成は「ZenFone 4」から変化なし。レンズ配置は従来の横並びから、縦並びに変わった
大きな進化点は、「AIオート」という撮影モードだろう。これは、カメラを向けるとAIが被写体を認識して、それに適した撮影モードを自動で選んでくれる機能だ。たとえば、食べ物を撮るときは暖色系を強調したり、動物を撮るときはシャッタースピードを速くしたりなどの設定を自動で行ってくれる。
AIオートでは、被写体やシーンを認識すると、撮影画面にそれぞれのシーンに応じたアイコンを表示。人、フード、スカイ、ナイト、フラワーなど合計16の撮影モードを自動で選んでくれる。なお、標準カメラと広角カメラの両方で動作する
以下は、「ZenFone 5」のAIオートで撮影した写真と、「ZenFone 4」のオートで撮影した写真を比べたもの。両方ともオートHDRをオンにして撮影した。全体的に「ZenFone 5」の写真は、「ZenFone 4」のものよりも明るく、色彩表現が豊かだ。ただし、実際に目で見えている色味をよく再現できているのは「ZenFone 4」だろう。
左が「ZenFone 5」で右が「ZenFone 4」
左が「ZenFone 5」で右が「ZenFone 4」
左が「ZenFone 5」で右が「ZenFone 4」
左が「ZenFone 5」で右が「ZenFone 4」
写真の仕上がりはユーザーによって好みが分かれるところだと思うが、「AIオート」により使いやすさは「ZenFone 5」に軍配が上がる。カメラを向けると一瞬で撮影モードを選んでくれるので、設定など細かいことを気にせずに手軽にパシャパシャ撮影したい人には向いているだろう。AIオートの仕上がりが気に入らない場合は、マニュアル設定が可能な「Proモード」で撮影できる。
「ZenFone 4」からの進化点としてもう1つ紹介したいのが、ポートレートモードで2台のカメラを使ってボケの調整ができるようになったこと。「ZenFone 4」ではソフトウェア側でボケを処理していたため、時折不自然に写ることがあったが、「ZenFone 5」では自然なボケを演出することができる。
ボケの強弱を調節できるようになった。なお、この効果は撮影時のみで、撮影後にボケを調節できるわけではない
最後は基本スペックを紹介する。「ZenFone 5」はCPUが「Snapdragon 636(1.8GHz)」で、メモリーが6GB、ストレージ容量が64GB。「ZenFone 4」が「Snapdragon 660(2.2GHz)」を搭載していたことを考えると、CPUは若干スペックダウンしている。
基本スペック比較表
ただし、CPUが必要と判断した際に自動で高クロック動作し性能の底上げを行う「AIブースト」機能が搭載されており、これをオンにすると処理性能が最大約15%向上するという。AIブースト機能をオンにしてベンチマークソフト「AnTuTu Benchmark」によるテストを行ったところ、実際にスコアはオフ時よりも高くなり、「ZenFone 4」とほぼ変わらないスコアを記録した。3Dゲームなど負荷の高い作業を行うときには便利だろう。ただし、AIブーストをオンにすると、バッテリーの減りが早くなるとのことだ。
ベンチマークソフト「AnTuTu Benchmark」のテスト結果(左が「ZenFone 5」、右が「ZenFone 4」)。AIブーストをオンにしていない状態だと、「ZenFone 4」のほうがスコアは高い
AIブーストをオンにすると、「ZenFone 5」(左)が「ZenFone 4」(右)を若干上回る結果になった。ただし、CPUとGPUのスコアは「ZenFone 4」のほうが高いスコアを記録した
また、AIを活用した新機能にも注目したい。ユーザーの生活リズムに合わせ、充電時間を自動で認識して過充電を防ぎバッテリー劣化を抑える「AI充電」や、ユーザーの目線を認識して画面を見ている間はスリープしない状態をキープする「スマートスクリーン」、周囲の騒音レベルに応じて着信ボリュームを自動で調節する「AI着信音」など、「ZenFone 4」にはなかった便利な機能が加わった。
「AI充電」や「スマートスクリーン」、「AI着信音」といったAIの恩恵を受けた機能が追加
通信面では、ドコモとau、Y!mobileの3社が提供する「VoLTE」をサポートする。microSDカードとの排他利用になるが、DSDV(デュアルSIMデュアルVoLTE)に対応しており、「4G+4G」の同時待受で利用したい人に適しているだろう。また、キャリアアグリゲーション(2CA)もサポートしている。
排他利用になるがDSDVに対応。対応バンドは上記スペック表から確認していただきたい
「ZenFone 5」は、スペックはミドルハイクラスながらも、ノッチや超狭額縁デザイン、AI、顔認証といった機能を取り入れ、最新トレンドを追及したスマートフォンだ。「ZenFone 4」の発売時価格は56,800円だったが、「ZenFone 5」はこれよりも若干安い52,800円で発売される。スペックと機能、デザインを考慮すれば妥当な価格に落ち着いたと言えるだろう。高性能なSIMフリースマートフォンを探している人は、一度検討してみるかちはあるだろう。
最新ガジェットとゲームに目がない雑食系ライター。最近メタボ気味になってきたので健康管理グッズにも興味あり。休日はゲームをしたり映画を見たりしています。