アップルの新型「MacBook Air」が2018年11月7日に発売された。約8年ぶりの大幅リニューアルということで、ディスプレイのRetina化やThunderbolt 3(USB-C)ポートの採用など、さまざまな点が進化している。1週間ほど試用してみた感想をレポートしたい。
新型MacBook Airのゴールドモデル。価格.com最安価格は135,995円(2018年11月19日時点)
MacBook Airと言えば、その薄さをアピールするために、スティーブ・ジョブズ氏が「Macworld 2008」で封筒から取り出したというのは有名な話だ。初代モデルの厚さは0.4〜1.94cmで、重量は約1.36kgだった。その後、MacBook Airのような薄型ノートが他社からも続々と登場。MacBook Airは、現在も人気の薄型モバイルノートの原型と言っても過言ではない。
MacBook Airは先端が細い、くさび型のフォルムが特徴だ。新型MacBook Airも、くさび形のフォルムを継承しており、「MacBook」や「MacBook Pro」とは印象が少し異なる。本体サイズは304.1(幅)×212.4(奥行)×4.1〜15.6(厚さ)mm、重量は約1.25kg。従来モデルは325(幅)×227(奥行)×3〜17(厚さ)mm、重量が約1.35kgなので、ずいぶんコンパクトで軽くなった。
先端に向かって細くなるくさび形のフォルム
手前の最薄部は0.41cm
化粧箱に印刷されるMacBook Airの写真はカラーごとに異なる。シールもゴールドだった
従来モデルと重ねると、幅と奥行がかなりコンパクトになっている
カラーバリエーションが用意されたのも、ユーザーにとってはうれしいポイントだろう。ゴールド、シルバー、スペースグレイの3色だ。iPhoneを含む、今のアップル製品の基本カラーと言えるカラーバリエーションである。
ビジネスシーンが似合うスペースグレイ、女性に人気が出そうなゴールド、クラシックな雰囲気のシルバーの3色をラインアップ
本体がコンパクトになったわけは、ディスプレイを開くとすぐにわかる。ベゼルが細くなり、ずいぶんと今風になっているためだ。
左が従来モデル、右が新型モデル。左右のベゼルがかなり細くなっているのがわかる。画面サイズはどちらも13.3型だ
ディスプレイがRetina化(高解像度化)されたのも新型MacBook Airの特徴だ。MacBookやMacBook Proは、Retinaディスプレイを搭載しているため、新鮮味はないが、従来モデルのMacBook Airユーザーなら、高精細化の恩恵を存分に味わえるだろう。新型モデルを使ってから、旧型モデルに戻ってみると、画面の粗さが気になってしょうがない。
「P3」という広色域に対応するMacBook Proよりも色域は狭いが、日常使いではまったく気にならない。旧MacBook Airの色域の狭さに比べれば、コントラストが高くメリハリのある表示となっており、写真や動画も本当にきれいな画質で楽しめる。
解像度は、従来のMacBook Airは1440×900、新型MacBook Airは2560x1600
外部インターフェイスも変わっている。MacBook Airのいいところとして、SDメモリーカードスロットやUSB Type-Aなどを搭載していことをあげる人が多いが、MacBook Airはもともと、世界最薄の称号を手に入れるため外部インターフェイスを省いていた。当時のノートPCでは当たり前だった光学ドライブもLANもモデムもなく、USBポートも1基だけだったのだ。
そう考えると、Thunderbolt 3(USB-C)ポートが2つというのは納得できる。しかも、Thunderbolt 3(USB-C)ポートはデータのやりとり、ディスプレイの出力、充電に利用できるマルチなポートなので、2つでもさまざまな用途をカバーできる。右側面には3.5mmのヘッドホン出力を備えている。
左側面にThunderbolt 3(USB-C)ポートを2基、右側面に3.5mmのヘッドホン出力を備える
ACアダプターは30W
キーボードはバタフライ構造に変更された。従来モデルのシザー型がいいと思っている人もいるかもしれないが、これはしょうがない。しかし、バタフライ構造のキーボードも世代を重ねて、ずいぶんと打ちやすくなっている。しっかりとしたクリック感があって、底につく感じも少ない。安定感があるのも個人的には好きなポイントだ。バックライトもひとつひとつのキーに埋め込まれており、きれいに見やすく光ってくれる。
最新のバタフライ構造キーボードは、従来のシザー構造キーボードより安定性が4倍向上しているのがウリ
キーストロークは浅めだが、しっかりとしたクリック感がある。慣れてしまえば不満なくタイピングできる
従来モデルと比べるとタッチパッドの面積が20%広くなっている。カーソルキーは従来モデルのほうが打ちやすい
「Touch ID」を搭載したのも大きな特徴だ。ログインや「Apple Pay」の認証が指紋1つで済むのは便利の一言。また、通常のFnキーとTouch IDの組み合わせも、現状ではMacBook Airだけなのも抑えておきたい。MacBook ProはTouch Bar付きのモデルにTouch IDが搭載されており、通常のFnキーは搭載されていないのだ。MacBookにはそもそもTouch IDを備えたモデルはない。文字入力にFnキーを多用するユーザーでTouch IDも使いたいという人にとって、MacBook Airは現状唯一の選択肢なのだ。
右上にTouch IDを搭載
指紋の情報はクラウドなどではなく、Mac用カスタムシリコン「Apple T2 Securityチップ」内に格納される。このチップのおかげで、MacBook Air上で「Hey Siri」と話しかけて、さまざまな操作ができるようになっている
MacBook Airは1.6GHzのCore i5プロセッサーを搭載する。モバイル用のUプロセッサーではなく、より消費電力の低いYプロセッサーとなっており、パワーよりもスタミナを重視したCPUだ。メモリーは8GB(オプションで16GBに変更可能)。ストレージは128GB SSD(オプションで256GB、512GB、1.5TB SSDに変更可能)、256GB SSD(オプションで512GB、1.5TB SSDに変更可能)の2タイプを用意する。
筆者は普段、MacBook Proを使っているが、軽い作業をしている限り、アプリケーションの起動時間や全般的な動作においては大きな差を感じなかった。モバイルノートだからと我慢を強いられることはなさそうだ。ベンチマークテストを実施してみると、ファンが回り、本体もほのかに暖かくなったが、許容できるレベルだった。
バッテリー駆動時間は約12時間と1日中使える長さだ。取材に持ち歩いてメモマシンとして使ってみたが、3日間は充電なしで使えた。
CPUはYプロセッサーだが、日常使いには必要十分な性能だ
新型MacBook Airは、従来モデルのバランスのよさを引き継ぎつつ、現代風にバージョンアップを果たしたモデルだ。性能が極端に高いわけでも低いわけでもなく、突出した機能があるわけでもないが、見やすい13.3型ディスプレイに使いやすいキーボード、それに携帯しやすいスタイリッシュなボディというモバイルノートに必要な要素が、このスリムなボディに詰まっている。
価格だけは少し上がってしまったが、このバランスのよさは、ほかのMacノートにはない魅力であり、長く愛され続けている理由なのかもしれない。これまで「Macノートで何がいいですか?」と聞かれたら、「性能を重視するならMacBook Pro、携帯性を重視するならMacBook」と応えていたが、これからはMacBook Airを基準にして、もっと性能が必要ならMacBook Pro、もっと軽いほうがいいならMacBookと応えようと思っている。Macノートの新しい入り口として、MacBook Airは誰にでもすすめられるマシンに仕上がっている。
ライバルとなるのは、13.3型のMacBook ProのTouch Barなしモデルと、同じタイミングで発売された新型iPad Proの12.9型モデルだろう。
MacBook Proは約1.37kgと少しだけ重く、価格も142,800円と8,000円だけ高い(アップルオンラインストア価格、2018年11月19日時点)。CPUは同じデュアルコアだが、MacBook ProはUプロセッサーなので、パフォーマンスは高い。バッテリー駆動時間やTouch IDなどの違いはあるが、どちらにするか本当に悩ましいところだ。性能を重視するならMacBook Proだが、携帯性はMacBook Airに分がある。ただし、その差はそれほど大きくないので、慎重に選びたいところだ。
ペンを使ったクリエイティブな作業やタッチによる直感的な操作がしたいという人は、iPad Proだろう。キーボードやApple Pencilをそろえると、価格はiPad Proのほうが高くなるが、できることの多さという点ではiPad Proに分がある。
パソコン関連を担当する双子の兄。守備範囲の広さ(浅いけど)が長所。最近、鉄道の魅力にハマりつつあります。