レビュー

隠れた名機? シャープ「AQUOS sense2」の魅力とは?

シャープの「AQUOS sense2」は、NTTドコモ、au、UQモバイルの各キャリアで取り扱われる、この冬注目のエントリー向けスマートフォンだ。そのUQモバイル版「SHV43-u」の使用レポートをお届けする。

「AQUOS sense2」は、好調のシャープを支えたエントリー向けスマートフォン「AQUOS sense」の後継モデル。オーソドックスな作りながらも、海外勢がしのぎを削るエントリー向けスマホ市場で健闘を続ける希有な存在だった前モデルの後継機として注目を集めている

画面サイズ(解像度):約5.5インチ(1080×2160、IGZO液晶ディスプレイ)
サイズ(幅×高さ×厚さ):約71×148×8.4mm
重量:約155g
防水/防塵:○(IPX5/8)/○(IP6X)
CPU:Snapdragon 450(1.8GHz×8)
RAM容量:3GB
ストレージ容量:32GB
増設用メモリーカードスロット:microSDXC(最大512GBまで対応)
OS:Android 8.1
SIMカードスロット:nanoSIM×1
Wi-Fi:IEEE802.11a/b/g/n/ac(2.4GHz帯/5GHz帯)
NFC:搭載
FeliCa:搭載
フルセグチューナー/ワンセグチューナー:非搭載/非搭載
指紋認証センサー:搭載
メインカメラ:約1,200万画素
フロントカメラ:約800万画素
バッテリー容量:2,700mAh
フルセグチューナー/ワンセグチューナー:非搭載/非搭載
USB:USB Type-C

流行の縦長IGZO液晶を搭載した人気モデルの後継機

本機の前モデルとなるシャープ「AQUOS sense」は、2017年11月よりNTTドコモ、auから発売され、SIMフリー機でも「AQUOS sense lite」も含めて人気を博した。そんな、人気モデルの後継機である「AQUOS sense2」は、11月上旬よりauおよびUQモバイルから発売されており、NTTドコモからも12月14日より発売される。

AQUOS sense 2のボディサイズは、約71(幅)×148(高さ)×8.4(厚さ)mm、重量は約155g。ディスプレイは2160×1080のフルHD+表示に対応する約5.5インチのIGZO液晶だ。前モデルと比較すると、ディスプレイは約5.0インチから約5.5インチに大型化されたが、縦横比が18:9の縦長ディスプレイなので、短辺はほとんど変わらず長辺が伸びた形だ。なお、横幅が約1mm、厚さも0.1mmだけコンパクトになったが重量は7gほど増えている。表示面積自体は約23%広くなっており、WebページやTwitterのタイムラインのように、縦方向に長いコンテンツの表示が見やすくなった。いっぽう、縦横比16:9の動画コンテンツでは上下に黒い非表示エリアが生まれる。

搭載される約5.5インチのIGZO液晶ディスプレイは、2160×1080のフルHD+表示に対応しているので粗さはない。液晶テレビ「AQUOS」で培われた、肉眼の印象に近い自然な色調も魅力だ

ボディデザインは前モデルと大きく変わらず、人を選びにくいデザインだ。IPX5/8等級の防水仕様と、IP6X等級の防塵仕様をクリアしており、この点が海外メーカーのエントリーモデルと比較した本機の優位点となっている。なお、耐衝撃性能は備わっていない。

機能面では、FeliCaポートとNFCポートを搭載。生体認証は、従来からの指紋認証に加えて、顔認証にも対応している。SIMフリー機でもFeliCa搭載機は増えているが、本機を含む、端末価格が3万円前後のSIMフリー機の中ではかなり限られる。この点も本機には大きなアドバンテージがある。

ボディ上面にイヤホン端子が備わる

ボディ上面にイヤホン端子が備わる

前モデルから引き続きUSB Type-Cポートを採用。リバーシブルで扱いやすく、コネクターの耐久性にもすぐれる

指紋認証センサーはボディ前面下に備わる

指紋認証センサーはボディ前面下に備わる

基本スペックは、クアルコムのミドルレンジ向けSoC「Snapdragon 450」に、3GBのRAMと32GBのストレージ、512GBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを組み合わせるもの。OSはAndroid 8.1だが、発売後2年間に最低2回のバージョンアップが保証されている。通信機能では、2.4GHz帯に加えて新たに5GHz帯のWi-Fiに対応した。5GHz帯は従来の2.4GHz帯より電波干渉が少なく、安定した通信が行えるのがありがたい。

本機の処理性能を、定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク Ver.7.1.1」を使って計測したところ、総合スコアは72,094(内訳、CPU:33,427、GPU:12,104、UX:21,079、MEM:5484)となった。このスコアは、前モデル「AQUOS sense」の60,000前後と比較して約2割のアップとなる。

アプリの起動やタスクの切り替えなどの体感速度は、この価格帯の製品としては平均的で、ファーウェイ「P20 lite」や、OPPO「R15 Neo」などとほぼ互角。3Dゲームなどで要求される高いグラフィック性能は持ち合わせていないが、通常のアプリであればストレスなく利用できる。

AnTuTuベンチマークのテスト結果は72,094。SoCにSnapdragon 450を搭載するスマートフォンとしては平均的なスコアだ

電池持ちはかなり良好。ゲーム、撮影、SNSで使い込んでも1日半は余裕で持つ

すでに触れたように本機は、IGZO液晶ディスプレイを採用しているが、光の透過率が向上したことでパネル単体の消費電力が前モデルよりも約21%削減された。そのおかげで本機は前モデル以上に電池持ちにすぐれたスマートフォンに仕上がっている。今回は10日間検証を行ったが、その間充電は4回行った。待ち受け主体なら2日半以上は余裕で持ち、ゲームやSNSなどで1日3時間程度断続的に使っても1日半は余裕で持ちこたえた。また、静止した映像で省電力効果が高くなるIGZO液晶の特徴もあり、電子書籍を読み続けた際のバッテリー消費ペースは30分で2〜3%程度、1時間読み続けてもわずか5%。バッテリー持ちという点で見ると、総じてかなり満足度は高い。

検証中のバッテリー消費ペース。ゲームやカメラなどをさほど使わないのであれば、2日半はバッテリーが持つ印象だ

ソフトウェア制御の省エネ機能「長エネスイッチ」も備わっており、さらに電力消費を抑えることもできる

ソフトウェア制御の省エネ機能「長エネスイッチ」も備わっており、さらに電力消費を抑えることもできる

バッテリーまわりのもうひとつの注目点は、バッテリーの劣化を防ぐ新機能「インテリジェントチャージ」だ。バッテリーは、それ自体が発する熱も劣化を進める原因のひとつだが、インテリジェントチャージは、充電中の発熱を抑えることで劣化を抑えるというもので、一般的な使い方なら1年間使い続けても電池の容量が90%以上が維持されるという。

検証中に計測した充電中のバッテリーの最高温度は36.2℃で、出力の大きなUSB PD充電器を使ってもかなり発熱は抑えられた。インテリジェントチャージのような充電制御は、一般に充電に時間がかるのがネックだが、本機の場合、フル充電にかかる時間はカタログ値で約140分、検証時の充電時間もそれに近い144分で、2,700mAhのバッテリー容量に対して極端に時間がかかるというわけではない。

検証期間中のバッテリーの温度推移。いちばん高温になったのは、USB PD充電器を使い残量ゼロから充電中に記録した36.2℃。通常に使っている場合は30℃代前半で推移している

カメラはネックだった高感度撮影が改善されて使いやすくなった

近ごろはエントリースマホでも、メインカメラがデュアルカメラ仕様になっているものが多い。しかし本機のカメラは、従来通りのシングルカメラだ。メインカメラは約1,200万画素のイメージセンサーに、35mm換算で焦点距離24mmの広角レンズを組み合わせており、スペック的にはいささか平凡な印象は否めない。だが、その中身を前モデルと比べると、イメージセンサー上に並ぶフォトダイオードひとつひとつの表面積が約25%拡大されているうえに、レンズの絞りも従来のF2.2からF2.0に明るくなるなど、光学面の機能強化が図られている。オートフォーカスも、像面位相差AFとコントラストAFを組み合わせることでスピードと精度が向上。さらに、AQUOSシリーズの上位モデルに搭載される、AIを使ったシーン認識機能「AIオート」も搭載され、使い勝手も向上している。

メインカメラは、約1,200万画素のイメージセンサーを搭載。手ぶれ補正機構もないなど、スペック的にはやや平凡な印象

フロントカメラは約800万画素。こちらもスペック面では特筆すべきものはない

フロントカメラは約800万画素。こちらもスペック面では特筆すべきものはない

以下に本機のメインカメラで撮影した作例を掲載しよう。なお、いずれも初期設定であるAIオートモードで撮影している。

接写気味で弁当を撮影、なお、照明は電球色のLED電球である。AIは食べ物として認識できていたが、色調がやや薄い

オレンジとブルーのオイルを垂らすオイル時計を、自然光の下で接写。肉眼の印象に近い仕上がりで発色は悪くない。AIはイクラと勘違いしたのか食べ物だと認識した

明るくライトアップされる白いクリスマスツリーを遠景で撮影。いちばんまぶしいツリーの付け根部分にピントを合わせたが、白飛びしているエリアがかなり少ない。明暗差が大きくスマホのカメラには酷な構図だがかなり健闘しているほうだろう

丸の内の夜景。光量も十分だし、ノイズも少なめ、手ぶれも見られず、3万円台のスマホとしてはかなり健闘している。前モデルであるAQUOS senseよりも扱いやすくなっている

本機のカメラを使って感心したのは、オートフォーカスの正確さと速さだ。画面上で焦点を合わせたい部分をタッチすれば、1秒もかからず「ピッ」と鳴って合焦する。あとはシャッターを押せば、きれいな写真が簡単に撮れる。また、前モデルが苦手にしていた高感度撮影機能も大きく改善された。手ぶれ補正機能はないものの、手持ちでも夜景撮影は十分可能。光量も十分でノイズも少ないため、夜景や屋内でも気にせずに撮影できる。AIシーン認識もトリッキーな被写体でなければ認識精度は良好で、これも仕上がりのよさに大きく貢献している。シングルレンズなので、背景ぼかしや光学ズームは行えないが、仕上がりのよさでは、同価格帯のライバルと比較して見劣りはしない。

独自の強みがあり、トータルバランスにすぐれたエントリー機の注目モデル

前モデルの「AQUOS sense」や「AQUOS sense lite」は、“ちょうどいい性能”というコンセプトを掲げていた。目を見張るスペックではないものの、多くのユーザーが日常的に使うWeb閲覧やSNS、カメラなどの機能は十分で、その点がユーザーに支持された。そのコンセプトは本機でも健在で、1年分の細かなスペックアップはありつつも、引き続き“ちょうどいい性能”に仕上がっている。

本機と競合する3万円前後のエントリースマホはファーウェイの「P20 lite」や「Mate 20 lite」、モトローラ「moto g6」、OPPOの「R15 neo」や「AX7」など、海外メーカー製を中心に多くのモデルが名を連ねる大変な激戦区だ。だが、本機は、防水・防塵ボディや、FeliCaポートの搭載といった国内メーカー製スマホでおなじみの機能に加えて、2年間最低2回のOSバージョンアップ保証や良好なバッテリー持ちといった独自の強みもあり、トータルバランスにすぐれている。こうして見ると、ライバルは一見多いようだが、真っ向からぶつかるものはほとんどない。キャリアスマホの高機能と格安スマホのコスパを兼ね備えた貴重なモデルと言えよう。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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