格安SIMカードの中には、通信速度に上限を設けるいっぽうで、通信容量については無制限というプランがいくつかある。気になるのは速度制限がどの程度デメリットになるかという点だろう。そこでここでは1Mbps、500kbps、200kbpsという3種類の上限速度が設けられた通信容量無制限の格安SIMカードを1週間ほど使って、その実用度をチェック。これらのSIMカードがどんな使い方に適しているかを調べた。
MVNO各社の提供するSIMカードの中には、最初から通信速度に上限を設けつつ、通信容量については無制限の使い放題、またはそれに近い条件の格安SIMカードが存在する。価格もほかの一般的なプランより安いので、通信速度よりもデータ通信容量重視!という人にとってはそこそこ魅力的に映るはずだ。とはいえ、昨今の大容量化するデータ状況の中で、これらのプランがどれだけ使い物になるのか、心配という向きも多いことだろう。そこで、ここではこの手の代表的な格安SIMカードをピックアップして1週間ほどテストを行った。
以下に通信速度の上限別に代表的なSIMカードとプランを整理したので参考にして欲しい。
・楽天モバイル「スーパーホーダイ(高速通信オフ時)」(プランS:月額2,980円。初速バーストあり)
・UQモバイル「データ無制限+音声通話プラン」(月額2,680円。初速バーストあり)
・OCNモバイルOne「500kbpsコース」(月額2,500円。新規受け付け終了)
・ロケットモバイル「神プラン」(月額948円。初速バーストあり)
・DMM「ライトプラン」(月額1,140円。初速バーストあり)
・エキサイトモバイル「低速通信」(月額1,200円。初速バーストあり)
・mineo「Aプラン」(月額1,310円〜。低速モード、初速バーストあり)
※価格はいずれも税別で、音声通話付きプランで統一している。
なお、速度制限のあるSIMカードには、通信開始時に限り速度制限を課さない「初速バースト」や「バースト転送」などと呼ばれる機能が備わっているものが多い。軽いデータならバースト中にダウンロードが終わるので、体感速度を大きく改善してくれる。
今回は、これらの中から、楽天モバイル(1Mbps)、UQモバイル(500kbps)、mineo(200kbps)のSIMカードを実際に使い、実際の使用感を試してみた。
まずは、各SIMカードの実効速度を見てみよう。詳しくは下の写真を見て欲しいが、通信速度計測アプリ「Speedtest.net」を使って計測した結果としては、時間帯を問わず速度の上限値までのスピードは出ているようだ。なお、楽天モバイルは12〜13時、18〜19時の混雑する時間帯に限り通信速度が300kbpsに制限されるので注意されたい。
左から「楽天モバイル」(1Mbps)、「UQモバイル」(500kbps)、「mineo」(200kbps)の通信速度。いずれもおおむね上限値通りの通信速度が出ていた
1Mbps
ADSLや3Gネットワークの実効速度に近いこともあり、速くはないが速度が制限されているという実感は薄い。Webコンテンツを閲覧する用途なら、ごく普通に使うことができる。Googleマップもごくごく普通に使える。ただし、ストリートビューを利用した場合のもたつきはこの速度でも見られる。
ほとんど瞬間的に地図データが表示されるので、普通の通信速度のSIMカードと違いはほとんどない
500kbps
Webコンテンツの閲覧では、200kbpsよりは軽快だが「使用感が全般的に数テンポ遅れる」というのがもっともしっくりくる表現だ。「Googleマップ」では、検索した地図データのダウンロードは数秒〜10数秒程度かかり、スクロールや縮尺を変更するたびにこうした待ち時間が発生するのでストレスは生じる。ストリートビューも、データがダウンロードされるまでにやはり同じ程度の時間がかかる。
「Googleマップ」で現在地を表示させて約5秒後の様子。地図データのダウンロードが完了していない
200kbps
初速バースト作動中にデータの大半を取得できればWebページの閲覧レベルなら体感速度はさほど悪くない。そのため、メールやテキスト主体のSNSのような、ライトな使い方なら影響は感じない。ただし、初速バーストを超えてしまうとデータがダウンロードされるまで待たされる。「Googleマップ」を利用したところ、地図のダウンロードがひと通り終わるまでは数秒から30秒程度はかかった。情報量の多い都市部の地図では時間に余計にかかる傾向だ。また、スクロールや縮尺を変えた場合、ストリートビューを使用した場合で待たされることが多く、全般にストレスを感じる結果に。
「Googleマップ」で現在地を表示させて約5秒後の様子。新しい場所を表示させるとこの状態が20秒ほど続くこともある
1Mbps
720pまで画質を上げた場合、コンテンツによっては再生の中断が発生することがあった、ビットレートの高くなりがちな動きの激しいものでは苦しい。再生の中断を避けたいのであれば480pに調整したほうが安定感は増す。なお、「YouTube Music」の音楽ストリーミングは“高音質”にしても快適に利用できた。
1Mbpsの実効速度があれば720pのストリーミング動画でも中断なく再生できることはあった。スマホの小さな画面ならこれで十分だと感じるひとは少なくないだろう
500kbps
500kbpsのSIMカードでは360p〜480pあたりが画質の上限
200kbps
200kbpsの通信速度で「YouTube」をコマ落ちせずに再生するには240p、場合によっては最低画質の144pまで落とす必要があり、画質にこだわらず一応再生はできる、というレベルだ。「YouTube Music」では、音質を“標準”にした場合で、ストリーミングがギリギリ間に合う程度。“低音質”まで音質を落としても、再生が中断することがあった。いずれにしても、この通信速度で現在の標準的なマルチメディアコンテンツを扱うのは厳しそうだ。
中断を起こさず再生できる画質は240pが上限。場合によっては144pまで画質を落とす必要もある
1Mbps
1MBのファイルを8秒でダウンロードできる計算。実効速度が遅めのSIMカードと大差ない速度なので、実用に困ることはないだろう。
500kbps
200kbpsと比較して2.5倍の速度アップとなるので、データのダウンロードもかなり楽な印象。なお、検証中にファイルサイズが約2.5GBのアップデートがあったが、断続的に丸1日かけてダウンロードを行い無事に完了した。大きめのサイズのアップデートは少々厳しい。なお、UQモバイルの「無制限コース」には、直近3日間(0〜24時までを1日とし、当日を含む直近3日間の通信量)に6GB以上の通信を行った場合にさらなる速度制限がかかるのでこの点は注意が必要だ。
200kbps
理論上1秒間に25KBのデータをダウンロード可能で、1MBのデータをダウンロードするのに40秒かかる。20MBのファイルでも、10分以上の時間がかかる計算だ。アプリの数によっては、日々のアップデートに1時間くらいかかってしまう。夜中の間にまとめてアップデートを済ませるなどの工夫が必要だろう。なお、検証期間中に、3.4GBのサイズがあるシステムアップデートを行ったところ、2日に分けたダウンロードが必要だったが一応無事にアップデートが行えた。
以上、速度の異なる3種類の格安SIMカードを比較した。快適さは当然、1Mbps>500kbps>200kbpsの順番だが、UQモバイル「データ無制限+音声通話プラン」の通信制限速度500kbpsなら、動画のストリーミングも画質を360pあたりまで妥協すれば利用できるので、なんとか使い物になるだろう。いっぽう、通信制限速度200kbpsのmineo「ドコモプラン(速度制限スイッチ使用時)」は、初速バーストが効果を発揮するWeb閲覧やメールSNSの利用ならさほど問題ない。マルチメディアコンテンツを視聴する場合、かなり画質・音質を落とさなければいけないなど、ストレスは感じざるを得ない。楽天モバイル「スーパーホーダイ」の通信速度1Mbpsは、コンテンツによっては720pのストリーミングでも問題なく視聴できるし、「Googleマップ」も普通に使えるので実用性はかなり高い。かなりコストパフォーマンスが高いSIMカードと言える。