2019年6月1日から実施された、スマートフォンの端末価格と通信料金を分離する「分離プラン」。値引きが基本的になくなったため、全体としては端末価格が高めになっている中で、比較的購入しやすい低価格〜中価格帯モデルに注目が集まっている。なかでも、ソニー「Xperia Ace」とGoogle「Pixel 3a」は、5万円以下で購入できるリーズナブルな価格設定で注目を集めており、機能面でも共通点が多い。そんな両機を実際に使い機能面を比較してみた。
2019年6月1日から実施されたNTTドコモの分離プランの影響で、ハイエンドスマートフォンが軒並み10万円前後の販売価格となった。これを嫌う人たちから今注目されているのが、5万円前後で買えるミドルレンジモデルだ。NTTドコモのこの夏のラインアップではソニーモバイル「Xperia Ace」(45,000円)とGoogle「Pixel 3a」(43,200円、いずれも税別価格)がこれにあたるが、価格帯と機能の両面で似通った部分の多いライバル製品となっている。
両機のボディを見てみよう。「Xperia Ace」は、約67(幅)×140(高さ)×9.3(厚さ)mmで、重量約154g。2,160×1,080表示に対応する約5.0インチの液晶ディスプレイを備えたコンパクトモデルだ。いっぽうの「Pixel 3a」は、約70.1(幅)×151.3(高さ)×8.2(厚さ)mm、重量約147gのボディに、2,220×1,080表示に対応する約5.6インチの有機ELディスプレイを組み合わせた標準サイズのモデルとなる。
「Xperia Ace」のボディは、板ガラスのようなシルエットや、側面の指紋認証センサー付き電源ボタンなど、Xperiaシリーズのデザインモチーフが豊富に取り入れられている。いっぽうの「Pixel 3a」は樹脂製のボディで、高級感は今ひとつだが、縦長の有機ELディスプレイなど、魅力的な部分は多い。
ディスプレイに関しては「Pixel 3a」は、有機ELらしいコントラスト比が高い濃厚な発色で、視野角も広く、液晶とは異なる美しい映像を体験できる。いっぽう、「Xperia Ace」は、見慣れた液晶ディスプレイではあるが透明感があり、「Pixel 3a」と並べて発色や階調表現を比較しても健闘している。パネルの違いはあるが画質はいずれも良好と言えよう。
「Xperia Ace」(写真左)と「Pixel 3a」の背面。質感では「Xperia Ace」のほうが高級感を感じる
同じ映像サンプルを表示させて並べた。有機ELならではのアドバンテージは「Pixel 3a」(写真右)にあるが、「Xperia Ace」(写真右)と比べてもキウイの緑や赤いザクロの発色には大きな違いがない。陰影の表現もいずれも良好
電子書籍を表示させて、白の色味を確認。全体的に「Xperia Ace」(上)がややシアン気味、「Pixel 3a」(下)がマゼンタ気味だが、色かぶりが気になるというほどではなく、両機とも自然な発色に感じられる
防水/防塵対応については「Xperia Ace」はIPX5/8等級の防水仕様と、IP6X等級の防塵仕様をクリアしており水没まで対応する。いっぽう「Pixel 3a」は、IPX2の防滴にとどまり、水没や水をかぶるような状況には対応していない。なお、防塵等級はIP5Xとなる。
なお、両機ともFeliCaポートとNFCポートおよび、ヘッドホン端子とステレオスピーカーを搭載している。ワンセグ/フルセグのテレビチューナーは両機とも非搭載だ。なお、「Pixel 3a」はボディ側面を握ることでAIアシスタントの「Googleアシスタント」を起動する「Active Edge」機能を備えている。
両機種とも底面にリバーシブルのUSB Type-Cポートを搭載、USB PDを使った急速充電に対応している点も共通している
次に、両機の基本性能を比較しよう。「Xperia Ace」は、SoCに「Snapdragon 630」を採用し、4GBのRAMと64GBのストレージ、512GBまで対応のmicroSDXCメモリーカードスロットを組み合わせる。「Pixel 3a」は、SoCが「Snapdragon 670」で、4GBのRAMと64GBのストレージを組み合わせる。microSDメモリーカードスロットは非搭載だ。いずれもOSはAndroid 9。両機の違いは、SoCのグレードとmicroSDメモリーカードスロットの有無がポイントとなる。
定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク」を使い、両機のベンチマークテストを実施した。「Xperia Ace」が、総合スコア90,525(内訳、CPU:38,921、GPU:19,803、UX:25,009、MEM:6,793)で、「Pixel 3a」が、総合スコア157,290(内訳、CPU:61,085、GPU:44,225、UX:40,548、MEM:11,432)となった。スコアだけを比較すると「Xperia Ace」は大体4年ほど前のハイエンドモデル並み、「Pixel 3a」は2年ほど前のハイエンドモデル並みの処理性能という結果だ。
両機の総合スコアには、7万点弱という差があり、体感速度も全般的に「Pixel 3a」のほうが高速で、グラフィック性能が大きく影響する3Dゲームでは差をさらに感じた。「Xperia Ace」は、SNSやWebや動画視聴といった、カジュアルな使い方には適しているが、グラフィックを重視したゲームにはやや不向きだ。
AnTuTuベンチマークの総合スコア。左が「Xperia Ace」、右が「Pixel 3a」のもの。CPU、GPU、UX、MEMの各サブスコアを含めて、「Pixel 3a」のほうが全般的に高いスコアとなった
ただし、増設用のmicroSDXCメモリーカードスロットを備えていない点は、「Pixel 3a」のネックだ。写真やドキュメントなどのデータは「Googleドライブ」や「GooglePhoto」といったクラウドサーバーに保存できるが、アプリ本体やそのデータはどうしても内部ストレージに保存する必要がある。3年や4年といった長期間にわたって利用する場合、ストレージのやりくりでは苦労する場面が多くなるだろう。
また、両機の見逃せない違いに、予定されるAndroid OSのバージョンアップがある。「Pixel 3a」はGoogle純正だけあり、2022年5月までのバージョンアップが保証されている。いっぽうの「Xperia Ace」は、そうした指針が発表されていない。近ごろのXperiaシリーズはシステムのバージョンアップを積極的に行ってはいるが、「Xperia Ace」のようなミドルレンジモデルで発売後3年にわたってバージョンアップするといったケースはほとんどない。セキュリティを保ちつつ、長期間使うという点では「Pixel 3a」のほうが有利だ。
次に、カメラを見てみよう。メインカメラはいずれもシングルカメラで、イメージセンサーは「Xperia Ace」が約1,200万画素、「Pixel 3a」は約1,220万画素。レンズの絞りはいずれもF1.8で、電子式と光学式のハイブリッド手振れ補正を備えているなどスペック的にはほぼ互角だ。
ただし、「Pixel 3a」のメインカメラは、上位モデルである「Pixel 3」と基本的には同じもので、AIを使ったノイズの少ないデジタルズームや、夜景モード、ポートレートモードが特徴となっている。特に夜景モードは肉眼以上の仕上がりとして非常に評価が高い。いっぽう、「Xperia Ace」のカメラは前モデル「Xperia XZ2 Compact」から設計を一新したもので、画素数を少なくする代わりに感度特性を向上させたものとなっている。
両機種ともメインカメラにはシングルカメラを採用している
以下に両機種のカメラで撮影した作例を掲載する。なお、いずれもカメラ任せのオートモードを利用している。
間接的外光の入る店内で撮影。肉眼の印象よりも少しイエロー気味だ
同じ条件で撮影。やや寒色気味になっているが、肉眼の印象により近い仕上がりだ。細部の表現も良好で、全般的にクッキリしている
明るい昼間の風景を撮影。ピントは中央の川面に合わせている。全般に淡い色調で、コンクリート塀や葉などのディテールが少しぼんやりしている
全般的な色調が濃厚かつ、ディテールがクッキリしているので、より鮮烈な印象を与える。こちらもピントは中央の川面に合せている
デジタルズームを最大まで効かせたところ。Xperiaシリーズにもデジタルズームの補正機能があるので、荒れやノイズはそれほど目立たない
こちらもデジタルズームを最大まで効かせたところ。ズームの倍率はこちらのほうが少し高いようだ。AIを使った荒れやノイズの処理もうまく作用している
夜景を撮影。不足していた光量が増加して、明るさは十分。ただ、コントラストの高さを吸収し切れておらず、建物のディテールなどクッキリ映っていない部分がある
同じ構図を通常モードで撮影。「Xperia Ace」よりも暗めだが、建物のレンガなど細部もはっきりしている。また、明暗差を適切に処理しているようで、階調表現も自然だ
フロントカメラを使ったセルフィー撮影。画角が120°と広いので、手持ちで3人くらいなら構図に収まりそうだ
注目の「夜景モード」を使って夜の植栽を接写。肉眼では相当暗い状況だったが、かなり鮮明に映っている
両機のカメラだが、「Pixel 3」ゆずりの高性能カメラを搭載する「Pixel 3a」のほうがより印象的な色彩でクッキリとした写真を撮影できた。夜景撮影では、「Xperia Ace」もかなり進歩したが、明暗差がある構図では不自然な部分が見られた。手軽でキレイな撮影が行えるという点で見ると、「Pixel 3a」のほうが使いやすいだろう。ただ、「Xperia Ace」はフロントカメラが120°という広角撮影に対応しているので、セルフィー撮影の際に構図に変化が付けやすい。
最後に、バッテリー性能を見てみよう。バッテリー容量は、「Xperia Ace」が2,700mAhで、「Pixel 3a」は3,000mAhとなっている。実際の利用状況に近い条件で計測した電池持ちの指標である「電池持ち時間」は、「Xperia Ace」が約125時間だが、「Pixel 3a」は指標を公開していない。充電だが、いずれもUSB PDを使った急速充電に対応しており、「Pixel 3a」に同梱される最大出力18WのACアダプターを使ったところ、「Xperia Ace」は、残量ゼロからフル充電まで約2時間10分、「Pixel 3a」は1時間35分ほど時間がかかった。「Xperia Ace」がバッテリー容量の割に充電に時間がかかるのは、バッテリーの劣化を抑える機能「いたわり充電」が動作しているためだ。
検証期間中の両機の電池持ちだが、1日に3時間程度断続的に利用する利用パターンであれば、フル充電から2日+α程度の充電サイクルで使い続けられた。両機とも、現在発売されるスマートフォンとして満足できるだけのバッテリー持ちは備えていると言える。
以上、「Xperia Ace」と「Pixel 3a」の比較レビューを行った。「Xperia Ace」は、このクラスのモデルでは見劣りしていたカメラ機能の向上や板ガラスのようなデザインを採用するなど“Xperiaらしさ”が復活している点が魅力だ。また、microSDカードスロットを備えているので、写真や動画を大量に撮影・保存したり、アプリをたくさんインストールするような使い方には向いている。ただし、処理性能がおおむね4年ほど前のハイエンドモデルのレベルなので、性能の陳腐化は意外と早く訪れる可能性がある。
いっぽうの「Pixel 3a」は、処理性能も高くカメラ機能も高水準なので、多くの人が満足できるはず。ネックはストレージの増設ができず、64GBというストレージですべてをやりくりしないといけない点だろう。この点さえクリアできれば、NTTドコモ版は43,200円と安いこともあり、十分にお買い得モデルと言えそうだ。
FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。