レビュー

ソニーグループの技術を結集した渾身のハイエンドスマホ「Xperia 1」速報レビュー

2019年6月14日にNTTドコモ、au、ソフトバンクから一斉に発売された「Xperia 1」(ソニーモバイル)は、近ごろ低迷していたXperiaシリーズの復活を目指す注目のスマートフォンだ。ここでは、NTTドコモ版「SO-03L」を使い、速報レビューをお届けする。

縦横比21:9の4K有機ELディスプレイを搭載

ソニーモバイルのハイエンドスマートフォン「Xperia 1」は、今年2月にスペイン・バルセロナで開催された「MWC 2019」で発表され、世界的に注目を集めた。そんな注目モデルがついに国内で発売された。

ボディサイズは、約72(幅)×167(高さ)×8.2(厚さ)mmで、重量は約178g。搭載されるディスプレイは前モデル「Xperia XZ3」と同じく有機ELだが、ノッチのないオーソドックスな平面ディスプレイになり、画面サイズが約6.0インチから約6.5インチに拡大された。解像度も2,880×1,440から3,840×1,644に高められている。ソニーモバイルでは長辺の解像度が4K UHDTV(3,840×2,160)と同じなので、4Kスマートフォンとしている。なお、4K表示となるのは、これまで同様写真や映像などの一部アプリのみ。一般のアプリやホーム画面については4Kとはならない。

ディスプレイは、縦横比が21:9というかなりの縦長で、横位置にするとシネマスコープやパナビジョンといったワイドスクリーンに近く、迫力がある。ただ、そうしたAV用途に限らず、Android OSの機能である2画面表示の実用性が高まるというメリットもある。

ノッチがなく平面のディスプレイは、画面の隅々まで無駄なく利用できる

ノッチがなく平面のディスプレイは、画面の隅々まで無駄なく利用できる

2画面表示を使い、上1/3に動画を、下2/3にWeb ブラウザーを表示させた。動画を表示させつつ、下側のWebブラウザーも16:9の縦横比を保つことができる

横画面にして左にTwitterを、右にWebブラウザーを表示させた。画面が広いので視認性や操作性も問題なし

横画面にして左にTwitterを、右にWebブラウザーを表示させた。画面が広いので視認性や操作性も問題なし

写真はレースゲームの「Riptide GP」のプレイ画面。21:9表示に対応していないため、画面の右側に黒い帯が発生している

人気のゲームアプリ「アイドルマスターミリオンライブ シアターデイズ(ミリシタ)」は、21:9表示に対応していた。なお、プリインストールされるゲームアプリ「アスファルト9」や「フォートナイト」は当然21:9表示に対応していた

プロの映像環境を再現できる「クリエイターモード」

本機のディスプレイは、通常の「スタンダードモード」に加えて、「クリエイターモード」という画質モードを備えており、設定画面で任意に切り替えることができる。クリエイターモードは、10bitの階調表示、HDR規格、BT.2020の色域に対応し、100万円以上のプロ用モニターディスプレイに近い映像環境を、スマホで再現できるのがウリだ。また、こうした特殊なニーズに限らず、「Netflix」も同モードに対応しており、多くの人が気軽に利用できる。実際にクリエイターモードで「Netflix」で配信されている映画コンテンツを視聴してみたが、映画館のスクリーンで見るような落ち着いた色調で、階調表現にもすぐれていると感じた。なお、本機はこれ以外にも、4KアップスケーリングやHDRリマスターといった機能といった、ソニーがテレビ開発で培った映像技術が搭載されており、フルHDで配信されているYouTubeやフルセグの地上デジタル放送などを、4Kネイティブの映像に近い高画質で再生できる。

スタンダードモードとクリエイターモードの2種類の画質モードを搭載。なお、「Netflix」アプリを利用すると自動でクリエイターモードに切り替わる

XZ3よりも2割ほどアップした処理性能。グラフィック性能も高くゲームにも適する

基本性能を見てみよう。最新世代のハイエンド向けSoC「Snapdragon 855」に、6GBのRAMと、64GBのストレージを組み合わせ、512GBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットが備わる。OSは「Xperia XZ3」と同じくAndroid 9だ。ストレージの容量がハイエンド機としてはやや少ないが、処理性能は現在最高レベルが期待できる。

定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク」を使用し、ベンチマークテストを行ったところ、総合スコアは352,858(内訳、CPU:115,507、GPU:156,144、UX:69,563、MEM:11,644)となった。このスコアは、前モデル「Xperia XZ3」のスコア273,665(内訳、CPU:79,225、GPU:123,602、UX:61,366、MEM:9,472)と比較してもかなり高く、大幅に処理性能が向上していることが分かる。グラフィック性能も向上しているので、ゲーミングスマホとしての適性も高い。

短時間ではあるが、プリインストールされる「アスファルト9」と「フォートナイト」に加えて、ダウンロードした「ミリシタ」をプレイした。いずれも快適に動作したが、特に「ミリシタ」で、描画に負担がかかるとされるキャラクターばかりを選別して、13人ライブを行っても処理落ちは起こらず、動作は終始滑らかさを保っていた。処理性能にはかなりの余裕が感じられる。また、「フォートナイト」では横長ディスプレイにより広範囲の状況を確認できる。本機なら有利にゲームを進められるかもしれない。

AnTuTuベンチマークの結果。CPUおよびGPUの両スコアが10万点を大きく超えハイスコアとなった。前モデル「Xperia XZ3」と比較して1割強〜2割弱の性能アップを果たしている

ライバル機と同等のゲーム最適化機能「Game enhancer」を搭載

サムスン「Galaxy」シリーズや、ASUS「ZenFone」シリーズなどの競合モデルには以前からゲーム最適化機能が備わっていたが、「Xperia 1」にも同様の機能「Game enhancer」が搭載された。主な機能は、ゲーム中の通知制限、メモリー解放、処理性能の配分調整、プレイ画面をスクリーンショット撮影や動画記録など。Xperia独自の機能である「サイドセンス」を無効にする機能もある。

ゲーム最適化機能「Game enhancer」を搭載。通知制限や、スクリーンショット撮影など一般的な機能は漏らさず搭載されている

構図の変化が楽しいトリプルカメラ

次にカメラをチェックしよう。本機のメインカメラは、約1,220万画素のデュアルフォトダイオードイメージセンサーに、26mm(以下、いずれも35mm換算)の光学手ぶれ補正付きレンズ(F1.6)を組み合わせた標準カメラ、52mmのレンズ(F2.4)を組み合わせた望遠カメラ、焦点距離16mmの超広角カメラ(F2.4)のトリプルカメラ仕様で、全体で3.25倍の光学ズーム、260mmまでのデジタルズームに対応している。

また、光学式手ぶれ補正と電子式手ぶれ補正を組み合わせたハイブリッド手ぶれ補正を備え、動画/静止画撮影の両方で暗所での手ぶれを抑えることが可能だ。加えて、RAWデータの時点で赤、緑、青の各色情報に対してノイズ除去を行うことで、細部の情報を残しつつ強力なノイズ除去を行えるようにもなっている。

背面のメインカメラはトリプルカメラに進化。3段階の光学ズームが行えるほか、高感度性能も向上している

背面のメインカメラはトリプルカメラに進化。3段階の光学ズームが行えるほか、高感度性能も向上している

以下に本機のメインカメラで撮影した作例を掲載する。いずれもカメラ任せのオートモードを利用している。

望遠カメラ

日中の風景を撮影。茂みの緑の発色や質感も良好

日中の風景を撮影。茂みの緑の発色や質感も良好

望遠カメラ

同じ構図を望遠カメラで撮影。標準カメラに対して2倍の光学ズームで撮影

同じ構図を望遠カメラで撮影。標準カメラに対して2倍の光学ズームで撮影

超広角カメラ

こちらも同じ構図で、広角カメラを使用。橋の欄干まで入り込む

こちらも同じ構図で、広角カメラを使用。橋の欄干まで入り込む

デジタルズーム

こちらも同じ構図だが、デジタルズームを最大まで使って拡大したもの。ノイズの少なさに加えて、コンクリートブロックの解像感も比較的保たれており、デジタルズーム特有の眠さがかなり抑えられている

標準カメラ

晴天の下で朝顔を撮影。解像感も高い

晴天の下でアジサイを撮影。解像感も高い

望遠カメラ

同じ構図を望遠カメラで撮影。構図いっぱいに朝顔が広がり、ディテールもしっかり写っている

同じ構図を望遠カメラで撮影。構図いっぱいに朝顔が広がり、ディテールもしっかり写っている

超広角カメラ

こちらも上と同じ構図。周辺の様子がよくわかる。構図に変化を付けやすくなるので撮影がより楽しくなる

こちらも上と同じ構図。周辺の様子がよくわかる。構図に変化を付けやすくなるので撮影がより楽しくなる

標準カメラ

LED照明の薄暗い店内で撮影。肉眼の印象に近く、美味しそうに撮れている

LED照明の薄暗い店内で撮影。肉眼の印象に近く、美味しそうに撮れている

望遠カメラ

望遠カメラを使用。被写体まで大体10cmくらいまで寄れるので、食べ物のディテールを撮影したいときに重宝しそうだ。

超広角カメラ

超広角カメラで撮影。食べ物の質感よりも周囲の様子を含めた雰囲気がよく伝わる

超広角カメラで撮影。食べ物の質感よりも周囲の様子を含めた雰囲気がよく伝わる

標準カメラ

明暗差をうまく吸収しており、雰囲気のある仕上がりで、ノイズも少なく影の部分もつぶれていない。駅舎のレンガの質感もよく残っている

望遠カメラ

同じ構図を望遠カメラで撮影。明るさや色調なども標準カメラと変わりはない。シャッタースピードも稼げており、歩行者の被写体ブレが抑えられている

超広角カメラ

広角カメラで撮影。こちらのカメラだけは全体にアンバーに寄った発色となった。これに限らず、広角カメラで行った夜景撮影ではアンバー気味に仕上がることが多かった

本機のメインカメラは、トリプルカメラを採用するいっぽうで、前モデル「Xperia XZ3」と比較するとイメージセンサーの画素数がほぼ半減している。ただ、スマートフォンの画面で見る限り解像感の低下は感じられずデメリットは感じられない。画素数競争をやめて、実質的な使い勝手を追求したものと言えよう。また、競合モデルと比較して見劣りしていたい高感度撮影特性は、ノイズが減り解像感も向上しているが、標準設定では肉眼以上に明るく鮮明に写るというほどではなかった。画面の明るさよりも、ノイズの少なさや構図に変化を付けやすくなっている点が、進化のポイントと言えそうだ。

映画のような動画を撮影できる「Cinema Pro」

本機には、通常のカメラによる動画撮影に加えて、動画撮影専用アプリ「Cinema Pro」がプリインストールされている。「Cinema Pro」はその名前からわかるように、映画的な演出を意識したアプリで、縦横比21:9の4K解像度や、24fpsのフレームレート、 HDR(10bit HEVC HLGフォーマット)にも対応し、映画用カメラのような色合いの撮影が行える。また、映画で一般的に使われる色相や絵作りなどの演出を8種類の「Look」としてプリセットしており、映画のような雰囲気の映像を手軽に作ることができる。

写真の映像はプリセットの映像設定「Look」のうち「WARM」を使ったもの。「Cinema Pro」では8種類の「Look」を撮影前に選ぶことで、映画のような演出を手軽に利用できる

バッテリー持ちは「Xperia XZ3」と同レベルにとどまる

バッテリーの周りの機能を見てみよう。搭載されるバッテリーは容量3,200mAhで前モデル「Xperia XZ3」と同じ。「電池持ち時間」も約100時間(SO-03L)、約85時間(SOV40)で、「Xperia XZ3」と同じだ。USB Power Deliveryを使った急速充電には引き続き対応しているが、ワイヤレス充電「Qi」への対応は見送られた。

今回の検証期間中6日間で充電は4回で、充電ペースは1日1時間程度の利用なら約40時間持ったが、1日に5時間程度使った場合は約18時間と、丸1日は厳しい状況だった。検証ではカメラ機能や負荷のかかるゲーム、大量のデータをダウンロードするなど、負荷のかかる状況が多かったこともあり、1時間に1割以上のペースでバッテリーを消費したこともあった。

1日に3〜4時間利用する筆者の利用パターンであれば、フル充電で1日持ち歩けそうだが、ゲームを長時間プレイしたり、本機の魅力であるカメラ機能をフルに使うのであれば、モバイルバッテリーや充電器を併用したほうがよいだろう。

フル充電からWebブラウザーやゲームなどで3時間半ほど使用したところ、約18時間でバッテリーを75%消費した。また、断続的に動画撮影を行ったときは、1時間で10%のペースでバッテリーを消費した

“Xperiaらしさ”を具現化したような1台

価格.comの「スマートフォン」カテゴリにおける人気ランキングを見ると、「Xperia 1」は、NTTドコモ版「SO-03L」が1位、au版「SOC40」が7位、Androidの比率が低いソフトバンク版でも40位(いずれも2019年6月18日時点)といずれも好位置をキープしている。ユーザーレビューを読むと、トリプルカメラとなったメインカメラや4K有機ELディスプレイを搭載することで、ネックだった基本性能が改善されたことに加えて、板ガラス状のXperiaらしいデザインが復活したことで、ユーザーのイメージするXperia像に近くなったことが高い評価につながっているようだ。

直接のライバルとしては、本機と同じSoCを備えたサムスン「Galaxy S10/S10+」や、シャープ「AQUOS R3」が思い浮かぶが、それらと本機を比較しても、カメラ、映像視聴、処理性能など、ハイエンドモデルに求められる機能性能はまったく見劣りしない。この3台の製品選びは、なかなか悩ましい問題と言えるだろう。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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