端末の割引が難しくなっている中、価格性能比にすぐれたミドルレンジクラスのスマートフォンに注目が集まっている。auとUQモバイルおよびJ:COMから発売中の「Galaxy A30」(サムスン製)も、そうしたコスパ重視の1台だ。このうちUQモバイル版を使用したレビューをお届けしよう。
「Galaxy A30」は、2,340×1,080表示に対応する約6.4インチの有機ELディスプレイを備えた大型スマートフォンだ。ボディサイズは、約75(幅)×160(高さ)×8.0(厚さ)mmで、重量は約176gとなっている。ボディは、IPX5/8等級の防水仕様と、IP6X等級の防塵仕様をクリア。ディスプレイは、上部に水滴状のノッチが設けられているが、「Galaxy S10」や「Galaxy Note9」といった上位モデルとは異なり、オーソドックスな平面パネルである。
昨年NTTドコモから発売されたミドルレンジ機である「Galaxy Feel2」は、画面解像度がHD+と低めで、画質に粗さが感じられたが、本機は、フルHD以上の画面解像度が確保されているので、精細感が高い。手ごろな価格で大画面の有機ELディスプレイ搭載スマホを入手できるのが、本機の大きな魅力と言える。
機能面では、上記の防水・防塵対応に加えてNFCポートおよびFeliCaポートを搭載しており、「Google Pay」や各種のおサイフケータイサービスを利用できる。フルセグ/ワンセグのテレビチューナーは搭載されていない。充電やデータ転送に使うUSBポートはリバーシブルのUSB Type-Cで、Wi-Fiも5GHz帯に対応など。基本機能はしっかりしている。また、低価格機では省略されていることも多い気圧センサーも搭載されている。
なお、細かい点ではあるが、通知や充電などの状態を知らせるLEDインジケーターは搭載されていない。代替機能としては、スリープ画面でも通知情報を画面に表示する「アンビエント表示(Always On Display)」を利用できる。
有機ELディスプレイはしまりのある黒の表現が持ち味だ。最大輝度も確保されており、屋外での視認性も良好だ
電子書籍を表示させて白がきちんと白く見えるかをチェック。目立った色かぶりや発色のムラも現れず、ディスプレイの質は良好
ディスプレイの上部に小型のノッチが設けられている
透明の樹脂カバーが同梱される。カバーを別途買わなくていいのはうれしいところ
ボディ下面にUSB Type-Cポートを配置する。USB PD対応充電器「TypeC共通ACアダプタ02」を使えば約110分でフル充電が行える
ボディ上面にはヘッドホン端子が搭載される
左側面にはストラップホールが装備されている
右側面のボタンは、電源とボリュームのみで、「Galaxy S10」シリーズなどに備わるサムスン独自のAIアシスタント機能「Bixby」の呼び出しボタンは搭載されていない
なお、au版とUQモバイル版は基本的に同じものではあるが、UQモバイル版についてはSIMロックがかかっていない。LTEの対応バンドがB1/3/18/26という制約はあるが、一応他社のSIMカードも利用可能だ。
本機に備わるSoCは、サムスン製の「Exynos 7885」で、4GBのRAMと64GBのストレージ、512GBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを組み合わせる。OSは、Android 9。OSのバージョンアップポリシーは公表されていないが、過去のサムスンのミドルレンジモデルの多くは1回のバージョンアップが実施されていた。今夏登場予定の「Android Q」への対応を期待したい。
実際の処理性能をベンチマークテストアプリ「AnTuTuベンチマーク」を使って計測したところ、総合スコアは105,054(内訳、CPU:45,764、GPU:23,409、UX:30,142、MEM:5,739)となった。このスコアは、このクラスでは競合となるファーウェイの「nova lite 3」や「P30 lite」の総合スコア13万点前後と、シャープ「AQUOS sense2」の7万点代前半の大体中間で、4年前に登場したハイエンド機並みのレベルだ。
実機の体感速度だが、最新のハイエンドモデルと比較すると動作全般がもたつくが、Webコンテンツ、SNS、メール、動画閲覧といった軽い処理であればさほど気にならない。上記のベンチマークテストの結果からもわかるように、グラフィック性能がさほど高くないので、最新のゲームを高画質でプレイするのはいささか荷が重かった。なお、RAM容量が4GBと比較的余裕があるので、起動中のアプリの切り替えは比較的スムーズだった。
「AnTuTuベンチマーク」の総合スコアは105,054。通常の処理を行うCPUのスコアは十分だが、グラフィック性能を示すGPUのスコアがさほど高くないのがネック
本機のメインカメラは、約1,300万画素の標準カメラと、約500万画素の広角カメラを組み合わせたデュアルカメラで、光学2倍のズームが行える。フロントカメラは約800万画素だ。上位モデルの「Galaxy S10」シリーズ同様にAIを使ったシーン認識機能を備えているが、認識できるシーンの種類が19種類(「Galaxy S10」は約30種類)と少ない。また、メインカメラとフロントカメラのいずれも、光学式および電子式手ぶれ補正機構が搭載されていない。
メインカメラは約1,300万画素の標準カメラ(35mm換算の焦点距離27mm)と、約500万画素の広角カメラ(13mm)の組み合わせ
以下、本機のメインカメラで撮影した作例を掲載する。なお、いずれもカメラ任せのオート撮影モードを利用している。
薄曇りの日中に「アメリカデイゴ」を撮影。スマホのカメラが得意とする状況ということもあって、キレイに写っている。アメリカデイゴは色の再現が難しいが、肉眼に近い印象で撮影できた
同じ構図を広角カメラで撮影。周辺部の流れが目立つので、撮りたいものを構図の中心に置く日の丸構図が適しているようだ
夜景を撮影。手ぶれ補正機構はないが、手持ちでも手ぶれは抑えられており、光量も多く一見するとかなり鮮明だ。そのいっぽうで、暗部を見るとノイズも比較的目立つ
上と同じ構図を広角カメラで撮影。中心部分は比較的良好だが、周辺部分はノイズに加えて、流れも目立っている
本機のメインカメラは、2倍ズームが可能なデュアルカメラであることから、構図に変化を付けて撮影できるようになったのは、ライバル機と比較したアドバンテージだ。ただ、特に広角カメラの画質は標準カメラとの差が比較的大きく、画質はさほどよくない。よりキレイに撮りたいなら標準カメラを選ぶのがよさそうだ。
内蔵バッテリーは3,900mAhの大容量。実際の利用パターンに近い条件で計測したバッテリー持ちの指標である「電池持ち時間」は、約120時間となっており、4,000mAhのバッテリーを備える上位モデル「Galaxy S10+ (SCV42)」の約130時間より少し短い。
今回の検証期間は5日間で、行った充電は2回のみ。なお検証の前半は比較的負荷のかかる作業を行っていたが、その場合で大体48時間程度、待ち受け主体だった後半は60時間ほどバッテリーが持続している。静止した状態で、フルHDの動画を視聴しても30分でバッテリーは3〜4%程度しか消費しないなど、概してバッテリーの消費はゆるやかだった。カタログスペックでは飛び抜けて電池が持つようには見えないが、実際に使ってみると2〜3日はバッテリーが持ち、大容量バッテリーの恩恵を感じることが多かった。
検証を行った5日間のバッテリー消費のペースを示したグラフ。2回の充電だけで済んでおり、バッテリーはかなり持続する
3万円台で約6.4インチの有機ELディスプレイを搭載という点が魅力の「Galaxy A30」。本機ともっとも競合しそうなのはシャープ「AQUOS sense2」だろう。この両機は、価格帯もさることながら、FeliCaや防水・防塵対応、バッテリーの持ちなど、機能面で近く、比較検討に値する。
本機の価格だが、au版については4万円なのに対し、「AQUOS sense2」は3万円で、ちょうど1万円の差がある。UQモバイル版だと、本機は端末価格29,300円に月額200円のマンスリー割が24回適用されるため実質価格は24,500円。「AQUOS sense2」は33,700円に月額900円のマンスリー割が適用されるため実質価格は12,100円で、価格差は約2万円とかなり大きい。(いずれも、価格は税別)
ただし、本機のほうが大画面の有機ELディスプレイなどハードウェア的には有利で、この価格差も納得できるのではないだろうか。大型ディスプレイと大容量バッテリーを搭載したリーズナブルな1台を求めるなら、魅力的な選択肢となるだろう。
FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。