この10年ほど、スマートフォンの画面サイズは拡大し続けてきました。たとえば、アップルの「iPhone」の場合、2008年に日本へ初上陸したときの「iPhone 3G」は3.5インチでしたが、2019年の最新モデルのひとつ「iPhone 11 Pro Max」では6.5インチまで大きくなりました。
Androidスマートフォンの最新機種を見渡してみても、5〜6インチ台の機種ばかり。こうした大画面には「表示される情報量が増える」というメリットがありますが、「端末サイズが大きくなる」というデメリットもあります。
さらなる大画面を目指しつつも端末サイズを抑えるという難題に対する回答のひとつとして、最近ではサムスンの「Galaxy Fold」(広げたときの画面サイズは約7.3インチ)のように、曲げられるディスプレイを使った“フォルダブルスマホ”も登場しています。
今回レビューするLGエレクトロニクスの「LG G8X ThinQ」は、同じ問題に「2画面」で挑戦したスマートフォンです。日本国内ではソフトバンクがメインブランドの「ソフトバンク」にて取り扱い、12月6日に発売されます。
2つの画面を搭載したスマートフォンは決して目新しいものではなく、昨年2018年に登場したZTEの「M Z-01K」のように、過去にも何機種か登場しています。
これらの機種に対してLG G8X ThinQがユニークなのは、2つ目の画面を脱着可能なケースに組み込んだことです。2画面を活用したいときは本体をケースに入れて使用し、一般的なスマートフォンのように使いたいときはケースから本体を取り出して持ち歩くことができます。
セカンドスクリーンを広げたところ。左右のスクリーンはサイズや解像度が同じ仕様です
閉じた状態の背面。カメラは1200万画素(標準)と1300万画素(広角)のデュアルカメラ仕様です
専用ケースから本体を取り外したところ。普通のスマホとして使うこともできます
本体側のメインスクリーンとケース側のセカンドスクリーンはどちらも同じもので、サイズは約6.4インチ(2340×1080)です。
セカンドスクリーンは折りたためる構造で、メインスクリーンにかぶせるように閉じることができるほか、本体の裏側に回り込ませることも可能。任意の角度をキープできるので、たとえばセカンドスクリーンを立てた状態で机の上に置けば、動画視聴などがしやすくなります。
なお、セカンドスクリーンを閉じた状態でも裏側のカバーディスプレイに日時や通知アイコンを表示できるほか、閉じたまま電話を受けることもできます。
セカンドスクリーンは任意の角度で固定できる
机の上で動画を視聴したいときなどに便利
セカンドスクリーンを閉じたところ。右側面の電源キーを短押しするとカバーディスプレイが点灯します
セカンドスクリーンのオン・オフは、メインスクリーンの端にフローティング表示される「デュアルスクリーンツール」や、通知パネルから切り替えられます。
セカンドスクリーンに表示するアプリは独立したホーム画面から呼び出せるほかに、メインスクリーンで使用しているアプリをセカンドスクリーンに移動させたり、表示中のアプリを入れ替えたりすることも可能です。
右側のメインスクリーンに表示されるデュアルスクリーンツールから、セカンドスクリーンのオン・オフや表示アプリの入れ替えなどの操作ができます(※各スクリーンのスクリーンショットを結合処理しています)
一部のアプリでは、左右のスクリーンを同時に使用する「ワイドモード」が利用できます。たとえば、Webブラウザーの「Chrome」を使用中にワイドモードを有効にすると、2つの画面いっぱいにWebサイトを表示できます。
過去の2画面スマホをご存じの方は想像がつくと思いますが、メインスクリーンとセカンドスクリーンの間には各画面のベゼルとヒンジが存在するため、LG G8X ThinQでは表示が縦に分断されてしまいます。横書きが主体のWebサイトの場合、横に分断されるように画面を回転させたほうが読みやすいと感じました。
価格.comマガジンをワイドモードで表示したところ。スクリーンショットでは左右のスクリーンが一続きに記録されています
実際には物理的に分かれている2画面にまたがって表示しているので、中央部分で途切れてしまいます
左右ではなく上下で分割されるように画面を回転させると、Webサイトも読みやすく感じました
また、プリインストールされているWebブラウザー「Whale」では、タップしたリンク先のページを隣のスクリーンで表示させることができます。たとえば、ニュースサイトの記事一覧をメインスクリーンで表示しつつ、記事の内容をセカンドスクリーンで読むようにすれば、記事を読み終えるたびに一覧へ戻る必要がありません。
ほかにも、Wikipediaで調べ物をしていたときに気になった別の言葉をセカンドスクリーンに表示させておけば、調べ物を進めながら参照できるようになります。
Whaleで価格.comマガジンを読んでいるところ
標準の「カメラ」にもセカンドスクリーンを生かした機能「ミラーモード」が備わっています。ミラーモードをオンにしてもメインスクリーンとセカンドスクリーンに同じ画面が表示されるだけなのですが、セカンドスクリーンの角度を変えることで、デジタルカメラのチルト式モニターのように活用することができます。
たとえば背の低い被写体にあわせて低い位置から撮りたいときや、被写体を上から見下ろしたように撮りたいときなど、1画面のスマートフォンでは難しいアングルからでも撮影しやすくなります。
変わったアングルから撮影しやすくなるミラーモード
ちなみにLG G8X ThinQの背面カメラは、1200万画素の標準カメラと1300万画素の広角カメラ(画角は136°)のデュアルカメラ。広角カメラを搭載した機種も今では珍しくありませんが、広範囲を一度に写せるのはやはり便利です。
LG G8X ThinQの標準カメラで撮影した画像。撮影モードは「写真」で、その他の設定は標準のまま(次も同様)
同じ場所から広角カメラに切り替えて撮影した画像。両側にある並木が1本手前まで写っています
ただ、ワイドモードに対応していたり2画面を同時に活用できたりするWhaleのようなアプリは、レビュー時点では限られていました。電子書籍アプリや地図アプリなど、見開き表示を生かしやすいアプリが対応するのを期待したいところです。
LG G8X ThinQが真価を発揮すると感じたのは、2つの画面にそれぞれ別々のアプリを表示して、同時に利用する場面です。
Androidでは、バージョン7.0から画面を分割して2つのアプリを利用できる「分割画面」に対応しています。しかし、「Instagram」のように分割画面に対応していないアプリもあるため、すべてのアプリで活用できる機能ではありませんでした。
いっぽう、LG G8X ThinQではメインスクリーンとセカンドスクリーンにそれぞれひとつずつアプリを表示するため、Android 7.0以降の標準機能である分割画面に対応していないアプリでも利用することが可能です。
Webサイトや文書を読みながらメモを取りたいとき、英文を読みながら単語の意味を調べたいとき、動画を見ながら「LINE」でメッセージをやりとりしたいとき、2つの位置情報ゲームを同時にプレイしたいときなど、2つのアプリを同時に利用したい場面は数多くあります。LG G8X ThinQには、こうしたニーズに幅広く対応できる大きなメリットがあります。
Android標準の「分割画面」に非対応のInstagramでも利用できます(※各スクリーンのスクリーンショットを結合処理しています、以下2点も同様)
Googleマップで地図を見ながらTwitterのメッセージをやりとりして待ち合わせるのも簡単
撮影済みの写真をセカンドスクリーンに表示させながら、カメラで別の写真を撮ることもできました。過去と現在の様子を比較する写真を撮りたいときなどに便利そうです
また、LG G8X ThinQでは、片方のスクリーンに表示させる仮想のゲームパッド「LGゲームパッド」が備わっています。プリインストールされているレーシングゲーム「アスファルト9」はLGゲームパッドに対応しており、ゲーム内容が表示されている側の画面を指で隠してしまうことなくプレイすることが可能です。
LGゲームパッドに対応するアスファルト9では、片側のスクリーンをゲームパッドとして利用できます
2つの画面を備えるLG G8X ThinQは、セカンドスクリーンを脱着式のケースに組み込んだことで、2画面を生かしたい場面から本体をスマートに持ち歩きたい場面まで、さまざまなニーズに対応しています。
セカンドスクリーンを特に活用できたのは、2つのアプリを同時に利用する場面です。まったく同じ仕様の画面が並んでいるので2台のスマホを並べて使用しているような感覚ですが、たとえば、片方のアプリでコピーしたテキストを隣のアプリにペーストしたり、左右のアプリを簡単に入れ替えたりできるので、一体感はスマホの2台持ちをはるかに上回ります。
専用ケースから本体を取り出せば、1画面の一般的なスマホとして利用できることも魅力。ケースを装着したときの厚さは広げたときでも15mm、重さは331gになりますが、本体だけなら厚さは8.4mm、重さは193gまで薄く、軽くなります。
また、本体は防水(IPX5/X8)、防じん(IP6X)、おサイフケータイといった国内ユーザーに重視される機能に加え、フルセグや緊急速報メールにも対応しています(※専用ケースは防水防じんに非対応)。それでいて価格はミドルレンジ並みの55,440円と、“フォルダブルスマホ”より購入しやすいことも魅力です。
いっぽう、2画面を同時に使うワイドモードや、ひとつのアプリで2つの画面に異なる内容を表示できるようなアプリはレビュー時点では数が少なく、同時表示のメリットが弱いのが惜しいところ。12月6日の発売以降、多くのアプリが2画面の同時利用に対応したり、Whaleのように左右のスクリーンを連動させて活用できたりするアプリが増えていけば、LG G8X ThinQの魅力はさらに増すはずです。
信州佐久からモバイル情報を発信するフリーライターであり2児の父。気になった格安SIMは自分で契約せずにはいられません。上京した日のお昼ごはんは8割くらいカレーです。