レビュー

「AQUOS sense3」よりもお得かも!? シャープ「AQUOS sense3 Plus」レビュー

シャープの「AQUOS sense3」シリーズでは最上位モデルとなる「AQUOS sense3 Plus」。その先陣を切って2019年12月12日に発売されたau版「AQUOS sense3 Plus サウンド SHV46」を使い、「AQUOS sense3」との違いに注目しつつレビューを行った。

2019年12月18日:価格情報及びバッテリー周辺のインプレッションを追加。

サイズだけではない、細かな強化が施されたアッパーミドル機

シャープの「AQUOS sense3」シリーズは、楽天モバイル専売のエントリーモデル「AQUOS sense3 lite」、ビジネス向け「AQUOS sense3 basic」、主力モデル「AQUOS sense3」、そして今回取り上げる上位モデル「AQUOS sense3 Plus」という4機種のラインアップとなる。「AQUOS sense3 Plus」は、通信キャリアではau、ソフトバンク、楽天モバイルから順次発売されるが、MVNO各社からも追って発売されるものと見られる。

今回検証に使う「AQUOS sense3 Plusサウンド」は、「AQUOS sense3 Plus」の派生モデル。基本的なハードウェアは共通だが、パイオニア製のBluetoothイヤホン「C7wireless special edition」を同梱している点が異なる。同イヤホンは、高音質のコーデック「aptX HD」に対応しており、ワイヤレスでも高音質で音楽を楽しめる。auにおける「AQUOS sense3 Plus サウンド」の販売価格は46,080円(以下、いずれも税込)で、「AQUOS sense3」の36,720円よりも、1万円ほど高い価格設定だ。auにおける「AQUOS sense3 Plus サウンド」の販売価格は46,080円(以下、いずれも税込)で、「AQUOS sense3」の36,720円よりも、1万円ほど高い価格設定だ。なお、ソフトバンク版の販売価格は51,710円、楽天モバイル版では44,364円(SIM契約なし、端末単体販売の価格)だ。SIMフリー版「SH-M11」の市場想定価格は58,880円だが、MVNO各社でも取り扱いが発表されており、「goo Simseller」ではMNPやオプション加入などを駆使した条件付きのキャンペーン価格が29,800円、「mineo」では56,400円でそれぞれ発売される。本機の価格は発売される通信キャリアなどによって差が大きい。

「AQUOS sense3 Plus」は、約75(幅)×160(高さ)×8.7(厚さ)mmで、重量約175gのボディに、2,220×1,080のフルHD+表示に対応する約6.0インチのIGZO液晶ディスプレイを組み合わせる。「AQUOS sense3」と比較すると、幅が5mm、高さが13mm、厚さが0.2mm、重量が約8gそれぞれアップしている。また、ディスプレイは縦方向の解像度が60ピクセル増え、やや縦長になっている。ボディは、IPX5/8等級の防水仕様と、IP6X等級の防塵仕様をクリアしているが、「AQUOS sense3」では対応していた米国国防総省の調達基準「MIL-STD-810H」には対応しておらず、タフネス性能は備わっていない。なお、FeliCaおよびNFCポートを備えるが、フルセグ・ワンセグチューナーは非搭載。ヘッドホン端子は装備されている。

「AQUOS sense3」がアルミ製の一体形成ボディなのに対し、本機は背面が樹脂製のようだ(素材の詳細は確認中)。重量自体は本機のほうがやや重いが、さほど重くは感じない。デザイン自体は特に新味はないが、クセがなく、長く使い続けても飽きにくそうだ。

近ごろはミドルレンジ機でも有機ELディスプレイを搭載するスマートフォンが増えているが、本機は従来通りのIGZO液晶である。ただし画質は良好で、有機ELと比べて見劣りしない。むしろ最大輝度が高く、明るい屋外での視認性という液晶ディスプレイの優位性に磨きをかけている。

※変更履歴:初出時に「C7wireless special edition」はハイレゾ対応と記載していましたが、正しくは非対応です。お詫びして訂正します。[2019年12月24日 16:25]

IGZO液晶ディスプレイは約6インチ。最大輝度が高く明るい屋外での視認性も良好

IGZO液晶ディスプレイは約6インチ。最大輝度が高く明るい屋外での視認性も良好

「AQUOS sense3」(写真左)と本機(写真右)を並べてみた。基本的なデザインは同じだが、本機のほうがやや縦長

背面はつるりとしており、アルミにサンドブラスト加工を施した「AQUOS sense3」とは感触が異なる

背面はつるりとしており、アルミにサンドブラスト加工を施した「AQUOS sense3」とは感触が異なる

重量は本機のほうが約8g重いが、手にした際の重量感は「AQUOS sense3」と同じか、むしろ軽く感じる

重量は本機のほうが約8g重いが、手にした際の重量感は「AQUOS sense3」と同じか、むしろ軽く感じる

au版の「AQUOS sense3 Plusサウンド」は、パイオニア製のBluetoothイヤホン「C7wireless special edition」を同梱しているのが特徴

ステレオスピーカーや「Dolby Atmos」対応でサウンド機能を強化

本機はサウンド機能が強化されている。ボディ内部には、ステレオスピーカーを備え、イヤホン不要でステレオ再生が行えるほか、立体音響技術「Dolby Atmos」に対応している。Dolby Atmosは対応する映像コンテンツでは、立体的なサウドが再生できるほか、通常の音源でも、臨場感のあるサウンド再生が行える。なお、ハイレゾ音源の再生にも対応している(16bitかつ64kHz以上、または24bitかつ44.1kHz以上のWAVおよびFLAC形式)。

なお、今回検証したau版「SHV46」は、プリインストールされる音楽再生アプリは、Google製の「YouTube Music」のみで、シャープ製のオリジナルアプリはインストールされていなかった。

スピーカーは、ボディ上部と下側面にひとつずつ備わる。この2基のスピーカーでステレオ再生を実現する

スピーカーは、ボディ上部と下側面にひとつずつ備わる。この2基のスピーカーでステレオ再生を実現する

立体音響技術「Dolby Atmos」に対応。対応する映像コンテンツのサウンドを立体的にするほか、通常の音源にもエフェクトがかかり、臨場感が高まる

※変更履歴:初出時に「Dolby Atmos」を誤って「Dolby Atoms」と記載していました。お詫びして訂正します。[2019年12月16日 10:00]

高感度撮影を強化。速く正確なAFを実現した標準カメラを搭載

続いて本機のカメラ機能を見てみよう。本機のメインカメラは、約1,220万画素の標準カメラ(デュアルピクセル、35mm換算の焦点距離で27mm)と、約1,310万画素の広角カメラ(同16mm)という組み合わせのデュアルカメラだ。「AQUOS sense3」とは、イメージセンサーとレンズのいずれもが異なっている。

標準カメラは、全面位相差のハイスピードオートフォーカスとなっており、焦点距離も24mmから27mmに変更され、絞りもF2.0から1.8へ明るくなった、電子式手ぶれ補正を備えており、静止画に加えて動画にも対応する。また映像エンジン「ProPix2」には被写体ぶれを補正する機能も搭載されている。もういっぽうの広角カメラは、焦点距離が18mmから16mmへと、より広角になっている。これまでAQUOSシリーズのカメラは、ライバル機と比べて見劣りする面が否めなかったが、本機のメインカメラはかなり期待できるハードウェア構成となっている。なお、フロントカメラは800万画素で、焦点距離25mmのレンズが採用されている。

メインカメラは、標準カメラ(27mm)と広角カメラ(16mm)のデュアルカメラ仕様。「AQUOS sense3」とは、イメージセンサーとレンズのいずれもが一新されている

フロントカメラは800万画素。こちらも「AQUOS sense3」の焦点距離23mmとは異なる25mmのレンズが使われている

以下にメインカメラを使って撮影した静止画の作例を掲載する。いずれも初期設定のまま、カメラ任せのAIオートモードで撮影を行っている。

標準カメラで撮影

忍者のオブジェを撮影。顔の一部が隠れているがAIは人物であると判定していた

忍者のオブジェを撮影。顔の一部が隠れているがAIは人物であると判定していた

広角カメラで撮影

同じ構図を広角カメラに切り替えて撮影。16mmという焦点距離のため、周囲の様子がより広く構図に収まる

同じ構図を広角カメラに切り替えて撮影。16mmという焦点距離のため、周囲の様子がより広く構図に収まる

標準カメラで撮影

曇りの東京駅を撮影。午前中にもかかわらず薄暗い状況だった、高画質化エンジンはHDR処理を控えめに行い、肉眼の印象に近い冬の曇り空の雰囲気がうまく表現できている。ISO100と低感度なこともありノイズは少なくクリアな画質だ

広角カメラで撮影

同じ構図を、広角カメラに切り替えて撮影。カメラを切り替えたことによる発色の変化は見られない。こちらもISO100の低感度で画質は良好

標準カメラで撮影

東京駅の夜景を撮影。光量が十分確保されており、手ぶれも見られない鮮明な仕上がりになった。ちなみにISO1888というかなりの高感度だが、その割にノイズは少ない

広角カメラで撮影

同じ構図を広角カメラに切り替えて撮影。ISO3040というかなりの高感度で、さすがにノイズが目立ってきた。いっぽうで手ぶれはよく抑えられている

標準カメラで撮影

夜の花壇を撮影。ISO5376という超高感度だが、ディテールは残っている。また、中央に花に合わせたピントがきちんと合焦しており、デュアルピクセルイメージセンサー&全面位相差オートフォーカスの威力を感じた

広角カメラで撮影

同じ構図を広角カメラに切り替えて撮影。ISO3040での撮影となった。さすがに光量が足らないのかピントも合わせきれず、ディテールもぼんやりしており、カメラの性能の限界を超えているようだ

本機のカメラ機能は、「AQUOS sense3」に比べてかなり強化されていることが実感できた。「AQUOS sense3」の苦手としていた夜景撮影ではノイズや手ぶれ、被写体ぶれが明らかに減った。特にデュアルピクセル・全面位相差オートフォーカス対応の標準カメラは強力で、かなり暗い場所でもピントは素早く正確に合焦する。今回は夜景だけでも標準カメラで100枚以上撮影したが、あからさまに失敗したものはそのうち7〜8枚程度と、歩留まりがかなりよい。この点は、ソニー「Xperia 8」やOPPO「Reno A」など、カメラ機能に定評のあるメーカーの同価格帯モデルと比べても遜色のないレベルだろう。いっぽう、十分に光量のある日中の撮影では「AQUOS sense3」のカメラと比べて有意な差は感じられない。

「AQUOS sense3」に比べて4割弱の処理性能アップ

次に、本機の基本性能を見てみよう。本機に採用されるSoCは「Snapdragon 636」で、メモリーは6GB、ストレージは64GB、最大512GBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを組み合わせる。OSは、Android 9だ。本機のSoCは、「AQUOS sense3」のSnapdragon 630よりもグレードの高いもので、メモリーの容量も2GB増量されている。総じて性能には余裕がある。なお、本機も発売後2年間に最大2回のOSバージョンアップを行うことが告知されている。

定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(Ver.8.0.X)」を使い、実際の処理性能を計測した。その結果は、159,866(内訳、CPU:62,669、GPU:24,036、MEM:42,433、UX:30,728)で、価格.comマガジンで計測した「AQUOS sense3」のスコア114,802(内訳、CPU:43,349、GPU:16,729、MEM:32,268、22,456)と比較すると、4割弱のスコアアップとなっている。各サブスコアもまんべんなく向上しており、バランスのとれた性能アップとなっている。なお、「AQUOS sense3」ではネックだったGPU(グラフィック性能)のスコアも4割ほど向上しており、ゲームなどでの描画性能アップが期待できる。

AnTuTuベンチマークの計測結果。左が本機、右が「AQUOS sense3」のもの。サブスコアも含めてまんべんなく3〜4割程度の処理性能アップを実現している

実際の体感速度でも、Webブラウザーや「Googleマップ」のスクロールのなめらかさには、はっきりとした違いがあり、本機のほうが断然スムーズだ。アプリの起動もワンテンポ以上本機のほうが早い。3Dの描画処理の重いゲーム「ミリシタ(アイドルマスターミリオンライブシアターデイズ)」だが、上から2番目の描画負荷となる「3D標準」でも、おおむねスムーズに動作した。こうしたゲームでは「AQUOS sense3」よりも画質設定を1レベル上げられるくらいの余裕があるようだ。

「AQUOS sense3」には及ばないが、フル充電で2日以上のバッテリー持ちは期待できる

本機は、容量4,000mAhのバッテリーを内蔵する。バッテリー持ちに関するカタログスペックを見ると、連続通話時間は約2,010分、連続通話時間は約700時間、電池持ち時間は約130時間となっている(au版「SHV46」の値)。AQUOS sense3(au版「SHV45」の値)では連続通話時間は約2,820分、連続通話時間は約910時間、電池持ち時間は約170時間なので、いずれの値も2〜3割程度短い。これは、バッテリー容量が変わらないのに対し、SoCのグレードが上がり、ディスプレイも大型化していることなどが影響したものだ。

今回の検証は1週間行ったが、充電はその間2回行っただけで済んでいる。利用パターンだが、SNSなどを中心に1日1時間ほど使用した場合では4日、負荷のかかるゲームを1日3時間行った場合でも2日以上は持続した。さすがに「AQUOS sense3」には劣るが、決してバッテリー持ちが悪い部類とは言えず、筆者の利用パターンでは毎日充電が必要なほどではなさそうだ。

ソフトウェアによる節電機能は、Androidの標準機能である「自動調整バッテリー」(左画面)と、シャープ独自の「長エネスイッチ」(右画面)の2種類を備えている。

「AQUOS sense3」のもの足らない部分を解消した高コスパ機

価格.comでも人気の高い「AQUOS sense3」は、2019年末の時点で大きな不満のない性能と3 万円台で買える価格が魅力の製品。ただし、サウンド機能、グラフィック性能、カメラの高感度撮影機能といった部分ではいくらか妥協が求められるところがある。本機はそうした部分の性能をアップさせており、ネガティブな要素をほとんど感じない仕上がりとなっていた。今回検証した「AQUOS sense3 Plus サウンド」の価格は4万円台後半。そのうち同梱のイヤホンの価格が5,000円程度と考えるなら、「AQUOS sense3」との価格差はさほど大きくはない。これらの価格ならコストパフォーマンスは十分高いと言えるだろう。いっぽう、家電量販店やソフトバンクの販売価格は6万円近くになっており、割高な印象は否めない。本機に限らず、近ごろのスマートフォンは販路によって価格差が大きくなる傾向があるが、通信キャリア、MVNO、家電量販店など多様な流通網で取り扱われる本機は、今まで以上に価格と購入条件を吟味する必要がありそうだ。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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