レビュー

待望の5Gスマホ、サムスン「Galaxy S20 5G」発売当日レビュー

この春、通信キャリア各社から相次いで始まる5Gサービス。5G対応端末としてはシャープの「AQUOS R5G」と今回取り上げるサムスン「Galaxy S20 5G」が、サービス開始当初に選ぶことのできるハイエンドモデルとなる。実際に体験してみた5Gサービスの様子も合わせてレビューしよう。

2020年3月27日に以下の内容を追加:「KDDIの屋外5Gスポットでは197Mbpsを記録」、「夜景の作例4枚」、「エリアが狭いため5G対応によるバッテリー持ちの悪化は影響が少ない」、「5Gエリアが狭くても、最新のハイエンドスマホとしての魅力は高い(まとめ)」

高性能・多機能のコンセプトは変わらず。テレビチューナーは非搭載に

サムスンの「Galaxy S」シリーズの最新モデル「Galaxy S20 5G」は、2月中旬にグローバルモデルが発表された。国内では、毎年通信キャリア各社の夏モデルとして5月ごろに発売されるのが通例だが、今年は5Gサービス開始に合わせて、NTTドコモ版「SC-51A」が本日3月25日から、au版「SCG01」が翌日26日から発売される。なお、本レビューは「SC-51A」を主に使って行った。

ボディサイズは、約69(幅)×152(高さ)×7.9(厚さ)mmで、重量約163g。3,200×1,440のQHD+表示に対応する約6.2インチの有機ELディスプレイを搭載する。曲面ディスプレイや薄型ボディといった「Galaxy S」シリーズの特徴を継承したデザインだ。なお、IPX5/8等級の防水仕様と、IP6X等級の防塵仕様をクリアしている。カラーバリエーションはNTTドコモ版とau版ともに、コスミックグレー、クラウドブルー、クラウドホワイトの3色となる。

無線インターフェイスとしては、FeliCa・NFCポートを備え、USB Type-Cポートは、USB 3.2 Gen1規格に対応するほかUSB PD 3.0の給電にも対応しており、27Wの充電に対応するNTTドコモの「ACアダプタ 07」やauの「TypeC 共通 ACアダプタ 02」を使うことで容量4,000mAhの内蔵バッテリーを約90分でフル充電できる。また、ワイヤレス充電の「Qi」にも対応している。
なお、前モデル「Galaxy S10」では搭載されていたフルセグ・ワンセグのテレビチューナーは非搭載となった。また、ヘッドホン端子も廃止され、ヘッドホン端子とUSB Type-Cポートの変換アダプターも同梱されていない。ただし、USB Type-C接続のイヤホンは同梱されている。

後述するように、ディスプレイ指紋認証方式を採用するため、背面から指紋認証センサーがなくなった。カメラの配置も変更されたため、Galaxy S10とは外見の印象が変わっている

ボディ下面には、USB Type-Cポートが配置される

ボディ下面には、USB Type-Cポートが配置される

ボディ上面にはSIMカードスロットが配置される。ヘッドホン端子は非搭載

ボディ上面にはSIMカードスロットが配置される。ヘッドホン端子は非搭載

右側面にボリュームと電源の各ボタンが配置される

右側面にボリュームと電源の各ボタンが配置される

ディスプレイは「Galaxy S10」よりも0.1インチ大きくなった。ノッチ(切り欠き)ではなく、フロントカメラを収納する極小のパンチホールを備えている点は「Galaxy S10」と同じだ。本機のディスプレイにおける進化ポイントは120Hzの倍速駆動に対応したことだろう。これにより残像感が低減され、動きの激しいゲームや動画の視認性が向上している。

約6.2インチの有機ELディスプレイを搭載。前面に広がる画面占有率93.4%の美しいディスプレイだ

約6.2インチの有機ELディスプレイを搭載。前面に広がる画面占有率93.4%の美しいディスプレイだ

有機ELディスプレイは黒の表現に強い。加えて本機は倍速駆動に対応しているので、動きの激しい動画などの残像感も低減されている

「Galaxy Note 10+」と同じく、ディスプレイ指紋認証を採用する

「Galaxy Note 10+」と同じく、ディスプレイ指紋認証を採用する

5Gでの通信では、下り最大827Mbpsを記録

本機は従来のLTEおよび3G(FOMA)に加えて、5Gの通信に対応しているのが最大のトピック。5Gの通信エリアでは、下り最大3.4GHz(NTTドコモ・au共通)、上り最大182Mbps(NTTドコモ)、183Mbps(au)の通信が可能だ。なお、両社ともサービス開始時点における5Gの通信エリアは極めて限定されており、LTEの開始時よりも狭い。今回はNTTドコモの5Gエリアになっている東京・永田町にある「山王パークタワー」のエントランスおよび、東京・丸の内の「ドコモショップ丸の内店」で実際の通信速度を計測した。細かく場所を変えつつ何度も計測を行ったが、最速時で下り最大827Mbps、上り最大49Mbps、Pingは33msを記録した。配置されるアンテナの場所がハッキリしないが、10m程度場所が変わっても倍以上速度が違ったり、物陰になるとすぐに4Gに切り替わるなど、スポットの中でも5Gの電波の到達する場所はかなり限定される印象だ。なお33msというPingの値はLTEと比較しても大きな違いはない。これは、現在のサービスはLTEの施設を併用するノンスタンドアロンモード(NSA)で動作しているためで、5Gの特徴のひとつである超低遅延はスタンドアロンモード(SA)で実現するためだ。

5Gのアンテナピクトの表示されるエリアは、都心でもまだかなり限定されている。写真は東京丸の内にある「ドコモショップ丸の内店」の近くでのもの

今回計測した中では、下り最大824Mbs、上り最大49Mbpsが最速だった

今回計測した中では、下り最大824Mbs、上り最大49Mbpsが最速だった

KDDIの屋外5Gスポットでは197Mbpsを記録

au版「SCG01」を使ってKDDIの5Gネットワークを試した。KDDIが公表している5GスポットもNTTドコモと傾向は大きく変わらない。まとまったエリアと言うよりも、通信可能なスポットが点在している状況だ。KDDIの公表している5Gスポット情報を頼りに東京・大手町にある「KDDI大手町ビル」の周辺と、東京・西新宿の「KDDIビル」の周辺で5Gスポットを探してみた。前者の大手町周辺だが、5Gの電波は確認できなかった。いっぽうの「KDDIビル」は、敷地の一角に屋外向けのアンテナがあり、5Gのエリアが確認できた。通信速度を計測してみたところ下り最大197Mbps、上り最大80.8Mbps、Pingは18msだった。NTTドコモの5Gスポットよりも通信速度は見劣りするが、遅延は少ない。今回のNTTドコモは屋内基地局、KDDIは屋外基地局という違いがあるので、優劣の判断を行うのは適当ではないが、電波の届く範囲は、少しだけ広く、アンテナが建物に隠れた状態でも5Gの接続はしばらく維持された。屋外基地局ということで出力が少し高めなのかもしれない。

KDDIビル周辺では5Gの電波が確認でき、5Gのアンテナピクトが表示された

KDDIビル周辺では5Gの電波が確認でき、5Gのアンテナピクトが表示された

KDDIビル周辺で計測した通信速度。20回近く計測したが通信速度は下りでは200Mbps前後だった

KDDIビル周辺で計測した通信速度。20回近く計測したが通信速度は下りでは200Mbps前後だった

サービス初日で、まだユーザーが少ないということはあるが、通信速度は確かに速い。LTEでは実効速度で100Mbpsも出れば速い部類だが、800Mbps以上の実効速度があっさりたたき出されたというのはインパクトがある。ただし、予想されたこととはいえ、対応エリアはとても狭い。LTEレベルのエリア展開が実現するのはNTTドコモもauも数年先の話だ。また、超低遅延や、ネットワークの機能を仮想的に分割する「ネットワークスライシング」など、5Gならではの機能が使えるスタンドアロンモード(SA)の導入は、NTTドコモはまだ開始時期を公表しておらず、auは2021年度中としている。初期のLTEがそうであったように、5Gもまた徐々に機能が強化されることは理解しておきたい。

メインカメラは、広角カメラ比3倍のズームが可能な望遠カメラを含むトリプルカメラ

Galaxy Sシリーズはカメラ機能も大きな特徴。本機のメインカメラは、約1,200万画素の超広角カメラ(焦点距離13mm)、約1,200万画素の広角カメラ(焦点距離26mm)、約6,400万画素の望遠カメラ(広角カメラに対して3倍のハイブリッドズーム)という組み合わせのトリプルカメラだ。なお、動画撮影については8K撮影に対応する。フロントカメラは約1,000万画素のシングルカメラだ。なかでも注目は約6,400万画素の望遠カメラだろう。広角カメラ比で約3倍のハイブリッドズームで焦点距離78mm(理論値)という望遠撮影が可能になった。

メインカメラは、超広角、広角、望遠のトリプルカメラ

メインカメラは、超広角、広角、望遠のトリプルカメラ

フロントカメラは約1,000万画素だ

フロントカメラは約1,000万画素だ

以下に、本機のメインカメラを使って撮影した静止画の作例を掲載する。いずれもカメラ任せのオートモードで撮影を行っている。

超広角カメラで撮影

超広角のため、太陽光が直接構図に入ってしまったが、フレアやゴーストは目立たず。階調や明るさも大きな破綻は見られない

広角カメラで撮影

上と同じ構図を、広角カメラで撮影。こちらも構図の右上に太陽が入ってしまった。こちらもフレアやゴーストなど逆光の影響は押さえ込まれており、超広角カメラから切り替えても画質は大きく変わらない印象だ

望遠カメラで撮影

同じ構図を望遠カメラで撮影。80mmに近い焦点距離のため、高層ビルの細部もハッキリ写るようになる

同じ構図を望遠カメラで撮影。80mmに近い焦点距離のため、高層ビルの細部もハッキリ写るようになる

超広角カメラで撮影

万世橋から昌平橋を望む夜景を撮影。明暗差が大きな構図だが、ノイズや手振れも抑えられている。Galaxy Sシリーズの夜景撮影性能は健在である

広角カメラで撮影

光学手振れ補正や絞りF1.8のレンズなど、3基のカメラの中では最も高感度撮影に強いスペックだけのことはあり、かなり鮮明な仕上がりだ。夜景撮影では広角カメラを積極的に選びたい

望遠カメラで撮影

こちらも上2枚と同じ構図。ズーム倍率が高いため上記2枚とは構図の印象が大きく異なる。ズームレンズは高感度撮影に弱いことが多いが、ノイズや手ぶれはうまく補正されているようだ

30倍のデジタルズームで夜景を撮影

上の望遠カメラからさらに、30倍のデジタルズームで昌平橋を撮影した。さすがに無理があったのか何が写ってるのかわからない1枚になってしまった。ただし、10倍ズーム程度であれば、比較的良好な画質が維持されている

本機のカメラは、Galaxy Sシリーズの夜景撮影に強いという特徴を受け継ぎつつ、ズーム倍率をより高めることで構図の変化をより楽しめるものになっている。なお、望遠カメラは約6,400万画素まで高画素化され、デジタルズームの画質向上を図っているが、最大の30倍ズームは画質面では限界を感じる。ただし10倍を超えるくらいなら、そこそこ鮮明な画質で撮影できた。

最新世代のハイエンドSoC「Snapdragon 865」を搭載

本機はSoCに、クアルコムの最新世代ハイエンド向けSoCである「Snapdragon 865」を採用し、12GBの大容量メモリー、128GBのストレージ、1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを組み合わせる。OSはAndroid 10。「Snapdragon 865」は、今年発売される5Gスマートフォンの多くに採用されているものだ。実際の処理速度を、定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(Ver.8.3.0)」を使って計測したところ、総合スコアは540,515(内訳、CPU:163,979、GPU:215,479、MEM:79,653、UX:81,404)となり、価格.comマガジンで以前計測した「Snapdragon 855」搭載機としては最速クラスの「Galaxy Note 10+」のスコア449,350(CPU:135,488、GPU:171,963、MEM:83,864、UX:58,035)と比べて2割ほどのパフォーマンスアップが確認できた。これは、クアルコムの発表する性能向上とだいたい符合しており、処理性能とグラフィック性能の両方で現時点における最速クラスのスマートフォンと言える。

左が本機、右がGalaxy Note 10+のAnTuTuベンチマークテストの結果。CPUとGPUのスコアがそれぞれ2割ほど伸びている

体感速度でもやはり速く、最新の高性能モデルに期待される性能は十分に備えている。特に注目はグラフィック性能だ。AnTuTuベンチマークのサブスコア「GPU」の値は20万を超えており、ゲーム用途としてもかなり期待の持てる性能だ。いっぽうで発熱の影響を受けやすい傾向があるようで、ボディが熱を持った状態ではベンチマークテストの結果が容易に1割ほど悪化した。

エリアが狭いため5G対応によるバッテリー持ちの悪化は影響が少ない

本機は4,000mAhという大容量バッテリーを内蔵している。この容量は前モデル「Galaxy S10」と比較して700mAhの大幅な容量アップだ。バッテリー持ちに関係するカタログスペックを見るとNTTドコモ版「SC-51A」の電池持ち時間は約105時間(5G)/約115時間(4G)、au版「SCG01」では、約125時間(5G)/約130時間となっている。「Galaxy S10」と比較すると4Gの数値はあまり変わっていない。今回の検証はごく短時間だったためフル充電からバッテリー残量ゼロになるまでの時間は計測できなかったが、LTEエリアでは電池持ちが悪化しているようには思えない。いっぽう5Gエリアだが、エリアが狭く短時間の利用にとどまったので、バッテリー持ちへの影響はまだ少ない。5Gのエリア展開が進むまでは、バッテリーの長持ちするスマートフォンとして使うことができそうだ。

5Gエリアが狭くても、最新のハイエンドスマホとしての魅力は高い

本機は、国内における5G対応スマートフォンの先駆けとして注目の1台だ。今回はNTTドコモとauの5G通信を体験したが、確かに、ピーク時の速度は非常に速く、LTEとは桁違いのダウンロード速度を体験できた。しかし、東京23区内であっても、5Gエリアはまだきわめて少ないうえに、エリアのひとつひとつがとても狭い。5Gを体験するなら、現状通信エリアまで出向かないといけないのが現実だ。

5Gのエリア展開が進むまで、本機は4Gのハイエンドスマートフォンとして使うことにならざるを得ないが、薄型・軽量の持ちやすいサイズのボディと、現時点で最高レベルの処理性能、ズーム機能が強化されたトリプルカメラ、4Gエリアであれば良好なバッテリー持ちなど、スキの少ない手堅い製品であることは間違いない。確かに高価だが「AQUOS R5G」や「Xperia 1 II」と比較すれば多少安価な点も魅力だ。5Gのエリア拡大を待ちつつ、完成度の高い4Gスマホとして、高い満足度をもたらしてくれるそうだ。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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