シャープの人気スマートフォン「AQUOS sense」シリーズの最新モデル「AQUOS sense4」が登場した。使いやすい機能性はそのままに、前モデルよりも2倍以上高められた処理性能を備えた高コスパモデルで、価格.comでも早々に人気ランキング1位(2020年11月25日時点)を獲得している。
※本記事中の価格は税込みで統一している。
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「AQUOS sense」は、今やシャープを代表するスマートフォンのシリーズだ。その最新世代「AQUOS sense4」シリーズは、豊富なバリエーションモデルが用意される。NTTドコモ版「SH-41A」(37,224円)と一般流通向けのSIMフリーモデル「SH-M15」(35,900円、2020年11月25日時点の価格.com最安価格)に加えて、メインカメラをデュアルカメラにするなど機能を一部簡略化した楽天モバイル専売の「AQUOS sense4 lite SH-RM15」(29,819円)、指紋認証センサーを省略し、メモリーを4GBから3GBに抑えたワイモバイル向け最廉価モデル「AQUOS sense4 basic A003SH」(23,760円。以下、「A003SH」)という派生モデルがある。このほかに、5G対応の「AQUOS sense5G」や、大画面モデル「AQUOS sense4 plus」も今後登場予定だ。その中から本記事ではSIMフリーモデル「AQUOS sense4 SH-M15」と楽天モバイル版「AQUOS sense4 lite SH-RM15」(以下、AQUOS sense4 lite)を中心に取り上げる。
ボディサイズは、両機とも約71(幅)×148(高さ)×8.9(厚さ)mm、重量は「AQUOS sense4」が約177gで、「AQUOS sense4 lite」が約176gとなる。ディスプレイは、2,280×1,080のフルHD+表示に対応する約5.8インチのIGZO液晶だ。前モデル「AQUOS sense3」と比較すると、ディスプレイが0.3インチ大きくなり、幅と高さがそれぞれ約1mm拡大されたが、ほぼ同レベル。なお、重量は約10g(「AQUOS sense4 lite」は約11g)重くなったが、これはバッテリーの容量が4,000mAhから4,570mAhに増えた影響が大きい。
ボディは若干大きくなったが、手にした際の印象は変わらない。ディスプレイは引き続き、シャープ独自のIGZO液晶が採用される
両機とも、前モデル同様、ボディはIPX5/8等級の防水仕様と、IP6X等級の防塵仕様に対応しており、浴室での使用ができるほか、アルコールを含んだ除菌シートで拭くこともできる。加えて米国国防総省の調達基準「MIL-STD-810H」と「MIL-STD-810G」の、防水(浸漬)・防水(雨滴)・防塵・防塵(風塵)・耐衝撃(落下)・耐振動・耐日射・防湿・高温保管(固定)・高温保管(変動)・高温動作 (固定)・高温動作 (変動)・低温動作・低温保管・温度耐久(温度衝撃)・低圧保管・低圧動作・氷結(結露)・氷結(氷結)の19項目をクリアしており、タフネスさは十分だ。
また、FeliCaポートも引き続き搭載されるが、「モバイルSuica」と「モバイルPASMO」を併用できるものに強化されている(2020年11月19日時点で、SH-41AとA003SHは動作確認済み)。
防水・防塵・タフネス性能に加えて、アルコールを含んだ除菌シートで拭くことができるボディ
新機能として、電源ボタンまたは指紋認証センサーの長押しで電子決済アプリを起動できる「Payトリガー」と、音声アシスタント「Googleアシスタント」の起動ボタンが追加されている。また、基本性能が大幅に向上したことを受けて、上位シリーズである「AQUOS R5G」などの上位モデルに搭載されていた「ゲーミング設定」が本機にも搭載された。
右側面に並ぶ3個のボタン。左側が電源、中央がGoogleアシスタントの起動ボタン、右側がボリュームボタン
電源ボタンは長押しで「Payトリガー」を起動可能。2度押しでカメラの起動を割り当てることもできる
Payトリガーは電子決済アプリに限らず、カメラや各種アプリの起動にも割り当てられる
上位モデル「AQUOS zero」シリーズや「AQUOS R5G」に搭載されていた「ゲーミング設定」を搭載。通知タッチ操作の制限など、ゲームに集中できる環境設定のほか、画面録画、攻略情報の検索などが行える
通常のホーム画面に加えて「AQUOSかんたんホーム」も用意されている
「AQUOS sense4」と「AQUOS sense4 lite」ともに基本スペックは共通だ。ミドルレンジ向けのSoC「Snapdragon 720G」に、4GBのメモリーと64GBのストレージ、1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを組み合わせる。OSはAndroid 10だ。前モデル同様、発売後2年間は最大2回のOSバージョンアップを保証しており、Android 12世代までは最新のソフトウェア環境を利用できる。
「Snapdragon 720G」は、処理性能とグラフィック性能両方が大きく進化しており、シャープによれば、前モデル比2.2倍の性能アップを果たしたとしている。実際の処理性能を、定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク」を使って計測したところ、総合スコアは267,328(内訳CPU:101,706、GPU:72,740、MEM:47,370、UX:45,512)となった。「AQUOS sense3」のスコアが114,802(内訳、CPU:43,349、GPU:16,729、MEM:32,268、22,456)だったので、確かに2倍以上スコアが向上している(いずれもバージョン8.0Xで計測した数値)。FeliCa付き防水防塵ボディを備えるなど、本機と機能面で近いオッポ「OPPO Reno3 A」のスコアは181,891(内訳、CPU:80,188、GPU:34,159、MEM:44,689、UX:32,855)だったので、こちらと比べてもかなりの大差がついている。
AnTuTuベンチマークの結果。左が本機、右がオッポ「OPPO Reno3 A」、右が「AQUOS sense3」のもの。前モデルからスコアは倍以上伸びているが、競合する現行モデル「OPPO Reno3 A」とも大差がついた
注目は、前モデル比で4倍以上も向上したというグラフィック性能のスコア「GPU」だろう。実際にいくつかのゲームで試してみたところ、グラフィック性能の向上は顕著で、「AQUOS sense3」よりも2ランクは描画レベルを引き上げられるほど。現状において最高レベルの処理性能・グラフィック性能が求められるスマホゲームのひとつ、オープンフィールドRPGの「原神」(miHoYo製)をプレイしたところ、画質設定「低」ならかなり軽快に動作したし、「中」に引き上げても、多少のコマ落ち程度の実用的なレベルで動作した。本機の処理性能およびグラフィック性能は、3万円台の製品としては頭ひとつ抜き出たものと言える
推奨スペックは「Snapdragon 845」以上という「原神」だが、本機は画質設定を「中」以下に抑えれば問題なくプレイできる
原神で画質設定を「中」にした際のデバイスにかかる負荷状況(画面右上のオレンジのバー)。相当の負荷ではあるが、ハードウェアの限界を超えるほどではない
冒頭で触れたように、「AQUOS sense4」にはさまざまなバリエーションモデルがあり、特に通信機能には大きな違いがある。NTTドコモ版「SH-41A」とワイモバイル版「A003SH」は、基本的にSIMロックのかかったシングルSIM版だが、一般流通向けの「SH-M15」は、2基のnanoSIMカードスロットを備えたDSDV(デュアルSIMデュアルVoLTE)対応モデル。いっぽう、楽天モバイル向け「SH-RM15」は、ひとつのeSIMと1基のnanoSIMカードスロットのDSDVとなっている。なお、「SH-M15」と「SH-RM15」は、NTTドコモ、au、ワイモバイル(ソフトバンク)、楽天モバイルのVoLTEに対応している。
「SH-M15」と「SH-RM15」は、対応バンドも多く、4キャリアのVoLTEに対応するなど、国内で流通するSIMカードの多くが利用できる。また、DSDVなので、音声通話の安い通信キャリアのSIMカードとデータ通信の安いMVNOのSIMカードを併用するのもよさそうだ。なお、「SH-RM15」に備わるeSIMは、SIMカードの情報を電子化したもので、Wi-Fi経由などでダウンロードして使う。国内で現状eSIMを発行しているのは、楽天モバイルとIIJmioだけだが、KDDIも子会社「KDDI Digital Life」から、来春をめどにサービスを開始する予定だ。国もeSIMを後押ししており、今後選択肢が増えるものと思われる。
「AQUOS sense」シリーズがユーザーから高い支持を集める理由のひとつに、バッテリーの持ちのよさがある。本機はすで触れたように、前モデルと比較して570mAh増量された4,750mAhのバッテリーを内蔵している。また、消費電力の少ないIGZO液晶の効果もあり、メーカーは1週間の電池持ちをアピールしている。なおスペック表を見ると、連続待受時間(LTE)が約1,020時間、連続通話時間(LTE)が約63.3時間と、「AQUOS sense3」の連続待受時間(LTE)約910時間、連続通話時間(LTE)48.8時間から大幅に向上している。今回の検証は4日ほど行ったが、1日3時間ほどの利用(1時間の3Dゲームを含む)で、フル充電から3日+α(80時間弱)はバッテリーが持続した。ゲームをプレイしなければもっと持続時間は延びただろう。1日に1時間程度使う程度なら、確かに1週間くらいは電池が持ちそうだ。なお、高速充電機能「USB PD(18W)」にも対応しており、最短150分でフル充電が可能。一般流通向け「SH-M15」には、18W対応のUSB PD急速充電器も同梱されている。
「AQUOS sense4」と「AQUOS sense4 lite」はメインカメラの仕様が異なる。「AQUOS sense4」は、約1,200万画素の標準カメラ(24mm)、約1,200万画素の広角カメラ(18mm)、約800万画素の望遠カメラ(53mm)という組み合わせのトリプルカメラで、広角カメラ起点で約3倍の光学ズームに対応する。いっぽうの「AQUOS sense4 lite」は、広角カメラが非搭載の、標準と望遠のデュアルカメラ仕様で、標準カメラ起点で約2.2倍の光学ズームとなる。なお、フロントカメラはともに800万画素だ。
左が「AQUOS sense4 lite」、右が「AQUOS sense4」のカメラ。「AQUOS sense4 lite」は広角カメラが非搭載のデュアルカメラ仕様になる
以下に「AQUOS sense4」のメインカメラを使った静止画の作例を掲載する。初期設定の「AIオート」モードで撮影を行っている。
日中の銀杏並木を撮影。黄葉した銀杏と青空がかなり鮮やかだが、肉眼の印象と大きな違いはない。周辺部分がやや荒れている
上と同じシーンを標準カメラに切り替えて撮影。葉のディテールがよく再現されている。また、カメラを切り替えたことによる色調の違いも少ない
上と同じシーンを望遠カメラに切り替えて撮影。カメラを切り替えてもトーンは一貫している。なお、中央やや左の銀杏にピントを合わせたのだが、背景の空に合焦してしまっているようだ
標準カメラで撮影。器やテーブルの木目の質感もよく再現されており、色かぶりも見られない
夕暮れの街を撮影。手持ち撮影かつ、長時間露光の手ぶれは抑えられているが、カラーノイズが全般に目立つ。建物の細部もあまりくっきりしているとは言えない
標準カメラで撮影。広角・望遠の各カメラよりも格段にノイズが少なく、細部の描写も比較的残っており、いちばんクリアな仕上がりになっている
上と同じシーンを望遠カメラに切り替えて撮影。カラーノイズが見られるほか、遠景の照明が一部紫に変色している。ただし手ぶれは比較的抑えられている
本機のメインカメラは、前モデル「AQUOS sense3」と比べると、全般にレスポンスも改善され、特に標準カメラの画質がかなり向上している。そのいっぽう、望遠カメラと、「AQUOS sense3 lite」では省略されている広角カメラは暗所撮影にはやや弱く、ノイズや色かぶりが現われやすい傾向が見られた
本機が属する3万円台のスマートフォンは、コストパフォーマンスが強く要求される。スマートフォンのコスパは、大量生産を行いやすい中国など、海外メーカーが一般的に強いが、本機は国内メーカーのモデルながら、ライバル機以上のコストパフォーマンスを実現している。
同価格帯で、FeliCa搭載&防水防塵ボディの製品を探すと、オッポ「OPPO Reno3 A」が人気だが、本機は、基本スペックの高さとともに、タフネスボディであるという優位点がある。本機と同じSoCを備えた製品としては、2万円前半で買えるシャオミ「Redmi Note 9S」があるが、こちらはFeliCa非搭載だ。3万円台で買えるスマートフォンとしては、本機は現状におけるベストチョイスと言えるだろう。
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