レビュー

FeliCa搭載、防水・防塵ボディで31,190円。au「Galaxy A32」は魅力的な5G入門機

au専売の5G対応スマートフォン「Galaxy A32 SCG08」(サムスン製)は、クアッドカメラ、5,000mAhの大容量バッテリー、防水・防塵対応ボディ、FeliCa搭載などの高機能でありながら、税込31,190円の低価格を実現。その実力を検証した。

※本記事中の価格は税込で統一している

FeliCa搭載、防水・防塵対応の5Gスマホ。価格は31,190円

販売価格4万円前後のシャープ「AQUOS sense5G」を筆頭に、ソフトバンクから2万円台前半のシャオミ「Redmi Note 9T」が登場するなど、5Gスマートフォンでも、低価格で購入できるエントリーモデルがそろってきた。サムスン「Galaxy A32 SCG08」も、そうした安価な5Gスマートフォンのひとつで、2021年2月25日にauより専売モデルとして発売された。直販価格は税込31,190円で、auの5Gスマートフォンでは最安。4Gスマホと同レベルの価格設定となっている。

ボディサイズは、約76(幅)×164(高さ)×9.1(厚さ)mmで、重量は約209g。9mmを超える厚みと200g以上の重さがあり、かなり大きく重い印象だ。カバーを装着した場合、さらに大きくなる。本機を購入する場合は、実機に触れて大きさを把握しておいたほうがよいだろう。ディスプレイには1,600×720のHD+表示に対応する約6.5インチの液晶が搭載される。ボディは、IPX8等級の防水仕様とIP6X等級の防塵仕様をクリアしているほか、FeliCaポートも備えており、おサイフケータイの諸サービスにも対応する。なお、「モバイルSuica」と「モバイルPASMO」の併用にも対応している。生体認証は、顔認証と指紋認証の両方に対応。指紋認証センサーはボディ側面に配置される電源ボタンと一体となっている。

シンプルな背面に、ユニークな配置の4基のカメラとLEDフラッシュが装備される

シンプルな背面に、ユニークな配置の4基のカメラとLEDフラッシュが装備される

ディスプレイは約6.5インチと広く、ボディの厚みも9.1mmもあるので、手にした印象ではかなりのサイズ感を感じる

ディスプレイは約6.5インチと広く、ボディの厚みも9.1mmもあるので、手にした印象ではかなりのサイズ感を感じる

200gを超えるボディは、近ごろの大型化が進むスマートフォンの中でも重いほうだ

200gを超えるボディは、近ごろの大型化が進むスマートフォンの中でも重いほうだ

ボディ下面に、USB Type-Cポートとヘッドホン端子を配置する

ボディ下面に、USB Type-Cポートとヘッドホン端子を配置する

ボディ上面には端子類は配置されない

ボディ上面には端子類は配置されない

右側面に、指紋認証センサーを兼ねた電源ボタンとボリュームボタンを配置する。ちなみに指紋認証センサーの精度はいまひとつだった

右側面に、指紋認証センサーを兼ねた電源ボタンとボリュームボタンを配置する。ちなみに指紋認証センサーの精度はいまひとつだった

約6.5インチの液晶ディスプレイはなかなかの大画面だが、HD+に解像度が抑えられているため、電子書籍のルビなど細かな文字では多少の粗さは否めない

約6.5インチの液晶ディスプレイはなかなかの大画面だが、HD+に解像度が抑えられているため、電子書籍のルビなど細かな文字では多少の粗さは否めない

本機の基本スペックは、MediaTek製の5G対応ミドルレンジ向けSoC「Dimensity 720」に4GBのメモリーと、64GBのストレージ、1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを組み合わせたもの。OSは、最新のAndroid 11だ。MediaTekの「Dimensity 720」は、省電力設計と7mnのプロセスルールにより、高い電力効率が得られるのが特徴のミドルクラス向けSoC。ARMが設計するCortex-A76コアを2基、Cortex-A55コアを6基、GPUにMali-G57 MC3を組み合わせており、最近はミドルクラスのスマートフォンでも採用例が増えている製品だ。

CPUの処理性能を計測するベンチマークアプリ「GeekBench 5」を使用して、ベンチマークテストを行ったところ、シングルコアは468、マルチコアは1,511という結果になった。なお、価格.comマガジンで以前計測した「AQUOS sense5G」のスコアは、シングルコアは575、マルチコア1,429だった。シングルコアでは「AQUOS sense5G」が有利だが、マルチコアでは本機のほうが若干上回るスコアとなった。

GeekBench 5の計測結果。左が本機、右が「AQUOS sense5G」のもの。シングルコアは「AQUOS sense5G」が有利だが、マルチコアでは本機のほうがやや高いスコアとなった

GeekBench 5の計測結果。左が本機、右が「AQUOS sense5G」のもの。シングルコアは「AQUOS sense5G」が有利だが、マルチコアでは本機のほうがやや高いスコアとなった

いっぽう、グラフィック性能を計測する「3DMark」のベンチマークテストの結果は、Sling Shot(OpenGL ES 3.0)は3,450、Wild Life(Vulkan)は1,209という結果に。上記の「AQUOS sense5G」は、Sling Shotが3,201、Wild Lifeは828となっており、いずれも本機のほうが上回った。このスコアから考えると、本機の処理能力は、2017年登場のハイエンドSoC「Snapdragon 835」と、その次世代となる「Snapdragon 845」を搭載したスマートフォンのおよそ中間くらいと言える。近ごろのミドルレンジSoCは性能の向上が著しいが、本機の場合、3万円ちょっとという価格を考えると、コストパフォーマンスはかなり高いと言える。

「3DMark」によるベンチマークテストの結果。左が本機、右が「AQUOS sense5G」のもの。総じて、スコアは本機のほうが高めに出た

「3DMark」によるベンチマークテストの結果。左が本機、右が「AQUOS sense5G」のもの。総じて、スコアは本機のほうが高めに出た

体感速度的にも、セットアップ直後は明らかに悪かったが、設定初期に行われるシステムの最適化が終わってからは、快適と言えるレベルで動作した。ただし、グラフィック性能は、ベンチマークテストの結果では十分なスコアを示したものの、ゲームの中によっては、強めのジャギーが現われるものがあった。Android向けのゲームアプリはユーザーの多い「Snapdragon」を優先して性能や描画を最適化することが多いため、本機に限らずSnapdragonではないSoCを採用するAndroidスマートフォンでゲームを行う場合、こうした現象は比較的起こりやすい。その点は注意しておきたい。

「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(Cygames・バンダイナムコ)の3Dステージでは、グラフィック描画の際にジャギーが多く発生した

「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(Cygames・バンダイナムコ)の3Dステージでは、グラフィック描画の際にジャギーが多く発生した

4Gからの転用周波数帯も含め、auの5G通信エリアは拡大中

次に、5Gの通信性能を見てみよう。本機は、5G専用周波数帯のSub-6と4Gからの転用周波数帯の両方に対応している。Sub-6エリアでは、下り最大2.1Gbps、上り最大183Mbpsの高速データ通信が可能だ。なお、5G転用周波数帯エリアの通信性能は4Gに準じる。

なお、今時点でも5Gは使用できるエリアが狭く、多くのユーザーは現状では4Gで利用することになるだろう。しかし、auは、昨年末から4G用の3.5GHz帯を5Gへ転用開始しており、東京、大阪、名古屋といった大都市の中心部ではある程度まとまった5Gエリアが構築されている。

JR山手線で秋葉原駅→恵比寿駅間の約30分間における5Gと4Gの接続時間を円グラフでまとめた。円グラフの紫色部分が5G、水色部分が4Gとなる。接続時間で見ると上記の区間の半分以上が5G化されていることになる

JR山手線で秋葉原駅→恵比寿駅間の約30分間における5Gと4Gの接続時間を円グラフでまとめた。円グラフの紫色部分が5G、水色部分が4Gとなる。接続時間で見ると上記の区間の半分以上が5G化されていることになる

Sub-6エリアで計測した最高速度は、下り433Mbps、上り最大54.8Mbps。4Gの実効速度よりもはるかに速いが、1Gbps超えといった高速通信は確認できなかった

Sub-6エリアで計測した最高速度は、下り433Mbps、上り最大54.8Mbps。4Gの実効速度よりもはるかに速いが、1Gbps超えといった高速通信は確認できなかった

なお本機は、auの専売モデルとなるが、2021年3月23日からサービスが始まる新料金プラン「povo(ポヴォ)」も利用可能。こちらに乗り換えれば、月額2,728円で4G・5Gの双方で20GBのデータ通信が可能となる。また、UQモバイルの「くりこしプラン S」(月間3GBまでで月額1,628円)も魅力的だ。ただし、これらの料金プランでは5G対応は今夏を予定しており、当面は4Gのみで利用することになる。なお、auのデータ通信無制限プラン「使い放題MAX 5G」(7,238円)は4Gと同じ料金設定となっており、5Gをフルに利用したいなら、こちらを選ぶとよいだろう。なお、KDDIグループは2月からブランド間の番号移行手数料などが廃止されているので、KDDI系の通信サービスなら、乗り換えも容易だ。

KDDIグループの、au、povo、UQ Mobileの乗り換えにかかる手数料は廃止されている

KDDIグループの、au、povo、UQ Mobileの乗り換えにかかる手数料は廃止されている

4基のカメラを搭載。手ぶれ補正機能は非搭載ながら、画質は良好

本機のメインカメラは、約4,800万画素の標準カメラ、約800万画素の超広角カメラ、約500万画素のマクロカメラ、約200万画素の深度センサーという組み合わせのクアッドカメラだ。なお、静止画用の手ぶれ補正機能は搭載されていない。

4基メインカメラとLEDフラッシュが背面に配置されている

4基メインカメラとLEDフラッシュが背面に配置されている

以下に本機のメインカメラを使って撮影した静止画を掲載する。いずれも初期設定のまま、カメラ任せのオートモードを使用している。

標準カメラで撮影

色鉛筆を撮影。肉眼の印象よりもやや眠い発色だが、周辺部分の画質の荒れは少ない。本機の価格を考えれば上々と言えるだろう

色鉛筆を撮影。肉眼の印象よりもやや眠い発色だが、周辺部分の画質の荒れは少ない。本機の価格を考えれば上々と言えるだろう

超広角カメラで撮影

35mm換算で13mmという超ワイドの撮影が可能。標準カメラのトーンを維持しているが周辺部分の画質は荒れが目立つ

35mm換算で13mmという超ワイドの撮影が可能。標準カメラのトーンを維持しているが周辺部分の画質は荒れが目立つ

マクロカメラで撮影

マクロカメラに切り替えて、被写体まで数センチの距離で接写した。光量に余裕のあるスタジオで撮影したこともあって、手ぶれもなく鮮明に撮れている

マクロカメラに切り替えて、被写体まで数センチの距離で接写した。光量に余裕のあるスタジオで撮影したこともあって、手ぶれもなく鮮明に撮れている

標準カメラで撮影

明暗差の大きな構図で撮影。暗部にはノイズが現われているが、肉眼の印象から大きく乖離はしていない

明暗差の大きな構図で撮影。暗部にはノイズが現われているが、肉眼の印象から大きく乖離はしていない

超広角カメラで撮影

上と同じ構図で撮影。構図中央となる窓の外の景色は良好な画質だ。こちらも周辺部分はノイズと解像感の低下が見られる

上と同じ構図で撮影。構図中央となる窓の外の景色は良好な画質だ。こちらも周辺部分はノイズと解像感の低下が見られる

標準カメラで撮影

夜の街を手持ちで撮影。夜景としては明るく写っている。背景に移るビルの白い壁の部分でノイズが現れ始めているものの、心配された手ぶれは抑えられている

夜の街を手持ちで撮影。夜景としては明るく写っている。背景に移るビルの白い壁の部分でノイズが現れ始めているものの、心配された手ぶれは抑えられている

上と同じシーンを撮影。光量が減少し、周辺部のノイズも増えているもののこちらも手ぶれは抑えられている

上と同じシーンを撮影。光量が減少し、周辺部のノイズも増えているもののこちらも手ぶれは抑えられている

本機のカメラは、手ぶれ補正機能は搭載していないものの、両手でしっかり構えて撮影すれば、手持ちでも夜景撮影に十分対応できる。マクロカメラは、光量に敏感だが、明るい日中など、光量が確保できればきれいなマクロ撮影が楽しめた。いっぽう、超広角カメラは13mmというかなり広い焦点距離が魅力だが、周辺部分は低感度時でもノイズや荒れが目立つ。

5,000mAhのバッテリーを搭載し、充電なしでも2日くらいは使える

本機は、5,000mAhの大容量バッテリーを搭載しており、電池持ちを示すカタログスペックは、連続通話時間が約2,280分、連続待受時間は約720時間、電池持ち時間は約150時間(4G)/約145時間(5G)となっている。これらの値は、同じ低価格5Gスマホである「AQUOS sense5G」と比較すると1〜2割ほど低い。実際に4Gエリアで1日3時間程度(1時間程度のゲームを含む)のペースで利用したところ、バッテリーは2日半〜3日弱で残量がゼロになった。同じような利用ペースの「AQUOS sense5G」なら3日以上は持続したので、それよりは少々劣る感じだ。ただし、よほどヘビーに使わない限り、フル充電なら1日でバッテリーが切れることはないので、実用で困ることはないだろう。

価格と性能のバランスが魅力の5G入門モデル

auの5Gスマートフォンは現状でも製品数が多い。低価格帯モデルだけでも、シャオミ「Mi 10 Lite 5G」(32,470円)、シャープ「AQUOS sense5G」(39,890円)があり、さらに5月下旬にオッポ「OPPO A54 5G」(価格非公開)も控えている。これらの中でも、本機は価格を3万円台前半に抑えながら、FeliCaや防水・防塵にも対応している点が特徴で、手堅い性能を備えた、より多くの人のニーズに合致した製品と言える。

気になった点は、ボディ単体でも、カバーを付けたスマートフォンくらいに感じる大きなサイズだ。また、国内では少数派のSoCを採用していることもあって、ゲームによってはグラフィック処理などで不向きな場合がある。ゲームをフルに楽しみたいのであればSnapdragonシリーズを搭載する「AQUOS sense5G」や「Mi 10 lite 5G」などのほうがより適しているだろう。

5G化で心配される電池持ちの悪化もあまりなく、また、今後登場するKDDIグループの各通信ブランドの新料金を見据えれば、月々の支払いもかなり安く抑えられる。そういう意味でも、5G入門機として多くの人が満足できる1台と言えそうだ。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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