レビュー

インテルのデスクトップPC向け最新CPU「Core i9 11900K」「Core i5 11600K」レビュー

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ベンチマークレポート

まずはCPUの基礎体力をチェックするためにSiSoftware「Sandra 2021」を実行してみた。

グラフ1:Sandra 2021 Processor Arithmetic

グラフ1:Sandra 2021 Processor Arithmetic

グラフ2:Sandra 2021 Processor Multi-Media

グラフ2:Sandra 2021 Processor Multi-Media

グラフ3:Sandra 2021 Cryptography

グラフ3:Sandra 2021 Cryptography

グラフ4:Sandra 2021 Memory Bandwidth

グラフ4:Sandra 2021 Memory Bandwidth

グラフ5:Sandra 2021 Cache Bandwidth

グラフ5:Sandra 2021 Cache Bandwidth

グラフ6:Sandra 2021 Cache & Memory Latency

グラフ6:Sandra 2021 Cache & Memory Latency

CPUの計算能力を測るProcessor Arithmeticは、物理コア数の多い順になったいっぽうで、マルチメディア関連のパフォーマンスを測るProcessor Multi-Mediaは、Core i9 11900KとCore i9 109900Kの差がかなり縮まっている。このあたりは、CPUアーキテクチャーの変更、メモリーの動作クロック引き上げが有利に働いているのかもしれない。

メモリー帯域を測るMemory Bandwidthは、DDR4-3200対応となったCore i9 11900KとCore i5 11600KがCore i9 10900Kを上回る結果に。Cache Bandwidthは、Rocket Lake-SとComet Lake-Sの間でキャッシュ周りの設計に大きな変更がなかったためか、全体的な傾向はRocket Lake-SとComet Lake-Sの間で差はなかった。

続いて、プラットフォーム全体のパフォーマンスを図るFuturemarkの統合ベンチマーク「PCMark 10」と、マルチメディア系のベンチマークとして、CPUのレンダリング性能を測るMAXON「Cinebench R23」のベンチマーク、レイトレーシングソフト「POV-Ray 3.7.0」のベンチマーク、ペガシス「TMPGEnc Video Mastering Works 7」を使った動画エンコードの処理時間、市川ソフトラボラトリー「SILKYPIX Developer Studio 10」を使ったRAW現像時間を計測してみた。

グラフ7:PCMark 10 Extended Score

グラフ7:PCMark 10 Extended Score

グラフ8:CINEBENCH R23

グラフ8:CINEBENCH R23

グラフ9:POV-ray v3.7

グラフ9:POV-ray v3.7

グラフ10:TMPGEnc Video Mastering Works 7 動画エンコード速度

グラフ10:TMPGEnc Video Mastering Works 7 動画エンコード速度

グラフ11:SILKYPIX Developer Studio 10 RAW画像現像速度

グラフ11:SILKYPIX Developer Studio 10 RAW画像現像速度

実アプリケーションを使ってプラットフォーム全体のパフォーマンスを測るPCMark 10のトータルスコアは、Core i9 11900Kがトップを記録。Core i9 11900Kは、コア数がCore i9 10900Kの10コアから8コアに減ったというビハインドがあったものの、CPUコアアーキテクチャーの変更、メモリークロックの引き上げやPCIe 4.0対応などで、プラットフォーム全体が底上げされたことが効果的に働いたのだろう。6コアのCore i5 11600Kも、Gamingの項目こそ10コアのCore i9 10900Kに負けているものの、そのほかはCore i9 10900Kといい戦いとなっており、トータルスコアもかなり僅差に迫っている。

CINEBENCHのマルチコア性能は、10コアのCore i9 10900Kがトップだが、8コアのCore i9 11900Kもかなり検討。シングルコア性能は、CPUコアアーキテクチャーの変更でIPC向上を果たした最新世代のCore i9 11900KとCore i5 11600Kが力を見せつけた形となっている。POV-ray v3.7もほぼ似たような傾向だ。

並列処理の多い動画エンコードについては、コア数の多いCPUが有利ということで、こちらは10コアのCore i9 10900Kがトップ。いっぽう、マルチコア性能だけでなくシングルコア性能も求められるRAW現像については、8コアのCore i9 11900Kがトップ、次いでCore i9 10900KとCore i5 11600Kが続く形となった。

続いては、3Dパフォーマンスを測るFuturemarkのベンチマークプログラム「3DMark」だ。

グラフ12:3DMark TIME SPY EXTREME Score

グラフ12:3DMark TIME SPY EXTREME Score

グラフ13:3DMark TIME SPY Score

グラフ13:3DMark TIME SPY Score

グラフ14:3DMark FIRE STRIKE ULTRA Score

グラフ14:3DMark FIRE STRIKE ULTRA Score

グラフ15:3DMark FIRE STRIKE EXTREME Score

グラフ15:3DMark FIRE STRIKE EXTREME Score

グラフ16:3DMark FIRE STRIKE Score

グラフ16:3DMark FIRE STRIKE Score

TIME SPYは、メニーコアCPUを想定して開発されたこともあり、トータルスコアは10コアのCore i9 10900Kのほうが若干高くなっているが、8コアのCore i9 11900Kとの差はほんのわずか。DirectX 11をターゲットにしたFIRE STRIKEでは、トータルスコアはほぼ差がないと言える範囲に収まっている。さすがに、コア数/クロック数ともに抑えられているCore i5 11600Kは一段低いスコアとなっているが、スペックを考えるとなかなか検討していると言っていいだろう。

続いては、実際のゲームタイトルを使ったテストだ。今回は「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」「Fortnite」「Tom Clancy's Rainbow Six Siege」「Borderlands3」「Farcry 5」の全5タイトルの平均フレームレート、最小フレームレートを計測している。

グラフ17:ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク 平均フレームレート

グラフ17:ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク 平均フレームレート

グラフ18:ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク 最小フレームレート

グラフ18:ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク 最小フレームレート

【ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク 計測設定】
公式ベンチマークプログラムを使用。グラフィック設定プリセットを「最高品質」、スクリーンモードを「フルスクリーンモード」に変更。そのほかの設定は変更せず、プリセットに従う。1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドットの3種類の解像度でベンチーマークを実施し、計測値はベンチーマークのレポート出力の値を採用している。

グラフ19:Fortnite DX12 平均フレームレート

グラフ19:Fortnite DX12 平均フレームレート

グラフ20:Fortnite DX12 最小フレームレート

グラフ20:Fortnite DX12 最小フレームレート

【Fortnite DX12 計測設定】
Fortniteを使用。レンダリングモードを「DIRECTX 12(ベータ)」、クオリティプリセットを「最高」、ウィンドウモードを「フルスクリーン」、最大フレームレートを「無制限」に変更。そのほかの設定は変更せず、プリセットに従う。1,600×900ドット、1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドットの3種類の解像度で計測を実施している。なお、Fortniteにはベンチマークモードが用意されていないため、計測にはCapFrameXを使用し、リプレイデータの特定シーン1分間を再生した時のフレームレートを計測。平均フレームレートは、CapFrameXのAverageの値、最小フレームレートはCapFrameXのP1の値を採用している。

グラフ21:Rainbow Six Siege Valkan 平均フレームレート

グラフ21:Rainbow Six Siege Valkan 平均フレームレート

グラフ22:Rainbow Six Siege Valkan 最小フレームレート

グラフ22:Rainbow Six Siege Valkan 最小フレームレート

【Rainbow Six Siege Valkan 計測設定】
Vulkan API版のRainbow Six Siegeのベンチマークモードを使用。総合品質を「最高」に変更。そのほかの設定は変更せず、プリセットに従う。1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドットの3種類の解像度で計測を実施し、計測値はベンチーマーク結果の値を採用している。

グラフ23:Borderlands3 DX12 平均フレームレート

グラフ23:Borderlands3 DX12 平均フレームレート

グラフ24:Borderlands3 DX12 最小フレームレート

グラフ24:Borderlands3 DX12 最小フレームレート

【Borderlands3 DX12 計測設定】
Borderlands3のベンチマークモードを使用。グラフィックAPIを「DirectX 12」、全体的な品質を「バッドアス」、ディスプレイ・モードを「フル・スクリーン」、垂直同期を「オフ」に変更。そのほかの設定は変更せず、プリセットに従う。1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドットの3種類の解像度でベンチーマークを実施。計測値の平均フレームレートは最新のベンチーマーク・レポート出力の平均FPSの値を採用、最小フレームレートは別途出力されるcsv形式のベンチマークレポートから算出した値を採用している。

グラフ25:Farcry 5 平均フレームレート

グラフ25:Farcry 5 平均フレームレート

グラフ26:Farcry 5 最小フレームレート

グラフ26:Farcry 5 最小フレームレート

【Farcry 5 計測設定】
Farcry 5のベンチマークモードを使用。画質を「最高」に変更。3種類の解像度でベンチーマークを実施し、計測値はベンチーマーク結果の値を採用している。

Core i9 11900Kは、インテル自身がゲーマー向けにもっとも適したCPUであると豪語するだけはある。おそらく、メモリークロックの引き上げだけじゃなく、コア数を抑えたことで安定して高クロック状態を維持できるようになったことも関係しているのだろう。全世代のCore i9 10900Kよりも全般的にフレームレートの低下が最低限に抑えられており、平均フレームレートもCore i9 10900Kより高い値をたたき出している。FortniteやTom Clancy's Rainbow Six Siegeなど、シューター系でハイフレームレートが求められるタイトルに関しては、圧倒的なパフォーマンスだ。Core i5 11600Kについても、タイトルによってはCore i9 10900K並みの平均フレームレートが出ており、Rocket Lake-Sのゲーミングパフォーマンスのよさが光る結果と言えそうだ。

最後はシステム全体の消費電力とCPU温度を計測してみた。消費電力はラトックシステムの「Wi-Fiワットチェッカー RS-WFWATTCH1」を使って計測し、PC起動10分間の平均値をアイドル時、「CineBench R23」のMulti Coreテスト実行時のピークをCPUマルチスレッド高負荷時の値として採用している。CPU温度は、HWMonitorを使用して計測し、消費電力同様にアイドル時とCPUマルチスレッド高負荷時を計測している。

グラフ27:システム全体の消費電力

グラフ27:システム全体の消費電力

グラフ28:CPU温度

グラフ28:CPU温度

Rocket Lake-Sも、Comet Lake-Sと同じ製造プロセスルールが14nm++のままのため、消費電力・温度ともにComet Lake-Sから大きな変化は見られなかった。高クロックを維持するには電源まわりのスペックやクーラーにもそれなりのものが要求されるところもこれまで通りだ。

このクラスのCPUだとハイエンドGPUと組み合わせて使用することが多いだろうし、今回もRTX 3080と組み合わせてテストを行ったが、ゲームベンチマーク実行中はシステム全体で600W越えの消費電力をたたき出している。もちろんこれにはグラボの消費電力も含まれているわけだが、それでも必要最低限のデバイスしか接続していない、ケースにもいれないバラック状態でのテストでこれだけの値なので、ハイエンドGPUを搭載したり、メモリーのオーバークロックを実施する予定のある人なら、電源はかなりしっかりしたものを用意したほうがよさそうだ。

【まとめ】ゲーミング用途ならRocket Lake-Sはアリだが、いつくか懸念点も…

というわけで、ここまでCore i9 11900KとCore i5 11600Kのパフォーマンスを駆け足でみてきたが、最上位モデルのCore i9 11900Kはゲーミング領域において前世代のCore i9 10900Kから着実な進化を遂げていた。プロセスルールをこなれた14nmのまま据え置きにしておけば高クロックも狙えるし、CPUコアアーキテクチャーの変更でIPC向上も果たせるからコア数を8コアに抑えても問題ないという判断から今回の最上位モデルとなるCore i9 11900Kは8コアになったのだと推測されるが、コロナ禍でゲーミング需要が増している中、この判断でよかったのかもしれない。Core i5 11600KもタイトルによってはCore i9 10900Kに迫るフレームレートを狙うこともでき、市場在庫次第ではコスパ重視のゲーミング用CPUとして注目が集まりそうだ。

いっぽうで、チップセット側のI/Oがリッチになりすぎて、マザーボードの価格が全体的にやや高止まりになっていることや、ハイエンドグラボと組み合わせるならそれなりの環境が必要だということ、昨今のグラボ不足の影響でCPUがあっても組み合わせるグラボがないことなど、現時点で新CPUを使ってPCを構築するにはいくつか懸念点があるのも事実だ。ゲーミングパフォーマンス重視の人なら、Core i9 11900KとCore i5 11600Kはいい選択肢になるのは間違いないだろうが、このあたりの懸念点がどう影響するのか、若干気になるところだ。

遠山俊介(編集部)
Writer / Editor
遠山俊介(編集部)
2008年カカクコムに入社、AV家電とガジェット系の記事を主に担当。ポータブルオーディオ沼にはまり、家にあるイヤホン・ヘッドホンコレクションは100オーバーに。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットにも手を出している。家電製品総合アドバイザー資格所有。
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