レビュー

ユーザー評価が分かれるXperiaの異色エントリー機、ソニー「Xperia Ace II」レビュー

NTTドコモが2021年5月28日に発売した4Gスマートフォン「Xperia Ace II SO-41B」は、22,000円(税込)という低価格が魅力のエントリーモデル。価格.com「スマートフォン」カテゴリーでは5位という好位置をキープしているが(2021年6月14日時点)、ユーザーレビューでは賛否が分かれている。本機をレビューしたうえで、評価が分かれる理由を探った。

防水・防塵対応、FeliCa搭載、価格重視の小型Xperia。注目を集める要素は満載だが…

Xperiaの今夏モデルは、高性能の「Xperia 1 III」、中価格帯の「Xperia 10 III」、今回取り上げるNTTドコモ専売の廉価モデル「Xperia Ace II」という3段構えのラインアップとなる。「Xperia Ace II」は、5G非対応で22,000円(税込)という低価格モデルであり、Androidスマートフォンとしてはコンパクトなボディも魅力のひとつだ。価格.comの「スマートフォン」カテゴリーにおける人気・注目ランキングは5位と高いが、満足度は3.39(いずれも2021年6月14日時点の数値)と、評価については賛否が分かれている。

そんな本機は、約69(幅)×140(高さ)×8.9(厚さ)mm、重量約159gのボディに、1,496×720のHD+表示に対応する約5.5インチの液晶ディスプレイを搭載した、Xperiaシリーズとしては、2019年発売の「Xperia Ace」以来となるコンパクトモデルだ。近ごろのAndroidスマートフォンとしては確かに小さい部類と言える。Xperiaの特徴であるフラットなシルエットは魅力だが、樹脂製のボディは高級感に乏しい。

横幅を70mm以下に抑えたコンパクトなボディが特徴。重さも159gに抑えられている

横幅を70mm以下に抑えたコンパクトなボディが特徴。重さも159gに抑えられている

Xperiaらしいフラットな背面デザインだが、樹脂製ボディは高級感には乏しい

Xperiaらしいフラットな背面デザインだが、樹脂製ボディは高級感には乏しい

ボディは、IPX5/8等級の防水仕様とIP6X等級の防塵仕様で、FeliCaおよびNFCポートを備え、日本市場で重視される機能はしっかり搭載されている。また、電源ボタンと一体の指紋認証センサーや、Google アシスタントボタンを搭載し、上面にはヘッドホン端子も備わるなど、インターフェイス面での不足はない。なお、このボディ自体に抗菌性は備わっていないが、ソニー純正オプションのカバー「XQZ-CBBD」は、JIS Z 2801基準の抗菌性能を備えている。衛生面が気になる場合、こちらを検討するのもよいだろう。

ボディ下面に、USB Type-Cポートを配置。USBポート左の細長い孔はスピーカー

ボディ下面に、USB Type-Cポートを配置。USBポート左の細長い孔はスピーカー

ボディ上面にヘッドホン端子を配置

ボディ上面にヘッドホン端子を配置

ボタンは右側面に集中しており、電源ボタン、ボリュームボタンのほか、Googleアシスタントボタンを備える。なお、前モデル「Xperia Ace」同様に、シャッターボタンは非搭載

ボタンは右側面に集中しており、電源ボタン、ボリュームボタンのほか、Googleアシスタントボタンを備える。なお、前モデル「Xperia Ace」同様に、シャッターボタンは非搭載

ボディ右側面の電源ボタンは、Xperiaシリーズの特徴である指紋認証センサー内蔵型、スリープ復帰とロック解除を同時に行える

ボディ右側面の電源ボタンは、Xperiaシリーズの特徴である指紋認証センサー内蔵型、スリープ復帰とロック解除を同時に行える

スタンドを備えたソニー純正のカバー「XQZ-CBBD」(別売)は、素材に抗菌機能を持たせている

スタンドを備えたソニー純正のカバー「XQZ-CBBD」(別売)は、素材に抗菌機能を持たせている

ディスプレイはXperiaの特徴である平面ディスプレイだが、大きめのノッチ(切り欠き)があり、超縦長の縦横比でもないため、映像にこだわるXperiaシリーズとしては、やや物足りない。ただし、ディスプレイの保護ガラスには、キズや割れに強い「Corning Gorilla Glass 6」が使われているため、耐久性は高い。1,496×720のHD+表示に対応する液晶ディスプレイは、約5.5インチという画面サイズに対して解像度が少し低いので、細かな文字表示では多少の粗さも感じる。

半円形のノッチ(切り欠き)を中央上部に備えた約5.5インチの液晶ディスプレイを採用。1,496×720のHD+表示に対応するが、やや解像度は低く感じる

半円形のノッチ(切り欠き)を中央上部に備えた約5.5インチの液晶ディスプレイを採用。1,496×720のHD+表示に対応するが、やや解像度は低く感じる

基本性能は平凡。日常的な使い方でもややスムーズさに欠ける印象

本機の基本スペックだが、2018年の終わりに登場した台湾MediaTek社製エントリー向けSoC「Helio P35」に、4GBのメモリーと64GBのストレージ、最大1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを組み合わせる。OSは、Android 11。CPUの処理性能をベンチマークアプリ「GeekBench 5」を使って計測したところ、シングルコア161、マルチコア679というスコアになった。このスコアは、3年ほど前のミドルレンジスマートフォンのレベルだ。

グラフィック性能を「3DMark」で計測したところ、OpenGL ES 3.1を使った「Sling Shot Extreme」のスコアは444となった。なお、Vulkan APIを使った検査項目「Wild Life」は動作要件を満たしていなかったため、代わりにVulkan API版の「Sling Shot extreme」を動作させたところ、スコアは656となった。近ごろはミドルレンジ機でも1,000以上のスコアは出ているので、本機のグラフィック性能はやや見劣りする。

左はCPUの処理能力を測る「GeekBench 5」を使ったCPUのベンチマークテストの結果。現在のミドルレンジスマートフォンはシングルコアで600前後、マルチコアで1,500前後のスコアが普通なので、それと比べても本機のシングルコア161、マルチコア679というスコアは高くない。右はグラフィック性能を計測するベンチマークアプリ「3DMark」の結果で、上のスコア656は、新しいAPI「Vulkan」を使ったもの、下のスコア444は、従来から使われるAPI「OpenGL ES 3.1」を使ったもの。現在3〜4万円程度で買えるミドルレンジ機でもこれらのスコアは1,000以上が普通に出ており、本機はグラフィック性能でも見劣りするという結果になった。

左はCPUの処理能力を測る「GeekBench 5」を使ったCPUのベンチマークテストの結果。現在のミドルレンジスマートフォンはシングルコアで600前後、マルチコアで1,500前後のスコアが普通なので、それと比べても本機のシングルコア161、マルチコア679というスコアは高くない。右はグラフィック性能を計測するベンチマークアプリ「3DMark」の結果で、上のスコア656は、新しいAPI「Vulkan」を使ったもの、下のスコア444は、従来から使われるAPI「OpenGL ES 3.1」を使ったもの。現在3〜4万円程度で買えるミドルレンジ機でもこれらのスコアは1,000以上が普通に出ており、本機はグラフィック性能でも見劣りするという結果になった。

体感速度でも、全般的に動作のスムーズさに乏しい印象を受けた。たとえば、WebブラウザーやSNSのトーク画面を素早くスクロールさせるような日常的な利用方法でも引っかかりが感じられた。上記で見たように、グラフィック性能も高くないので、3D表示を使うゲームプレイなどにもあまり向いているとは言いがたい。
22,000円という価格からして致し方ない部分はあるが、結論として、スマートフォンの利用頻度が高い人なら、もう少し処理性能の高い製品を選んだほうがよさそうだ。あくまで、インターネットやSNSなどベースの利用で、ひとまずスマートフォンを、という人に向けたモデルと言えそうだ。

劣化を抑えた4500mAhの大容量バッテリーを搭載。フル充電で3日は持つバッテリー

本機は4,500mAhのバッテリーを内蔵する。連続待ち受け時間は約810時間、連続通話時間(AMR-WB)は約1,670分となっている。この値は、電池持ちでは定評のある4Gスマートフォン、シャープ「AQUOS sense4 SH-41A」の連続待ち受け時間約820時間に迫るものだ。いっぽう、連続通話時間はこれよりもやや短い。
今回は、検証機の制約で、SIMカードを挿して使うことができず、Wi-Fi環境下での利用のみとなったが、1日に3時間程度断続的に使った場合、フル充電で約4日間、電池が持った。4Gでの通信をそこそこ行ったとしても、フルで3日はバッテリーが持つだろう。

なお、本機のバッテリーは、充電時のバッテリーへの負担を軽減し、3年間繰り返し使える長寿命性能を備えている。本機は、充電器が同梱されていない。充電器を購入する場合、USB PD(USB Power Delivery)規格対応の「ACアダプタ 07」を使えば最短150分で高速充電が行える。USB PD対応でない充電器では3時間以上の充電時間がかかることもある。

カメラ機能はごくシンプル。過大な期待は禁物

本機のメインカメラは、約1,300万画素の広角カメラ(焦点距離28mm)と、構図を計測する約200万画素の深度センサーという組み合わせのデュアルカメラだ。深度センサーは映像の記録には使わないので、実質シングルカメラと言ってよい。なお、フロントカメラは約800万画素だ。カメラ機能としては、13種類のシーンと、被写体の4種類の状況を判別する「プレミアムおまかせオート」を備える。

2基のカメラを備えるメインカメラ。ただし映像の記録を行うのは1基のみで、光学ズームや超広角撮影には対応していない

2基のカメラを備えるメインカメラ。ただし映像の記録を行うのは1基のみで、光学ズームや超広角撮影には対応していない

以下に、本機のメインカメラで撮影した静止画の作例を掲載する。いずれも初期設定のまま、カメラ任せのオートモードで撮影を行っている。

カラーサンプルの代わりに色鉛筆のセットを撮影。赤周辺の発色が、肉眼の印象よりもくすんでおり、色分けもちょっと曖昧だ

カラーサンプルの代わりに色鉛筆のセットを撮影。赤周辺の発色が、肉眼の印象よりもくすんでおり、色分けもちょっと曖昧だ

晴天の日中のビル街を順光で撮影。明暗の差が少なくカメラにかかる負担の少ない構図ということもあり、白飛び、黒つぶれは見られない。ただし、構図中央、周辺を問わず解像感はあまり高くない

晴天の日中のビル街を順光で撮影。明暗の差が少なくカメラにかかる負担の少ない構図ということもあり、白飛び、黒つぶれは見られない。ただし、構図中央、周辺を問わず解像感はあまり高くない

木漏れ日を撮影。明暗差の大きな構図だが、ハイライト部分が白飛びしている。こうしたシーンで威力を発揮するHDR機能を備えるが、HDRを利用する場合、ユーザー側で設定が必要となる

木漏れ日を撮影。明暗差の大きな構図だが、ハイライト部分が白飛びしている。こうしたシーンで威力を発揮するHDR機能を備えるが、HDRを利用する場合、ユーザー側で設定が必要となる

薄暗い店内でラーメンを撮影。心配されたノイズや手ぶれは少なく、比較的キレイに映っているが、明るさはやや足りない印象

薄暗い店内でラーメンを撮影。心配されたノイズや手ぶれは少なく、比較的キレイに映っているが、明るさはやや足りない印象

ビル街の夜景を撮影。初期状態のままではかなり暗かったので、HDRを動作させた。明暗差の大きな夜景では、HDRは必須と言えそうだ

ビル街の夜景を撮影。初期状態のままではかなり暗かったので、HDRを動作させた。明暗差の大きな夜景では、HDRは必須と言えそうだ

本機のカメラは、近ごろのスマートフォンとしてはかなりシンプルなもので、Xperiaの上位モデルに搭載されるスローモーション撮影やオートHDR、クリエイティブエフェクトといったソフトウェア機能は搭載されていない。また、オートフォーカスや構図認識もいたってシンプルだ。こだわりの写真を撮影するといった用途では少々厳しいだろう。

なお、本機のカメラアプリにバグがあることが報告されており、2021年6月11日に配布されたパッチで修正される。購入の際は、アップデートを確認しておくようにしたい。

“あまり使わないがスマホが必要”という人向け。Xperiaシリーズとしてはかなりの異色作

誰もがスマートフォンを持つ時代、人がスマートフォンに求めるものはさまざまだ。本機は、防水・防塵、FeliCaポートといった日本市場で必須とも言える機能はしっかり備えつつ、価格を抑えるため、性能面ではかなり割り切ったモデルだ。スマートフォンは必要だが、端末にあまりお金はかけたくない、あるいは、それほどひんぱんに利用するわけではないが、ガラケーなどから移行する必要がある。そうしたユーザーに対してなら、価格も非常に安く、バッテリー持ちもいいので、本機の存在意義も十分にあるだろう。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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