ASUS JAPANは2021年7月15日、ゲーミングノートPCの新モデルとして、16型の「ROG ZEPHYRUS M16」と17.3型の「ROG ZEPHYRUS S17」の2モデルを発表した。ゲーミングノートPCとしては、どちらもシンプルなデザインで、ゲーマーだけでなく、クリエイターやハイスペック志向のユーザーもターゲットにしている。今回は16型のROG ZEPHYRUS M16を発売前にひと足早く試すことができたので、詳しくレビューしていきたい。
超狭額縁ベゼルの16型液晶ディスプレイを搭載するROG ZEPHYRUS M16。CPUにインテルの第11世代Coreプロセッサーの「Hシリーズ」を、GPUにNVIDIAの「GeForce RTX30シリーズ」を備えた高性能なゲーミングノートパソコン
ROG ZEPHYRUS M16は16型のディスプレイを搭載した高性能なゲーミングノートパソコン。一番の特徴は、左右が4.6mmという超狭額ベゼル。これにより、94%という高い画面占有率を実現している。左右だけでなく、上下のベゼルも細く、ゲームのプレイ中や動画の視聴時に高い没入感を味わえるのだ。同社によると、画面占有率94%は、ゲーミングノートパソコンでは世界初という。
画面占有率94%と高い没入感を味わえる16型の液晶ディスプレイを搭載
左右のベゼルの太さは4.6mm
16型のディスプレイは、アスペクト比が16:10で縦に長く、Webページが見やすく、Officeアプリやクリエイティブアプリなども使いやすい。リフレッシュレートは2560×1600(WQXGA)モデルが165Hz、1920×1200(WUXGA)が144Hz。最新のゲーミングノートパソコンらしく高リフレッシュレートで、FPSや格闘ゲームを滑らかに楽しめる。色についても、正確な色を再現できるPantone認証取得済みでデジタルシネマ規格のDCI-P3を100%カバー。動画や写真を扱うクリエイターの要求にもしっかりと応えてくるはずだ。Dolby Visionもサポートしており、対応コンテンツを視聴するのにも向いている。
ゲーマーだけでなく、クリエイターもターゲットにしているモデルらしく、本体はゲーミングノートパソコンとしては落ち着いたデザイン。天板には、CNC加工による8279もの小さな穴がびっしりと並んでいる。一部の穴の中には「プリズマティックフィルム」が仕込まれており、見る角度によってキラキラと光り、シンプルながらも、しっかりと個性を発揮できるようになっている。「オフブラック」というつや消しの黒色で、手の脂がつきにくいのもうれしい。
非対称ドットマトリクスデザインと名付けられた天板。右上に8279もの小さな穴がキレイに並んでいる
落ち着きのあるオフブラックのボディカラーだが、プリズマティックフィルムによって、見る角度によって白や青などの光が浮かび上がる
本体サイズは355(幅)×243.5(奥行)×19.9〜22.3(高さ)mm、重量は約2.0kg。超狭額縁ベゼルのおかげで、16型のディスプレイを搭載しながら、比較的コンパクトなボディに仕上がっている。持ち運びも頑張ればできるが、ACアダプターが巨大なので、ひんぱんに持ち運ぶのは厳しいだろう。
続いてパフォーマンス面をチェックしていこう。ROG ZEPHYRUS M16の主なスペックは以下の通り。スペック違いで5モデルがラインアップされている。
GU603HR-I7R3070EC:Core i7-11800H、16GB、1TB SSD(PCI Express 4.0 x4接続)、GeForce RTX 3070 Laptop GPU(8GB)、16型(2560×1600、165Hz)、269,800円 ※今回検証に利用したモデル
GU603HM-I7R3060EC:Core i7-11800H、16GB、1TB SSD(PCI Express 4.0 x4接続)、GeForce RTX 3060 Laptop GPU(6GB)、16型(2560×1600、165Hz)、239,800円
GU603HM-I7R3060U144:Core i7-11800H、16GB、512GB SSD(PCI Express 4.0 x4接続)、GeForce RTX 3060 Laptop GPU(6GB)、16型(1920×1200、144Hz)、249,800円
GU603HE-I7G3050TEC:Core i7-11800H、16GB、1TB SSD(PCI Express 3.0 x4接続)、GeForce RTX 3050 Ti Laptop GPU(4GB)、16型(2560×1600、165Hz)、219,800円
GU603HE-I7R3050TU144:Core i7-11800H、16GB、512GB SSD(PCI Express 3.0 x4接続)、GeForce RTX 3050 Ti Laptop GPU(4GB)、16型(1920×1200、144Hz)、229,800円
(CPU、メモリー、ストレージ、GPU、ディスプレイ、税込の市場想定価格)
CPUは全モデル共通で、インテルの「Core i7-11800H」を搭載する。「Hシリーズ」と呼ばれる、ゲーミングノートPCやクリエイター向けノートPC用の高性能なCPUで、8コア16スレッドとマルチスレッド性能が高いのが特徴だ。動作周波数も標準2.3GHz、最大4.6GHzと高め。また、同社のゲーミングノートPCの特徴である、Thermal Grizzly製液体金属グリスを使うことで、Hシリーズの高いパフォーマンスを存分に発揮させられる。「インワードセルフクリーニングクーリング2.0」により、冷却用の部品をゴミから守り、安定した冷却性能を維持してくれる。
「CINEBENCH R20」の結果。CPU全体のパフォーマンスを示すスコアは「5113」と非常に高い。同社のゲーミングノートパソコン「ROG Strix SCAR 17」が搭載していたAMDの「Ryzen 9 5900X」の「5181」とほぼ同等だった
メモリーはDDR4-3200の16GB(8GB×2)。SSDはPCI Express 4.0 x4接続(一部モデル)と非常に高速なSSDで、ゲームの読み込みや大きなファイルの読み込みに有利だ。
PCI Express 4.0 x4接続のSSDのスピードを「CrystalDiskMark 8.0.1 x64」(ひよひよ氏作)で測定してみた。結果はシーケンシャルリード(順次読み込み)が7070.64MB/sと非常に高速だった。ゲームの起動はもちろん、ファイルのプレビューや保存、移動、圧縮/解凍などがサクサク行える
グラフィック処理を担うGPUには、最新のアーキテクチャー「Ampere」を採用したNVIDIAの「GeForce RTX 3070 Laptop GPU」を搭載する。「GeForce RTX 30シリーズ」の中ではミドルクラスの「GeForce RTX 3070 Laptop GPU」だが、前世代の最上位モデル「GeForce RTX 2080」に匹敵する性能を持っており、非常に高いグラフィック処理能力を発揮してくれる。多くのゲームを高画質で楽しめるだけのスペックを持っていると言っていいだろう。
3D Mark Professional
Time Spy:9171
Time Spy Extreme:4738
Port Royal:5798
Fire Strike Ultra:6391
Fire Strike:20881
Fire Strike Extreme:11752
3D Mark Professionalの結果
同社のゲーミングノートパソコンは、「Armoury Crate」というソフトでパフォーマンスを調整したり、ディスプレイの色やキーボードのライトの色などを調整できる。前述のベンチマークは、Armoury Crateで動作モードを「Turbo」にして行った
最後に使い勝手の部分を見ていこう。キーボードはRGBイルミネートキーボードで、ゲーミングノートパソコンらしくキラキラに光らせられる。もちろん、ゲーム以外のときはオフにできるので、仕事と遊びを切り替えるときにもよさそうだ。タイプ音が30dBとタイピング時にうるさくないのもいい。キー配列はオーソドックスな日本語キーで、仕事や勉強にも問題なく使えるだろう。タッチパッドも前モデルより20%広くなっており、ガラス素材ですべりも滑らかだ。
キーピッチは実測で約19mm、キーストロークは1.7mmと標準的。Fnキーを4つ区切りですこしスペースを設けるなど、デスクトップ用キーボードを意識した面も見られる。同社のゲーミングノートパソコンではおなじみの、音量調整、マイクのオフ、「Armoury Crate」呼び出しボタンという4つのホットキーも備える
サウンド面ではDolby Atmos認証済みの6スピーカー(2ツイーター、4ウーハー)を搭載しており、ノートパソコンとしては、低音の効いた音を鳴らしてくれる。オーディオ出力端子はハイレゾ再生に対応しているので、対応ヘッドホンなどを利用すれば、ハイレゾの音源も楽しめる。
両サイドにスピーカーが配置されている
CPUを使って実行する「双方向AIノイズキャンセリング」も搭載。自分のマイク入力からも相手の入力からもノイズを除去するというもので、ボイスチャットなど特定のアプリをフィルタリングしてゲームサウンドはそのままにしておくという使い方ができる。CPUで実行するので、GPUのパワーを使わないのもポイント。
テレワークや在宅学習で活躍するWebカメラは92万画素。同社のゲーミングノートパソコンはWebカメラを搭載しないモデルもあるが、本モデルにはしっかりと搭載されている。
外部インターフェイスには、Thunderbolt 4、USB 3.2 Type-C(Gen2)、USB 3.2 Type-A×2、HDMI出力、LANポート、microSDメモリーカードスロットを搭載。Thunderbolt 4はDisplayPort1.4、Power Delivery 3.0と映像出力や電源など多機能で、幅広い使い方ができる。
Thunderbolt 4ポートやUSB 3.2 Type-C(Gen2)、HDMI出力、有線LANポートなど外部インターフェイスは充実している。別途アダプターを用意すれば最大100WのPower Delivery(PD)充電も可能
ディスプレイは180°開く仕様。画面の共有などがしやすい
ROG ZEPHYRUS M16は、デスクトップパソコンの代わりとしても使えそうな大画面かつ高性能なゲーミングノートパソコンだ。超狭額縁ベゼルによって、高い没入感とコンパクトなボディを実現しており、“大きくてイカツイ”ほかのゲーミングノートパソコンとは一線を画す、洗練されたモデルに仕上がっている。おうち時間の増加により、パソコンでゲームを楽しむユーザー層が広がり、ゲーミング色の少ないモデルを探している人も増えているだろう。そんな人たちにとって、ROG ZEPHYRUS M16はピッタリのモデルではないだろうか。
今回試した最上位機種の市場想定価格は269,800円(税込)と、さすがに高価だが、GeForce RTX 3060 Laptop GPUやGeForce RTX 3050 Ti Laptop GPU(4GB)を搭載したモデルなら、もう少し安く購入できるので、予算重視の人はこちらもチェックしてもらいたい。
ガジェットとインターネットが好きでこの世界に入り、はやいもので20年。特技は言い間違いで、歯ブラシをお風呂、運動会を学芸会、スプーンを箸と言ってしまいます。お風呂とサウナが好きです!