5Gスマートフォンの種類が増え、価格性能比にすぐれたエントリーモデルやミドルレンジモデルも豊富に選べるようになってきた。ここでは、ソニー「Xperia 10 III」、シャープ「AQUOS sense5G」、オッポ「Reno5 A 5G」(以下、「Reno5 A」)、シャオミ「Mi 11 Lite 5G」(以下、「Mi 11 Lite」)の4機種の比較を通じて各機種の得手不得手に迫ってきたい。
※本記事中の価格は税込で統一している。
最初に各機種を取り扱う通信キャリアなどの販路と、一括払い時における端末の価格を簡単に解説しよう。
2021年のXperiaシリーズとしては中価格帯となる製品。NTTドコモ(キャリア直販価格51,480円 )、au(53,985円)、ワイモバイル(54,000円)で発売されている。Xperiaシリーズの特徴的なデザインを取り入れたコンパクトなボディが特徴。
シャープの得意とする低価格帯の人気モデル「AQUOS sense4」をベースにした5G対応機。NTTドコモ(39,600円)、au(39,890円)、ソフトバンク(43,200円)、UQ mobile(28,800円)の通信キャリア・サブブランドに加えて、家電量販店やMVNOで取り扱われるSIMフリーの一般流通モデルも存在する。
機能性と価格のバランスにすぐれたオッポの主力シリーズ「Reno A」の最新モデル。ワイモバイル(39,600円)、楽天モバイル(42,980円)のサブブランド・通信キャリアと、SIMフリーの一般流通モデルが存在する。
価格性能比にすぐれた製品が特徴の中国メーカー、シャオミの国内における最新モデル。通信キャリアでの取り扱いはなく、mineoやIIJmioなど一部のMVNOや、ECサイト、家電量販店などでSIMフリーの一般流通モデルが購入できる。メーカー予想小売価格は43,800円(税込)だが、価格.comの最安価格では4万円を下回っている(2021年8月4日時点の価格)
以下の表に、各機種のサイズをまとめた。注目の項目にはマスに色を塗っている。
この4機種はサイズがそれぞれ特徴的だ。端的に各機種の特徴を表現すると「Xperia 10 III」は横幅を抑えたコンパクトモデル、「AQUOS sense5G」は厚めでボリューム感はあるものの大きくも小さくもないほどよい大きさ、「Reno5 A」は比較的大きめなサイズ、「Mi 11 Lite」は薄型軽量ボディ、となる。好みのサイズ感の製品が選べるのはうれしいところだ。
次にディスプレイを比較しよう。
いずれも6インチ前後の画面サイズだ。ただし、「Xperia 10 III」は、縦横比が21:9の超縦長なので、画面の面積はこの4機種ではいちばん小さい。「Reno5 A」と「Mi 11 Lite」は約6.5インチの大きな画面だ。各機種ともに平面ディスプレイだが、「Xperia 10 III」は、視界をさえぎるノッチやパンチホールがないのが魅力と言える。
ディスプレイが有機ELと液晶がそれぞれ2機種と分かれる。一般に有機ELのほうが画質がよいとされるが、「AQUOS sense5G」や「Reno5 A」は、液晶のネックである黒浮きが抑えられており発色も良好、この4機の画質に優劣をつけるのは難しい。ただし「Mi 11 Lite」は上位モデルで普及が進んでいるHDR10+および10bitの諧調表現に対応している点はアドバンテージと言えるだろう。
この4機種はディスプレイの画質よりも、リフレッシュレートとタッチサンプリングレートの違いが大きい。リフレッシュレートとは、画面を1秒間に何回書き換えるかの指標で、毎秒60回となる60Hzが標準。タッチサンプリングレートは、タッチ操作の判定を毎秒何回行っているかの指標で、こちらも毎秒60回の60Hzが標準の値だ。これらの数値を高めたものは、操作のダイレクト感や画面スクロール時の残像感の少なさといった体感速度に大きく影響しており、ハイエンドモデルを中心に広く搭載されている。また、アクション性の強いゲームにおける操作性にも有利だ。ただし、高リフレッシュレートにはアプリ側の対応が必要となる。(2021年8月20日訂正:「Reno5 A」の高リフレッシュレートはゲームなどで動作しないとの記述していましたが、動作します。以上、訂正しお詫びいたします)
機能や外部インターフェイスを見てみよう。
ヘッドホン端子は「Xperia 10 III」「AQUOS sense5G」「Reno5 A」が搭載するが、「Mi 11 Lite」は非搭載(USB Type-C→ヘッドホン端子の変換アダプターは同梱)。ステレオスピーカーを搭載するのは「Mi 11 Lite」のみで、そのほか3機種はモノラルスピーカーとなる。
防水・防塵は「Mi 11 Lite」だけが非対応。「Xperia 10 III」「AQUOS sense5G」「Reno5 A」の防水性能は多少の違いはあるがいずれもIPX8等級対応なので、水没に耐えることができる。「AQUOS sense5G」は、米国国防総省の調達基準「MIL-STD-810G」の19項目をクリアしており、耐衝撃性能も備えている。また、アルコールを含んだシートでボディを拭けたり、浴室で使うこともできるなど、ボディの耐久性という点では頭ひとつ抜けた性能を備えていると言えるだろう。
4機種ともに、FeliCaポートを搭載しており、おサイフケータイのサービスを利用できる。なお、いずれも交通系ICカードの併用が可能で「モバイルSuica」と「モバイルPASMO」を切り替えて使うことができる。
Google検索の音声入力をボタンを押すだけで呼び出すことのできる「Googleアシスタントボタン」は「Xperia 10 II」と「AQUOS sense5G」の2機種が備えている。
4機種のカメラ性能を見てみよう。
「Xperia 10 III」と「AQUOS sense5G」は、望遠カメラを含むトリプルカメラだが、「Reno5 A」と「Mi 11 Lite」は、望遠カメラの代わりにマクロカメラを備える。なお「Reno5 A」に備わるモノクロカメラは、構図や画像解析のためのもので映像の記録には使われない。
「Reno5 A」と「Mi 11 Lite」は望遠カメラがない代わりに、標準カメラの画素数を高めて、デジタルズームの画質劣化を防いでいる。実際、これら2機種は2倍程度までのデジタルズームなら画質の劣化は目立たない。
以下に、各機種の標準カメラで撮影した夜景の作例を掲載する。いずれも初期設定のままのオートモードで撮影を行っている。
あまり暗くない夜景だが全般に光量が少ない。本機のカメラは明暗差に弱く、構図右のハイライト部分の明るさに引きずられてしまったようだ
AIシーン認識によりナイトモードでの撮影となった。肉眼の印象よりもかなり明るく鮮やかに強調されているため、不自然に感じる人もいるかもしれない
カメラの性能では定評のあるオッポだが、本機はその期待を裏切らない画質だ。ノイズが少なく暗部からハイライトまでなかなか自然な仕上がりだ
「Reno5 A」とよく似ているが、ハイライト部分の処理はこちらのほうがクッキリしている。手ブレやノイズも少ない
4機のカメラを比較したところ、「Reno5 A」と「Mi 11 Lite」は、手ブレや被写体ブレに強くノイズも少ない。検証に際して数百ショットの撮影を行ったが、極端に暗い構図でない限り、あからさまな失敗写真は少なく、ミドルレンジ機としてはキレイな写真が撮れるほうだ。いっぽう、「Xperia 10 III」は明暗差に弱く、「AQUOS sense5G」は明るさを極端に強調する傾向があるなどクセがある。また、「AQUOS sense5G」はシャッターを押してから撮影が始まるまでの時間(シャッタータイムラグ)が長いので、動く被写体の撮影があまり得意でなく、手ブレや被写体ブレも起こりやすい。それに対して、「Reno5 A」と「Mi 11 Lite」のカメラ機能には安定感があった。
処理性能とグラフィック性能といった基本性能を比較しよう。
2021年9月21日訂正:「Reno5 A」のSoCを「Snapdragon 690」と記載していましたが、正しくは「Snapdragon 765G」です。以上訂正し、お詫びいたします
性能の要となるSoCを性能の高い順に並べると、「Mi 11 Lite」>「Reno5 A」>「Xperia 10 III」=「AQUOS sense5G」という順番になる。メモリーとストレージの容量は「AQUOS sense5G」だけが4GB/64GBと少なめだ。
「GeekBench」の結果は、CPUの性能を計測する「シングルコア」と「マルチコア」の結果は4機種の間にそれほど大きな差ない。実際の体感速度でもWebページの閲覧やホーム画面の操作、アプリの起動など通常の操作ではあまり差を感じなかった。そのいっぽう、グラフィック性能(GPU)の性能を計測する「Vulkan」と「OpenCL」のスコアは「Mi 11 Lite」が圧倒的に高い。3Dを使ったゲームを快適に動作させたいなら「Mi 11 Lite」が最適だろう。
ただし、「Mi 11 Lite」のグラフィック性能には、不具合があり、アプリによってグラフィック性能が十分に発揮されない現象が発生している。ネット上には「Mi 11 lite」でうまく動作しないゲームアプリの情報が共有されているので、遊びたいアプリの対応状況を確認しておくとよいだろう。
バッテリーまわりの性能を比較しよう。
※「Mi 11 Lite」は充電時間などの数値を公開してないため空欄としている。
バッテリー容量はいずれも4,000mAh台でかなり大容量だ。連続通話時間と連続待ち受け時間を見ると、「Xperia 10 III」と「AQUOS sense5G」は比較的電池持ちがよく、「Reno5 A」は比較的電池持ちがよくない。電池持ちのスペックを公表していない「Mi 11 Lite」は、筆者の実感として「Reno5 A」よりも電池持ちはよくないように感じた。1日3時間程度使った場合で2日+αほどでバッテリーがなくなる。
価格.comのユーザーレビュー「バッテリー」を見ると「Xperia 10 III」は4.38点、「AQUOS sense5G」は4.05点、「Reno5 A」3.86点、「Mi 11 Lite」は3.44点となっている(2021年8月〇〇日時点)。ユーザーの実感でも「Xperia 10 III」と「AQUOS sense5G」の2機の電池持ちには満足している人が多いようだが、「Reno5 A」と「Mi 11 Lite」の2機種は電池持ちに不満を持っている人が少なくないようである。
今回取り上げた4機種は手ごろな価格ながら、5GやFeliCaに対応するなど機能性も十分で、製品の立ち位置としては似ている。共通の特徴は、コストを抑えるため、重視する部分と重視しない部分にメリハリが付けられていること。各モデルの個性がはっきりしているので、何を重視するかで自分に合ったモデルが見つかるはずだ。自分が何を重視するかをはっきりさせることが、5万円前後で買える5G対応スマートフォンを選ぶポイントになると言えるだろう。
FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。