サムスンの5G対応スマートフォン「Galaxy A53 5G」をレビュー。ミドルレンジ機としては6万円前後とやや高めだが、ライバルと比較した本機の優位性はどこにあるのか迫った。
価格がやや高めのミドルレンジ機「Galaxy A53 5G」。ライバルと比べた強みはどこか
なかなか解消されない半導体の供給不足や、急激な円安などが理由で、今年もスマートフォンは値上がり傾向だ。以前は主流だったハイエンドモデルの多くは、10万円以上で、そう簡単に買えるものでもなくなっている。結果として、3〜6万円台のミドルレンジ価格帯に人気が移行している。
「Galaxy A53 5G」は、そうした激戦区に投入された最新モデルで、NTTドコモ版「SC-53C」と、auおよびUQ mobile版「SCG15」が5月下旬から発売されている。価格は、「SC-53C」が59,400円、「SCG15」は59,835円(いずれも直販サイトの税込価格)となっており、ミドルレンジとしてはやや高級モデルという位置づけだ。
ボディサイズは約74.8(幅)×159.6(高さ)×8.1(厚さ)mmで、重量は約189g。ボディはIPX5/8等級の防水仕様とIP6X等級の防塵仕様。おサイフケータイで利用するFeliCaポートを備える。ディスプレイは2,400×1,080のフルHD+表示に対応した約6.5インチの有機EL「Super AMOLED」だ。このディスプレイは、120Hzの倍速駆動に対応しているのが特徴で、なめらかな操作性が期待できる。なお、有機ELではあるがHDRには非対応となっている。
サウンド性能を見ると、ヘッドホン端子は非搭載だが、ステレオスピーカーを備えており、本体だけで迫力のあるサウンドを再生できる。「Dolby Atoms」にも対応している。なお、製品パッケージに、USB Type-Cからヘッドホン端子への変換アダプターが同梱されていないので、有線ヘッドホン・イヤホンを使う場合は、別途用意する必要がある。
検証機はNTTドコモ版「SC-53C」。カラーはオーサムブルーで、背面のマットな感触が特徴
ボディ下面に、SIMカード兼メモリーカードのトレーと、USB Type-Cポートを配置する
ボディ正面には接続ポートやボタンは配置されない
ボディの右側面の、電源とボリュームの各ボタンを配置する
基本性能を見てみよう。搭載されるSoCは、サムスン製の「Exynos(エクシノス) 1280」で、6GBのメモリーと、128GBのストレージ、1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを組み合わせる。OSは最新のAndroid 12だが、サムスンのグローバルの告知では、3世代のOSバージョンアップと、発売から4年間のセキュリティアップデート配布を予告している。実際の配布はNTTドコモや、au・UQ mobileが判断するものの、最新のソフトウェア環境を4年間も維持できる可能性がある。なお、本機は仮想メモリー機能「RAM Plus」を備えており、ユーザーの利用状況を学習して、最大6GBのストレージをメモリーとして利用できる。
ベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(バージョン9.X)」の結果は、総合スコアが360,442(内訳、CPU:94,345、GPU:110,030、MEM:69,894、UX:85,173)となった。このスコアは、本機と競合することが予想される、ソニー「Xperia 10 IV」、シャープ「AQUOS sense6s」「AQUOS wish2」、シャオミ「Redmi Note 11 Pro 5G」といった「Snapdragon 695 5G」搭載機と比較すると、総合スコアでは劣るものの、ゲームなどで重視されるグラフィック性能を示す「GPU」は、本機のほうが高い。ゲームでは本機のほうが多少有利と言えそうだ。
AnTuTuベンチマークの結果。左が本機、右が「Snapdragon 695 5G」を搭載する「Redmi Note 11 Pro 5G」のもの。トータルスコアは本機のほうが低いが、グラフィック性能を示す「GPU」の値は本機のほうが高い
体感速度は、競合機種との間に顕著な違いは感じられない。ディスプレイを120Hz駆動に切り替えると、Webブラウザーや地図アプリなどのスクロールがとてもなめらかだ。いっぽう、ゲームの場合、120Hz駆動を利用するにはアプリ側の対応が必要になる。また、本機はハイエンドモデルほどの描画性能を備えていないため、120Hz駆動でスペック要求の高いゲームアプリを動作させると、フレームレートの低下を感じることがあった。
仮想メモリーの「RAM Plus」だが、本機は実メモリーが6GBもあるため、明らかな違いは実感しにくかった。ただし、本機が予定している3回のOSバージョンアップに備えたものとして考えれば心強い。
通信性能だが、NTTドコモ版、KDDI・UQ mobile版ともに、nanoSIMカードのみの対応で、eSIMは利用できない。5Gの通信機能はSub-6周波数帯のみの対応だ。4Gについては、他社のプラチナバンドには対応していない。本機はSIMロックがかかっておらず好きなSIMカードを利用できるが、対応エリアや通信速度を考えると、他社の回線を使う利点は少ない。
以前の「Galaxy A」シリーズは、上位の「Galaxy S」シリーズほどのカメラ性能は期待できなかった。しかし、昨年の「Galaxy A52」からその傾向に変化が見られ、誰でもキレイな撮影が行えるようになっている。本機のカメラ機能にも期待したいところだ。
搭載されるカメラは、約1,200万画素の超広角カメラ、約6,400万画素の広角カメラ(標準カメラ)、約500万画素のマクロカメラ、約500万画素の深度センサーという組み合わせのクアッドカメラだ。特に、広角カメラは光学式手ブレ補正機構を備えるほか、センサーのサイズも1/1.7インチと大きい。フロントカメラも約3,200万画素というかなりの高画素だ。本機は、サムスンのスマートフォンの特徴であるAIを使ったシーン認識と画質補正を備えている。
メインカメラは4基のカメラとLEDフラッシュが並ぶ。上位モデル「Galaxy S22」シリーズと共通するカメラのレイアウトで、デザイン上の大きな特徴となっている
以下に、本機のメインカメラで撮影した静止画の作例を掲載する。初期設定のまま、カメラ任せのオートモードを利用している。
厚めの雲が空を覆う日中だったが、輝度を高めつつ、コントラストも強調しており、肉眼の印象よりもかなり鮮やかな仕上がりになった。見慣れた都市の風景でも、ちょっと異なる雰囲気になる
撮影写真(4,624×3,468、5.4MB)
上と同じ構図を超広角カメラに切り替えて撮影した。こちらも実際の印象よりも鮮やかな仕上がりだ。ただし、拡大してみると解像感は乏しく、構図の周辺はノイズも強めだ
撮影写真(4,000×3,000、4.3MB)
広角カメラで明るめの夜景を撮影。構図全体的にノイズが少なく解像感も高い。照明の鮮やかさや、濃紺として表現される遠景の夜空がきれいだ
撮影写真(4,624×3,468、5.9MB)
特段明るくない店内照明だが、肉眼の印象よりも断然明るくキラキラとした仕上がりになった。食べ物をより美味しそうに演出するのは得意のようだ
撮影写真(4,624×3,468、5.9MB)
マクロカメラで花の中心部分を接写。画素数が高くないこともあり、解像感はあまり高くない
撮影写真(2,576×1,932、2.2MB)
本機のカメラ、特に標準カメラとなる広角カメラは、鮮やかで見栄えのする写真が簡単に撮れる。曇り空の町の様子や、食べ物、夜景などどれも予想を上回る仕上がりで、SNSで注目されやすい画質のカメラと言えるだろう。光学式手ブレ補正機構を備えるため扱いやすく、画素数も高いので構図の隅々まで解像感が維持されている。今までハイエンドスマートフォンを使っていた人でも納得できるカメラ機能ではないだろうか。
本機の内蔵バッテリーは容量5,000mAhで、前モデル「Galaxy A52」と容量は変わっていない。しかし、スペック表を見ると、連続待受時間が約280時間から400時間に、連続通話時間(AMR-WB)は約1,760分から約2,110分にそれぞれ大幅に伸びている。実際の電池持ちもなかなか良好で、検証はきっかり7日間行ったが、充電は2回だけで済んだ。1日に3時間程度(ゲームを含む)利用しても72時間以上のバッテリー持ちとなっており、2泊3日の旅行でも、充電器なしで乗り切れそうな手ごたえがあった。
充電性能は、USB PD PPS対応のNTTドコモ製ACアダプター「ACアダプタ 08」利用時で約80分という短時間でフル充電が可能だ。ただし、前モデルで対応していたワイヤレス充電のQiには対応していない点には注意したい。
以上、「Galaxy A53 5G」のレビューをお届けした。本機は競合製品よりも価格が少し高いが、ディスプレイの120Hz駆動対応、ステレオスピーカー、急速充電対応など、日常の使い勝手を高める機能に注力しており、価格に見合った機能や性能を備えている。これに加えて、筆者が魅力を感じたのは鮮やかな写真が撮れる標準カメラ。加えて、3回のバージョンアップおよび、発売後4年間のセキュリティアップデートの配布予告というソフトウェアのサポートだ。これらの充実したカメラ機能やサポートにより、ずっとハイエンドモデルを使ってきたユーザーの買い換え対象機種としても、満足できる1台になるだろう。
FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。