ロジクールは、同社のフラッグシップキーボード「MX」シリーズとして初めてメカニカルキースイッチを採用したテンキー付き「MX MECHANICAL」、テンキーレス「MX MECHANICAL MINI」を2022年6月30日に発売した。
両製品は、それぞれ3種類のキースイッチを用意し、高さが低めの「ロープロファイルキー」を採用。一般的なメカニカルキーボードでは高すぎるが、従来の「MXシリーズ」よりはストロークの長いキーボードが欲しいというユーザーに訴求するモデルだ。今回は両製品の製品版を借用したので実機レビューをお届けしよう。
ロジクール「MX MECHANICAL」「MX MECHANICAL MINI」をレビュー。価格.comでの最安価格は「MX MECHANICAL」が18,900円、「MX MECHANICAL MINI」が17,000円(税込。2022年7月7日時点)
「MX MECHANICAL」「MX MECHANICAL MINI」にはそれぞれキースイッチの異なるモデルを用意し、全部で6製品がラインアップされている。サイズ/重量は、テンキー付きの「MX MECHANICAL」が433.85(幅)×131.55(奥行)×26.10(高さ)mm/828g、「MX MECHANICAL MINI」が312.60(幅)×131.55(奥行)×26.10(高さ)mm /612gだ。
両モデルともにEnterキーまでの配列はほぼ同様。Enterキーの右側にdel、home、end、pg up、pg dnキーなどが並ぶ「MX MECHANICAL MINI」の配列は好みが分かれるポイントだろう
日本向けモデルについては、これまでのロジクール製品と同様に日本語配列のみが採用されており、「MX MECHANICAL」は114キー、「MX MECHANICAL MINI」は88キーで構成されている。キーピッチは19mm、キーストロークは3.2mm、押下圧は55gで共通。キースイッチが変わっても押下圧は変わらない。
「MX MECHANICAL」の天面(上)と底面(下)。接続先を切り替える「Easy-Switchキー」が右側に独立して配置
「MX MECHANICAL」の背面(上)と前面(下)。背面に電源スイッチと充電用のUSB Type-Cポートが用意
「MX MECHANICAL」の右側面(上)と左側面(下)。左右側面にはボタン、ポート類はない
「MX MECHANICAL MINI」の天面(上)と底面(下)。接続先を切り替える「Easy-Switchキー」は左側のF1〜F3キーに配置。ファンクションキーと押し間違えがちだ
「MX MECHANICAL MINI」の背面(上)と前面(下)。「MX MECHANICAL」よりコンパクトなぶん携帯性が高い
「MX MECHANICAL MINI」の右側面(上)と左側面(下)。トップケースはアルミニウム。それ以外のボディには再生プラスチックが用いられている
両製品とも、底面奥にスタンドが用意されており、引き出すことでキーボード面の角度を変更可能。角度調節機構が設けられたのも「MX」シリーズで初めてのことだ
無線方式はLogi Bolt USBレシーバー、Bluetooth Low Energy(BLE)で、操作距離は10m。専用アプリはWindowsとmacOS用に「Logicool Options+」を用意。各種設定にはこのユーティリティーが必要だが、Logi Bolt USBレシーバーでWindows10以降、macOS 10.15以降、Chrome OS、Linuxに、BLEでWindows 10以降、macOS 10.15以降、Android 8.0以降、Chrome OSに正式対応している。
両機種とも1500mAhのバッテリーを内蔵しており、フル充電で最大15日間、バックライトをオフにして最大10か月利用可能と謳われている(週5日、1日8時間使用した場合)。
「MX MECHANICAL MINI」のパッケージには、本体、Logi Bolt USBレシーバー、USB Type-C to A充電ケーブル、説明書類(保証規定、保証書)が同梱
「MX MECHANICAL MINI」も同梱品は変わらない
Logi Bolt USBレシーバーのサイズは14.4×18.4×6.6mm、重量は2g
「MX MECHANICAL」「MX MECHANICAL MINI」には、「静音タクタイル(茶軸)」「リニア(赤軸)」「クリッキー(青軸)」の3種類のキースイッチのモデルがラインアップされている。
押した際に軽い手応えがあり、静かな「静音タクタイル(茶軸)」
滑らかで軽い「リニア(赤軸)」
明確なクリック感と打鍵音がある「クリッキー(青軸)」
押下圧はどのキーも55gに設定されているが、作動点の押圧力(単位:N)で比較してみると、「静音タクタイル(茶軸)」は0.45N、「リニア(赤軸)」は0.40N、「クリッキー(青軸)」は0.45Nと明確な差があった(5回計測した平均値で比較)。
筆者は「クリッキー(青軸)」が好みだが、キースイッチばかりは好みが大きく分かれる。こだわりのある方は実機を触ってから購入してほしい。
キースイッチ別の作動点の押圧力(単位:N)
「静音タクタイル(茶軸)」の作動点の押圧力は平均0.45N
「リニア(赤軸)」の作動点の押圧力は平均0.40N
「クリッキー(青軸)」の作動点の押圧力は平均0.45N
打鍵音については参考動画を用意したが、底打ちしてしまうと大きな差はなかった。それどころか簡易騒音計で計測した限りでは、「静音タクタイル(茶軸)」は61.5dBA、「リニア(赤軸)」は59.3dBA、「クリッキー(青軸)」は59.6dBAと、「静音タクタイル(茶軸)」が最も音が大きいという結果になってしまった。
できるだけ同じ力で打鍵したのだが、力加減が異なっていた可能性が高い。というわけで下記の動画では、打鍵音の大きさではなく、音質のみを参考にしてほしい。
PCゲームを遊んでいると、キーボードの打鍵音が気になるのだが、静音性が高い「MX MECHANICAL」「MX MECHANICAL MINI」なら、ゲーミング用のメカニカルキーボードと比べて、そこまでうるさくないはずだ。ただ、ゲーム用としての使い勝手はどうだろうか。
その点を検証するべく、Kouyou氏のキー同時押し確認ソフトウェア「KeyboardCheck」でチェックしてみたところ、6キーの同時押しができることは確認できた。もちろん、本格的なゲーミングキーボードよりレイテンシーは劣る可能性が高いし、「Nキーロールオーバー」「10キーロールオーバー」には対応していない。
しかし、eスポーツ大会に出場するような方ならいざ知らず、毎夜「フォートナイト」を数回プレイするぐらいの筆者のようなライトユーザーであれば、「MX MECHANICAL」「MX MECHANICAL MINI」で不満を感じることはないと思う。
「MX MECHANICAL」「MX MECHANICAL MINI」で6キーの同時押しをできることは確認した
ちなみに、これまでゲームにも使っていた「MX Keys Mini」では、「MNBVC」と打っていくと「X」が、「ZXCV」と打っていくと「B」が反応しなかった
筆者がここ数年プレイしてきたPCゲームを振り返ってみても、ゲームパッド、もしくはキーボード&マウスでプレイするタイトルがほとんど。両手でキーボードを使ってプレイするPCゲームは記憶にない。筆者のようなライトなゲーマーなら「MX MECHANICAL」「MX MECHANICAL MINI」は十分ゲーム用に活用できるというのが率直な感想だ
「MX MECHANICAL」「MX MECHANICAL MINI」から専用アプリとして「Logicool Options+」が採用されているが、キーボード製品で「Logicool Flow」への対応が打ち切られているようだ。
「Logicool Flow」は対応製品で複数のWindows PC、Macをひとつのマウス、キーボードでシームレスに共用できる機能。画面の端にマウスカーソルを持っていけば、自動的にほかのパソコンの画面にマウスカーソルが現れ、キーボードも連動して切り替わる。
「Logicool Options+」では、マウス製品は従来どおり「Logicool Flow」を利用できるが、キーボード製品は従来モデルも含めて連動しなくなっている。複数パソコンを使い分けるユーザーには便利な機能だったので、復活することを強く期待したい。
「Logicool Flow」は複数のWindows PC、Macをひとつのマウス、キーボードでシームレスに共有するための機能。マウス製品では「Logicool Options+」でも利用できる
しかし、キーボード製品では「Logicool Flow」がなくなっており、マウスをほかのパソコンの画面に移動させても、キーボードはそれに連動しないため、「Easy-Switchキー」を押して切り替える必要がある
「MX MECHANICAL」「MX MECHANICAL MINI」は3種類のキースイッチで好みの打鍵感を選べるうえに、「ロープロファイルキー」で指の負荷を軽減。筆者のようなライトゲーマーならゲーム用途に不足はないし、「Logicool Flow」が使えないとは言え、「Easy-Switchキー」で複数のパソコンで共用できる。
ノートPCと同様の使い心地を求めるなら「MX Keys」「MX Keys Mini」をオススメするが、メカニカルキーボードならではのフィーリングを好む方には、待ちに待ったロジクールの新キーボードシリーズと言えよう。
レビューした製品を高確率で買ってしまう物欲系ITライター。守備範囲はPC、スマホ、VRがメイン。ゲーム、デジタルトイも大好き。最近サバゲにはまっています。愛車はスイフトスポーツで、断然マニュアル派です。