レビュー

ライバルを圧倒する電池持ちの小型スマホ「Xperia 10 IV」

NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルの各社から、2022年7月8日より発売されている、ミドルレンジスマホ「Xperia 10 IV(エクスペリア・テン・マーク・フォー)」。注目度の高い製品だが、強力なライバルも多い。au版「SOG07」を使い、その特徴に迫ろう。

価格.comのスマートフォンカテゴリーの人気・注目ランキングで1位(2022年7月14日時点)を獲得しているが、ライバルと比べて割高との指摘のある「Xpeeria 10 IV」。その特徴に迫ろう

価格.comのスマートフォンカテゴリーの人気・注目ランキングで1位(2022年7月14日時点)を獲得しているが、ライバルと比べて割高との指摘のある「Xpeeria 10 IV」。その特徴に迫ろう

小型化をさらに追求。ディスプレイも改善

スマートフォンの値上がりが続いており、ハイエンドモデルは10万円台後半が主流になっている。そのため、近ごろは3〜6万円程度のミドルレンジモデルや、より安価なエントリーモデルに注目が集まっている。「Xperia 10 IV」もそうしたミドルレンジモデルのひとつだ。Xperiaのラインアップでは、「Xperia 1」や「Xperia 5」シリーズの下、「Xperia Ace」シリーズの上にあたる主力モデルと言える。

「Xperia 10 IV」のボディサイズは、約67(幅)×153(高さ)×8.3(厚さ)mm、重量は約161gだ。このサイズは、前モデル「Xperia 10 III」よりも横幅は1mm小さくなり、重量は約8g軽くなった。なお、IPX5/8等級の防水仕様とIP6X等級の防塵仕様に対応しており、FeliCaポートも搭載している。ディスプレイの保護ガラスには、金属などによるひっかき傷や、落下の衝撃にも強い「Corning Gorilla Glass Victus」が使われる。MIL規格に対応したタフネスボディではないが、耐久性は魅力だ。

デザインは大きく変わらないが、横幅は約1mm、重量は約8g軽くなった

デザインは大きく変わらないが、横幅は約1mm、重量は約8g軽くなった

搭載される有機ELディスプレイ「TRILUMINOUS Display」は、サイズは約6.0インチで2560×1080のフルHD+表示に対応する。前モデル同様に視界をじゃまするノッチのない平面ディスプレイのまま、最大輝度が1.5倍向上した。なお、HDRや高速駆動およびタッチサンプリングレートには対応していない。サウンド機能では、ヘッドホン端子を備え、バーチャルサラウンド技術の「360 Reality Audio Upmix」に対応している。スピーカーはモノラルだ。

ノッチのない平面ディスプレイで、サイズや画面解像度などは「Xperia 10 IV」から変わっていない

ノッチのない平面ディスプレイで、サイズや画面解像度などは「Xperia 10 IV」から変わっていない

外見は前モデル「Xperia 10 III」と大きく変わらないが、持ち比べると確かに小さく軽くなっていることがわかる。今回の検証機はブラックなので気にならなかったが、側面の電源ボタンは、カラーバリエーション共通で黒色。明るいボディカラーに黒いボタンは少々ちぐはぐな印象だ。ディスプレイのサイズや形状は前モデルから変わっていないが、暗部で発生していたブロックノイズや色かぶりが解消されている。そのいっぽうで、リフレッシュレートとタッチサンプリングレートが60Hzのままなのは残念だ。高速ディスプレイは体感速度の向上に効果があるし、ゲーム用途でも役に立つ。同価格帯の競合製品はほとんどが搭載しているため、見劣りが否めない。

カラーバリエーションに関わらず、電源ボタンは黒色の樹脂製となっている。明るいカラーのモデルではかなり目立つ

カラーバリエーションに関わらず、電源ボタンは黒色の樹脂製となっている。明るいカラーのモデルではかなり目立つ

搭載されるSoCは、「Snapdragon 695 5G」。メモリーは6GB、ストレージは128GB、1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを組み合わせる。OSはAndroid 12がプリインストールされる。SoCおよびメモリー、ストレージの容量はオッポ「OPPO Reno7 A」や、シャオミ「Redmi Note 11 Pro 5G」、モトローラ「moto g52j 5G」といった競合モデルと共通する。ただし、それらはAndroid 11のプリインストールにとどまっており、本機のほうがその点は有利だ。

定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(バージョン9.X)」を使用したところ、本機の総合スコアは392106だった(内訳、CPU:120961、GPU:101480、MEM:65549、UX:104116)」)。なお、「Redmi Note 11 Pro 5G」は、386238(内訳、CPU:121316、GPU:99515、MEM:62324、UX:103073)なので、これらと比べると多少スコアは良好。ただし、誤差の範囲内と見てもよいレベルなので、本機を含む上記4モデルは、処理性能とグラフィック性能ともに同レベルと見なすのが現実的だ。

AnTuTuベンチマークの結果。左が本機。右が「Redmi Note 11 Pro 5G」のもの。総合スコアは本機のほうが少し高いが、誤差の範囲と見ても間違いではないだろう

AnTuTuベンチマークの結果。左が本機。右が「Redmi Note 11 Pro 5G」のもの。総合スコアは本機のほうが少し高いが、誤差の範囲と見ても間違いではないだろう

体感速度も、特に引っかかりを感じることはなく、同SoCを備えたものとして十分なものと言える。なお、OSのバージョンアップについては、メーカーであるソニーは方針を明らかにしていないが、Android 10搭載機である「Xperia 10 II」は、Android 12の配布が予定されている。本機もAndroid 14までのバージョンアップは期待してもよさそうだ。

5000mAhのバッテリーを搭載。1週間以上の電池持ちは余裕

本機は、5000mAhのバッテリーを内蔵している。連続待受時間は「Xperia 10 III(SOG03)」が約770時間なのに対して、本機(SOG07)は約830時間に伸びている。この電池持ちはかなりの魅力だ。待受状態が多かったのは確かだが、1週間使っても40%以上の残量があった。ゲームなど比較的負荷のかかるアプリを動作させても、極端に電池持ちが悪化することもない。

ただし、充電にかかる時間は、30WのUSB PD充電器を使用した場合でも150分と比較的長めで、通常の15W出力の充電器では220分がかかる。本機はバッテリーの劣化を防ぐ充電を行うため、充電時間が長めなのだ。この点は少々注意が必要だろう。

ダイナミックレンジが改善されたカメラ。夜景にはまだ課題も

本機のメインカメラは約1200万画素の広角カメラ(標準カメラ)、約800万画素の超広角カメラ、約800万画素の望遠カメラという組み合わせのトリプルカメラだ。望遠カメラを備えている点は本機の特徴と言える。なお、カメラアプリ「カメラ」は一般的なタッチ式シャッターで、上位モデルで使われるカメラアプリ「Photography Pro」は備わっておらず、シャッターボタンも搭載されていない。

メインカメラの35mm換算の焦点距離は、超広角カメラが16mm、広角カメラは27mm、望遠カメラは54mmとなる

メインカメラの35mm換算の焦点距離は、超広角カメラが16mm、広角カメラは27mm、望遠カメラは54mmとなる

以下に本機のメインカメラを使った静止画の作例を掲載しよう。いずれも初期設定のまま、カメラ任せでシャッターを押すだけの撮影を行っている。

広角カメラで撮影

順光の日中の風景。曇り空に引きずられたせいか全般にアンダーだが、周辺部分まで解像感は比較的良好。ノイズも抑えられている。雲の陰影がよく写っているが肉眼の印象に近い。全般にXperiaシリーズに共通する誇張の少ない落ち着いた色調だ

順光の日中の風景。曇り空に引きずられたせいか全般にアンダーだが、周辺部分まで解像感は比較的良好。ノイズも抑えられている。雲の陰影がよく写っているが肉眼の印象に近い。全般にXperiaシリーズに共通する誇張の少ない落ち着いた色調だ
撮影写真(4000×3000、3.43MB)

超広角カメラで撮影

上と同じ構図を超広角カメラで撮影。マゼンタの色かぶりが見られ、広角カメラや望遠カメラと比較するとやや異質な印象。また、超広角カメラに見られがちな構図周辺部分の画質荒れも見られる

上と同じ構図を超広角カメラで撮影。マゼンタの色かぶりが見られ、広角カメラや望遠カメラと比較するとやや異質な印象。また、超広角カメラに見られがちな構図周辺部分の画質荒れも見られる
撮影写真(3264×2448、2.14MB)

望遠カメラで撮影

同じ構図を望遠カメラで撮影した。肉眼の印象に近いXperiaらしいトーンと言える。周辺部分の画質低下は見られるが、これなら許容範囲内という人も少なくないだろう

同じ構図を望遠カメラで撮影した。肉眼の印象に近いXperiaらしいトーンと言える。周辺部分の画質低下は見られるが、これなら許容範囲内という人も少なくないだろう
撮影写真(3264×2448、2.57MB)

広角カメラで撮影

明るめの夜景を撮影。肉眼の印象より暗く、ディテールもはっきりしていない

明るめの夜景を撮影。肉眼の印象より暗く、ディテールもはっきりしていない
撮影写真(4000×3000、4.34MB)

超広角カメラで撮影

こちらは一転してかなり明るい仕上がりとなった。ISOは1545で、シャッタースピードも1/15秒まで伸びている。そのため、被写体ブレも見られ、全体にぼんやりしている

こちらは一転してかなり明るい仕上がりとなった。ISOは1545で、シャッタースピードも1/15秒まで伸びている。そのため、被写体ブレも見られ、全体にぼんやりしている撮影写真(3264×2448、4.36MB)

望遠カメラで撮影

望遠で気になる手ブレだが、シャッター速度が1/25秒と長いためやはりシビアだ。高感度撮影は難易度が高い

望遠で気になる手ブレだが、シャッター速度が1/25秒と長いためやはりシビアだ。高感度撮影は難易度が高い撮影写真(3264×2448、3.38MB)

「Xperia 10 III」のカメラで目立った、ダイナミックレンジの不足による、明暗差の弱さや、偽色が本機では相当改善されている。光量のある日中であれば十分な性能で、「Xperia 10 II」や「Xperia 10 III」と比べると、進化が感じられる。いっぽう、夜景はいずれのカメラもあまり得意ではないようで、光量不足か、極端な増感によってぼんやりとした写りになりがちだ。

また、広角カメラと望遠カメラは、Xperiaシリーズらしい落ち着いたトーンだが、超広角カメラは色かぶりが起りやすく、ほかの2つのカメラとは異なる印象を受ける。

小さいこととバッテリー持ちを優先する人向けのミドルレンジ機

本機と同じSoC「Snapdragon 695 5G」を搭載し、FeliCaポートや防水・防塵に対応する製品はかなり数が多い。オッポ「OPPO Reno7 A」や、シャオミ「Redmi Note 11 Pro 5G」、モトローラ「moto g52j 5G」といった人気モデルの名前があがる。また、シャープ「AQUOS sense6s」も、SoCについては本機と同じだ。これらの製品はいずれも3万円台、高くても4万円台前半なのに対して、本機はドコモ版が64,152円、au版が69,985 円、ソフトバンク版が74,880円、楽天モバイル版が59,800円(いずれも税込)と、かなり割高だ。ただし、ソフトバンクの直営店では「メリハリ無制限」プランの加入などいくつかの条件をクリアすれば、65,040円の割引が受けられる。可能であればこうした割引を積極的に活用したい。

本機の電池持ちは相当のものだ。待受け主体なら1週間以上充電なしで、余裕で乗り切れるだろう。負荷のかかるゲームを長時間行ったとしても、競合製品よりも明らかにバッテリーの消費ペースは遅い。バッテリー持ちを優先するのであれば断然本機が有利だ。逆に、高速駆動ディスプレイを搭載していないためゲームを前提にした場合、あえて選ぶ理由が少ない。HDRにも非対応なので、映像コンテンツを楽しむという場合にも少々弱い。

「Xperia」シリーズは映像やサウンドへのこだわりが強いが、本機はもうひとつの持ち味であるバッテリー持ちに注力している。こうした特徴を理解したうえで選びたい。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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