2022年9月23日に発売された「Apple Watch Ultra」は、海や山、フィールドなど過酷な環境に挑む”冒険者”に向けた新しい「Apple Watch」です。「Apple Watch Ultra」を装着して冒険に出かけたいところですがなかなかそうはいかないので、普段使いで1週間使ってみての感想をレポートします。
「Apple Watch」史上最大かつ明るいディスプレイを搭載する「Apple Watch Ultra」
はじめに「Apple Watch Ultra」の概要を簡単におさらいしておきましょう。
「最も屈強で万能なApple Watch」として、シリーズに新たに加わった「Apple Watch Ultra」。ケースサイズ49mmの大きさとタフさが大きな特徴です。ディスプレイの解像度は410×502で、画面サイズは「Apple Watch」史上最大。輝度は最大2000ニトと明るく、ほかの「Apple Watch」の2倍の明るさです。装着中はディスプレイが真っ黒にならない、常時表示にも対応しています。
49mmの大きなケースとタフさが特徴の「Apple Watch Ultra」
特徴のひとつである“タフさ”も強烈です。IP6X等級の防塵性能と米軍調達基準のミルスペック準拠のテストをクリアしており、普通の人には無縁ですが、砂漠などちりやほこりの舞う過酷なフィールドでも安心して使えるそうです。耐水性能は水深100mで、水深40mまでのレクリエーションダイビングにも対応。今までの「Apple Watch」よりも深いところまで潜れるというわけです。水深や水温がどのくらいかがわかるアプリも用意されています。
また、高精度2周波GPSで高精度に自分の位置を把握できます。これは日常的にランニングするときにも、素早くしかも正確に自分の位置が把握できて便利そうです。この高精度なGPSを生かして、移動した足跡を記録できる「バックトレース」機能を搭載。目印の少ない山などを歩くときなどに役立つ機能です(「Apple Watch Ultra」の機能というより、「watchOS 9」の新機能)。
「コンパス」Appで「ウェイポイント」を作成し、そこまでの方角を示してくれる「バックトレース」。歩き始める前に設定した「ウェイポイント」(赤い点)を目指して歩くと、出発点に戻れる
付属バンドはアウトドア向けの「アルパインループ」、ランニングやワークアウト向けの「トレイルループ」、ウォータースポーツ向けの「オーシャンバンド」の3本が用意されています。
「Apple Watch Ultra」に同梱される冊子。同時に発売される3つのバンドが掲載されていました
そのほか、「Apple Watch Series 8」と同様、皮膚温センサーで過去の排卵を推定できる周期記録や、衝突検出といった今年の「Apple Watch」の新機能もしっかりと盛り込まれています。バッテリー駆動時間は「Apple Watch」史上最長の最大36時間。今後追加される「低電力モード」を使えば最大60時間使えるそうです。過酷なフィールドに長時間挑む冒険者もバッテリーの心配はなさそうですね。
「Apple Watch Series 8」と同様、「緊急SOS」「衝突検出」など安全に関する機能が充実
本体(ケース)サイズは44(幅)×49(高さ)×14.4(厚さ)mm、重量は61.3g。価格.com最安価格は118,800円です。なお、GPSモデルはなく、GPS+Cellularモデルのみがラインアップされています。
「Apple Watch Ultra」の実機を詳しく見ていきましょう。と言いつつ、まずはパッケージのお話。「Apple Watch」のパッケージと言えば細長い箱でしたが、「Apple Watch Ultra」では横長の箱に変わっており、装着する前からちょっと違う雰囲気です。付属品は本体のほか、バンド(購入モデルにより異なる)と充電用のUSB-Cケーブルなど、いつもどおりシンプルですが、説明書がちょっとした冊子になっており特別感があります。また、充電用のUSB-Cケーブルがファブリックで覆われたタイプで絡みにくく、取り回しがしやすかったです。
ステンレススチールモデルなど一部モデルは長方形の箱があったが、「Apple Watch」のパッケージと言えば細長いタイプのものが多い。それに対して、「Apple Watch Ultra」も専用の横長の箱に収められています
ファブリックで覆われた充電用のUSB-Cケーブル。絡みにくくて取り回しがしやすいケーブルです
いよいよ装着です。初めて腕に着けた感想は「大きくてゴツい」。「Apple Watch Series 8」(45mm)と比べるとひとまわり大きくて厚みもあります。また、これまでの「Apple Watch」は画面の周囲がラウンドして丸みがありましたが、「Apple Watch Ultra」はスパッと平らで直線的です。
「Apple Watch Series 8」(45mm)と並べてみると、そんなに大きくは見えませんが、腕に着けると厚みも加わって大きく感じました。かといって着け心地が悪いというわけではありません。重量は61.3gで、人によっては重く感じるかもしれませんが、個人的には腕時計をしっかり着けている感じがして好印象です。
大きくて厚みがあるため、袖の中にすっと収まるというよりは、常に袖の外にあるイメージになります。普段、大きめの腕時計をしている人なら違和感なく使えそうですが、小さめの腕時計をしている人だと慣れるまで時間がかかるかもです
左が「Apple Watch Series 8」(45mm)、右が「Apple Watch Ultra」(49mm)。並べてみると、それほど大きさの違いは感じませんが、腕に着けると大きく感じました
左が「Apple Watch Series 8」(45mm)、右が「Apple Watch Ultra」(49mm)。エッジのデザインが違うのがわかります。「Apple Watch Ultra」は「フラットサファイアクリスタル」という文字通り、平らなサファイアクリスタルを採用しているので、ちょっと印象が違います
仕上げは「ナチュラルチタニウム」。チタンは多くの腕時計に使われている素材で、軽くて強度にすぐれ、錆びにくく、金属アレルギーにもなりくいとされています。デザイン的にはディスプレイを守るためにエッジが少し高くなっているのも印象的です。
背面はクリーム色と意外なカラーです
右側面のデジタルクラウンを衝撃から保護するためのガードが付けられています。左側面には「Apple Watch Ultra」にしかない「アクションボタン」が搭載されています。オレンジ色の大きなボタンは視認性が高く、グローブをしていても押しやすいと思います。
「アクションボタン」はウェイポイントのマーク、バックトレースの開始、ワークアウトの開始などを割り当てられます。長押しするとサイレンを鳴らすことも可能です。
デジタルクラウンとサイドボタンは、衝撃から保護するため、全体が盛り上がっています。デジタルクラウンが回しにくいかと思いましたが、問題なく回転できました
今回は「トレイルループ」を試しましたが、マジックテープにて簡単に長さを調整できて、着け外しもラクでした。3本の中では普段使いしやすいバンドだと思います。なお、現状の45mm版Apple Watchに取り付けることもできます。その逆も可能なので、普段使いにはほかのバンドを着けるのもありでしょう。
「トレイルループ」はマジックテープで固定します。伸縮性もあって簡単に着け外しが可能。カラーはブルー/グレイトレイ、イエロー/ベージュ、ブラック/グレイの3色から選べる(写真はイエロー/ベージュ)。ほかのバンドも3色のカラーバリエーションが用意されている
45mm用のバンドも装着できました
「ウェイファインダー」という「Apple Watch Ultra」でしか使えない文字盤を試してみました。最大8つのコンプリケーション(高度やUV指数、タイマーなどの情報が表示できる)を設定できます。情報が多いように感じますが、大きな画面の「Apple Watch Ultra」なら問題ありません。
この「ウェイファインダー」は、デジタルクラウンを回すと、表示が黒背景+赤文字の「ナイトモード」に切り替わります。夜中でも見やすい(まぶしすぎない)モードです。
「ウェイファインダー」は多くの情報を表示できる文字盤
黒背景+赤文字の「ナイトモード」
画面が大きく、あらゆる情報が見やすいのもいいところ。表示できる情報量自体は45mm版の「Apple Watch Series 8」とほぼ変わっていませんが、文字入力の画面や計算機などは全体的に大きく表示され見やすく、かつタッチ操作しやすかったです。
左が「Apple Watch Series 8」、右が「Apple Watch Ultra」。同じ文字盤を表示させてみましたが、見やすさは変わっていません
左が「Apple Watch Series 8」、右が「Apple Watch Ultra」。「メッセージ」アプリで文字入力をしてみました。写真だとわかりにくいです(遠近法で「Apple Watch Series 8」のほうが大きく見えます……)が、「Apple Watch Ultra」の表示のほうが少しだけ大きいため、見やすくかつタッチしやすかったです
「Apple Watch Ultra」にしか搭載されていない機能もあります。まずは、左側面の「アクションボタン」。オレンジ色の大きなボタンで、グローブを装着した状態でも押しやすそうです。アクションボタンには「ワークアウト」「ストップウォッチ」「ウェイポイント」「バックトレース」「ダイブ」「フラッシュライト」「ショートカット」「なし」を割り当てられます。あらかじめ機能を割り当てて使うので、違う機能を使いたい場合は「設定」から機能を変更しなければなりません。用途に合わせてスムーズに機能が決められるとより便利になるかなと感じました。
「アクションボタン」はオレンジ色の大きなボタン。左はデュアルスピーカーで、かなり大きな音が鳴ります。「Siri」の声も聞き取りやすくなっています
初期設定時にも「アクションボタン」で実行したい操作を選択できます
「サイレン」も独自機能です。86デジベルのサイレンが鳴らせる機能で、最大180メートルまで聞こえる音量だそうです。実際に使うと「ピー、ピー、ピー」と徐々に音量が大きくなりました。自宅で鳴らすと、別の部屋にいた家内が「どうしたの?」と心配してやってきました。離れていても緊急であることが周囲に伝わりそうです。
「サイレン」は防犯ブザー代わりにも使えそう
水深や水温が手元でわかる「水深」Appも面白いです。お風呂で試してみましたが、アプリを起動してお湯に入れると水深と水温が表示されました。マリンスポーツなどを楽しむときに重宝しそうです。
「水深」Appを起動すると、このような画面が表示されます。水中以外では動きませんが……
水の中(お風呂)に入れると水深と水温が表示されます
「Apple Watch Ultra」はそのコンセプトからもわかるように、過酷な環境下での利用を想定した「Apple Watch」です。マリンスポーツや登山、ハイキングなどで役立つ機能がたくさん盛り込まれています。装着すると冒険に行きたくなるテンションにしてくれるスマートウォッチと言えるでしょう。
アウトドアには興味がないから、「Apple Watch Ultra」をスルーするのはもったいないです。視認性が高く大きなディスプレイは普段使いにも便利です。スピーカーとマイクの性能もアップしているので、通話も快適に行えました。ただし、「Apple Watch Series 8」や「Apple Watch SE」よりも大きくて重いので、装着感はしっかり確認してみるといいでしょう。
逆にスマートに「Apple Watch」を使いたいという人は、「Apple Watch Series 8」や「Apple Watch SE」を選びましょう。バンドも純正から他社製のものまで、さまざまなものが揃っているので、オンでもオフでも活躍してくれるはずです。
「Apple Watch Series 8」。女性の月経周期を理解するために役立つと皮膚温センサーが新たに搭載されました
ガジェットとインターネットが好きでこの世界に入り、はやいもので20年。特技は言い間違いで、歯ブラシをお風呂、運動会を学芸会、スプーンを箸と言ってしまいます。お風呂とサウナが好きです!