レビュー

横画面STGやRPGで最強のゲーミングスマホ「ROG Phone 7」レビュー

ASUSのゲーミングスマートフォン「ROG Phone 7 Ultimate」をレビュー。とがった製品ジャンルだが、本機は複雑な操作が求められる横画面のFPSやTPSといったSTG(シューティングゲーム)およびRPGに特化したものだ。ゲーミングスマートフォンとしての特性に加えて、スマートフォンとしての性能にも迫ろう。

充電器やファンなど同梱品が多いため、巨大なパッケージに収められている

充電器やファンなど同梱品が多いため、巨大なパッケージに収められている

サウンドやディスプレイはハイレベル、ゲーミングでは珍しい防水・防塵対応

「ROG Phone 7」は、通常版「ROG Phone 7」と上位版「ROG Phone 7 Ultimate」の2モデルが用意される。販路は従来モデルと同様、SIMフリーとしてメーカー直販や家電量販店、ECサイトや一部のMVNO事業者から販売される。なお、「ROG Phone 7」は「au +1 collection」を通じても販売されているが、auの正規モデルではなく販売の代理を行う形式なので、auスマホのサポートや補償は受けられない。

今回検証で使用するのは「ROG Phone 7 Ultimate」だ。通常版をベースに、外付けの冷却ファン「AeroActive Cooler 7」の同梱や、サブディスプレイ「ROG Vision」を背面に備えるといった点が異なるが、ディスプレイやSoCといった基本となる性能およびデザインは共通している。

240g以上の大型ボディ、ディスプレイも6.78インチと大画面だ

240g以上の大型ボディ、ディスプレイも6.78インチと大画面だ

検証機は「ROG Phone 7 Ultimate」。背面にサブディスプレイや冷却窓「AeroActive Portal」を備えた上位モデルだ

検証機は「ROG Phone 7 Ultimate」。背面にサブディスプレイや冷却窓「AeroActive Portal」を備えた上位モデルだ

「ROG Phone 7 Ultimate」は、冷却ファン「AeroActive Cooler 7」と持ち運び用のポーチを同梱している

「ROG Phone 7 Ultimate」は、冷却ファン「AeroActive Cooler 7」と持ち運び用のポーチを同梱している

ボディサイズは約77(幅)×173(厚さ)×10.3(厚さ)mm、重量に関しては「ROG Phone 7 Ultimate」は約246gだが、「ROG Phone 7」は約239gと異なっている。「ROG Phone」シリーズの特徴である防水・防塵対応は継承されており、飛沫防水のIP54に対応している。NFCポートは搭載されるが、FeliCaポートは非搭載な点も継続している。なお、ROG Phoneシリーズの伝統である2系統のUSB Type-Cポートも健在で、縦持ち横持ちのいずれの場合でもケーブルの取り回しが行いやすい。

2系統あるUSB Type-Cポートの1つはボディの左側面中央に配置

2系統あるUSB Type-Cポートの1つはボディの左側面中央に配置

もう1つのUSB Type-Cポートはボディの底面に配置される

もう1つのUSB Type-Cポートはボディの底面に配置される

サウンド機能は、ディスプレイの短辺に左右対称になるようにステレオスピーカーを配置する。「ROG Phone 7 Ultimate」に同梱される「AeroActive Cooler 7」にはサブウーハーが備わっており、2.1chの再生が可能だ。ワイヤレスオーディオでは、Bluetoothのサウンドコーデックとして「aptX」および「aptX Lossless」の対応が明記されている。手元のソニー製ヘッドホンを使ったところ「LDAC」は非対応だが「AAC」は利用できた。

このほか、空間オーディオ技術の「Dirac Virtuo」に対応しており、ヘッドホンやイヤホンを使ったバーチャルサラウンド再生が行える。同技術は、有線とワイヤレス接続両対応かつ、コンテンツ側の対応も特に必要ないため動画や手持ちのゲームで利用できる。機能として、定位感(音の鳴る位置を把握しやすくなる)が向上する効果があり、ゲームにおける周囲の状況把握がしやすくなる。また、音がはっきりするのでリズムゲームではタイミングをとりやすくなる効果も期待できそうだ。前モデル「ROG Phone 6」はスピーカーの評価が高かったが、本機も引き続きサウンド性能はハイレベルと言える。

搭載される有機ディスプレイは6.78インチというかなりの大画面かつ、視界をさえぎるノッチやパンチホールもない見やすさを重視したものだ。解像度は2448×1080のフルHD+で、大画面のわりに解像度が低い。これは、ゲームではフルHD以上の解像度を使うことがまずないことと、リフレッシュレートやタッチサンプリングレートを重視しているためだ。なお、HDR10+やちらつきを抑えたDC調光対応(60Hz駆動時のみ)、最大輝度1500ニトというスペックは汎用のハイエンドスマホとしても十分通じる高性能と言えるだろう。

視界をさえぎるノッチやパンチホールのないディスプレイは、ゲームに有利。もちろん動画の視聴なども快適だ

視界をさえぎるノッチやパンチホールのないディスプレイは、ゲームに有利。もちろん動画の視聴なども快適だ

HDR10+やちらつきを抑えたDC調光対応(60Hz駆動時のみ)、最大輝度1500ニトという高性能なディスプレイを搭載。ゲームはもちろん、普段使いでも心強い

HDR10+やちらつきを抑えたDC調光対応(60Hz駆動時のみ)、最大輝度1500ニトという高性能なディスプレイを搭載。ゲームはもちろん、普段使いでも心強い

リフレッシュレートは最大165Hz、タッチサンプリングレートは最大720Hzで、これらのスペックは前モデルから変わっていない。なお、60Hz以上のリフレッシュレートをゲームアプリで使用する場合、アプリ側での対応が必要となる。いっぽうタッチサンプリングレートは、アプリの対応は必要ない。

ちなみに、本機と競合する「REDMAGIC 8 Pro」は、リフレッシュレートは最大120Hz、タッチサンプリングレートは最大で960Hzだ。120Hz駆動以上に対応したゲームを念頭にするなら本機のほうがよいだろう。いっぽう、タッチサンプリングレートを重視するなら「REDMAGIC 8 Pro」のほうがベターだ。

リフレッシュレートは165Hz、144Hz、120Hz、90Hz、60Hzの5段階。最適なものを自動で選ぶこともできる

リフレッシュレートは165Hz、144Hz、120Hz、90Hz、60Hzの5段階。最適なものを自動で選ぶこともできる

また、側面には超音波タッチセンサー「AirTrigger」を2個搭載し、LとRのショルダーボタンとして利用できる。この「AirTrigger」は、バイブレーション機能を用いてクリック感を再現しているほか、受け付ける操作方法もタッチ、スライド、スワイプなど9種類ものアクションを使い分けることができる。

超音波タッチセンサー「AirTrigger」を搭載。タッチ式の利点を生かした9種類の操作が可能だ

超音波タッチセンサー「AirTrigger」を搭載。タッチ式の利点を生かした9種類の操作が可能だ

高効率の「Snapdragon 8 Gen 2」搭載、16GBメモリーモデルはタスクの保持力が高い

本機は、最新のハイエンドSoC「Snapdragon 8 Gen 2」を搭載している。なお、「ROG Phone 7」は12GBメモリー+256GBストレージモデルと16GBメモリー+512GBストレージモデルの2モデルを、検証機の「ROG Phone 7 Ultimate」は、16GBメモリー+512GBストレージの1モデルをそれぞれ用意する。microSDメモリーカードスロットはすべてのモデルで搭載されない。プリインストールされるOSはAndroid 13で、2回のOSバージョンアップと発売後4年のセキュリティアップデート配布が予告されている。

「Snapdragon 8 Gen 2」は、電力効率が高く、搭載するスマートフォンはバッテリーが長持ちで発熱も少ないものが目立つ。ただし、本機の場合、同梱の冷却ファン「AeroActive Cooler 7」を装着しない状態で、高負荷が長く続くタイプのゲームを行うと、バッテリー温度は40度以上、CPUの温度も50度を超えることは珍しくなく、相応に熱を持つ傾向がある。

なお、ゲームにおいて、性能優先の「Xモード」、バランス優先の「ダイナミック」、「超省電力」の3種類の動作モードを選べるほか、ユーザーによるカスタマイズも行える。ベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク」(バージョン10.X)の結果を見ると、「Xモード」の場合は1587101となった。なお、「ダイナミック」では1391051、「超省電力」では1217656でスコアが下がっている。

AnTuTuベンチマークの結果。左が性能優先の「Xモード」、中央が「ダイナミック」、右が「超省電力」でそれぞれ計測している。それぞれのモードでスコアに違いがある

AnTuTuベンチマークの結果。左が性能優先の「Xモード」、中央が「ダイナミック」、右が「超省電力」でそれぞれ計測している。それぞれのモードでスコアに違いがある

「Xモード」におけるピーク性能は「Snapdragon 8 Gen 2」搭載機としては十分なものだ。また「ダイナミック」や「超省電力」でも並みのスマートフォンよりはるかに高いスコアなので、ゲームに合わせて選べるのはうれしいところだ。

また、検証機は16GBのメモリーを搭載しているためタスクの保持力はかなり高い。ゲームを含む大型アプリが、手動でタスクを停止させない限りめったなことでは終了されない。そのため、アプリの切り替えが非常にスムーズで、ほかのアプリと併用しながらのゲームがとても快適に行える。逆に、ひとつのアプリをひたすら動作させ続けるのであれば「ROG Phone 7」の12GBメモリーモデルでも十分と言えるだろう。

冷却+4個の物理ボタン+ウーハーの3機能を備えた「AeroActive Cooler 7」

「ROG Phone 7 Ultimate」 に同梱される冷却ファン「AeroActive Cooler 7」をチェックしよう。本体との接続は、ボディ側面のUSB Type-Cポートを使った有線接続だ。メインとなる冷却は、ファンとペルチェ素子を使った電熱冷却を組み合わせて行う。また、4個の物理ボタンやサブウーハーも搭載しているため、操作性やサウンドの向上も可能というなかなかの高機能である。なお、「AeroActive Cooler 7」を装着すると「ROG Phone 7 Ultimate」 背面の冷却窓「AeroActive Portal」が自動で開き、発熱部位に直接冷風を当てる機能も備わっている。

「AeroActive Cooler 7」を装着した様子

「AeroActive Cooler 7」を装着した様子

背面の4個のボタンそれぞれにタッチ操作を割り当てることができ、操作性の向上を図れる

背面の4個のボタンそれぞれにタッチ操作を割り当てることができ、操作性の向上を図れる

「AeroActive Cooler 7」を装着すると背面の冷却窓「AeroActive Portal」が自動で開き、発熱部位に直接冷風が当たる

「AeroActive Cooler 7」を装着すると背面の冷却窓「AeroActive Portal」が自動で開き、発熱部位に直接冷風が当たる

気になる冷却性能を、AnTuTuベンチマークアプリを動作させた際のバッテリー温度の変化グラフで見てみよう

いずれも「Xモード」で揃えつつ、左は「AeroActive Cooler 7」を装着したうえで電源とつないでペルチェ素子を使った電熱冷却も行っている。右は「AeroActive Cooler 7」を装着しない状態のものだ

いずれも「Xモード」で揃えつつ、左は「AeroActive Cooler 7」を装着したうえで電源とつないでペルチェ素子を使った電熱冷却も行っている。右は「AeroActive Cooler 7」を装着しない状態のものだ

「AeroActive Cooler 7」を使うことでバッテリーのピーク温度が抑えられているうえに、どんどん冷却されてゆく。いっぽう「AeroActive Cooler 7」を装着しないと、温度は上昇が続く。実際のゲームにおいても「AeroActive Cooler 7」を装着することで、1時間を超えるような長時間動作において処理落ちが減り安定した動作が可能。背面はもちろんディスプレイ側の熱も少ないため快適な操作が維持できた。

いっぽう、「AeroActive Cooler 7」を装着すると画面を縦に使うゲームでは持ちにくくなるし、リズムゲームなどで机に置きながら遊ぶ「置きプレー」にも向かない。「ROG Phone 7 Ultimate」と「AeroActive Cooler 7」の組み合わせは、複雑な操作が求められる横画面のシューティングゲームやRPGに特化したものと言えそうだ。

ハイエンド級の実力を備えたカメラ

本機のメインカメラは約5000万画素の広角カメラ(35mm換算の焦点距離は23.8mm)、約1300万画素の超広角カメラ(同焦点距離換算は12.5mm)、約500万画素のマクロカメラという組み合わせのトリプルカメラだ。なお、広角カメラは「Zenfone9」と同じソニー製のイメージセンサー「IMX766」を採用する。

以下に、静止画の作例を掲載する。撮影条件は初期設定のまま、シャッターを押すだけで、同じ構図で複数ショット撮影し、一番できのよいものを選んでいる。

明暗差の大きい構図を撮影。窓の外の景色が白飛びを起こしている。HDRは動作しているもののダイナミックレンジを吸収しきれなかったようだ。ただし、室内の天井にある漆喰のムラもしっかり描写されているし、暗部のノイズも少ないなど実力はハイエンド相応だ

明暗差の大きい構図を撮影。窓の外の景色が白飛びを起こしている。HDRは動作しているもののダイナミックレンジを吸収しきれなかったようだ。ただし、室内の天井にある漆喰のムラもしっかり描写されているし、暗部のノイズも少ないなど実力はハイエンド相応だ
(撮影写真:4096×3072、3.22MB)

上と同じ構図を超広角カメラに切り替えて撮影。こちらのほうが遠景の白飛びを抑えつつ暗部のディテールもぎりぎり残っている。構図周辺の画質の荒れも少なく、超広角カメラの性能もハイエンド級だ

上と同じ構図を超広角カメラに切り替えて撮影。こちらのほうが遠景の白飛びを抑えつつ暗部のディテールもぎりぎり残っている。構図周辺の画質の荒れも少なく、超広角カメラの性能もハイエンド級だ
(撮影写真:4160×3120、3.2MB)

全般に明るくノイズも目立たず、ハイライトの飽和も少ない。手ぶれも少なく、シャッタータイムラグなどの操作性も良好だった

全般に明るくノイズも目立たず、ハイライトの飽和も少ない。手ぶれも少なく、シャッタータイムラグなどの操作性も良好だった
(撮影写真:4160×3120、3.85MB)

同じ構図を超広角カメラで撮影。広角カメラと比べたトーンの違いが少なく、両カメラの調整をしっかり行っていることがうかがえる。低照度でも超広角カメラの欠点である構図周辺の画質も比較的保たれている

同じ構図を超広角カメラで撮影。広角カメラと比べたトーンの違いが少なく、両カメラの調整をしっかり行っていることがうかがえる。低照度でも超広角カメラの欠点である構図周辺の画質も比較的保たれている
(撮影写真:4160×3120、3.72MB)

6000mAhの大容量バッテリーを備えるがゲーマー目線のバイパス給電が便利

本機は、3000mAhのバッテリーを2個組み合わせたデュアルセルバッテリーを採用し、6000mAhの大容量を確保している。バッテリーの持続性に関するスペックは公表されていないが、「リンクラ(Link!Like!ラブライブ!)」を3時間以上行っても「Pikmin Bloom」のリズムゲームを3時間ほど行ってもバッテリー消費はおおむね1時間に10パーセント前後で、、昨今のハイエンドスマホとしては良好なほうだろう。ゲームを行わず1日1時間ほどSNSなどを使用する場合、24時間で13〜16パーセントのバッテリーを消費しており、計算上はフル充電で1週間のバッテリー持ちが期待できる。

本機はAC電源などから直接給電する「バイパス給電」を備えている。バイパス給電を使えば、発熱を抑えつつ長時間の動作が可能なうえに上述の「AeroActive Cooler 7」のペルチェ素子を使った電熱冷却も利用できる。この点において有線接続のほうが真価を発揮できるスマートフォンと言えるだろう。

出力65WのACアダプターとUSB Type-Cケーブルを同梱する

出力65WのACアダプターとUSB Type-Cケーブルを同梱する

ドコモ5Gでも制約のないn79対応は立派

通信性能を見てみよう。本機は2枚のnanoSIMカードに対応したデュアルSIM機だ。なかでも5G専用周波数帯であるn77/78/79の3バンドに対応しており、国内4キャリアすべてで5Gの高速通信をフルに利用できる。特にn79は世界を見渡してもNTTドコモとチャイナモバイルくらいしか使用されておらず、海外メーカーでは対応を見送ることが多い。しかし、本機なら各社のSIMを存分に利用できるだろう。

横画面のSTGやRPGに狙いを定めた「ROG Phone 7 Ultimate」

「AeroActive Cooler 7」を同梱した「ROG Phone 7 Ultimate」は、FPSのようなシューティングゲームや複雑な操作を求められるフィールド探索型RPGに特化した製品だ。いっぽう、縦画面のゲームやリズムゲームを目的にするなら「ROG Phone 7」で十分と言える。

本機のライバルは言うまでもなく、同じSoCを搭載するゲーミングスマホNubia「REDMAGIC 8 Pro」だ。「REDMAGIC 8 Pro」は本体にファンを内蔵しているため(512GBストレージの上位モデル)、高い冷却性能を備えつつ、本機よりもコンパクト。ただし、「AeroActive Cooler 7」のような物理ボタンは用意されない。

ひと口にゲーミングスマホと言っても、本機は横画面タイプのゲームにかなり特化している。いっぽう、もう少し汎用性も考慮されているのが「ROG Phone 7」や「REDMAGIC 8 Pro」だ。「ROG Phone7 Ultimate」はその名の示すように、用途を絞った究極モデルと言えよう。

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2023/04/18 21:00
田中 巧(編集部)
Writer / Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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