NTTドコモは2023年7月1日に主力の料金プランを改定し、データ利用量の上限が無制限の「eximo」と、“必要な分だけ”をアピールする比較的割安な「irumo」の提供を開始しました。2021年3月から提供されているオンラインプラン「ahamo」もあわせて、ドコモの料金プランは「高コスト・無制限のeximo」「中コスト・20GB〜100GBのahamo」「低コスト・小容量のirumo」という3つのゾーンに分かれる形となっています。
物価上昇が続く昨今、固定費削減の一環としてスマートフォンの料金プラン見直しを考えている人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの各ブランドにおける主な料金プランについて、割引パターン別のコストをチェックしてみたいと思います。
なお、対象の料金プランは以下の表にまとめてあります。また、コストの試算に含める割引は以下の3タイプに該当するもののみとし、新規契約時の割引キャンペーンなどは考慮していません。
・カード払い割引…指定のクレジットカードで利用料金を支払う場合に適用される割引。
・家族割引…2人以上の家族が同じキャリアで対象の回線を契約している場合に適用される割引。
・自宅セット割引…自宅のインターネット契約や電気契約に応じて適用される割引。
※記事の内容は2023年8月10日時点での情報を基にしています。記事中の価格は特に断りがない限り税込です。
ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルにおける各ブランドの主な料金プラン
まずはドコモの各プランのコストをチェックしてみましょう。以下の表に「irumo」「ahamo」「eximo」の主な料金プランにおける割引パターン別の利用料金をまとめました。
ドコモの「irumo」「ahamo」「eximo」の主な料金プラン
ドコモでは以下の割引が用意されています。
・カード払い割引…「dカードお支払い割」:毎月187円を割り引き
・家族割引…「みんなドコモ割」:2回線で毎月550円、3回線以上で毎月1,100円を対象回線から割り引き
・自宅セット割引…「ドコモ光セット割」「home 5G セット割」:毎月1,100円(ドコモ光ミニ契約時は毎月550円)を対象回線から割り引き(※同一グループ内に「ドコモ光」と「home 5G プラン」が両方存在する場合は「ドコモ光セット割」が、「ドコモ光ミニ」と「home 5G プラン」が両方存在する場合は「home 5G プラン」が適用される)
なお、家族割引はカウント対象回線の数によって割引額が変化しますが、ここでは最大となる「3回線以上」の場合で計算しました。同様に、自宅セット割引も割引額が最大となるパターンを想定しています。また、上記の価格は試算の対象とした料金プランの割引額のみを記載しているため、旧プラン等を対象とした割引額は異なる場合があります。比較が複雑化するのをなるべく避けるために、話し放題オプション等の音声通話向けサービスも考慮していません(以降のキャリアも同様です)。
新プランの「irumo」ではカード払い割引と自宅セット割引の2タイプを適用できますが、データ利用量が一番少ない「プラン/0.5GB」は割引の対象外となっているため、月額料金は550円のままで変わりません。
カード払い割引と自宅セット割引の両方が適用された場合、「プラン/3GB」の月額料金は半額以下の880円まで安くなります。また、「プラン/9GB」で割引が一切適用されない場合の月額料金は「ahamo」で20GB/月の月額料金よりも400円ほど割高でしたが、カード払い割引と自宅セット割引が両方適用されると2,090円まで安くなります。
「irumo」はカード払い割引と自宅セット割引を併用することで格安SIM並みの価格に抑えることができます
割引適用前の「irumo」は「ahamo」などのオンラインプランや格安SIMと比べて割高な印象が強いものの、「自宅のインターネット契約がドコモ光(もしくはhome 5G)」であれば、割引が適用されることでオンラインプランよりも安く、格安SIMに匹敵する水準までコストを抑えることができます。店頭でサポートを受けられる(一部は月額1,100円の有償サポート)というメリットも考慮すれば、「irumo」は毎月20GBも通信しない人にとって魅力的な選択肢と言えます。
もう1つの新プラン「eximo」は3タイプの割引すべての割引対象となっています。全部適用した場合、データ利用量が無制限となる上限の月額料金は「ahamo」の100GB/月よりもわずかに安い4,928円となります。
「料金をdカードで支払い」「自分を含めて家族3人以上がドコモユーザー」「自宅のインターネット契約がドコモ光もしくはhome 5G」という条件を満たす場合に限られますが、データ利用量を一切気にすることなく使いたい人は「eximo」を検討してみてはいかがでしょうか。
オンラインプランの先駆けとなった「ahamo」には、「irumo」や「eximo」のような割引は用意されていません(家族割引も受けられませんが、家族が契約する回線としてのカウント対象には含まれます)。その代わり月額料金は最初から低めに設定されており、20GB/月で2,970円、100GB/月で4,950円です。毎月20GB以上の大容量が必要で、3タイプの割引すべてを同時に適用できない人は「ahamo」を検討してはいかがでしょうか。
次に、KDDIの各ブランドの料金プランのコストをチェックしてみましょう。以下の表に「au」「povo」「UQ mobile」の主な料金プランにおける割引パターン別の利用料金をまとめました。
「au」「povo」「UQ mobile」の主な料金プラン
メインブランドの「au」では以下の割引が用意されています。
・カード払い割引…「au PAY カードお支払い割」:「使い放題MAX 5G/4G」は毎月110円を割り引き、「スマホミニプラン5G/4G」は毎月187円を割り引き
・家族割引…「家族割プラス」:「使い放題MAX 5G/4G」は2回線で毎月550円、3回線以上で毎月1,100円を割り引き、「スマホミニプラン5G/4G」は2回線で毎月220円、3回線以上で毎月550円を割り引き
・自宅セット割引…「auスマートバリュー」:「使い放題MAX 5G/4G」は毎月1,100円を割り引き、「スマホミニプラン5G/4G」は毎月550円を割り引き
「スマホミニプラン5G/4G」と「使い放題MAX 5G/4G」はいずれも3タイプの割引すべての割引対象となっていますが、毎月の割引額は異なるので注意が必要です。
3タイプすべてが適用された場合、「スマホミニプラン5G/4G」でデータ利用量を上限の4GBまで使った場合の月額料金は4,928円、「使い放題MAX 5G/4G」でデータ利用量が無制限となる上限の月額料金も4,928円と価格が揃います。割引適用の条件が整う人は「使い放題MAX 5G/4G」を契約しておくのがよさそうです。
サブブランドの「UQ mobile」では以下の割引が用意されています。
・カード払い割引…「au PAY カードお支払い割」:毎月187円を割り引き
・家族割引…「家族セット割」:毎月550円を対象回線から割り引き(合計10回線まで。割引対象外だが「au」を契約中の回線もカウント対象となるので注意)
・自宅セット割引…「自宅セット割」:対象のインターネット契約もしくは電気契約とセットで毎月1,100円を割り引き
「ミニミニプラン」と「トクトクプラン」はいずれも3タイプの割引すべての割引対象ですが、家族割引と自宅セット割引を同時に適用することはできません。また、「コミコミプラン」は3タイプとも割引対象外です(「家族セット割」のカウント対象には含まれます)。
割引適用前の「トクトクプラン」はデータ利用量を上限の15GBまで使った場合の月額料金が毎月20GBの「コミコミプラン」よりも割高な3,465円ですが、カード払い割引が適用されれば同額の3,278円、カード払い割引と家族割引を併用すれば2,728円まで安くなります。また、カード払い割引と自宅セット割引を併用すれば、データ利用量を毎月5GB増量させる「増量オプションII」を契約して「コミコミプラン」と同じ20GB/月に増やしても、月額料金は2,728円となります。
後述するオンラインプランの「povo」は他社のオンラインプランと比べてやや特殊な料金体系を採用していますが、その代わりに「UQ mobile」の「トクトクプラン」や「コミコミプラン」がオンラインプランに近い位置付となっています。毎月15〜20GB程度利用する人は、これらのプランを選択肢に含めてみてはいかがでしょうか。
その「povo」ではすべてのデータ利用量がプリペイド方式の「トッピング」として提供されており、メインブランドのような割引は用意されていません。その代わり……と言うのは難しいかもしれませんが、データ利用量や購入価格がお得なトッピングを「お試しトッピング」として期間限定で提供しています。
たとえば2023年8月10日の時点では30日間有効の「データ追加40GB(30日間)」が1回3,800円で提供されています(販売期間は2023年7月14日〜2023年8月14日まで)。1回2,700円の「データ追加20GB(30日間)」を2回購入する場合の合計5,400円と比べて1,600円お得です。
「povo」のデータトッピングの一例(2023年8月10日時点)。「データ追加40GB(30日間)」のほかにもさまざまな期間限定トッピングが提供されている
また、「povo」では「au PAY」を利用した店頭での支払いに応じてデータ利用量を取得できるサービス「ギガ活」も展開されています(例:ローソンで税込500円以上の商品をau PAYで購入すると3日間有効のデータ利用量300MBを取得)。家族のスマホやインターネット回線の契約状況に左右されない形でコストを抑えられるメリットが「povo」の魅力のひとつと言えるでしょう。
続いて、ソフトバンクの各ブランドの料金プランのコストをチェックしてみましょう。以下の表に「ソフトバンク」「LINEMO」「ワイモバイル」の主な料金プランにおける割引パターン別の利用料金をまとめました。
「ソフトバンク」「LINEMO」「ワイモバイル」の主な料金プラン
メインブランドの「ソフトバンク」では以下の割引が用意されています。
・家族割引…「新みんな家族割」:2回線で毎月660円、3回線以上で毎月1,210円を対象回線から割り引き
・自宅セット割引…「おうち割 光セット」:毎月1,100円を対象回線から割り引き
自宅セット割引は「ミニフィットプラン+」と「メリハリ無制限」の両方とも割引対象ですが、家族割引は「メリハリ無制限」のみが割引対象となっています(「ミニフィットプラン+」はカウント対象ですが割引は対象外です)。また、カード払い割引は用意されていません。
家族割引と自宅セット割引が両方適用された場合、「メリハリ無制限」でデータ利用量が無制限となる上限の月額料金は4,928円となります。また、通信量が3GB以下の月は3,278円となり、「ミニフィットプラン+」で自宅セット割引が適用された場合に2GB以上通信する場合よりも安くなります。毎月2GB以上通信する人で自宅セット割引を適用できる場合は「メリハリ無制限」を選ぶのがいいでしょう。
サブブランドの「ワイモバイル」では以下の割引が用意されています。
・家族割引…「家族割引サービス」:毎月1,188円を2回線目以降の対象回線から割り引き(割引対象は合計9回線まで)
・自宅セット割引…「おうち割 光セット(A)」:毎月1,188円を対象回線から割り引き
「シンプルS」「シンプルM」「シンプルL」はいずれも家族割引と自宅セット割引の割引対象になっていますが、同時に適用することはできません。また、カード払い割引は用意されていません。
1回線あたりの割引額はどちらのタイプも同じなので、割引後の月額料金は毎月3GBの「シンプルS」が990円、毎月25GBの「シンプルL」は2,970円になります。ただし、家族割引は1回線目に割引が適用されません。自宅のインターネット契約を「SoftBank 光」や「SoftBank Air」に揃えることが可能であれば、自宅セット割引を適用したほうが1回線分お得です。
オンラインプランの「LINEMO」にはメインブランドやサブブランドのような割引は用意されていません。その代わりに月額料金はもともとコストが低く、毎月3GBの「ミニプラン」は990円、毎月20GBの「スマホプラン」は2,728円と、「ワイモバイル」の「シンプルS」や「シンプルM」+「データ増量オプション」で割引が適用された場合と同額か、それに近い水準になっています。家族割引や自宅セット割引を適用できない人は「LINEMO」を検討してみてはいかがでしょうか。
続いては楽天モバイルの料金プラン「Rakuten最強プラン」ですが、楽天モバイルでは他社のオンラインプランと同様に割引を提供していません。月額料金は利用した通信量によって異なり、3GB以下は1,078円、20GB以下は2,178円、データ利用量が無制限となる上限の月額料金は3,278円です。
楽天モバイルの料金プラン「Rakuten最強プラン」
割引は用意されていないものの、「Rakuten最強プラン」の契約者には楽天市場での買い物における楽天ポイントの付与が優遇されていて、同プラン契約中はそれだけでポイント倍率が+2倍(ダイヤモンド会員は+3倍)になります。楽天のポイント経済圏を重視する人には見逃せないメリットと言えるでしょう。
家族割引等がない「Rakuten最強プラン」は楽天ポイント付与の優遇がメリット
最後に、4キャリアの主な料金プランにおける割引パターン別の月額料金を1つの表にまとめてみましょう。
ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの主な料金プランにおける割引パターン別の月額料金
改めてチェックすると、割引が用意されているドコモ、KDDI、ソフトバンクではブランドごとに適用される割引のタイプや組み合わせ方はさまざまです。「カード払い割引」「家族割引」「自宅セット割引」すべてが適用できるのはドコモの「eximo」とauの「スマホミニプラン 5G/4G」「使い放題MAX 5G/4G」のみで、ほかは一部のタイプのみ対応していたり、割引同士を併用できない場合があったりします。
ただ、割引を最大限適用した場合の価格はかなり近づくことがわかります。たとえば、楽天モバイルを除いた3大グループのメインブランドにおける無制限プランに注目すると、ドコモの「eximo」およびauの「使い放題MAX 5G/4G」でカード払い割引と家族割引と自宅セット割引を適用した場合、それにソフトバンクの「メリハリ無制限」で家族割引と自宅セット割引を適用した場合、データ利用量が無制限となる上限の月額料金はすべて4,928円となります。
毎月3〜4GBの小容量も同様で、ドコモの「irumo」で「プラン/3GB」にカード払い割引と自宅セット割引を適用した場合や、KDDIの「povo」で「データ追加3GB(30日間)」を1回購入する場合、LINEMOの「ミニプラン」を契約した場合などの月額料金は、おおむね1,000円前後(880円〜1,078円)の範囲に収まります。
データ利用量のニーズは人によって異なりますが、ドコモの新プラン登場以降、各グループ全体を見渡せば自分のニーズに合った料金プランを何かしら選びやすい状況になったと言えそうです。まずは自分が毎月どれくらいのデータ利用量を必要としているのかをしっかり把握して、現在契約中の料金プランより少なくても足りそうな場合はプランの変更を検討しましょう。
また、家族がそれぞれ異なるキャリアを契約していたり、自宅にインターネット契約がなかったりといった理由で割引を適用できない人もいるかもしれません。そのような場合はオンラインプランや楽天モバイルを選ぶことで、通信コストをなるべく抑えることができそうです。
信州佐久からモバイル情報を発信するフリーライターであり2児の父。気になった格安SIMは自分で契約せずにはいられません。上京した日のお昼ごはんは8割くらいカレーです。