ASUSのコンパクトなハイエンドスマートフォン「Zenfone」シリーズの最新モデル「Zenfone 10」が発表されました。発売よりひと足先に試用したので、新機能や使用感などを中心にレビューします。
ASUSのフラッグシップスマートフォン「Zenfone 10」
各社から6インチ以下のコンパクトなAndroidスマートフォンは発売されていますが、その多くはエントリー、もしくはミドルクラスのスペック帯です。2023年のハイエンドスマートフォンに搭載されている、現行で最も高性能なSoC「Snapdragon 8 Gen2」を採用する6インチ以下のスマートフォンは「Zenfone 10」(5.9インチ)だけです。
6.1インチのソニーの「Xperia 5 V」も「Snapdragon 8 Gen2」搭載のハイエンドスマートフォンですが、スリムな縦長ボディのため「Zenfone 10」とは少し毛色が異なります。
最新モデルの「Zenfone 10」は、従来機からSoCが最新モデルにバージョンアップされたほか、いくつかの点がアップデートされています。主要なアップデートは以下のとおりです。
・ディスプレイのリフレッシュレート:最大144Hz駆動(Zenfone 9は120Hz)
・メインカメラの手ブレ補正:6軸ハイブリッドジンバル手ブレ補正2.0
・フロントカメラの有効画素数:3200万画素(Zenfone 9は1200万画素)
・バッテリー駆動時間:従来機比で12.9%アップ
・ワイヤレス充電対応
「めちゃくちゃ進化している!」とまでは言えないものの、カメラ周りの新機能やバッテリー駆動時間、ワイヤレス充電対応などを見ると、従来機で足りなかった部分を着実にアップデートしてきたという印象です。
新機能も気になりますが、まずはコンパクトサイズによる使い勝手や取り回しについて解説しましょう。
5.9インチの本体は、手のひらにすっぽりと収まるため、ホールド感は優秀です。ちょっとした操作からカメラでの撮影まで、使用中に手から滑り落ちる心配が少なくなっています。
しっかりと握れて操作中などの安心感が高いです。加えて、背面にザラっとした加工が施されているため、指が滑りにくくなっています
不安定な場所で歩きながら動画などを撮影する際は、大きなスマートフォンだと落下などに気を使うのですが、今回河原で歩きながら撮影したところ、「Zenfone 10」ではより撮影に集中できました。
普段使いでも、電車内でつり革を持ちながらもう片方の手で操作が行えたり、ズボンのポケットにも余裕で収まるため取り出しやすいなど、「Zenfone 10」のコンパクトボディは、日常のいろんな場面でメリットを感じられました。
スマートフォンの操作という点では、スマートキー機能と指紋認証センサーが融合した電源ボタン「ZenTouch 2.0」が便利でした。電源ボタンを押すと同時に端末がアンロックされるのも使いやすいですが、ダブルプレス(2回押し)や長押し、スワイプといった操作にショートカットを割り当てるスマートキー機能が優秀です。
端末を持ったときに、親指でちょうど操作しやすい位置にある電源ボタン。指紋認証のほか、簡易的な操作も可能です
ダブルプレスと長押しにはGoogleアシスタント、任意のアプリ、カメラの起動などを、スワイプには通知の確認、Webページの更新、前or次のページへ移動、動画の早送りや巻き戻しなどを割り当てられます。
コンパクトなボディやスマートキー機能により、大きなスマートフォンでは得られない快適な片手操作が行えるというわけです。
基本機能においても、「おサイフケータイ」やIP68等級の防水、防塵ボディに対応。特に防水ボディは、コンパクトな本体と合わさることで、アウトドアで使用する際の安心感を高めてくれると感じました。
高い携帯性、そして防水ボディはキャンプや野外フェスなどアウトドアイベントにピッタリです
ただし、画面サイズが小さいため、動画視聴やゲームを頻繁に楽しむ人は注意したほうがいいでしょう。また、動画編集など細かな操作が必要とされるアプリは、さすがに大きなスマートフォンのほうが操作しやすいです。
ディスプレイのスペックこそリフレッシュレート最大144Hz駆動、HDR対応などと高いものの、没入感や迫力といった面では大きいスマートフォンに軍配が上がります。そのあたりは、購入の際によく見ておいたほうがいいでしょう。
続いてはカメラをチェックしましょう。メインカメラは、背面に5000万画素の広角カメラと1300万画素の超広角カメラを搭載。広角カメラは「Zenfone 9」から据え置きですが、超広角カメラは1300万画素、視野角120度と若干アップ。ただし、「Zenfone 9」の超広角カメラはマクロカメラを利用できましたが、「Zenfone 10」では取り払われました。
大きくアップデートされたのは、光学式手ブレ補正の「6軸ハイブリッドジンバル手ブレ補正」です。これは、メインカメラに6軸のジンバルモジュールを搭載することで、強力な手ブレ補正が得られるという機能です。
この手ブレ補正と電子式手ブレ補正(複数モードあり)を併用することで圧倒的に手ブレの少ない動画を撮影できるのですが、手ブレ補正が強力になるとクロップ範囲が大きくなるという側面が「Zenfone 9」ではありました。
「Zenfone 10」では、このクロップ範囲を可能な限り少なくするために「アダプティブ EIS」という機能を搭載しています。これは、端末の揺れをリアルタイムで検知して、最適な画角に自動で調整してくれるというものです。
揺れが小さいときはクロップ範囲を小さく、揺れが大きいときはクロップ範囲が大きくするのを自動で調整。これにより、わざわざ手ブレ補正の設定を撮影前に行う必要がなくなり、より使いやすくなったというわけです。
以下の動画では、手ブレ補正オフ、「アダプティブ EIS」、さらに強力な電子式手ブレ補正「HyperSteady」の効果を比較しています。今回は、河原を歩いただけなので、「アダプティブ EIS」と「HyperSteady」で手ブレの補正具合はそこまで変わりませんでしたが、画角の違いはおわかりいただけると思います。
写真については、広角カメラと超広角カメラの作例を以下からご確認ください。広角カメラは目で見たままの自然な色味ですが、超広角カメラはちょっとビビッドな味付けになっています。また、長時間露光撮影したかのような写真が撮れる「ライトトレイル」など、撮影モードも豊富で楽しいです。
キレイな写真を撮れるのはもちろんのこと、やはりコンパクトボディならではの撮影しやすさが、いちばん気に入ったポイントです。撮りたいときにポケットからサッと取り出せ、手から落とすことなく撮影に集中できる。このあたりは、大きなスマートフォンにはない魅力ですね。
上が広角カメラ、下が超広角カメラの作例
「ライトトレイル」はソフトウェアの処理が強く出ていますが、これはこれで面白いです。水の流れ以外にも、自動車のライトの光跡を撮ることもできます
フロントカメラは、従来機の1200万画素から3200万画素へと有効画素数が大幅にアップ。「Zenfone 9」と比較して、光の取り込みが67%向上、ノイズが50%低減したとのことです。
夜の繁華街をバックに撮影(下記写真)したところ、背景の夜景は明るく、かつ、逆光で暗くなりがりな顔も表情が見えるくらい明るいです。ただし、ちょっとブレていたり、画質が粗かったり、白飛びする部分が見えるなど、気になる点があったのも事実。ただし、構造的に小さなイメージセンサーしか設置できないフロントカメラとしては明るく撮れているほうだと思います。
コンパクトボディの取り回しのよさと、使い勝手の高さは、「Zenfone」シリーズならではの魅力。普段使いからレジャーまで、非常に使いやすい端末だと思います。スペックや機能で、ハイエンドスマートフォンに足りないような部分もありません。コンパクトスマートフォンが気になる人の第1候補となるのは間違いないでしょう。
なお、「Zenfone 10」は、ミッドナイトブラック、コメットホワイト、スターリーブルー、エクリプスレッド、オーロラグリーン(レビューにて試用)の5つのカラーバリエーションが用意されています。メモリー/ストレージは8GB/128GB、8GB/256GB、16GB/512GBの3つを選択可能。それぞれの希望小売価格(価格はすべて税込)は以下からご確認ください。
・8GB/128GB(ミッドナイトブラック):99,800円
・8GB/256GB(全カラー):112,800円
・16GB/512GB(ミッドナイトブラック、スターリーブルー):134,800円
スマートフォンの価格が毎年高騰するなかで、いちばん下のモデルとは言え、10万円を切る価格で購入できるのは、なかなかコスパが高いと思います。
ただし、先述のとおり、従来機「Zenfone 9」と比べて、飛躍的に進化したというわけではなく、ブラッシュアップしてきたという印象です。もし、「予算的に最新モデルは……」という人は、従来機をチェックしてみてもいいかもしれません。
最新ガジェットとゲームに目がない雑食系ライター。最近メタボ気味になってきたので健康管理グッズにも興味あり。休日はゲームをしたり映画を見たりしています。