レビュー

あのFiiOがキーボード!? DAC搭載・4.4mmバランス出力も付いた「KB3 HiFi USB」

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ポータブルオーディオで知られるFiiOから、なんとオーディオ用のDACを搭載したキーボードというユニークな製品が登場する。2023年10月の「秋のヘッドホン祭2023」(関連記事コチラ)で国内初披露された「KB3 HiFi USB」だ。

FiiO「KB3 HiFi USB」

発売は2024年2月2日で、市場想定価格は26,950円前後。さっそく「KB3 HiFi USB」のサンプル機をお借りすることができたので、製品の概要や音質などを詳しくレビューしてみた。

RGBイルミネーション搭載。意外とキーボードとしても本格派

「KB3 HiFi USB」はかなりユニークな製品だ。オーディオメーカーであるFiiOが手掛けただけあり、単にキーボードとして動作するだけでなく、USB DACとして動作するDACチップとヘッドホンアンプを搭載。DACチップにはシーラスロジックの「CS43131」を2基搭載しており、なかなか本格的な仕様だ。音質も気になるところだが、こちらについては後で詳しく触れよう。

「KB3 HiFi USB」の箱に書かれた“BORN FOR MUSIC”の文字。音楽も聴けるキーボードなのだから当然だ

「KB3 HiFi USB」の箱に書かれた“BORN FOR MUSIC”の文字。音楽も聴けるキーボードなのだから当然だ

製品をチェックする際に説明書を読んでいて出てきた名称が“Jade Audio”というブランド。これはFiiOの若者向けのサブブランドで、若い世代にすぐれたリスニング体験とコスパ重視のオーディオを届けるというコンセプトで製品を展開している。「KB3 HiFi USB」はFiiOの中でもかなり異色の製品なので、今後もサブブランドの“Jade Audio”を使ってさらなる展開を考えているのかもしれない。

というわけで、ここからは「KB3 HiFi USB」のキーボードとしてのスペックから見ていこう。本体サイズは329(幅)×140(奥行)×43.5(高さ)mmで、テンキーレスよりもさらに省スペースな81キー仕様のキーボードとなっている。本体重量は1.06kgもあり、手に持ってみると見た目以上に重さを感じるキーボードだ。

いわゆる75%キーボードと呼ばれる、テンキーレスだけどファンクションキーがある81キー仕様のキーボードだ

いわゆる75%キーボードと呼ばれる、テンキーレスだけどファンクションキーがある81キー仕様のキーボードだ

以下に掲載した写真でもわかるとおり、内蔵LEDによるRGBイルミネーションも備わっている。ピカピカ光り気分を高めてくれる、いわゆる“ゲーミングキーボード”という性格も備えているわけだ。

美しいRGBイルミネーション。もちろん消灯も可能だ

美しいRGBイルミネーション。もちろん消灯も可能だ

キースイッチには、リニアタイプの「Gateron G Pro 3.0イエロースイッチ」を採用。内部にはアルミマグネシウム合金トップケースを用いており、剛性もしっかりと確保されている。キーキャップは透明で、裏側に配置されているLEDライトが透けて見える構造だ。ガスケットマウントデザインによって打鍵音も低減しつつ、適度な打鍵感も得られるようになっている。ここは好みの世界なので深入りしないでおこう。

「KB3 HiFi USB」で使われている「Gateron G pro3.0イエロースイッチ」

「KB3 HiFi USB」で使われている「Gateron G pro3.0イエロースイッチ」

打鍵感も適度なバランス型

打鍵感も適度なバランス型

キーボード背面にある脚を立てて角度を付けることも可能だ

キーボード背面にある脚を立てて角度を付けることも可能だ

RGBイルミネーションはF3/F4キーに割り当てられているショートカットによるプリセット切り替え方式で、もちろん消灯も可能だ。どれもRGBのカラーが美しく流れるように変化するので、個人的にはオンの利用が気に入った。なお、FiiOからは非サポートのソフトという扱いになるが、キーマッピング変更にも対応している。

派手なようでて意外と気にならない(?)RGBイルミネーション

派手なようでて意外と気にならない(?)RGBイルミネーション

PCとの接続端子はUSB-C仕様。左右に並ぶUSB-AはUSBハブとして機能する

PCとの接続端子はUSB-C仕様。左右に並ぶUSB-AはUSBハブとして機能する

そして「KB3 HiFi USB」で特に注目してもらいたいのが、キーボード右上にある赤色のボリュームコントロールノブ。瞬時に音量操作ができ(Windowのシステム音量に連動)、これだけでも価値を感じる人も多いだろう。赤い光沢あるデザイン、そして適度に重みのある回す感覚は、オーディオ機器の質感としてもよくできていると思う。

適度に重く、操作性にすぐれるアナログボリュームノブ

適度に重く、操作性にすぐれるアナログボリュームノブ

ゲーミングヘッドセットも接続でき、4.4mmのバランス出力も可能

「KB3 HiFi USB」のオーディオデバイスとしての実力もチェックしていこう。本体左には3.5mmと4.4mmバランスのイヤホンジャックを搭載。DACはPCMが384kHz/32bitまで、DSDはDSD256にまで対応している。オペアンプもSGMICRO「SGM8262」を2基搭載していて、最大出力550mWとなかなかパワフルな仕様だ。

キーボード左奥に3.5mmと4.4mmバランスのイヤホンジャックを搭載

キーボード左奥に3.5mmと4.4mmバランスのイヤホンジャックを搭載

なお、3.5mmジャックは4極TRRSプラグの接続にも対応している。つまり、「KB3 HiFi USB」ではマイク付きのゲーミングヘッドセットなども利用できるというわけだ。ただ、今回借りたサンプル機では、ゲーミングヘッドセットを接続してもマイク部分がうまく動作していなかった。

この点をメーカーに確認したところ、3.5mmはSPDIFと兼用となっていて、サンプル機ではSPDIFで動作する設定となっていたとのこと。製品版では出荷時からTRRSで動作する設定になるとのことなので、購入後はそのままゲーミングヘッドセットを接続して利用できるはずだ。なお、SPDIFとTRRSの切り替えはメーカーから提供されるソフトで行えるそうだが、このソフトが動作保証外の扱いになる点は注意してほしい。

気を取り直し、さっそく「KB3 HiFi USB」の音質をチェックしてみた。まずはAKG「K712 PRO」を3.5mmジャックに接続して試してみたが、一般的なPCのオーディオ出力とは異なる、オーディオらしさを感じるサウンドに驚いた。音情報豊富の滑らかなサウンドで、低音の音分離もよい。サウンドバランスとして行き過ぎないナチュラル系というのは、シーラスロジック製DACのサウンドキャラクターを感じさせる。オペアンプで出力を強化しているおかげか、低音も駆動力と迫力を感じる。

AKG「K712 PRO」で音質をチェック

AKG「K712 PRO」で音質をチェック

続いて、ソニー「MDR-MV1」を試してみる。3.5mmジャックに接続した環境でも、ボーカルは頭の中の空間に浮かび、低音は適度に引き締まり重低音も感じられる。高域までの音ヌケもバランスもよい。これを4.4mmバランスにリケーブルして4.4mmジャックに接続してみるとさらに化けた。特に高域の音の再現力が高まり、低音のレンジも広がるようで、全体的な音の解像度が上がり、明瞭度がグッとアップする。

ソニー「MDR-MV1」を4.4mmバランスにリケーブルし、4.4mmジャックに接続してテスト

ソニー「MDR-MV1」を4.4mmバランスにリケーブルし、4.4mmジャックに接続してテスト

オーディオ好きなら音楽リスニングの音質は4.4mmジャック一択だろう。ただ、今回は試せなかったが3.5mmジャックは4極TRRSプラグ接続に対応してヘッドセットのマイクも同時に利用できるので、使う用途次第といったところだろうか。なお、3.5mmジャックと4.4mmジャック両方にデバイスを接続した場合は、4.4mmジャックからの出力が優先される。

まとめ

FiiO初のキーボードである「KB3 HiFi USB」だが、製品全体のイメージは堅実のひと言に尽きる。手に取ってすぐにわかるメカニカルな質感、重量感はモノとしての作りのよさがあり、キーボードとしてよくできているし、アナログ操作可能なボリュームコントロールノブはゲーミング用途はもちろんのこと、動画視聴などのメディア再生時にも大いに活躍してくれるだろう。

そして、やはり「KB3 HiFi USB」の魅力は音質だろう。オーディオメーカーが手掛けただけあり、PCオーディオの入門クラスとしても十分通用するクオリティに仕上がっていた。DACチップなどのスペックは、小型USB DACの「KA13」に近く、こちらは1.3万円程度で買えるが、「KB3 HiFi USB」はキーボードと一体型でスマートに使えること、そしてアナログ操作可能なボリュームコントロールノブの存在で十分元が取れる。ゲーミング目的で導入もアリだし、4.4mmのバランス出力入門として導入するのもありだろう。初物ながら総合的なバランスのよさが光る製品だ。

折原一也
Writer
折原一也
オーディオ&ビジュアルライター/AV評論家。「オリチャンネル」主催。IT系出版の編集者出身で、2004年に独立後はモノ雑誌やオーディオ・ビジュアル専門誌で活動。2009年より音元出版主催のVGP審査員。画質・音質にこだわるAV評論家ではあるが、ライフスタイルになじむ製品、コスパにすぐれた製品を評価する庶民派。2022年に立ち上げたYouTubeチャンネル「オリチャンネル」では、取材メディアの人間として一次情報の発信、検証と測定データに基づくレビューなど独自の発信も行っている。最近のマイブームはAI全般。
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遠山俊介(編集部)
Editor
遠山俊介(編集部)
2008年カカクコムに入社、AV家電とガジェット系の記事を主に担当。ポータブルオーディオ沼にはまり、家にあるイヤホン・ヘッドホンコレクションは100オーバーに。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットにも手を出している。家電製品総合アドバイザー資格所有。
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