レビュー

1万円台のモトローラ「moto g24」レビュー! 安さの理由と使える度をチェック

2024年3月22日に発売されたばかりの最新モデルながら、価格.comの最安価格が1万円台、人気・注目度ランキングも3位(2024年4月中旬時点)に入るのが、モトローラのSIMフリースマートフォン「moto g24」です。

「moto g13」から進化しつつ、さらに安価になった「moto g24」をレビュー

「moto g13」から進化しつつ、さらに安価になった「moto g24」をレビュー

前モデルに相当する2023年4月発売の「moto g13」も、2万円台前半の高いコストパフォーマンスで話題になりましたが、「moto g24」は機能をアップデートしつつ、さらに安価な価格設定を実現しています。物価や為替の影響で多くのスマホが値上げとなる状況で、本機はなぜ安いのか、そして、ちゃんと使えるのかチェックしました。

機能の取捨選択で低価格を実現

結論から言ってしまうと、「moto g24」はスマートフォンとして最低限これだけは欲しい性能をしっかりと備えつつ、一部の機能を割り切ることで低価格を実現したスマートフォンです。

OSは最新のAndroid 14で、約6.6インチの見やすい大画面。約5000万画素のカメラとステレオスピーカー、5000mAhの大容量バッテリーを搭載します。そのいっぽうで、採用するプロセッサー(SoC)が前モデル「moto g13」から据え置きされたほか、5Gの通信には非対応で、ディスプレイの解像度はHD+(1612×720)にとどめられています。以下、詳しく見ていきましょう。

「moto g24」のディスプレイは、前述のように約6.6インチのIPS液晶で、解像度はHD+です。最近はエントリーやミドルと呼ばれる価格帯のスマホにも、ディスプレイにフルHD以上の画質を採用するものや、高画質な有機ELディスプレイを採用するものが増えています。

しかし、本製品のディスプレイは、価格を抑えるためにあえて割り切ったものです。とはいえ、その画質は10万円以上するようなハイエンドな製品と見比べれば違いはあるものの、単独で使用していれば十分に満足できるレベル。解像度を割り切るいっぽうで、リフレッシュレートは標準の60Hzよりも高速な90Hzがサポートされているため、スクロールは滑らかで、体感速度も悪いほうではありません。

ディスプレイの上下には、「Dolby Atmos」に対応したステレオスピーカーを配置。エントリーモデルではスピーカーがモノラルな場合も多いですが、本製品はステレオかつ「Dolby Atmos」対応なので、思いのほか迫力のあるスピーカーサウンドが楽しめます。

また、「Dolby Atmos」に対応した動画データなら、バーチャルサラウンド再生が行えます。ディスプレイの解像度は、本格的に映像を楽しみたい人向きではないかもしれませんが、音量も十分なのでライブ映像などはそれなりに臨場感があります。

上部には3.5mmイヤホンジャックのほか、「Dolby Atomos」対応であることを示すプリントもある

上部には3.5mmイヤホンジャックのほか、「Dolby Atomos」対応であることを示すプリントもある

ボディを見てみましょう。前モデルよりもディスプレイが0.1インチ大きくなっているいっぽうで、ボディサイズは約74.53(幅)×163.49(高さ)×7.99(厚さ)mm(最薄部)、重量181gと、0.2mm薄く、3g軽くなっています。実際に手にした感覚でも、6.6インチという画面サイズの割には、軽くて持ち重りがしにくい印象。現在選ぶことのできる6.5インチ以上のスマホ群の中でも、比較的軽い部類に入ります。

右側面には音量キーと指紋認証センサーを兼ねた電源ボタンを搭載。認証スピードも高速でストレスは感じない。生体認証は指紋のほか、顔認証にも対応

右側面には音量キーと指紋認証センサーを兼ねた電源ボタンを搭載。認証スピードも高速でストレスは感じない。生体認証は指紋のほか、顔認証にも対応

価格を考えれば、デザインは最も妥協すべきところのように思えます。しかし「moto g24」は、ディスプレイ下側がやや厚くなっているものの、ベゼルも狭く、画面占有率(アクティブエリアタッチパネル)は89.50%。背面パネルには指紋が目立ちにくいメタル調かつマットな塗装が施されています。

外観からは安っぽさや時代遅れな印象はさほど感じられません。背面のカメラ回りのゆるやかなカーブや光沢は、高級感に一役買っています。なお、カメラ回りの盛り上がった部分は、付属のクリアケースを装着するとフラットに近くなります。

背面のカメラ回りの出っ張りは、背面パネルとゆるやかな地続きとなっている。カラーは写真のアイスグリーンのほか、マットチャコールの2色展開

背面のカメラ回りの出っ張りは、背面パネルとゆるやかな地続きとなっている。カラーは写真のアイスグリーンのほか、マットチャコールの2色展開

底部にUSB type-Cポートとマイク、スピーカーを搭載

底部にUSB type-Cポートとマイク、スピーカーを搭載

クリアケースが付属。最初から、このケースが付けられた状態で箱に入っている

クリアケースが付属。最初から、このケースが付けられた状態で箱に入っている

防塵性能はIP5Xをサポートしているものの、防水性能はIPX2止まり。これも価格ゆえの割り切りポイントのひとつでしょう。IPX2は防滴レベルなので、雨天時や水回り近くで使用する際は注意です。もちろん水没の耐性もありません。

プロセッサーは必要最低限ながら、実メモリーと仮想メモリーの合計は最大で16GB!

プロセッサー(SoC)は、前モデルの「moto g13」と同じエントリー向け「MediaTek Helio G85 オクタコア」。128GBのストレージ容量も同じです。しかし、メモリーは4GBから8GBに増量されています。

本機のようなエントリー機で8GBという大容量メモリーを備えたものはほかに思い浮かびません。さらに、ストレージの一部を仮想メモリーとして使用する機能「RAMブースト」に対応しています。この機能は初期設定で有効になっており、実メモリー8GBに仮想メモリー4GBを加えた、12GBが基本の設定になっています。なお、仮想メモリーは最大で8GBまで拡張可能なので最大16GBのメモリーを利用できます。

メモリーに余裕があるため、複数のアプリを立ち上げていても比較的動作が安定しているほか、大画面を生かした分割表示もスムーズに行えます。この点は、競合するエントリー機と比べた大きな優位点になるでしょう。

「RAMブースト」の設定画面。拡張メモリーを2、4、6、8の4段階で設定可能

「RAMブースト」の設定画面。拡張メモリーを2、4、6、8の4段階で設定可能

実際の性能を定番のベンチマークアプリ「AnTuTu Benchmark V10」でテストしたところ、総合スコアは271234(内訳、CPU:85644、GPU:41644、MEM:67659、UX:76278)と、いささか厳しい結果になりました。

ほかにも「GeekBench 6」のCPUベンチマークではシングルコア415、マルチコア1411、「PCMark for Android Benchmark」のWork 3.0 performanceは9668、「3DMark」の Wild Lifeは729。いずれもエントリー機としても余裕と言うには乏しいことを示しています。なお、「nubia(ヌビア)」の5G対応エントリースマートフォン「nubia Ivy」の「AnTuTu Benchmark V10」総合スコアは356574(内訳、CPU:120184、GPU:60631、MEM:77183、UX:98576)。5G非対応のプロセッサーを搭載することで基本性能にも影響が現れることは理解しておきたいところです。

「AnTuTu Benchmark V10」のテスト結果。左は本機、右は「nubia Ivy」のもの。両機ともエントリー機だが、通信性能だけではなく、基本性能にも少なくない差がある

「AnTuTu Benchmark V10」のテスト結果。左は本機、右は「nubia Ivy」のもの。両機ともエントリー機だが、通信性能だけではなく、基本性能にも少なくない差がある

こうしたベンチマークテストの結果を踏まえて「moto g24」の動作を見てみると、アプリの起動時には若干反応にもたつきが現れたり、サムネイル表示が必要なシーンでは画面が表示されるまで少し待たされることに気づきます。動画配信サイトでコンテンツを再生する際にも、無理に高画質で再生しようとすると、映像がカクつくこともありました。

使えない機能もあり、試した限りでは「Pokémon GO」のAR(拡張現実)モードをはじめ、AR系のアプリは正しく動作しませんでした。もっとも、ARモードを諦めれば「Pokémon GO」自体は問題なくプレイできます。また、より高精細な3Dゲームなど、高い処理が求められるアプリの使用には向いていません。

いっぽうで、ブラウザーやメール、マップ、SNSなど、スマホでよく使うような一般的なアプリであれば、そこまでストレスを感じることなく使用できます。また、アプリの起動後は「RAMブースト」や、90Hzと高いリフレッシュレートの効果もあり、スムーズに動作すると感じるシーンが増えます。

2個のnanoSIMカードとmicroSDカードを併用できる

本機のカードスロットはnanoSIMカード2枚に加えて、microSDカードも独立してセットできる、トリプルカード仕様になっています。メモリーカードスロットはmicroSDXC対応のため、ストレージを最大1TBまで拡張可能。microSDカードはSIMカードと排他利用なことも多いなかで、トリプルカード仕様は貴重な存在だと言えます。

左側面にはカードスロットがあり、2枚のnanoSIMカードと、microSDカードを同時にセットできるトリプルカードスロット仕様

左側面にはカードスロットがあり、2枚のnanoSIMカードと、microSDカードを同時にセットできるトリプルカードスロット仕様

なお、nanoSIMを同時に待ち受けできる「DSDV(デュアルSIMデュアルVoLTE)」が利用可能ないっぽうで、ここ数年で対応端末が一気に増えているeSIMには、残念ながら非対応です。

近距離無線通信ではNFCに対応しているものの、FeliCaは非搭載なので「おサイフケータイ」は利用できません。また、Bluetoothの最新バージョンは5.4ですが、本機に搭載されているバージョンは5.0にとどまっています。そのため、Bluetoooth5.2で対応した「LE Audio規格(LC3コーデック)」に対応していません。LC3コーデックに対応するイヤホンはまだ多くはありませんが、本機ではSBCなどLC3以外のコーデックを使うことになります。

約5000万画素カメラは夜景が明るくきれいに撮れる

カメラを見てみましょう。背面には、約5000万画素(F1.8)のメインカメラと、約200万画素(F2.4)のマクロカメラを搭載。フロントには顔認証やセルフィー用のための約800万画素(F2.0)のカメラが、ピンホール型のノッチに配置されています。

撮影モードには写真、ポートレート、プロ、ナイトビジョン、パノラマ、動画、スローモーション、タイムラプスがあり、このうち写真、ポートレート、動画、タイムラプスは、フロントカメラでも撮影できます。撮影モードが少なくシンプルなので、あれこれ迷わずに撮影できるのもメリットです。

ポートレートでは背景のボケ味の微調整もできますし、写真の雰囲気をガラッと変えるフィルターも豊富に用意されています。また、動画は手ブレ補正に対応しています。

カスタマイズを極力加えずに「ピュアAndroid」をうたう「moto」シリーズらしく、標準の写真アプリに「Googleフォト」を使用しています。そのため「消しゴムマジック」などの写真の編集機能が使いやすくなっています。

5000万画素メインカメラ、200万画素マクロカメラの2眼構成

5000万画素メインカメラ、200万画素マクロカメラの2眼構成

桜の発色は鮮やか。背景の空と樹木の境の明暗が大きい部分に偽色が少し見える

桜の発色は鮮やか。背景の空と樹木の境の明暗が大きい部分に偽色が少し見える

新緑の風景。こちらも鮮やかな発色。明るい場所なら大きな問題はなさそう

新緑の風景。こちらも鮮やかな発色。明るい場所なら大きな問題はなさそう

ズームの画質を確認

上が1等倍と、下がズームの最大値であるデジタルズーム4倍で撮影したもの。デジタルズームなので画質が荒くなるが、望遠撮影を楽しめるレベル

上が1等倍と、下がズームの最大値であるデジタルズーム4倍で撮影したもの。デジタルズームなので画質が荒くなるが、望遠撮影を楽しめるレベル

低照度に強いナイトビジョンで撮影。4つの画素を合わせてより多くの光を取り込める「クアッドピクセルテクノロジー」の効果もあり、明るく、かつ白飛びを抑えられている

低照度に強いナイトビジョンで撮影。4つの画素を合わせてより多くの光を取り込める「クアッドピクセルテクノロジー」の効果もあり、明るく、かつ白飛びを抑えられている

こちらも夜景。ダイナミックレンジも良好かつ、石畳などのディテールがしっかり残っている

こちらも夜景。ダイナミックレンジも良好かつ、石畳などのディテールがしっかり残っている

ナイトビジョンでズームを行った際の画質

上はナイトビジョン、ズームなしで撮影した夜景。下はデジタル4倍のズームで撮影。残念ながらディテールがぼやけるうえにノイズも目立つ

上はナイトビジョン、ズームなしで撮影した夜景。下はデジタル4倍のズームで撮影。残念ながらディテールがぼやけるうえにノイズも目立つ

ポートレートの作例。背景の大きなボケが特徴。人物の場合は顔を認識して、背景のボケ味を調整可能

ポートレートの作例。背景の大きなボケが特徴。人物の場合は顔を認識して、背景のボケ味を調整可能

マクロ作例。被写体から4cm程度まで近づいて撮影できる

マクロ作例。被写体から4cm程度まで近づいて撮影できる

motoシリーズでおなじみのジェスチャー機能を搭載

モトローラのスマートフォンには、通常独自の機能を紹介する「Motoアプリ」がインストールされていて、どのような独自機能が使えるのかわかるようになっています。本機には「Motoアプリ」がないためわかりにくいのですが、設定によって、モトローラのスマートフォンでおなじみのジェスチャー操作が利用できます。たとえば、手首を素早く2回ひねる動作でカメラを起動できる「クイック撮影」を使えば、シャッターチャンスを逃さずに撮影できます。

ジェスチャーではこのほか、よく利用する機能をまとめて呼び出せる「サイドバー」や、3本指でタッチしてスクリーンショット撮影などを設定できる

ジェスチャーではこのほか、よく利用する機能をまとめて呼び出せる「サイドバー」や、3本指でタッチしてスクリーンショット撮影などを設定できる

5000mAhのバッテリーでしっかり使っても2日の電池持ちは余裕

バッテリー回りを見てみましょう。内蔵のバッテリーは容量5000mAhの大容量。検証のためしばらく使ってみたところ、WebページやSNS、動画をちょくちょく見るほか、たまに地図アプリを使ったり、集中的に写真を撮るといった筆者の使い方では、まる2日間ほど充電しなくても余裕で使えました。電池持ちはなかなか良好という印象です。

なお、ACアダプターやケーブルは同梱されていませんが、15Wの急速充電に対応しています。手持ちのアダプター&ケーブルで「急速充電」されていることを確認しつつ、残量20%から充電したところ、2時間10分ほどでフル充電できました。こちらもバッテリーの容量を考えればさほど不満のない充電速度でしょう。

入門機や2台目として手に取りやすいが、割り切りが必要なところも

「moto g24」は4Gモデルということで、自宅などスマートフォンをよく使う場所が5Gのエリア外だという人や、5Gの料金プランに変えたくない人、5Gの必要性を感じていない人など、現状5Gは不要という人が、まずはターゲットになると思います。また、何と言ってもこの価格ですので、非常用に備えたサブ端末としても、手に取りやすいのは間違いありません。

また、先日3Gサービスを終了したソフトバンクに続き、2026年3月31日にはNTTドコモの3Gサービスも終了の予定です。3G端末をいよいよ乗り換えざるを得なくなってきた人が、お試しで使うスマートフォン入門機としても適当でしょう。また、高価なスマートフォンを与えるにはまだ不安のある子ども用としても「十分にあり」だと思います。

ただし、5G対応のエリアは今後広がるのは確実ですが、4Gのエリアや通信速度が今より大きく改善されることは現実的ではありません。スマートフォンを使い始めれば、場所を選ばずに、より速くあれもこれもしたくなるのはごく自然なことです。それまでの「つなぎ」として選びたい1台かもしれません。

太田百合子
Writer
太田百合子
インターネット黎明期よりWebディレクションやインターネット関連のフリーペーパー、情報誌の立ち上げに携わる。以降パソコン、携帯電話、スマートフォンからウェアラブルデバイス、IoT機器まで、身近なデジタルガジェットと、それら通じて利用できる様々なサービス、アプリケーション、および関連ビジネスを中心に取材・執筆活動を続けている。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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