乱れた生活習慣を正すのに、スマートウォッチは効果的だ。ただし、ハイエンドモデルでは、価格が5〜10万円台のものが多く、予算を捻出しづらい。いっぽう、数千円から1万円弱で手に入る格安スマートバンドでは、バンドの快適性が低く、継続的に日常使いするモチベーションを維持しづらいというデメリットは無視できない。そこで、手が伸ばしやすく、機能や質感にも満足できる価格帯を探すと、2〜3万円台の製品が候補にあがってくる。
「HUAWEI WATCH FIT 3」は大きなディスプレイを搭載しながらも、着けてみるとコンパクトな印象だ
そこでチェックしたいのが、2024年5月にファーウェイより発売された「HUAWEI WATCH FIT 3」だ。メーカー公式サイトでの販売価格は22,080円(税込。以下同)〜。従来の「HUAWEI WATCH FIT」シリーズよりも、正方形に近いスクエア型のミニマルなデザインが採用されつつ、健康管理系の機能が充実。今期のスマートウォッチを検討する際の候補にあがる1台となるだろう。
1週間ほどの短い期間ではあるが、実際に使用したうえでのインプレッションをお届けしたい。
「HUAWEI WATCH FIT」シリーズは、廉価帯のスマートウォッチ・バンドにおいてもはや定番の選択肢ではあるが、派生モデルが多く、過去のラインアップが複雑だ。まずは、改めてシリーズ系譜を簡単におさらいしつつ、今回紹介するモデルの位置付けと概要を把握しておこう。
同シリーズは、2020年10月に第1世代モデルが13,800円(発表当時)で発売された。さらに同世代の派生モデルが複数登場しており、2021年4月に、ステンレススチールのボディや、付け心地のよいフルオロエラストマー製のストラップバンドを採用した「エレガントエディション」(19,800円)。同年11月に、新色を追加した「HUAWEI WATCH FIT new」(15,180円)。さらに2023年8月に、ソフトウェア面を中心にアップデートを遂げた「HUAWEI WATCH FIT Special Edition」(14,080円)が展開されている。
続いて、時期は前後するが、2022年6月に第2世代モデルである「HUAWEI WATCH FIT 2」(20,680円〜)が発売された。ディスプレイサイズが前世代より約18.6%大きくなったほか、GPSやワークアウト測定の精度向上、Bluetooth通話機能の対応などが主なトピックだった。その派生モデルとしては、同年7月にヨドバシカメラ限定で発売されたステンレス製の「ミラネーゼループバンド」を採用した「エレガントモデル」(29,480円)などがある。
「HUAWEI WATCH FIT 3」のサイズは、約36.3(幅)×約43.2(高さ)×約9.9(奥行)mm。重量は約26g(ベルト含まず)。薄さが際立っている
そして、今回2024年5月に発売されたのが第3世代に相当する「HUAWEI WATCH FIT 3」である。外観の変更点としては、従来世代のモデルが縦長ディスプレイを採用していたのに対し、新モデルではディスプレイの形状がスクエアに近づいた。厚みは「HUAWEI WATCH FIT 2」でも10.8mmと十分薄かったのだが、さらに0.9mm薄くなり、9.9mmまで数値を下げている。
従来の「HUAWEI WATCH FIT」シリーズだと、どうしても“安価なスマートバンドの中では高品質なモデル”のような印象がともなっていたのだが、「HUAWEI WATCH FIT 3」は、ディスプレイの横幅が広がったことで、“コストパフォーマンスのよいスマートウォッチ”へと昇華している。なお、有機ELディスプレイのサイズは1.82インチ。腕に装着した際のサイズ感としては、「Apple Watch」シリーズの45mmモデルを装着したときのそれに近い。
「HUAWEI WATCH FIT 3」は、1.82インチの有機ELディスプレイを搭載
アプリの一覧画面。端末の右側面には、リューズを兼ねたボタンと、ショートカットを割り当てられる「機能ボタン」が並ぶ
「HUAWEI WATCH FIT 3」には、ストラップバンドの素材として「フルオロエラストマー」(23,980円)、「ナイロン」(25,080円)、「レザー」(22,080円)の3つのバリエーションが展開されている。今回試用したモデルは、フルオロエラストマー製のブラックだ。
フルオロエラストマーのブラックバンド。バックルはピンバックル式だ
実際に装着して感じたのは、ストラップバンドがピンバックル式であるものの、装着時にはピンの先が外向きに突出しないように配慮されていること。ディスプレイ面、バックル部分ともに、鋭利なエッジは存在せず、家族で川の字で寝るような場合でも、安心して睡眠時に装着できるだろう。5ATMの防水性能を備えており、日常的な水回りでの使用も問題ないことも相まって、広いシーンで扱いやすいはずだ。
機能面に関しては、さまざまなワークアウトの測定に対応していることや、24時間の心拍数・血中酸素モニタリングはもちろん、ストレスモニタリングが可能なこと、5つの衛星測位方式に対応する高精度GPSを内蔵していることなど、過去の「HUAWE WATCH FIT」シリーズを踏襲している特徴が多い。
長時間座っていると、立ち上がってのエクササイズが推奨される。画面にはエクササイズの運動説明が映像で表示される
いっぽう、新機能としては、食事で摂取するカロリーと、運動によって消費するカロリーのバランスをチェックできる「ボディメイカー」に注目したい。ファーウェイが展開するほかのウェアラブル機器の一部では、すでに同機能を使えるようになっているため、機能自体への驚きはないものの、2万円台前半の「HUAWEI WATCH FIT 3」で利用できるのは、ユーザーメリットを感じる部分である。
「ボディメイカー」を開いた様子。カロリーのオーバーと不足度合いが直感的に視認できる。スワイプで画面を切り替えると、目標に対する達成具合や、週単位でのバランスの推移などを確認することもできる
「ボディメイカー」機能では、登録した体重などから計算された安静時の消費カロリーと、ウォッチのセンサーが認識した活動時の消費カロリーを合わせた総消費カロリーが自動で計測される。いっぽう、摂取カロリー、つまり食事の記録については、アプリ「HUAWEI Health」を使い、スマートフォン側から入力する仕組みだ。
食事記録はアプリで「朝食」「昼食」「夕食」「間食」のどれかを選択した後に、摂取した食品を検索して登録するだけ。一般的なカロリー計算アプリと同様に、摂取した食品を追加していくだけで、総摂取カロリーを手軽に計算してくれるというわけだ。
「HUAWEI Health」で記録した摂取カロリーと、スマートウォッチ本体で計測した消費カロリーを差し引いた数値を基に、カロリーの過不足がひと目でわかるようになる。
「体重管理」画面の「ボディメイカー」欄にある「朝食」のアイコンをタップ。たとえば「ご飯」と検索して該当する候補を選び、「g」などの単位をスライダーで調整して、「OK」をタップすれば、摂取カロリーが記録される
記録した摂取カロリーと、自動で計算された消費カロリーのバランスがメーターで表示され、目標値とのズレを確認できる。記録した栄養素に関しては、PFCのバランスも可視化される
さまざまなカロリー管理アプリがある中で、「HUAWEI WATCH FIT 3」を使うメリットとしては、事前に設定した減量などの目標値に対して、カロリーの差分などの情報を、手首に表示されたグラフィカルなメーターで確認しやすいことがあげられる。主に、ウォッチ上のアプリで足りない運動量をチェックできることで、「もう30分ウォーキングをしようかな」と運動に対するモチベーションを上げやすい。
そのほか注目しておきたい機能は、睡眠モニタリングだ。そのアルゴリズムは、新バージョンの「HUAWEI TruSleep 4.0」に対応。入眠や目が覚めた回数を識別する精度が向上しており、精度の高い睡眠データを取得できるようになっている。
睡眠モニタリングでは、睡眠の深さの推移を確認できるほか、睡眠スコア、睡眠の深さごとの時間、心拍数などの変動、昼寝した時間なども把握可能
測定できるデータとしては、睡眠時の心拍数、血中酸素濃度、呼吸数などに対応。さらに、ハイエンドモデルのみが対応していた「睡眠中呼吸乱れ検知機能」も追加されていることはトピック。なお、同機能はデフォルトでオフになっているため、利用したい際には、スマートフォン側から、「睡眠中呼吸乱れ検知機能」を有効にしておく必要がある。ただし、バッテリー消費が多少大きくなるとされているため、バッテリー残量を節約したいタイミングではオフにすることも検討しよう。
睡眠状態の細かい分析と、ていねいな解説、睡眠中呼吸乱れ検知の結果などが「HUAWEI Health」から確認できる
先述したように、「HUAWEI WATCH FIT 3」は、筐体やバックルにもエッジ部がなく、さらにフルオロエラストマー製のバンドならば長時間の装着でも不快感が少ない。睡眠モニタリングを主用途に利用したい場合には、コストパフォーマンス面から見ても、かなりよい1台だろう。
ちなみに、バッテリー持ちは通常使用で約10日間。ヘビーユースでも7日間だ。筆者はレビュー期間中に「睡眠中呼吸乱れ検知機能」を有効にしつつ、2泊3日の旅行で携行したが、旅行中の充電は一切必要なく、こうした管理の手軽さも魅力的に映った。
なお、この記事では紹介しきれなかった機能も多い。詳細が気になる場合には、メーカー公式サイトなどでチェックしてみてほしい。