レビュー

独自カバースタンドの”発明”がモバイルディスプレイとしての魅力を高める「VAIO Vision+ 14」

近年、モバイルディスプレイの発売が増えてきている。価格.comにおいては、2022年に発売開始したモデルは50機種、2023年は57機種、2024年にいたっては7月16日までのあいだに51機種が登録されている。登録されていない海外製品を含めたら、さらに多くのモデルが市場に投入されていることになる。

このモバイルディスプレイ市場でいま注目されているのが、ノートPCメーカーのVAIOが開発した「VAIO Vision+ 14」だ。記事執筆時点(2024年7月16日)では、価格.comのモバイルディスプレイ人気売れ筋ランキングで第1位。14インチで54,800円(税込)という価格にもかかわらずだ。今回は実機を使って「VAIO Vision+ 14」のポイントを解説していく。

VAIO「VAIO Vision+ 14 VJ5VP141C11 [14インチ アンバーブラック]」価格.com最安価格:54,800円(2024年7月25日時点)

VAIO「VAIO Vision+ 14 VJ5VP141C11 [14インチ アンバーブラック]」価格.com最安価格:54,800円(2024年7月25日時点)

画面サイズ:14.0型ワイド(16:10)
解像度:WUXGA(1920×1200)
USB Type-C:搭載×2(以下の機能をサポート:USB Power Delivery(PD Pass-through)、DisplayPort)
電源方式:USB Power Delivery(USB Type-C給電)
入力:10W以上推奨、接続デバイスに充電する場合は65W以上推奨
外形寸法:約幅312.0mm×高さ3.9〜12.4mm×奥行211.1mm
本体質量:約325g

値段高め! でも大人気のモバイルディスプレイ「VAIO Vision+ 14」

携帯して外出先で2画面の作業環境を構築できる

携帯して外出先で2画面の作業環境を構築できる

2012年頃から登場した初期のモバイルディスプレイは、給電用USBケーブルと映像用HDMIケーブルの2本のケーブルを使うか、バッテリー内蔵タイプばかりだった。しかし2018年ごろからUSB Type-Cケーブル1本で使えるモバイルディスプレイが増え、軽くて扱いやすいモデルが主流となったと記憶している。そういった背景もあり、モバイルディスプレイの需要および新製品が増加しているのだろうと考えられる。

価格帯を調べてみると、1〜2万円台のシンプルなモデルが主流ということがわかった。なかには1万円以下で販売されているモデルもある。これらのモデルはリーズナブルというメリットがある半面、14インチで約600g前後、15.6インチで約800g前後の重さがある。また、本体内蔵スタンドの角度調節ができなかったり、2〜3段の角度しか選べなかったりといったデメリットも目立った。

とはいえ単純なコストだけで判断すれば、他メーカーの安価なモデルのほうが魅力的なはずだ。しかし「VAIO Vision+ 14」は”薄型”であり、”頑丈”であり、そのうえで”軽量”という、VAIOが培ってきたデジタルモバイル製品の開発力を生かしたモデルに仕上がっている。

14インチで約325gという圧倒的な軽さ

「VAIO Vision+ 14」のスペックを確認していこう。

ディスプレイサイズは14インチで、アスペクト比はビジネス用モバイルノートPCでの採用例が多い16:10。解像度は1920×1200だ。モバイルディスプレイはエンタメコンテンツの表示に向いている比率16:9で1920×1080のものが多いが、「VAIO Vision+ 14」のほうが横置き時でも縦方向に多くの情報を表示できるというメリットがある。

公式サイト上で「(14.0型ワイド以上のモバイルディスプレイにおいて)世界最軽量のモバイルディスプレイ」といったキャッチコピーがつけられている「VAIO Vision+ 14」の質量は、約325g。350mlのペットボトルよりも軽い

公式サイト上で「(14.0型ワイド以上のモバイルディスプレイにおいて)世界最軽量のモバイルディスプレイ」といったキャッチコピーがつけられている「VAIO Vision+ 14」の質量は、約325g。350mlのペットボトルよりも軽い

きわめて軽量なボディを実現した要素が、本体背面パネルに使われている立体成型カーボンだ。レーシングカーや航空機といった、軽量でありながら高剛性でなくてはならないプロダクトに使われてきたカーボンを、VAIOは2021年時点でのフラッグシップノートPCだった「VAIO Z」などで積極的に取り入れてきた。
立体成型とすることでパネルそのものが一体成型のフレームとなり、複数のパーツをつなげるネジ止め部もスタンドや横置き時のフットパーツのみとなっている。
むだを一切感じさせないビジュアルからは、デジタルモバイル製品の開発に長けているVAIOの技術力が感じ取れる。

操作部もきわめてシンプルだ。背面にある2つのボタンはいずれも輝度調整ボタン。あまりにも本体が軽いためにボタンを押すたびに動いてしまうが、輝度調整をひんぱんに行うことはないだろう

操作部もきわめてシンプルだ。背面にある2つのボタンはいずれも輝度調整ボタン。あまりにも本体が軽いためにボタンを押すたびに動いてしまうが、輝度調整をひんぱんに行うことはないだろう

USB Type-C端子は側面に2口備わっている。いずれもDisplayPort Alternate Mode(DP Alt Mode)、USB Power Delivery(USB PD)IN/Pass-throughに対応している。「iPhone 15」シリーズや一部のAndroidスマートフォンと接続して「VAIO Vision+ 14」にミラーリングした画面を表示できるし、接続した機器からの供給電力が足りない場合はUSB PD対応のACアダプターをつなげればよい。また、65W以上のUSB PD対応ACアダプターをつなげているときは、「VAIO Vision+ 14」側からノートPCやスマートフォンの充電が可能になる

USB Type-C端子は側面に2口備わっている。いずれもDisplayPort Alternate Mode(DP Alt Mode)、USB Power Delivery(USB PD)IN/Pass-throughに対応している。「iPhone 15」シリーズや一部のAndroidスマートフォンと接続して「VAIO Vision+ 14」にミラーリングした画面を表示できるし、接続した機器からの供給電力が足りない場合はUSB PD対応のACアダプターをつなげればよい。また、65W以上のUSB PD対応ACアダプターをつなげているときは、「VAIO Vision+ 14」側からノートPCやスマートフォンの充電が可能になる

スタンドはカーボンではなく、肉抜きされたアルミプレートが使われている。外したわけではないが、このパーツそのものも軽いと感じるし、細部に至るまで軽量化に対する飽くなき挑戦が重ねられた結果完成したモバイルディスプレイなのだとも実感する

スタンドはカーボンではなく、肉抜きされたアルミプレートが使われている。外したわけではないが、このパーツそのものも軽いと感じるし、細部に至るまで軽量化に対する飽くなき挑戦が重ねられた結果完成したモバイルディスプレイなのだとも実感する

厚みは最薄部で3.9mm。最も厚い部分で12.4mmとなる。スタンドを開き、立たせてみると本体の薄さが際立つ。全体的に薄く、重量のある基板や電源部が下部にまとまっているため、安定感がある

厚みは最薄部で3.9mm。最も厚い部分で12.4mmとなる。スタンドを開き、立たせてみると本体の薄さが際立つ。全体的に薄く、重量のある基板や電源部が下部にまとまっているため、安定感がある

スタンドは無段階式のため、本体に対し約80度の角度まで開ける。目の位置やテーブルの高さに合わせ、ディスプレイパネル部を最適な角度に保てるので、疲れにくいワークスペースが作りやすい。ただ、この写真のくらいまで垂直に寄せた立たせ方をすると安定性にやや欠ける

スタンドは無段階式のため、本体に対し約80度の角度まで開ける。目の位置やテーブルの高さに合わせ、ディスプレイパネル部を最適な角度に保てるので、疲れにくいワークスペースが作りやすい。ただ、この写真のくらいまで垂直に寄せた立たせ方をすると安定性にやや欠ける

縦に2枚重ねるマルチディスプレイ環境を持ち歩ける

「VAIO Vision+ 14」をPCと接続して並べたところ。接続はUSB Type-Cケーブルでつなぐだけ

「VAIO Vision+ 14」をPCと接続して並べたところ。接続はUSB Type-Cケーブルでつなぐだけ

USB Type-CケーブルでノートPCと接続すれば、VAIOロゴが表示され、すぐにミラーリング、または拡張ディスプレイが表示される。もし画面が表示されない場合はPC側からの供給電力が足りないか、USB Type-Cによる映像出力ができないノートPCとなる。これらの問題はほかのモバイルディスプレイを使う際でも起こり得るので、モバイルディスプレイ導入前に自分のノートPCのスペックを確認しよう。

さて、ここからが「VAIO Vision+ 14」の本領を発揮するシーンとなる。

「VAIO Vision+ 14」には画面保護用のカバースタンドが付属しているのだが、実はこのカバースタンドを使って「VAIO Vision+ 14」を縦に置くことも、高い位置に「VAIO Vision+ 14」を置くこともできるのだ

「VAIO Vision+ 14」には画面保護用のカバースタンドが付属しているのだが、実はこのカバースタンドを使って「VAIO Vision+ 14」を縦に置くことも、高い位置に「VAIO Vision+ 14」を置くこともできるのだ

長文の文章を読むときや、ニュースサイトなどを見るときに便利な縦位置セッティングをしてみた

長文の文章を読むときや、ニュースサイトなどを見るときに便利な縦位置セッティングをしてみた

縦位置セッティング時のスタンドの状態

縦位置セッティング時のスタンドの状態

横位置セッティングだとノートPCの画面と「VAIO Vision+ 14」の画面の両方を見るときに、意識して目を動かすことが多くなるが、縦位置セッティングなら視野の範囲に2画面とも入るので全体を見渡しやすい。

ノートPC画面の上に設置したところ

ノートPC画面の上に設置したところ

スタンドに十分な高さがあるため、ノートPC画面の上に配置できる

スタンドに十分な高さがあるため、ノートPC画面の上に配置できる

さらに、ノートPC画面の上に「VAIO Vision+ 14」を配置することも可能だ。組み合わせるノートPC背面のデッドスペースを活用したスタンド形状となるため、シームレスに2枚の画面がつながっているように見えるセッティングが可能。テーブルが狭いカフェなどでも高い生産性を確保できるし、「VAIO Vision+ 14」のカバースタンドは、まさに発明品と言っていい。

カバースタンド込みの重量に納得できるなら最高のモバイルディスプレイ

裸眼で立体視ができるモバイルディスプレイは別枠の製品として、高価格帯のモバイルディスプレイはワイヤレス接続が可能だったり、タッチパネルを搭載していたりなど、製品としての価値を高めている。そういった多機能系のモデルと比較すると、「VAIO Vision+ 14」はスタンダードだ。本体そのものに特別な機能はない。
しかし、薄型軽量で持ち運びやすく、かつ剛性にすぐれ、縦に2枚ディスプレイを並べられるなど運用性も優秀な本モデルは、多機能モデルを上回る魅力があると考えるユーザーが多い、ということが見えてきた。

今年に入ってからアップルの「Apple Vision Pro」やMeta の「Meta Quest 3」といったXRヘッドセットや、XREALなどのARグラスがあれば仮想モバイルマルチディスプレイ環境を持ち歩ける……という声が増えてきている。しかし、2024年夏の時点においてモバイルマルチディスプレイを選ぶなら「VAIO Vision+ 14」こそ最高だと断言できる。

ケースに入れてPCと重ねた状態。薄さについては申し分ない

ケースに入れてPCと重ねた状態。薄さについては申し分ない

ただし、「VAIO Vision+ 14」がいくら軽いといってもカバースタンドなしで持ち歩くことは推奨できない。ディスプレイパネル部の保護のために使わないときは常にカバースタンドに収めておくべきだし、せっかくの可変スタンドアイテムを家に置いておくと、「VAIO Vision+ 14」の魅力が大幅に薄れてしまう。そしてカバースタンドの重量は実測値で約415g。「VAIO Vision+ 14」と合わせると、約740gになった。バックの中に入れておくときは、愛用しているノートPC+約740gとなることは覚悟しておこう。

武者良太
Writer
武者良太
1971年生まれのガジェットライター。出版社勤務の後、フリーライター/カメラマンとして独立。PCやスマートフォンのハードウェアレビューから、ガジェット市場を構成する周辺領域の取材・記事作成を担当する。元Kotaku Japan編集長。
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柴田崇志(編集部)
Editor
柴田崇志(編集部)
モノ雑誌で10年弱編集を経験した後、カカクコムに入社。前職ではAV家電やカメラを中心に幅広い製品を担当。スペックからわかりづらい製品の違いをわかりやすく説明したいです。
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