「iPhone」歴10年。心も体も「iPhone」漬けになった筆者だが、昨今の経済状況を鑑みて、ついに、Androidへの乗り換えを決意。「iPhone」を長く使っていた人がスムーズに乗り換えできるのか、さらにAndroidに移行してどうだったのか。
今回は「iPhone 12」からAndroid端末のGoogle「Pixel 7 Pro」へと、ケーブル接続でのデータ移行を試みる
私が所有する「iPhone 12」は、発売からすでに4年弱が経過しており、ガジェット担当編集者の所有物としては、とっくにアウト。2023年9月に発売された「iPhone 15」への買い替えを検討したが、価格.com最安価格122,529円(税込。SIMフリー端末。2024年7月12日時点)と、積極的になれない価格だった。高騰の理由は円安の影響が色濃く、1円スマートフォンの販売規制もあり、極端に販売価格を下げられなくなった業界の現状もある。とはいえ、いちユーザーとして手を出せない価格だったのが本音だ。
価格.comで「iPhone」を発売日順に検索した結果、無印もそうだが、「PRO」「PRO Max」は、さらに価格が高い
そこで、数多のスマートフォンに触れてきた編集部の水川に相談すると、「Androidスマートフォンに移行すればよいのでは? いろいろなメーカーから発売されているから、価格もスペックも選択肢が豊富ですよ」とのアドバイスをもらった。
Android端末への乗り換えをすすめてくれた編集部の水川。所有スマートフォンは「Google Pixel Fold」
決め手となった助言は、「機種変更はSIMカードを差し替えるだけですし、ケーブルでつなげば、一発でほぼデータ移行できます」のひと言だった。すっかり忘れていたが、キャリアによるSIMロックがかけられていた時代とは違い、SIMフリーが主流となった現在は、自分ひとりで機種変更が完結できる。“機種変更=面倒くさいもの”の過去のイメージが足かせとなっていたが、自分の作業だけで新しい機種に乗り換えられるなら、チャレンジすべしと決意を固めた。
振り返れば、初めて手にしたスマートフォンは「Android 2.2」を搭載したサムスンの初代「Galaxy S」だった。その後2014年、当時好きだった娘が「iPhone」を所有しており、電波的な距離を縮めたいという想いから、「iPhone」を手にして早10年。記念すべきiPhone歴10年の節目に、Androidへの移行を決断した。ちなみに、その娘は、現在の妻である(なんだそりゃ)。
見慣れた「iPhone」のホーム画面。無事Androidに移行できるのか
乗り換え先には、「カメラがきれい」で「大画面」を基準に、以前から気になっていた「Pixel」シリーズを選択。「Pixel 8 Pro」にしたいと思ったのだが、予算の都合で、1世代前の「Pixel 7 Pro」に決定した。
今回はAndroid公式サイトにあるハウツー「iPhoneからAndroidへの移行をシームレスに」を参考に、移行作業を行ってみる。移行に必要なものは以下の4つだ。
移行に使用したのはAndroidスマートフォン、「iPhone」、SIMピン、「USB-C - Lightning ケーブル」。 端末によっては端子が違う可能性がある
「USB-C - Lightning ケーブル」は「iPhone」に同梱されていたものを使用した。 SIMピンは、100円ショップで販売しているそうだが、最寄りの店舗では見つからず、Amazonにて200円ぐらいで購入した。ちなみに、水川氏によれば細いシャーペンの先とかでも開けられるらしい。先に言っておいてほしかった。
端末によっては、ピンを使わずにSIMカードを取り出せるモデルも存在するので、事前にスマートフォンをチェックしておこう。また、「eSIM」を契約している人はSIMカードの差し替えは不要となる。
Android公式のハウツーによると、ケーブルを使って転送できるデータは、連絡先、写真と動画、カレンダーの予定、メッセージ(SMS)、アプリ、音楽、その他、と豊富だ。ワイヤレスでのデータ転送もできるようだが、転送可能なデータの種類が限られるうえ、転送速度も落ちるので、今回はケーブルを使用してデータ移行する。ケーブルを使用した作業手順は、以下の3つ。
(1)デバイス同士を接続
(2)データを選択
(3)データを転送
これだけ? とあまりにシンプルなので心配になってしまうが、とにかく実践あるのみ
Android公式のハウツーに、記載は見つからなかったが、念のため「iPhone」のデータはバックアップしておくのが安全だ。バックアップが完了したら、「iPhone」からSIMカードを取り出しておきたい。こちらも移行手順には含まれていないが、電源オフ時に行うべき作業なので、データ移行の前にSIMカードを取り出しておこう。
「iPhone」の側面にある穴にピンを差し込むと、カードスロットに載った状態のSIMカードが取り出せる
Android端末の電源をオンにし、言語設定とWi-Fi接続を行う。すると「モバイルネットワークへの接続」と表示されたので、さきほど「iPhone」から取り出したSIMカードを挿入する。以下はデータ移行までの手順である。
SIMカードが認識されると、「アプリとデータのコピー」画面に切り替わる
「他のデバイスをご用意ください」の指示にしたがって、ケーブルで端末同士をつなぐ
ここまでの作業時間は15分程度。端末の画面に表示される作業にしたがって、1つひとつ作業するだけなので、悩むこともなくサクサクと進めることができた。
スマートフォン同士をケーブルで接続した状態。移行の状況に応じて、画面にどんどんと指示が表示される
ここからは「iPhone」からAndroid端末へのデータ転送を行う。
2台のスマートフォンをケーブルで接続し、Android端末でGoogleアカウントのログインが完了すると、コピーする項目の選択画面が表示される。選択項目には、アプリ、連絡先、写真、動画、音楽とその他の音声、メッセージ、メッセージの添付ファイル、カレンダー、メモ、デバイス設定、が並ぶ。
今回はすべての項目をコピーする
続いてコピーするアプリを選択する。「Google Playストア」で配信されていないアプリや、「App Store」からインストールされていないアプリは、ここでは選択できないため、移行後に自分でダウンロードする必要があるようだ。個人的に該当するアプリはないはずなのできっと問題ないだろう。
コピーするアプリを選択する画面だが、34個は少なすぎる気がする。あとで知ったのだが、使用頻度が低いアプリ(「iPhone」のトップ画面で、雲マークの付いたアプリはダウンロードが保留となっている)はコピーされないので、お気を付けて
ケーブルをつないだままの状態でAndroidの初期設定であるパス、指紋認証、顔認証、声の登録の設定を行う。先ほど選択したアプリのダウンロードを待つ約20分の間に、移行作業はあっという間に完了した。
無事乗り換え完了。はたしてデータ移行はできているのか?
SIMカードの取り出しから、データ移行完了までにかかった総時間は約1時間20分。Androidにプリインストールされているアプリの更新にかかった約20分を除いて、端末が使える状態になるまでにかかった時間だけなら、ほぼ1時間だ。
移行中のガイダンスは、簡潔な説明とイラストを多用したGoogleらしいフレンドリーなUIの連続だった。そもそも初期設定が面倒くさくて苦手な私だが、イライラする瞬間もなくデータ移行が完了したことに驚いた。
大量のGoogle系アプリの間には、移行されてきたアプリが並ぶ
OSの異なるスマートフォン間でのデータ移行は、きちんとできたのだろうか。答えは、ほぼ完璧であった。移行項目として選択したものを、個人的に評価してみる。
◎完璧:連絡先、メッセージ、メッセージの添付ファイル、カレンダー、デバイス設定
○ほぼ完璧:アプリ、写真、動画
?不明:音楽とその他の音声、メモ
「◎完璧」は、履歴も含めてデータが移行されており、一切の手間も発生せず、そのまま使用できた項目。「○ほぼ完璧」は、データ移行に問題はないが、多少手間を要した項目。「?不明」は、移行結果が不明瞭な項目だ。
「?不明」についてだが、音楽は「Apple Music」を使用しており、「Apple Music」が移行できたので問題なかったが、その他の音声が「レコーダー」には移行されておらずどこにあるのか不明。メモは、移行前に「Googleキープ」への移行設定が必要だったようだが、事前に設定をしていなかったため失敗してしまった。
「○ほぼ完璧」が、”完璧”ではなかった理由を下に列挙してみる。
アプリ
・「Google Playストア」にないアプリが移行されない
・アプリは移行されても、再ログインが必要(Google系アプリはログイン不要)
・ホーム画面でアプリを整理していたフォルダーがなくなった
・ログインに手間取ったアプリがある(銀行系、「モバイルSuica」)
・使用頻度の低い雲マークの付いたアプリはコピーされない
写真、動画
・写真、動画を整理していたフォルダーが移行されない
・写真、動画のお気に入りチェックが移行されない
“「Google Playストア」にないアプリは移行できない”と言っても、ほとんどのアプリは、「Google Playストア」に存在していた。移行できなかったのは、スマートウォッチの接続に使用していた「HUEAWEI Health」のひとつのみ。「Google Playストア」を経由せずに、インストールする必要があるそうだ。
また、銀行や「モバイルSuica」といったお金に関わるアプリは、セキュリティの関連からログインに手間を要した。
「モバイルSuica」は、「iPhone」側で機種変更の個別対応が必要であった。データ移行日が、移動のない日でよかったが、移動を控えての乗り換え作業はおすすめしない
アプリと写真・動画のデータ自体は移行できたが、ホーム画面にてアプリを整理していたフォルダー、写真・動画を整理していたフォルダーとお気に入りチェックは移行されなかった。過去のデータが見つかりにくいのと、フォルダー整理をいちから行う必要が発生したが、「仕方がない」と思えるレベルではある。移行前の「iPhone」を見ながら、整理し直そうと思う。
「iPhone」のホーム画面では、大量のアプリをフォルダーに分け整理していたが、これらのフォルダーは移行されなかった
多くのアプリは、クラウド上でデータを保持しているため、ログインさえできれば、「iPhone」と変わらずに使用できるものばかりだ。ただし、日頃からパスワード管理のずさんな私は、再ログインに難航した。移行後の復旧作業をスムーズにするために、ログインのIDとパスワードはきちんと管理しておくべきだった。
改めて読むと、どれも「仕方がない」と思える不満ばかりだ。もはや不満というよりも、わがままレベルにさえ感じる。とはいえ、不満がゼロではないので、データ移行は”ほぼ完璧”にできたとしておきたい。
逆に、データ移行で想定外によかったことを列挙してみよう。
・移行直後なのに、Google系アプリがすでに通常稼働している
・「Apple Music」が使える(びっくり!)
移行途中でGoogleアカウントへのログインが必要となるので、「Gメール」や「Googleマップ」、「YouTube」といったGoogle系アプリを普段から多用していた私は、移行完了時点で、多くのアプリが使用できる状態になっていた。そのうえ、電話帳とメッセージは完璧にデータ移行が完了していたので、日常的に使用している「LINE」、「Instagram」、「Messenger」のログインができた時点で、ライフラインとしてのスマートフォンは、すぐに復旧した。
最も意外だったのが、「Apple Music」が移行されていたことだ。勝手に「Apple Music」が移行されないと勘違いしていたので、ログインのみでいつもどおりに音楽再生ができたことはありがたかった。
「Apple Music」のアイコンを発見したときの驚きと感動!
移行は簡単だったが、使い勝手はどう変わったのか。iOSからAndroidはうどんとパスタくらい違う。続編では、そのあたりの細かいことをお伝えする。