GoogleはAndroidスマホの最新モデルとして、「Pixel 9」シリーズを2024年8月14日に発表しました。標準モデル「Pixel 9」と6.8インチのProモデル「Pixel 9 Pro XL」を8月22日に、6.3インチのProモデル「Pixel 9 Pro」と折りたたみ型「Pixel 9 Pro Fold」を9月4日に発売します。折りたたみ型はともかく、Proモデルの6.3インチと6.8インチの発売日がずれており、今年は変則的に製品が発売されることになりました。
「Pixel 9」「Pixel 9 Pro」「Pixel 9 Pro XL」の3モデルのどれを購入するか悩んでいる人も多いはず。そこで今回は、まず基本スペックで3モデルを比較したうえで、標準モデルとProモデルの違いについては実機でベンチマークやカメラテストを実施し、3モデルがどのような人におすすめなのかお伝えしたいと思います。
左が「Pixel 9」、右が「Pixel 9 Pro XL」
まずは、3モデル共通の基本スペックをお伝えします。OSは「Android 14」、プロセッサー(SoC)は自社開発の「Google Tensor G4」を搭載。Wi-Fiなどの通信機能、防水防塵ボディ、指紋認証、顔認証、7年間のGoogle Pixelアップデートなどはまったく同じです。
3モデルの主な差分をまとめると下記のようになります。
上記差分の中で最も大きく異なるのはカメラ機能。「Pixel 9 Pro/9 Pro XL」は4800万画素の望遠カメラを搭載。また、オートフォーカスが「Pixel 9」は「単一ゾーン LDAF」ですが、「Pixel 9 Pro/9 Pro XL」はより精度の高い「マルチゾーン LDAF」を採用しています。
さらに、「Pixel 9 Pro/9 Pro XL」は、プロ設定、50メガピクセルの高解像度撮影、動画ブーストを使った8K動画撮影、「ビデオ夜景モード」など、より高度な機能が搭載され、差別化されています。
「Pixel 9」(Porcelain)
「Pixel 9 Pro XL」(Obsidian)
「Pixel 9」、「Pixel 9 Pro XL」の厚さはどちらも8.5mm
「Pixel 9」のほうがコンパクト。なお、「Pixel 9 Pro」は「Pixel 9」と同じサイズです
GoogleがプッシュしているAI機能「Gemini」に関しては、3モデルで基本的に同じ。NPUを搭載する「Google Tensor G4」を全機種に採用し、ローカルでAI処理が可能です。
また、有料AIサービス「Gemini Advanced」を利用できる「Google One AI プレミアムプラン」の6か月ぶんの無料トライアル権が付加されており、メッセージやドキュメントの要約、写真内のアイテムに関する自然言語での質問、写真の背景をAI生成で描き足すなどのAI機能を利用できます。Googleの最新AI機能が目的であれば、標準モデルの「Pixel 9」でなんら問題ありません。
「最近の重要なメールを要約して」という自然言語で、最新メールの内容を一覧表示
「写真内の製品のカロリーを教えて」というプロンプトでカップ焼きそばのカロリーを表示
「フォト」アプリから「オートフレーム」を実行すると、欠けている部分をAIで生成し、複数の画角の画像を作成してくれます。上の写真では、左の人物の肘や腕が自然に補完されているのがわかります
パフォーマンスについて総合ベンチマーク「AnTuTu Benchmark V10.3.1」で計測したところ、総合スコアは「Pixel 9」が1263407、「Pixel 9 Pro XL」が1295037となりました。
ちなみに「Google Tensor G3」を搭載する「Pixel 8 Pro」の総合スコアは1124176。「Pixel 9 Pro XL」は「Pixel 8 Pro」の115%相当の総合スコアとなりました。
現時点で「Geekbench 6」、「Geekbench ML」、「3DMark」などの定番ベンチマークを「Pixel 9」シリーズに(通常の方法では)インストールできないため、プロセッサーの性能を詳しく測れません。今回のAnTuTu Benchmarkのスコアはあくまでも参考にとどめてください。
「AnTuTu Benchmark V10.3.1」の総合スコア
なお、バッテリー駆動時間については、ディスプレイ輝度、ボリューム50%でYouTube動画を2時間連続再生したところ、バッテリーは「Pixel 9」が100%から93%、「Pixel 9 Pro XL」は92%となりました。「Pixel 9」と「Pixel 9 Pro」のバッテリー持ちは大きな違いはなさそうです。
背面のカメラについては、5000万画素広角カメラ、4800万画素超広角カメラは共通で、「Pixel 9 Pro/Pro XL」のProシリーズは4800万画素の望遠カメラを別途搭載。また、フロントカメラも、「Pixel 9」が1050万画素、Proシリーズが4200万画素と差別化されています。
今回テスト撮影したところ、広角カメラと超広角カメラについては並べて比較しても明確な差はありませんでした。条件の厳しい夜景モードでも大きな違いは見られなかったので、広角カメラと超広角カメラの画質は「Pixel 9」とProシリーズでほぼ同等だと思われます。
ただし、Proシリーズでは、プロ設定、5000万画素の高解像度撮影、動画ブーストを使った8K動画撮影(30fps)、「ビデオ夜景モード」などを利用できます。この点はご留意ください。
また、望遠カメラには大きな違いがあります。超解像ズームの最大8倍までは「Pixel 9」はなかなか健闘していますが、それ以上の倍率を設定できません。遠くの被写体に寄った画像を得たいなら、トリミングするしかないわけです。スポーツイベントや運動会などで人物に寄った写真を撮りたいのなら、最大30倍ズームに対応するProシリーズをおすすめします。
「Pixel 9」と「Pixel 9 Pro/Pro XL」のカメラにおける大きな違いは望遠カメラの有無です
「Pixel 9」(上)、「Pixel 9 Pro XL」(下)
「Pixel 9」(上)、「Pixel 9 Pro XL」(下)
2倍で撮影。「Pixel 9」(上)、「Pixel 9 Pro XL」(下)
8倍で撮影。「Pixel 9」(上)、「Pixel 9 Pro XL」(下)
30倍で撮影。「Pixel 9 Pro XL」
「Pixel 9」(上)、「Pixel 9 Pro XL」(下)
序盤でお伝えしたとおり、Googleの最新AI機能が目的なのであれば「Pixel 9」がベスト。「Pixel 9 Pro」と比較しても、128GB版で31,000円の価格差は大きいです。ボディの仕上げこそ異なりますが、メタルフレームなので質感にはほとんど差はありません。
いっぽう、カメラ機能を重視するならやはりProシリーズ。望遠カメラが追加され、フロントカメラが高画素なのもさることながら、プロ設定、最大50メガピクセルの高解像度、ズーム画質向上、動画ブーストを使った 8K 動画撮影(30fps)、「ビデオ夜景モード」などがProシリーズ限定なのが大きいです。
「Pixel 9 Pro」と「Pixel 9 Pro XL」のどちらを買うかについては、個人的には前者一択。画面サイズやバッテリー容量以外のスペックはまったく同じで、128GB版で18,000円の価格差があるのですから、お買い得感が高いです。とはいえ、映像コンテンツやゲームを大画面で楽しみたいという人であれば、「Pixel 9 Pro XL」のほうがよいのは言うまでもありません。
GoogleのAI機能のいくつかはこれまで同様、他社製スマートフォンでも提供されていくと思われますが、いち早く利用できるのはPixelシリーズの特権。また、「7年間のGoogle Pixelアップデート」と明確にアップデート期間が謳われているのも安心感があります。Androidの最新機能、充実したカメラ機能・編集機能を活用したいのであれば、やはり最新のPixelシリーズは魅力的な選択肢と言えるでしょう。