ASUS JAPANがAMDの最新CPU「Ryzen AI 300」シリーズを搭載したノートパソコンの新モデルを発表しました。「Ryzen AI 300」シリーズは、最大50TOPSのNPU(Neural network Processing Unit)を搭載しており、マイクロソフトが打ち出した新しいパソコン「Copilot+PC」のハードウェア要件を満たすCPUとして注目されています。
今回は「Ryzen AI 300」シリーズを搭載するゲーミングノートPC「TUF Gaming A14 FA401WV」をレビュー。最新CPUのパフォーマンスをチェックしましょう。
ASUS JAPAN「TUF Gaming A14 FA401WV」、価格.com最安価格296,436円(2024年8月20日時点)、2024年8月1日発売
・AIに強いAMDの「Ryzen AI 300」シリーズを搭載
・「TUF Gaming」シリーズ初の14型モデル
・165Hzの2.5Kディスプレイでゲームも日常使いも快適
ASUS(ASUSTeK Computer)は台湾のパソコンメーカーです(日本ではASUS JAPANが販売、サポートなどを担当)。パソコンだけでなく、マザーボードやビデオカードなどのPCパーツ、無線LAN(Wi-Fi)ルーターやゲーミングマウス・キーボードなどの周辺機器、「Zenfone」や「ROG Phone」というスマートフォンなども手掛けています。
ASUSのパソコンの特徴は高性能なこと。PCパーツを手掛けるメーカーだけに、すぐれた技術力により、その高性能を実現しています。そんなASUSは以下の7シリーズのパソコンを展開しています。
Zenbook…モバイルノートから2画面PCの先進モデルまで展開するプレミアムシリーズ
Vivobook…エントリーモデルから高性能モデルまで揃える主力シリーズ
ProArt…クリエイター向けPC
ExpertBook…法人向けPC
ROG…高性能なゲーミングPC
TUF Gaming…高コスパなゲーミングノートPC、堅牢性ボディも特徴
ROG Ally…ポータブルゲーミングPC
※これ以外にもASUSブランドでデスクトップPCやChromebookを展開しています。
「TUF Gaming A14 FA401WV」は、高コスパなゲーミングノートPC「TUF Gaming」シリーズ初の14型モデル。重量は約1.46kgでゲーミングノートPCとしては小型で軽量なのが特徴です。
厚さは16.9〜19.9mmとゲーミングノートPCらしからぬ薄さです
今回レビューした「TUF Gaming A14 FA401WV」の主な仕様
・CPU:Ryzen AI 9 HX 370
・メモリー:32GB LPDDR5X-7500
・ストレージ:1TB(PCI Express 4.0 x4接続、NVMe/M.2)
・GPU:GeForce RTX 4060 Laptop GPU
・ディスプレイ:14型(2560×1600、リフレッシュレート165Hz)
・バッテリー駆動時間(JEITA測定法3.0):約9.9時間(動画再生時)/約15.2時間(アイドリング時)
・本体サイズ:311(幅)×227(奥行)×16.9〜19.9(高さ)mm
・本体重量:約1.46kg
・OS:Windows 11 Home 64ビット
・価格.com最安価格:296,436円(2024年8月20日時点)
■「TUF Gaming A14 FA401WV」 筆者による評価チャート
評価チャートについて
・実際に製品を使用して、価格.com「ノートパソコン」カテゴリーのユーザーレビューと同じ評価項目で点数を付けました。
評価項目:満足度、デザイン、処理速度、グラフィック性能、拡張性、使いやすさ、持ち運びやすさ、バッテリー、画面、コストパフォーマンス
点数:5点満点(標準点は3点)
・本記事を執筆した筆者による個人的な評価です。評価は個人によって変わりますので、あくまでも参考程度にとどめてください。
価格.com「ノートパソコン」カテゴリーのユーザーレビュー一覧
「TUF Gaming A14 FA401WV」は、ゲーミングノートPCとしては希少な14型モデル。持ち運びしやすい高性能パソコンを探している人にも最適でしょう。「処理速度」と「グラフィック性能」は、このサイズとしては最強クラスなので5点としました。持ち運びやすさもゲーミングノートPCとしては最高クラスなので満点の5点。
気になるのは価格です。価格.com最安価格は296,436円(2024年8月22日時点)と、高コスパが売りの「TUF Gaming」シリーズとしては高価です。スペックの充実ぶりを考えれば、順当な値づけではありますが、お財布には厳しい価格なので3点としました。
最新パソコンのトレンドといえばAI(人工知能)機能。AIに関する処理をデバイス上で実施するNPUがパソコン選びの新しい基準になると、CPUメーカーはNPUの強化に力を入れています。
AMDの「Ryzen AI 300」シリーズ
AMDの「Ryzen AI 300」シリーズは、強力なNPUを備えた最新CPUです。「Zen 5アーキテクチャ」を採用したCPU、RDNA 3.5世代の「Radeon 800M グラフィックス」、最大50TOPSのNPUなどから構成されます。「最大50TOPSのNPU」は、マイクロソフトが打ち出した「Copilot+PC」のハードウェア要件のひとつである「40TOPS以上のNPU」を満たしています。
今回試したモデルに搭載されるのは、「Ryzen AI 300」シリーズの中でも上位の「Ryzen AI 9 HX 370」。Zen 5コア×4、Zen 5cコア×8の12コア・24スレッドで、ベースクロックが2GHz、最大ブーストクロックが最大5.1GHzというデスクトップPC向けCPUのような高性能な仕様です。
「Ryzen AI 9 HX 370」の詳細情報(CPUの情報を確認できる「CPU-Z」でチェックしたもの)
LPDDR5Xの32GBメモリー、PCI Express 4.0 x4の1TB SSDとCPU以外も高性能。SSDは1スロットの空きがあり、最大4TBまで増設できます。増設にともなう故障は自己責任ですが、「ASUSのあんしん保証」に入っていれば、万一のときも安心でしょう。
GPUはNVIDIAの「GeForce RTX 4060 Laptop GPU」。AIでより高品質なレトレーシングの品質を向上する「DLSS 3.5」を備えています。実際にいくつかゲームを試しましたが、快適そのものでした。カクつくこともなく、ヌルヌル動きます。
定番ベンチマークでも高いスコアをたたき出してくれました。なお、各種ベンチマークは動作モード「ターボ」で実施しています。
CPUの処理性能を測定する「CINEBENCH R20」の結果。インテルの「Core i9-14900HX」よりスコアは下ですが、「Core i9-13980HX」より上でした
CPUの処理性能を測定する「CINEBENCH R23」の結果。インテルの「Core i7-12700H」とほぼ同じスコアでした
パソコンの総合性能を測定する「PCMark 10 Professional Edition」の結果。総合スコアが8149と非常にハイスコアです
3DMark for Enterpriseの結果
Speed Way:2616
Steel Nomad Light:10512
Steel Nomad:2260
Prot Royal:6021
Solar Bay:46675
Time Spy Extreme:5195
Time Spy:10600
Fire Strike Ultra:6248
Fire Strike Extreme:12156
Fire Strike:24303
なお、注目のNPUは記事執筆時点では宝の持ち腐れ状態です。「Copilot+PC」に搭載される「イメージクリエイター」や「コクリエイター」といったAI機能は利用できません。内蔵カメラの自動フレーミングや視線補正などの「Windows Studio Effects」はサポートしていますが、既存のAI PCと同じなので、高性能なNPUをどう活用するかは今後に期待したいところです。
Copilotキーが搭載されており、素早く「Copilot」を呼び出せます
本モデルの注目点は最新のCPUだけではありません。
まずは、「TUF Gaming」シリーズ初の14型モデルということ。CNC削り出しのアルミニウムボディの重量は1.46kg、厚さは16.9〜19.9mm。ゲーミングノートPCとしては軽量でスリムです。シリーズ名のとおり、MILスペック(MIL-STD 810H)準拠のタフなボディで安心して持ち出せるのも心強いところ。
キッチンスケールでの実測は1449.5g。カタログスペックよりも軽量でした
デザインはほかの「TUF Gaming」シリーズと同様、装飾が控えめなシンプルな見た目。本体カラーは「イェーガーグレー」という、落ち着いた色味です。ゲーミングノートPCというと光るイメージがあるかもしれませんが、本モデルにはライティング機能はなく、派手なデザインが苦手な人にもすすめられます。
ゲーミングノートPCはACアダプターが巨大で重いです。本モデルのACアダプターも巨大ではありませんが、大きくて重い部類に入ります。充電自体はUSB PD経由でもできるので、外出先でゲームをしないなら、小型軽量のUSB PD充電器を別途購入するのもありでしょう。
ACアダプターは大きくて重いですが、ゲーミングノートPCのACアダプターとしてはこれでも小さいほう。ケーブルをまとめるバンドが付属するのが地味にありがたかったです
ディスプレイは2560×1600の高解像度な14型。リフレッシュレートは165Hzで、ヌルヌルな画質でゲームを楽しめます。上位シリーズの「ROG」よりもディスプレイのスペックは落ちますが、表示品質は高画質な部類に入ります。
筆者はいつも27型のディスプレイでゲームをしており、画面が小さく感じるかもと思いましたが、画面との距離が近いためか、実際に使ってみると、そんなに小さく(狭く)感じませんでした。
2560×1600の高解像度な14型液晶ディスプレイ。リフレッシュレートが165Hz、応答速度が3msで、ゲーミングノートPCとしては必要十分なスペックです
キーボードはバックライト付きで落ち着いた雰囲気。RGBで光るゲーム仕様ではありませんが、光り方はカスタマイズできます。キーピッチは実測で19mmとフルサイズキー。ストロークも深めで快適にタイピングできました。カーソルキーの左にはCopilotキーがあり、Copilotをすぐに呼び出せます。
オーソドックスなレイアウトのキーボード。ボリューム、マイクのオン・オフ、動作モードなどを変更できる「Armoury Crate」を呼び出すキーが独立しています
外部インターフェイスはHDMI出力、USB 4(Type-C/Power Delivery対応)、USB 3.2(Type-C/Power Delivery対応)、USB 3.2(Type-A/Gen2)×2。microSDメモリーカードスロット、マイク入力/ヘッドホン出力を搭載。14型ノートパソコンとしては充実しています。
有線LANポートは非搭載なので、有線派の人にとっては致命的です。ただ、本モデルは14型のコンパクトボディで、いろいろな場所に持っていきやすいのが魅力なので、ここは無線でいきましょう。無線LANはWi-Fi 6Eをサポートしているので、対応ルーターに乗り換えて空いている6GHz帯を活用したいところ。セキュリティは顔認証に対応しています。
外部インターフェイスは左右に搭載されています
ディスプレイが180度開くのが地味ですが便利
以上、最新の「Ryzen AI 300」シリーズの高いパフォーマンスを確認できました。ゲーミングノートPCとしては、AAAタイトルを快適に楽しめるパフォーマンスを備えています。ゲームだけでなく、画像編集や動画編集などクリエイティブな作業も軽快に行えるでしょう。
肝心のNPUはアプリ次第で、「Copilot+PC」のように画像生成の機能などを活用することはできません。NPUを活用したAI機能は今後に期待したいところです。
「TUF Gaming」はコスパが高く、比較的購入しやすいシリーズとして、価格.com上でも人気です。ただ、本モデルの価格.com最安価格は296,435円(2024年8月22日時点)と「TUF Gaming」シリーズとしては高め。現時点では、「高くて優秀なゲーミングノートPC」という印象です。もう少し値下げされれば、この印象も変わってくるのではないでしょうか。